【白猫】ゼロ・クロニクル Story3
開催日:2017/07/14 |
目次
story15 いつかあの子が
story16 気高き白猫
story17 泥にまみれた黒猫
<捕縛され、投獄されたときに転がったのだろうか。衣服や髪は泥にまみれていた。>
どうして、あの時……
<光の王を――守ったのか。
白との親交を深める。そのために来たのだから、当然とも、言えた。
だが……自分が知らぬうちに。白を討つ密命を、仲間が受けていたのならば……
……遂行させることが、黒の王国のためには……よかったのだろうか……>
何を、選んだ……?
<泥で汚れた、自分のてのひらを見つめていた、その時――>
……白い……猫……?
! 鍵が……!?
<牢獄が、夢の中の出来事ように音もなく間いていく――>
…………
<一瞬の逡巡ののちに、表情はすぐに決意に変わる。>
story18 <約束>
<共に来たアデルの行いは、同じ特使の罪。
このままでは自分は、処刑を待つだけの身だった。それを解放してくれるのなら……>
牢番たちには悪いけど……
<不思議な白猫は、人目をかいくぐり、静かなところへ導いていく。>
<白猫から変じた少女は、力を使い果たしたように、膝から崩折れた。
思わず手を差し伸べ、それを抱き止める。>
<謁見で見たときの、神々しい<光の王>は、そこにはなく――>
世界には闇もあり……
安らぎを与えるのは、どちらも同じ……
……なのに……
<控え目に支えた肩は、小さく震えていた。
自然と、ポツりと言葉が漏れる。>
<聞き取られなかったことに、彼は感謝して、続けた。>
黒も白も……みんなが、幸せになるなら――
――泥の中からでも。あなたを……支えるから――
その道を……進ませて欲しい……!
<少女の肩に手を置いたまま、自然と見つめ合う距離に、そっと体を離す――>
二人で、この世界に、平和をもたらしましょう。
<約束>します。
天と地……己のいるべき場所で、互いに支えあいましょう。
――<約束>です――
<強い意志の込められた瞳。
それはほんの少しだけ、微妙に絡まり、そして……
避けていた――>
<しかし、それ以上に言葉を足す間は、無く――
(君は…………一人ではないから……)
……きっと、守ります。あなたとの――<約束>を――
story19 剣士の心
<――黒の王子が白の王国から戻り――
<闇の王>は、その『特異性』を明確に示した。
際限のない<膨張>は、王の代替わりなどを感じさせない。
まるで<循環>を、拒むかのように――>
決意が新たになりましたかな。
この国において、<王>とは、闇なる力の根源でありますれば。
その意思に従うは、古来よりのならいでごさいます。
<闇>か包み込むのは、存在そのもの。善も悪も全て。
<闇>とは、決して晴れてはならぬもの。場のある限り、広がり続けてゆくもの。
それがこの世が生まれてよりの、真理でございます。
いまのままが正しいと、誰が言い切ることか出来るのだろう。
そんなもの……まやかしじゃないのか……?
そこから先を考え、尋き、結果を示すのが王の役目。
予測で未来を批判することは、私の職分ではありません。
あなた様の世が来ましたら……自分の信する道のために、私をお使いくださいませ。
<――それよりほどなくして――
――暗黒騎士ヴァルアスは、弟子に別れを告げ、戦地へと旅立っていく――>
story20 日常の終わり
一瞬の共闘により、バールを討ったのち――
予想通り、白の王国は<闇>からの激しい侵攻に晒された。
回数を増すごとに、<闇の王>は更なる膨張を遂げていく――
――討たれるのは、白か、それとも黒か――
――次が最後の決戦になるであろうことを、多くの者が予感していた――
<光の王>アイリスは、胸中の不安を押し隠しながら皆を鼓舞する――
白の民は、自分たちの勝利を疑わない。
なぜなら<始祖のルーン>の加護が、自分たちにはある――
――自分たちには<光の王>がついているのだから、と……
だが……<均衡>は、徐々に崩れ、傾き始めていた――
わずかずつ……黒の側へ……
…………
……
そうなったら……
――とか言って、兄ちゃんと姉ちゃんを困らせるようなことはしないよ!
なんたって、<光の王>アイリス様がいるもんね!
アイリス様を信じる限り、白は……負けないさ……!
誓おう。この命、最後の一欠けらが燃え尽きる、その瞬間まで――
俺は一歩も引かず!お前のことを、守り続けてみせる!)
信ずるのは<白>の司る<光>、そしてその王――アイリス――
決戦を前にして、兄弟たちの絆は深まる――
story21 宝冠と賢者
――あまねし精霊と妖精の力を束ね――
――宝冠へと紡がれし物よ。ここに<在れ>――
T礼なんて。僕はそれを<識る>プロセスを認めただけに過ぎない。作ったのはあなたたちだよ。
Tフム。忘れてた。
T名をつけなければ。
T一般的に考えれば、人格が宿るだろうね。
なんでもいいかな?いいよね?じゃあ僕がパパっと――
名は、その中から代表を選び、つける……ということでは?
Tフム。その方が理に叶ってるかもね。
Tそうそう、あとね。宝冠がその真価を発揮するために、条件を課しといたよ。
T王が授けることさ。
Tそんな制約でもなければ、奪われちゃってもコトだろう?
(智の賢者の深慮遠謀…………と、いうことだろう……)
Tまあ他にもあるんだけど。
Tいやなんでもない。では、僕はこれで。
T片方に加担しすぎるのも、僕にはあまりよろしくなくてね。
<認識>には善も悪もない。今度はあちら側へ。
Tおやおや。そんな大層なモノじゃないんだけどなあ。
T捕えられれば、ただでは済みませんぞ!
倫理観も価値観も、僕と君たちとは違うんじゃないかなあ。
まあ、ソウルの結晶である、妖精族や精霊族とは比較的近いのかもしれないけど……
それでもやっぱり、根本的に違うんだと思うよ。
Tじゃあなおのこと、ここにはいられないね。
T導くとかは、ね。僕の存在意義としては、多分真っ向から反するから。
T話せば長くなる。でも一言で終わらせよう。
僕はただの、<認識>だから。
Tフム。わかってくれとは言わないさ。では、失礼。
…………
……
T……なんて。偉そうに言ってたのに、やっぱり投獄されちゃったねえ。
まあ、そこからは、こうしてさっさと抜け出したわけだけども。
でもまあ、これで、トントン、かなあ。
白にも黒にも、言い分はあるんだよね。僕が一方に加担するのは……
してもいいんだけど、まだ今じゃないものなあ。
さて……
…………
退屈になってしまったなぁ。
うーん。
では、こういうのはどうだろう。元の世界の、事象を、一つ一つたぐって紐にして……
そうだな……その紐で……
靴を履こう!やあ、これは名案だ!
全面戦争
story22 黒の王子
……<始祖のルーン>よ!白の王国に生きる者、全てに、力を――
<闇>を払う光を与えたまえ!
<空が重たくなったかと錯覚するほど――埋め尽くす、魔物と、<闇>――
白の王国と<均衡>の存亡を賭けた最後の一戦の、火蓋が切って落とされた――!>
…………
……
<一方一その頃、黒の王国――>
そのあとの時代を生きぬくにゃあ、食うもの食わなきゃ始まらない!
小麦が無理でも芋ならどうだい?ヨソではまず手に入らないよ!さあさあ見てって見てって!
黒の王子様じゃないのかい!?どうしてこんなとこに!?
……王子様!まさか、叛逆でも!?
……いや、どうだろうな……
勝てば、楽になるんでしょう?だったらそれまでの辛抱ってだけでさぁね!
連中、何食ってんですかね?味がしねぇ草とか?
こりゃもう勝ったも同然ですなぁ!
勝ったらお母さん、よろこぶよね!きっと勝ってねー!
ご足労、願えますな?
ごめんよ、もっと遊びたかったんだけど、もう行かなくちゃ。
行こう。
<丁寧な言葉とは裏腹に、物々しい武装の兵士たちが周囲を何重にも囲む……>
story23 後継者
仲間だと思ってたんだがなぁ?
おめぇよりも遥かに、<魔>に寄った、な……!
むしろてめぇがなんで止めたんだよ?
――と、言いてぇとこだが、実はあれで良かったんだよ。
ああやって揺さぶってきゃあ、すぐに迷いが生まれる。
そしたら屁でもねぇ。同じくらいの力を持つ者同士がやりあえば、折れねえ方が勝つのか道理さ。
より大きく生きようってする本能があるからこそ、智恵が生まれたんだろうが。
馬鹿なのは、馬鹿にしてるおめーらさ。
だからこの場で粛清しようと!
ま、でも……アレだな。暗黒騎士のアホなんかも、このことは知らねえがな。
もしかすると、俺を生んだのがそもそも王かもしれねぇ。まあんなこたどうでもいい。
おめえやグローザを遠ざけたのも、白に転ぶ危険性があったからよ。
つっても、誤解すんなよ。<闇の王>が本気になりゃあ、てめえなんぞただの小石だ。
――聡明なあの方は、それにも油断しねえってだけのことなんだよ!
お前らのやり方は、間違っているっ――!
story24 導き
<裂帛の気合とともに振り下ろした刃が、アデルを頭頂から一直線に斬り下げる!>
光が揺らいだ白の王国なんざ、いつまでもつ?いや、いつまでだってもたねーね。
王が始祖のルーンを取り込めば、全ての空間が黒く染まる……!
<均衡>が崩れる……となりゃあ、この世はオシマイさ。誰一人、生き残りゃしねーよ。白も、黒も、ぜーんぶ、な……
じゃ……一足先に、行ってるぜ……アンソクの、闇の中にな……
<皮肉めいた笑顔を残し、アデルは消滅した……>
遠ざけたのは、こういうことか……
<天は高く、白の王国は、遠い。>
じゃあ、信じていた民たちは一体なんだったんだよ!?
王だからって!たった一人に、そんな権利が有るわけないだろ!
<……対策は打たれていた。声を届けようとしても、もはや決して間に合わない。
ヴァルアスをはじめとする、同じ黒の民たちにも――
――いつか並び立とうと誓った、<光の王>アイリスにも――>
誰も手の届かない空の上で……
全ての命のこれからを!勝手に決める気なのかよ!!!!
<いくら叫ぼうとも、この時この場で、打つ手は消えた。>
こんな地の底からは、届かない、間に合わないっ……!
<がっくりと、膝を突いた――
――その時――>
力が――!?
一体、どこから……?
<それはまるで……虚空に突如、扉が開き――
そこから流れ込んでくるような、『ここ』には『無い』力――
――それと――>
誰……?
いや……今は、それより……!
<――力が発現する――>
<誰よりも、何よりも速く、彼女の元へと、駆けつけるための――
その力は――>
――アイリス――!
<黒の王子としてのものか……主人公自身のものか……
それとも、また別の何かの――>