【白猫】陰陽サモンバトル story1
目次
story1 リーチェのしょうたい
――ってな感じでいいかな?
いきなりどうしたんですか?
状況の整理を煽り気味に言ってみたんだ。臨場感あった?
はい、ありました♪
さあ、こっちよ。カルガモファミリーのごとくついてきなさい。
どこ行くんだろ?街から離れてってるけど……
…………
……
ここって旅行雑誌に載ってた家だよ!ミルフィで一番のお金持ちだって書いてあった!
あの、リーチェさん、勝手に入っていいんですか?ここ、私有地ですよね?
入っていいに決まってるでしょ。ここ、あたしの家だもの。
そうなの!?
すごいです!
別にあたしがすごいわけじゃないわ。ママがお金持ちだってだけだもの!
だから褒めたって無駄よ!嬉しくもなんともないんだから!
でも、ごちそうするわ!
え?いいの!?
オリバ家の人間として褒められたら最高のおもてなしをするものよ。別にあたしは嬉しくもなんともないけど、しきたりだから!
でも、悪いですよ。助けていただいて、その上、ごちそうにまでなるなんて……
むむむむむむりん……もしかしてホテルの予約はすんでるの?
それが、観光シーズンだって知らなくてさー。取れてないんだよねー。空いてそうなホテルとか心当たりないかな?
だったら、うちに泊まりなさい。泊まるの!泊まりに泊まって、泊まりぬくといいわ!
そこまでしてもらうわけには……
もしかして、あたしのこと、嫌いなの?
見ず知らずの人のご厚意に甘えすぎるわけには……
あたしはリーチェのこと好きだよ!なんか、優しくて面白いし!
あたしはセツナのこと好きじゃないけど!
なんで!?
だって、まだよく知らないし、すぐに好きとか言う人は、ウルフ山の狼さんだってパパが言ってたもん!
でも、セツナは特別だから、しばらくうちで厄介になるといいわ!
リーチェもこう言ってるし、今日はお世話になろうよ。このままたと野宿だよ?
…………
……わかりました。あまり辞去するのも、かえって失礼になりますし……
トワもあたしのことが好きなのね!
でも、あたしは別に好きじゃないけど!
リーチェっておもしろいね。
そうですね。
story2 わいわいガールズ
お風呂、ありがとうございました。はあ……本当に素敵なお風呂でした……
すっごく!広かったよlなんかライオンの口からお湯が出てたし!
喜んでもらえてよかったわ。
……ふと疑問に思ったことがあるんだけど、聞いていい?
?
どうしてお湯が出てくる口ってライオンなんだろ?
別にライオンじゃなくてもいいと思うんだ。ライオンってほら、がおーって感じで攻撃力高そうでしょ?
だったら、ウサギとかクマの口から水が出てるほうがかわいい気がする。
たしかに!
でも、クマだって牙はありますよ。ウサギは口が小さいですし、ダイナミックさに欠けるかと。
じゃあ、牛とか馬?
…………
……ライオンでいいと思う。
そうですね。
先人は偉大ってことだね!
リーチェさん、いろいろとありがとうございます。
ご飯もちょーおいしかったよ!ホテルの料理みたいだったし。
困ってる人に手を差し伸べるのがオリバ家の家訓だもの。気にしなくていいわ。
それより、あなたたち、クジョウの島から来たんでしょ?どうして、あんな遠いところから?
実は、あたしたち、巫女やってるんだよね。
!
それでね、あたしたちの使う秘術が流出しちゃったらしいんだ。
式法っていう式神を操る術なんだけど、それがカードゲームみたいに使われてて……
サモンカードのことね。
そうそうそれそれ!一応、流出した秘術を闇に葬れ!とか言われてるんだけど、ここまで大々的に広まってるとどうしようもないでしょ?
それでどうしたものかと途方に暮れてたんだよねー。
リーチェさんはサモンカードについてなにか知りませんか?
知ってるわよ。だって、このカード作ったの、あたしのパパだもん。
それは本当ですか!?
本当よ。世界初のカードサモナーが、あたしのパパなの。
カードサモナーとは、カードゲームをする人のことですか?
ママ風に言えば夢追い人よ。近所のおばさんが言うにはヒモとも言うらしいわ!
ヒモって……
……セツナ、この件に関しては深掘りしないほうがいいです。
?
確認なのですか、リーチェさんのお父様はクジョウ出身の方なのですか?
いいえ、生まれも育ちもミルフィよ。よくママからお金を借りて旅をしてたからクジョウに行ったことはあるかもしれないけど。
そうですか……もし問題がなければ、お父様とお話させていただけませんか?
それは無理ね……パパ、もういないから……
……そうですか。申し訳ありません。無粋なことを言いました。
一発当てるって言って家を出たっきり、帰ってきてないんだ。
それってただの家出じゃん!
たたのじゃないわよ!パパが帰ってこなくなってからママが寝込んじゃって大変なんだから!
だからあたしもパパを探してるの。手がかりは、このサモンカードだけよ。
タロットカードを元にしてパパが作った不思議なカード。
あたしとパパだけの秘密だったのにいつの間にかカードゲームになってたの。
……トワ、あたしたちも、リーチェのパパを探さないといけないみたいだね。
そうですね。
手伝ってくれるの!?
はい。私たちもリーチェさんのお父様に話を聞く必要があります。
ありがとう!嬉しいわ♪ちょうどメンバーを探してたから。
メンバーってなに?
大サモンバトル大会に出るためのメンバーよ!
story3 レッツゴーガールズ
……大サモンバトル大会?
大サモンバトル大会は、最強のカードサモナーである<サモンマスター>を決めるための大会なの!
サモンマスターになれれば、大会コミッショナーのインフィニットインダストリアルの社長に会えるわ。
インフィニットインダストリアル?
サモンカードを作ってるオモチャ会社よ。
そうか!社長にお父さんのことを聞けばなにかわかるかもしれないね!
そういうことよ!それで大会には一人でも参加できるんだけど、三人組のチームも組めるの。
そのメンバーに私とセツナを選んだということですか?
そうよ!力を賃してくれると助かるわ!
うん、いいよ!ね、トワ!
そうですね。リーチェさんに協力します。
…………
……
朝ごはんもホテルの料理みたいだった……
おいしかったですね。ごちそうさまでした、リーチェさん。
喜んでもらえてよかったわ。シェフのフォルカーにも伝えておくわね。
料理ってお母さんが作るものじゃないの?
え?料理ってシェフが作るものでしょ?
お嬢様だ!あっぱーくらすだ!あたし、リーチェの家の子になりたい!
なにを言ってるんですか、セツナ。
いいわよ。
え?
ミルフィでは事故や病気で両親を失ってしまった子供を養子にして育てることが美徳とされてるわ。
セツナが望むなら、あたしの姉妹になることも可能よ!
あっぱーくらすじょーく?
本気だと思うので、早めに断っておいたほうがいいと思います。
リーチェっていくつなの?
十五歳。
じゃあ、あたしのほうが一個上だから、お姉ちゃんだね!
むむむ……年は関係ないわ!あたしのほうか姉であるべきよ!
じゃあ、リーチェお姉ちゃん。
ぽあい!
ぽあい?
な、なかなか悪くないわね。じゃあ、あたしはお姉ちゃんらしく、セッちゃんって呼ぶわ!
セッちゃん。
お姉ちゃん。
セッちゃん。
お姉ちゃん。
…………
それで、今日はどうするんですか?
カードショップに行くわよ。
サモンカードが売ってるとこ?
ええ、そうよ。大会に出るためにも、まずカードをゲットしないといけないでしょ?
よし、行こう!あたしもサモンカード欲しいし!
レッツゴーよ!
story4 ホーリー・ザ店長
ここがカードショップ!なんか、すごいね!どれ買えばいいの!?
本当に霊符がオモチャとして扱われてるんですね……
今やミルフィの観光産業になってるわ。他の島からも、サモンカードをプレイしにやってくるほどよ。
へ~、そうなんだ~。あれ?じゃあ、このカード、この島の外だと使えないの?
そういうことみたいよ。
不思議ですね。式法に使う霊符として、このカードは確かな力を有しているはずです……
もしかしたら、この島のグレイスルーンが影響を与えているのかもしれません。
グレイスルーン……<きらきらのルーン>のことかしら?
きらきらのルーン?
この島では争いが少ないの。それはきらきらのルーンが島の人たちを優しい気持ちにしてくれるからなの。
でもさ、その影響を受けてるなら変じゃないかな?サモンカードって遊んでるけど戦ってるよね?なんか矛盾しない?
そういえばそうね!なんかおかしいわ!
でも、みんな受け入れてるし、大丈夫なんじゃないかしら?
うーむ……なにか起きてるのかもしれない。あたしたちの知らないところでなにか、こう陰謀めいたものが!
「気づいちまったか。闇より昏き漆黒の波動に――
!!!
あれ?セイヤ!?どうして、こんなとこにいるの!?
お前の知るセイヤ・タナカは既に死んだ。今の俺は――
サモン・サ・ナイト・ダークネス。冥府より来たる血風の使者。またの名を暗黒デッキの使い手。
こちらの方は……セツナの知り合いですか?
茶熊学園で同じクラスなんだ。基本、いい人だから構えなくても大丈夫だよ。
闇より昏き漆黒の波動……あなた、さては月刊ミューの購読者ね!
ほう……この世の真実を唯一語る暗黒図書ミューを知る眷属か……よかろう。俺と話すことを許す。
あ、そういうのいいから、どうしてここにいるのか教えてよ。
え?いや、ほら、なんかカードで魔獣を召喚して使役できるって月刊ミューに書いてあってさ。
召喚術とかマジかっけーだろ?
――だから、来た。
そっかー……もう情報、出回っちゃってるんたね。
雑誌にまで載ってるのならもう隠しようがありませんね……
よくわかんねーけど、お前らもサモンカードするんだろ?だったら、勝負しようぜ。
俺の暗黒デッキで闇の底に誘おう。
勝負したいんだけど、まだカード、買ってないんだ。
だったら俺がレアカードを引き当てる裏技を教えてやる。
そんな裏技あるの!?
カードパックの袋がツルツルしてるやつにレアカードが入ってる可能性が高い。さらに少し膨らんだり、徴妙に重い。これを探すんだ。
「でも、それマナー違反だから、やっちゃダメだよ。
あ、店長さん。こんにちは。
やあ、こんにちは、リーチェちゃん。それと、セイヤくん、君の言った裏技はサーチ行為だね。少しマナー違反になるかな。
そうなんすか!?知らなかった……すんませんした……マジヘこむわ……
それが良くないってわかったならそれでいいよ。それで、君たちもカードを買いに来たのかな?
はい、よろしくぉ願いします!
初心者用の対戦スペースもあるのでもしルールが知りたかったら声をかけてください。
じゃあ、俺も戦ってくるから、またな!
よし!とにかくカードを買おう!習うより慣れろだよ!
そうですね。
story5 店長とーく
おい、ウェルナー、親分からお願いがある!カードパック買ってくれ!
……ダメだ。もう何個買ったと思ってるんだ。いい加減にしろ。
やだ!買ってくれなきゃ、帰らない!
……だいたい、今回の任務に必要なものだろ!お前のことも考えてるんだ、あたしは!
……わかった。もう一パックだけだ。
やったー!レアが出たら、あたしのデッキに入れるかんなー!
こういうところに来ると、マスターってちびっこなのだなと痛感しますね。
……はしゃぎすぎだとお前からも言ってくれ。
一応、任務は任務ですので釘は刺しておきます。それにしても、お父さんは大変ですね。
…………
***
フッフッフ!とうとう狙いのカードを引けたよ!
かかってくるといいわ!
あたしつ唯ーのレアカード!おしょうがつエンペラー、サモン!
おしょうがつエンペラーは、サモンと同時にスキル<寝正月>を発動するカードだ。
(解説!?)
スキル発動!リーチェのサモンスターたちを強引に眠らせる。そして、デッキにダイレクトアタック!
甘いわね、セツナ!ミルフィ名物ジャンボいちごミルクもなかより甘々だわ!
それはマジックカード!?
マジックカードってなんなんですか?
サモンカードには主に二種類のカードがあるんだ。サモンスターを召喚するカード。そして様々な魔法を付与するマジックカードだ。
それら四十枚をーデッキとする。このカードがプレイヤーのライフポイント扱いになるんだよ。
攻撃を受けることでデッキのカードが減っていき、最終的にデッキのカードがゼロになったほうが負けだ。
そして、マジックカードのなかにはプレイヤーが任意で使えるものとデッキを削られた時、自動的に発動するものかある。今の発動は後者だね。
マジックカード、トリガー発動!
ちなみにデッキでカードが削られた際に発動することをトリガーというんだ。
天地に轟け!古竜の咆嗜よ!トリガー発動!メイルシュトローム!
敵味方問わず、場にある全てのサモンスターを倒す究極のマジックカードよ。これであなたのレアサモンスターは消えた。
ぐぬぬぬぬ……
さあ、滅びの時間の始まりよ。
***
ぐっ……負けた……がくっ……
でも、これ、面白いね!ハマりそう!
楽しむのはいいのですが、節度は守ってくださいね。セツナは好きなものとなると視野が狭くなりますし。
あははは……大丈夫だよ、それに、ほら、大会で勝ち進むには実力も必要でしょ?
それはそうなのですか……
君たちも大会に出るのかい?それならエントリーは早めにしたほうがいいよ。かなりの出場者になりそうだから。
ありがとうございます!リーチェ、エントリーしてこよ!
story6 新米カードサマナー・トワ
あの……
?
店長さんは本当に店長さんなのでしょうか?
え?
まちがっていたら申し訳ありません。でも、どうにも一般の方とは違う空気を感じまして……
ああ、そういうことか。一応、現役の冒険家もしてます。その前は、会社の社長なんかもしてました。つぶれましたが……
どうしてこのお店を?
昔の知り合いに事業を手伝ってくれと頼まれまして。それが、これ、サモンカードです。なかなか面白いシステムになっていまして、僕もハマってしまったんですよ。
それで様々なフィードバックを得るためには、こういう実務の場で見るのが一番でしょ?
ぐわわー、負けたー!めためた負けたー!!
勝ったぜ!わっしょーい!これが俺のお祭りデッキだあああ!
我が冥闇に狂い咲け。ドロー……ゲッ!必要なのは、このカードじゃない!
いいですよね、こうやって多くの人を笑顔にする遊びって。なんか、見てるだけで応援したくなっちゃうんですよ。
その、私は、このサモンカードを作った人を探しに来ました。店長さんがお作りになられたのですか?
正確には手伝いですね。僕が合流した時には既にカードを使った召喚術の土台はできていました。
僕が関わったことはグレイスルーンを使ったカードの制御システムです。
この魔術はその気になれば人を傷つけることができます。ですから、きらきらのルーンを利用し、攻撃できないよう制御システムを構築しました。
えっと……召喚術の土台を作った方は?
インフィニットインダストリアルの代表取締役の方だそうです。
その方とお知り合いなんですか?
いいえ。彼は謎の多い人物なんですよ。あまり表に出ることもなく、僕も会ったことはありません。
仮に人前に出ても仮面をつけてるそうです。
仮面ですか……
ですが、今度の大会には彼も参加するそうです。はじめて公の場に出てくるので会社的にもお祭り騒ぎみたいですよ。
そうなのですね……
トワさんもサモンカード、やってみてください。面白いですから。
……複雑なゲームは苦手なんです。
だったら僕が教えますよ。シェリル!ちょっといいかな!?
なになに?社長さん、どうしたの!?
彼女はサモンカードの初心者なんだ。僕が彼女のフォローをするから対戦相手になってくれないかな?
おっけー!いいよ!しこたまいいよ!レディー、サモン!