【白猫】シルバの修行録 Story
開催期間:2019/01/06 |
目次
story1
<黒衣の六腐朽の二黄昏の一
我が身のほむらを矩火となし 砂なる不純を朽ち拭わん>……!
燃えちゃいましたね、ジルバさんの本……
……また失敗か。本のインクだけを消そうとしたんですが……
Aカァ……
お外でも魔術の実験なんて、あいかわらず勉強熱心ねぇ。
学園にこもりきりだと、気が滅入ってしまいますから。
ま、無理はきんもつよ?
ありがとうございます。でも研究も実践も、最近は楽しくて仕方ないんです。
目標に向かって少しずつ、着実に近づいているのか実感できて……!
<黒魔術の白魔術士>――ですよね♪
その通りです。
戦うための黒魔術も、使い方次第で生命を救うことができる――
新たな可能性を模索し、自分の力で切り開いていくことは、魔術士の最大の喜びですから!
ふふ、目ぇキラキラさせちゃって。
とはいえ、先達者がいない分やはり道は険しいです。……そこで!
特別な異名を持つ魔術士たちに会ってみようと思うんです。
独自の探求を続けてきた人たちの技を見れば、何かヒントがつかめるかもしれません。
いいアイディアね。見識を深めるのは大切だもの♪
はい!今日はこれから、ある魔術士に会いに行く予定なんです。
どんな魔術を使う人なんですか?
僕も初めて会う方で、噂でしか知らないのですが――異名は<創造の魔術士>。
彼はあらゆるものを、無から一瞬で生み出すそうです。――それこそ、生命までも。
そんなすごい人が……!
…………
ねーねージルバ。それ、アタシも行っていい?
どうしたの、キャトラ?
だって……<創造の魔術士>なんでしょ?
カニカマ作ってもらうのよ。とびきり美味しいやつを山ほどね♪
キャトラったら……
ふふ、それじゃあみんなで行ってみましょうか!
Aカァー!
story2
ゴクリ……
このハンカチから……せい!
綺麗な花が!
さらに……せいっ!
花が鳩に変わったわ!
まだまだ……せい!せい!せい!
なッ!?鳩がみるみる増えて……!
ムムムウウ~~ン――そいツ!!!
<鳩たちが集まって……熊になった!>
これが、マジックパワーです。
すごい……なんて神業だ!
手品―――!!
たしかに不思議だったし、本当に面白かったわ。全力で楽しんじゃったもの。
でもジルバが求めてるのはこーいうのじゃないでしょ!
そんなことはありませんよ。
魔法や魔術に頼らずとも、創意工夫によって想像を超えた現象を生み出す……
その妙技……まさに<創造の魔術士>です!
では次は、手足を鎖で縛ってからの水中脱出劇をご覧に――
あの、僕にもできませんか!?勉強のためにもぜひ……!
あ、危ないからだめです!!
そもそもアンタが目指す魔術士とは方向性ちがうでしょ!
ふむ……魔術士を探しておいでなのですか?
そういうことでしたら私も一人、存じておりますよ。
人呼んで<幻惑の魔術士>――幾多の軍勢も、屹立する守護神も、あの男を止めることは叶いません。
聞いた感じだとすごそうね……
ぜひ、会いに行ってみましょう!
story3
『さあ後半ロスタイムも残りわずか!ポールはロジャウーノに渡るゥ!
……!
『だが守備はかたい!ロジャウーノ、これは動けないか……!?
だがロジャウーノ!変幻自在のボールさばさで厚い守りを抜き去ったあ~ッ!
い、今なにが起きたの……?
一回、二回、いやもっと……!?今の一瞬で何回、フェイント入れたのよ!?
すごい……ポールが生き物みたいだ!
『ロジャウーノ止まらない!止まらないィ~~!
<鋭いシュートがキーパーの頭上をかすめ、ゴールに突き刺さった!>
『押し込んだァア~!そして今……終了のホイッスル~~~!
<幻惑の魔術士>こと、ロジャウーノの華麗なトリックが今日もコートで怖裂したァ~!)
素晴らしい試合でしたね……!
サッカーーー!!
確かに魔術士かもだけど、こういうことじゃないわよ!
ふふ……そうじゃないんですよ、キャトラさん。
なにがさ。
ある技術をひたすら研鍛し、魔術とまで形容される神業へ昇華させる……
その不屈の精神力は、魔道の探求にも通じます。
……そうかも。いや、そうなの?
僕も彼を見習って、サッカーの練習を……
してどうすんの!本末転倒よ!
お腹減ったし、そろそろ帰ろっか。
なあ、このまま飲みにいこうぜ。久々に<てっとり亭>とかとうだ?飯も食えるし……
でもあの店はこの間、オスコー爺さんか目つけてたぞ……
オスコーってまさか……<酒場の魔術士>か!?
ああ。以前一緒に飲んだが、あの恐るべき神業……まさに魔術。心底プルったぜ。
…………。
あの……行ってみませんか?<てっとり亭>……!
言うと思ったわ。
story
……ふぅ。
<にぎわう店内で、一人の老人かグラスを傾けている。>
(あの男性……気になります)
(普通のお爺さんにしか見えないですけど……)
(いえ。あの鋭い眼光……油断のない面構え……ただ者ではありません)
(そうかな)
(彼が<酒場の魔術士>――オスコーさんかもしれません。僕らも食事をしつつ、様子をうかかがってみましょう。
のう、店員さん。
はい?
わし……この料理は注文してないのう……
え、でもたしかに……
これ、タレじゃろ?わしが頼んだのは塩なんじゃが……
見ての通り、老いの身でのう……今、ふと思い出したんじゃ。
(もう半分以上食べとる……!)
塩味が……食べたいのう……
す、すみません。すぐにお取替えします……!
(取り替えるの……!?)
(ほ、本当に店員さんが間違ってたのかな……?)
<老人は尋常じゃないペースで飲み食いしている……>
(何よアレ。あんなにパカパカ注文したら……)
(ええ……支払い額がとんでもないことに……)
おお、待っとったぞ、お前たち。
あれ?もう来てたのか。待たせたかい、オスコー爺さん?
なに、わしもちょっと前に来たばかりじゃよ。
(結構前からめっちゃ飲み食いしてるくせに……!)
(しかし彼は必ず一品ずつ注文し、完食するつど、食器を片付けさせていました。
つまり彼が暴飲暴食していた証拠は今どこにも……ありません!)
(なんでテンション上がってるのよ)
ヒマだったもんで、先に一杯やってたんじゃが……
じゃあその分も割り勘でいいぜ。待たせちまった詫びだ。
おっほっほ。悪いのう。
<割り勘の流れに持っていった……!>
ううん、あんなテキトーなやり方でごまかせる額じゃないはずよ!)
(……さすかにお会計のときに気づかれるよね)
三名様でお会計合わせて、36500Gになります。
へぇえ~~心……?なんか高くねえかぁ~~~?
オレたちぃ……そんなにぃ……食ったっけえ~……?
おっほっほ。楽しく飲んでるとつい忘れてしまうもんじゃの。
「……だよなあ~♪
(二人とも酔っ払ってて気づいてないわ……!)
(校桐ですが……華麗です。最小限の出費で酒場のすべてを味わい尽くす知略……
(まさに……<酒場の魔術士>!)
ただのセコいじいちゃん!
とはいえ、人を隔していることにはかわりないので、そこは反面教師にしないと……
なあ、きみさみ。その杖と格好……もしかして魔術士か?
ははぁ……さてはきみも、コージーさんに憧れてこの島に来たんだな?
コージーさん?どなたですか?
まずアンタは誰よ。
俺はコージーさんの弟子だよ。
そしてコージーさんは、稀代の天才魔術士――人呼んで<奇跡の魔術士>さ。
。奇跡の……!?
世界の真理を解き明かすため、多くの弟子たちと共に日夜、修行に励んでいらっしゃる。
きみたちも一度会ってみないか?きっとためになるぞ!
いいんですか!?ぜひお願いします!
……今度は大丈夫なのかしらね。
story
人がこんなにたくさん……
すごいだろ?みんなコージーさんの弟子なんだ。
どんな魔術の使い手なんでしょうね……!
アタシは見るまで信じないわよ。
やあ皆さん。相変わらず励んでいるようで何よりです。
コージー先生!
(あの人が<奇跡の魔術士>……)
(見た感じ、ただのうさんくさいオジサンね)
(キャトラ、失礼だよ……)
コージー先生。今日も新たな求道者たちを連れてきました!
アタシたちはただの見物よ。
そうでしたか。ではご挨拶代わりに私の魔術をご覧に入れましょう。
いいんですか!?ぜひお願いします……!
<身の丈を超える巨大な岩に、コージーは片手を当てた……>
<我は崩潰をもたらし鈍色の徒 我は劫火を宿せし炎色の薪
二色を束ね、螺旋とす>!
……ん?
これは……!
あんな大きな岩が……一瞬で粉々に……!
ふむ……今日は調子が良くないですね。
素敵……さすがコージー先生だわ!
すごい威力でしたね……
はい。<破砕>と<燃焼>……性質の異なる二つの術式を束ね、威力を最大限に高めています。
――なるほど、そんな方法もあるのか……
…………
今のが私の秘技……名づけて<多重術式>です。
制御には困難を極めますが、私のもとで修練を積めばきっと修得できることでしょう。
きみたちも一緒に、先生のもとで魔術を究めないか?
月々たった5万Gで、奇跡の技を教われるんだもの。安いものでしょ?
…………
……ねえ、さっきのインチキじゃないわよね?
えっ、キャトラ!?
おやおや。いったい何を根拠に……
木の上に隠れてる二人組はなんなのかしら?
……!?
アタシの耳はごまかせないわよ?
ふ、ふふ……言いがかりは関心しませんね……
そうだ!適当なこと言うんじゃねえ!
じゃ、このひとに教わって、魔術使えるようになったひとって誰かいるの?
そ、それは……
で、でも先生は長い目で見ないとって……
……やっぱインチキじゃないの?
――いいえ、キャトラさん。
シルバ?
最終話
コージーさん、皆さん。僕にも試させてもらえませんか?
試す?
<多重術式>……もしかしたら僕にも使えるかもしれません。
な……!?
はぁ、あなた馬鹿じゃないの!?
先生の奇跡が、そう簡単に使えてたまるか!
その通りです。根本から性質の違う魔術を同時に制御する<多重術式>……
単独で行使するには、困難を極めるでしょう。
そ、その通りですよ。だからこそ私の技は奇跡と……
ですが――アディ!
Aカァー!
<黒衣の六波蝕の四黄昏の一 我が僕を炉に、火を焚べる>!
Aカァ……!
<煙霞の七空隙の五黄昏の一 我が身のはむらを矩火となし
束ね織り上げ、螺旋とし 劫火、腐滅の塵とならん〉……!
<>
は、はぁ……!?
よし――できたっ!
Aカァー♪
さっすがシルバー!!
すごい威力だ……先生の魔術よりもはるかに……
ば、馬鹿な!?多重術式なんて、本当に使えるはずか……!
ええ。僕の実力では不可能です。
でも今、現に一人で……
いいえ。一段目の術式を、一度アディに託したんですよ。
その間に二段目の術式を用意し、束ねて発動させたんです。
やっぱり君は、最高の使い魔だよ。
おい!今の衝撃で、木の上から誰か落ちてきたぞ!
彼らが同時に別々の魔術を使い、一つの術式として成立させる――
それがコージーさんの<多重術式>の正体です。
ほーら、やっぱインチキじゃない!
ひ、ひぃ!?
シルバはね、心底怒ってるのよ!本物の魔術士としてね!
あ、いえ。他人と協力することも魔術士の立派な手段です。
僕があの着想を得られたのも、コージーさんのおかげですから!
そうよ!……え?あれ?
***
……結局、本当の魔術士には会えなかったですね。
残念だったわねえ。
そんなことありませんよ。
創意工夫や、技術の研鍛の大切さ。目的を達するために、様々な手段を生み出す発想力……
それそれ分野は違えど、全員が魔術士と呼ばれるに足る凄い人たちでした。
最後のはただの詐欺師でしょ。
すごく怒られてたし、ちゃんと反省してくれてるといいね。
Aカァ……
さっき学んだことも、今の僕では攻撃のための黒魔術としてしか行使できません。
それがアンタの得意技だもの。あせることないわ!
はい。でもいつかきっと、僕の夢のために役立ててみせます。
黒魔術で生命を救う――<黒魔術の白魔術士>になるために!