茶熊学園2018 Story2
第10章 授業開始!
はいみなさん、おはようございます!
「「「「おはようございます。」」」」
いよいよ今日から!本格的な学校生活が始まりますね~!
それではさっそく、授業をはじめたいと思いま~す。
いちげんめは魔術学だよ、タロー!
キャウゥ~ン?
数科書の5ページをひらいてくださ~い。
けっ……
リアムさん?
教えられるのなんてまっぴらだ。先公、俺はサボるぜ。
清々しいほどのサボタージュ宣言ですね。
リアムさん!!授業はちゃんと受けましょう!!
やなこった。
じゃあ、あとでノートをお見せいたしますね。
オーマイ聖女……
甘やかすことはないと思うが。
……ま、好きにさせてやれよ。
授業を受けるも受けないも、試験に受かるも落ちるも、こいつの自由だ。
そして、その自由に伴う責任も、コイツはきちんと心得てるはずだ。
責任なんかねえよ!
ねえのかよ!
部室にいくぜ。止めてくれるな!
……先を越されたな……
第11章 お昼どき
おーし、メシだメシだー!
今日もみんなで食べましょう!
いや、私は――
コヨミ、アイシャねーねのとなりがいいな!
……ああ、おいで。
俺も混ぜろ!
いつの間に!?
ジュダ、骨を持ってきた。食うか?
……ほう。いい骨だな。
あ、学長先生も一緒にどうです?
え?私もですか?
…………
……
握り飯いるひと~~~~!
お前、今日もおにぎりか。
今日も明日も握り飯です!
アイシャさん、私、野菜のスープをつくってきたんです。
よければ、いかがですか?
せっかくだからもらっとけよ。
スープぐらいなら食えるだろう。
……そうだな。お言葉に甘えるとしようか。
ムグムグ俺にもムグくれ!
リアムにーに、すごい頬袋だね!
つっつけば飛び出るんじゃないですか?
ほれ!
ブバァー!
きゃあー!
ウハハハハハ!
テメー、ざけんな!
なにをやっているんだ……
……なんか、いいですね。こういうの。
早く拭け。
誰かタオル持ってねーか?
僕、なんだかうれしくなっちゃいますよ。
私のハンカチを使ってください!
まあ!かわいいハンケチ!
聞いてます?
なんかもったいねーな。……ああ、これでいいだろ。
ってそれ私の毛です!
第12章 男
「ジュダ。」
「なんだ。」
「君には驚かされたよ。」
「……?」
「君がクラスに馴染んでいることさ。」
「馴染んでいるように見えるか?」
「私の目からはね。」
「お前こそどうなんだ。てっきり周りとは距離を置くと思っていたが。まさか、副会長になるとはな。」
「他に適任がいないというのだから、しかたないだろう。」
「断ればすむ話だ。」
「……休暇を楽しみはじめているのかもしれんな。」
「フ……」
「……コヨミと園芸部に入ったそうだな。」
「ああ。」
「仲良くしてやれ。」
「ウオォォォーーーン。」
わおぉぉぉーーーん!
「すでにしている……」
…………
……
「はあ……すっかり遅くなっちゃった。」
「あ、エクセリアさん。こんばんは。」
「オスクロルさん。」
「今まで部活ですか?」
「はい。今日は集中して頑張ろうって、みんなで。」
「私も、先ほどまで走り込みをしていたんです。」
「カグツチ、毎日厳しいでしょう?」
「ええ。でも、熟心に指導してくださいますから。」
「……なるほど。ここが茶熊学園ですか。
島全体をキャンパスにするとは、いいアイデアです。
……ですが、いささか広すぎる。」
(どなたでしょう……?)
(生徒……ではなさそうですね)
「君、どう思います?
「ムダが多すぎるかと。特に設備投資。外から見ただけでも明らかですな。
「確かに、合理的ではありませんね。カネの使い方がまるでわかっていない。
出資した各国の担当者も、教育のキの字も知らない間抜けばかりなのでしょう。
「予算回りについては、学長にも大きな権限があるようです。
「好都合です。メスの入れがいがある。
「……こんばんは。
こ、こんばんは~……
「部活帰りですか?遅くまで、ご苦労さまです。
ど、どうも……
「行きましょうか。」
「「はっ!」」
……学園の関係者なんでしょうか?
さあ……
第13章 お客さま
これより、カラスミ組第一回目の戦略会議を行う!
せんりゃくかいぎ?
学級会をカッコよくいってみた。
それで、誦題はなんでしょう?
次の学校行事についてだ。先生の希望で、カラスミ組に一任したいらしい。
新入生が決めちゃっていいんですか?
たまにはそういうのも面白いかと思いましてね。
とりあえずアイデア出しから始めようと思う。思いついた端から、どんどん言ってくれ。
ロックフェス!
計ったように現れるな、お前は。
握り飯大会!
学園祭はどうですか?
コヨミはねえ、みんなで楽しくできるなら、なんでもいいよ!
コヨミ。なんでもいい、が、お母さん、いちばん困るんだぜ。
え?
…………
……
よし、だいたい出つくしたな。
ロックフェス、握り飯大会、学園祭、茶熊ガールズコレクション、骨の品評会、お花の鑑賞会、遠足、釣り、相撲、ダンス、合宿、バーベキュー、海水浴、焼きそば。
焼きそばってなんだよ!
お前がヤケクソで出したんだろが!
みなの反応を見る限りでは、これといったアイデアはないな。
時間がきちゃいましたね。次の学級会に持ちこしますか。
じゃあそれまでに、おのおの他のアイデアを考えてこよう。
みんなが参加できて、かつやりがいかあるものがいいな。
。はーい!
おや、ソウマ先生。どうしました?
学長先生にお客さんが来てるんだが……
わかりました。学長室にお通ししてください。
――保健室――
これでよし、と。包帯はマメに取りかえてくださいね。
6はい、これ問診票。いちおう、記入しておいて。
お手伝いありがとうございます、ハルカさん。
6メアに頼まれたしね。それに私いま、割とヒマだし。
これでも医術の知識はあるから、わからないことがあったら、どんどん聞いて。
はい!
6……あ、そうだ。薬品棚の管理についても教えとかなきゃね――
仕事中のところ、悪いな。
ソウマ先生。どうしました?
いきなりで悪いんだが、二人とも、体育館に行ってくれるか?
<ジュダとコヨミは、新しいプランターに入れる土を探していた。>
このへんの土はどうかなあ?
悪くないだろう。
ねえジュダにーに、ここをまっすぐいくとなにがあるの?
古い祠だ。熊の話によれば、古代兵器か眠っていたらしい。
危ないから、あまり近づくなよ。
はーい!
「……プー……
わあ、見てジュダにーに!おっきなうさきさんがいるよ!
「プー……プー……
かわいいね、タロー!
キャン!キャンキャン!
小屋に<ドロちゃん>と書いてあるな。
ふふふ、うさきさんの名前だよ~。
あっ、えっと……
私はツキミだよ~。こちらは、ネモさん。
キャベツはここに置いておくぞ。じゃあな。
ありがとう、ネモさん。
…………
…………
コヨミちゃんに、タローくんに、ジュダさんだね~?
はい!ドロちゃんのお世話がかりのかたですか?
お世話はね、みんながしてくれているんだよ~。
じゃあ、わたしたちもお世話していいですか?
もちろんだよ~。
(俺も……か)
ここにいたか。
ソウマ先生、こんにちは~。
話がある。みな、体育館に集まってくれ。
第14章 激震
緊急全校集会
ヘイパスヘイパスヘイパス!
ヘイヘイヘイパスパスパース!
5はいっ!
エンジェルダアァァァァンク!
5ルカ、トラベリング~。
す、すみませ~ん!
5でも、ダンクは決められるようになってきたね。
あら?みなさんぞろぞろと、どうしたんでしょう?
部活中のところすまんが、緊急の全校集会をひらくことになった。
5え?
全員そろってるな?
tあの、なにがあったんでしょうか?
うぅ……トップ目だったのに……
運がなかったな、セツナ。
はやく戻ってもんしょ~描きたいよ~!
黙って聞いてくれ。……マズい事態となった。
マズい事態?
学長先生が、汚職の容疑で連行された。
…………
…………
「「「えーーーーーーっ!
エリート教育者
<時は少しさかのぼる――>
それで、お客様とは?
教育関係の方だそうです。
ふむ……他校から視察に来られたんですかね?
3いきなりお邪魔してしまい申し訳ありません。カムイ学長。
あ、あなたは!
お知り合いですか?
ご存知ないのですか、ソウマ先生!
教育界のスーパーエリート、パンティ・ラーニング氏ですよ!
3スパルティです。
エンパイア・ユィバーシティ教育学部を首席で卒業し、魔法学園古代魔術学部博士課程をごく短期間で修了した天才中の天才……!
3それほどでも。
研究者時代は、古代魔術学と現代魔術学の分野において画期的な論文を次々と発表し、学会を席巻しました!
その後は教育者に転身し、優秀学園やハイソサエティ・スクールの理事長、鬼軍曹塾やバッドバッドグッド塾の総塾長など、数々の名門教育機関を設立し、数々の名冒険家を輩出した、エリート中のエリート!
ああ、学校の名前は聞いたことがありますね。
第8回マジック・ブレイクスルー賞、第73回ソーサラー・メダル賞、第11回帝国教育賞、第3回フューチャー・エデュケーター……
受賞した栄誉ある賞は、枚挙にいとまがありません!
3もしやファンでしたか?よろしければ、サインの一つでもしてさし上げましょう。
いえ、結構です。
はっきりと申し上げますが、私、あなたの教育観には、賛同できかねますので。
3……ほう。
生徒の自主性や個性をいっさい顧みず、徹底的に縛りつける……
教育というより、支配ではありませんか。
3想像どおりのお方だ、カムイ学長。
あなたは教育というものをまるでわかっていない。
ご用件をおっしゃってください。
<スパルティは、一枚の紙をテーブルに滑らせた。>
3カムイ学長。あなたを計算書類等虚偽記載とこれに係る脱税及び詐欺により更迭いたします。
…………ハイ?
3これがその証拠です。
……ソウマ先生。申し訳ありませんが、席をはずしてもらえますか?
……わかりました。
ちょっと待ってくださいよパンティ先生!
3スパルティです。
虚偽?脱税?詐欺?いったい何のことですか!
3あなたは茶熊学園の経営をまかされていた。それは間違いありませんね?
ですが、その財務状況は思わしくなかったようだ。助成金も打ち切られそうになっていた……
た、確かにそうですが、それはもう――
3ですからあなたは決算報告書に手を加え、赤字を黒字に転じさせた……
いじった数字で助け船を請い続け、収めるべき金を宙に浮かし、かすめとったのです。
私は数字をいじってなどいない!
3あなたは教育者ではない。醜い略奪者だ。
だ、だいたい、あなたはなんの権限があって私を更迭するのですか!
3冒険家ギルド本部の委託状です。すべては私に一任されているのですよ。
ど、どうしてそんなことが……
3この学園は、今日から私のものです。
待って。待ってください……!
3お願いします。
「来い!
な、なんです!?あっ、ちょっ、どこへ連れていく気ですか!?
やめてーーーーっ!
3ご期待ください、カムイ元学長(・・・)。
茶熊学園は生まれ変わります。生まれ変わらせます。この私が。
スパルディーッ!
3スパル……ええ。
暗雲立ちこめる学園
学長先生がしたとされている不正は三つ。粉飾と脱税と詐欺だ。
わるいけど、みんなにわかるように言ってくれる?
書類に手を加え、不正に金を受け取ったということだ。
が、学長先生が、そんなことを?
そんなの、ウソに決まってますっ!
yそうですよ!カムイ先生が、そんなことするわけありません!
真偽のほどはわからない。だが、証拠はそろっているらしい。
くそっ、なんなんだよ!いきなり押しかけてきやがって!
この学校はどうなってしまうのです?
そのスパルティが、新しい学長に就任する。
レイン ……んだと?
理事会の信任を受けたらしい。
……学園の全権を握ったってこと?
……クゥ~ン……
タロー……
だ、大丈夫ですよ、コヨミさん!学長先生の容疑は、きっとすぐに晴れるでしょうし……
その可能性は低いな。すべてはやつの意のままだ。
明らかな越権行為だがな。
…………
みなさん!悲観するのはやめましょう!
シャル そーそー。カリスマたかなんだかしんないけど、学校がいきなり変わったりなんてしねーって。
そ、そうですよね……
…………
今日は寮に帰れとのお達しだ。
なあ、クマ公はどこに連れていかれたんだ?
3ここにいますよ。
しくしく……
先公が……ひんむかれてやがる!
イヤー!見ないでー!
3いちど会わせておこうと思いましてね。
初めまして、みなさん。私がスパルティです。
アンタが……!
3横にいるのは、ベンとキョウ。私の忠実な側近です。
「「…………
3明日からは私たち三人が学園の指揮をとっていきますので、くれぐれもよろしくお願いします。
ティナ ……ちょっと待ってください。
3あなたが生徒会長のティナさんですね。
ティナ カムイ学長が不正をしたというのが、私たちにはとうてい信じられません。
3不正の事実を示す証拠はそろっています。
その証拠、じっくりと拝見させてもらってもいいかね?
3生徒は首を突っ込まなくてよろしい。
いいですか、みなさん。これまでのような生ぬるい学校生活は、今日でおしまいです。
それを肝に銘じておいてください。
み、みなさん……!
「bさっさと歩けっ!
みなさぁぁぁぁん!
第15章 変わる教育
<つぎの日の朝――
スパルティから渡されたプリントを見て、カラスミ組の面々はがく然とした!>
なんだあ、こりゃあ?
3私の教育方針にのっとった、五十の校則です。
…………
話にならん。
男女はみだりに近づかないこと。きょかのないせっしょくも禁止……
……コヨミ、にーにに近づいちゃいけないの?
授業中の禁止行為。
一、窓の外を見る。二、物を落とす。
三、ノートを破る。四、頭をかく。
五、座り直す。六、机を動かす――
3本日からはこの校則に従って生活してください。
……待ってください。こんなの、どれも厳しすぎます!
3違反した場合は厳重な処罰が下されますので、そのつもりで。
おい、どうしてこんなマネをするんだ。
3教師には敬語を使うように。
さっさと答えろ!
3……まあ、いいでしょう。すべて茶熊学園のためですよ。
どういうことですか……?
3みなさんは、この学園の教育方針をご存知ですね?
『生徒の自主性を重んじ、自由にのびのびと学んでもらう』
生産性のない無意味で無価値なゴミ以下の理念です。
なんですって……
3いいですか。学校とは能力を伸ばすための訓練所であり、自由気ままに戯れていい公園の砂場ではありません。
能力を伸ばすとは昨日の自分よりも強く賢くなるということです。昨日より今日。今日より明日。
並大抵のことじゃない。やり通すには大樹のような精神が必要だ。だから我々がいる。
教育者の使命とは未熟な幼木の葉を増やし枝を生やし幹を太くすることです。背が伸びても折れないように。世界の見え方か変わっても枯れてしまわないように。
私は、大樹の育て方を誰よりも知っている人間だ。
…………
これは改革です。失った信頼を取り戻すだけではない――
この学園を、世界でも有数の名門校にするためのね。
……カムイ学長殿はどこにいる?
3カムイさんは現在、本校舎の地下に幽閉しています。
ゆ……幽閉!?
3当たり前でしょう。罪人ですよ。
なんてひどいことを!
3コヨミさんとジュダ君。二人には彼の世話をしていただきます。
えっ……?
3ウサギの世話をしているところを部下が見ていましてね。生き物係なのでしょう?
ふざけるなっ!先生はペットじゃない!
貴様に従うつもりはない。
3コヨミさん。彼が飢えてもいいのですか?
…………
3今日からさっそくお願いします。さて、授業をはじめますよ。
…………
ディラン?
<その日から、茶熊学園は変わった――>