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【白猫】Wings of hearts Story 後編

最終更新日時 :
2017/00/00


目次



Story5 男気あふるる

Story6 遭遇

Story7 守護天使と悪魔殺し

Story8 尻拭い

Story9 揺れる心

Story10 2対2の攻防

Story11 守るということ

Story12 心の翼

Story13 めぐる想い

最終話 それぞれの生き方


主な登場人物





一人の少年をめぐって――
天使と悪魔は対峙する――
2017/00/00





story5 男気あふるる



 ――時は少し前にさかのぼる。



「パトパトパトパトパトロ~ル♪朝っぱらからパトロ~ル~♪

アイリス、いじょーがあったらすぐに知らせるのよ!」

「うん。……いまのところは大丈夫だね、主人公。」


 主人公たちは、ギルドの依頼で街の警備を請け負っていた。



「……このところ、警備の依頼がぐんと増えたよね。」

「悪いやつが のさばってるのよ!ゆるせないわ、ほんまにもー!」


「すいませーん!通りまぁぁぁぁす!」


「なにかが猛スピードではしってったわ!

おもしろそーだからおいかけるわよ!ぎにゃー!!」


「あ!ま、まって!主人公、私たちも!」


 ***


「いそげいそげいそげいそげ~!

……だいぶ遅れてますね!もうすでに、悪魔は人間に接触しているはず……!

いまならまだ間に合います!……間に合わせらーい!!」


「はっ……はああ……ひいい……ふうう……」


「ばあちゃーん!だいじょーぶぅぅぅ!?

苦しいんですか!?大丈夫、わたしがすぐに治したりますよ!」

「背中がカユイ。お嬢ちゃん、すまんがカイてくれんかのう。」

「……あら。そうなのですね……――では、カキカキします!」

「おほ=う……ごくらくごくらく…………オヤ、天使が見える。気持ちよすぎてお迎えがきちゃったかい?」

「いーえおばあさん!あなたはまだまだ長生きしますよ!わたしが保証したります!」

「ありがたやありがたや……」

「失礼しまぁぁぁす!」


『おまち!!』

「待ちます!!」


「……天使……?」

「はい、いかにも!わたしはルカ・フォルテス。古都〈ニカエア〉からやって参りました――

人々を守り、悪を退け、正しき心へと導く守護天使です!」

『きもちのいい自己しょーかいね!アタシはキャトラよ。』

「アイリスです。こっちは主人公。」

「ああ!!あなた方が、飛行島の……!?」

「私たちをご存知なんですか?」

「はい!ガレアさまから色々話は聞いていました!うわ~、お会いできて光栄です!」

『あ、ガレアってかみさまなんだっけ?』

「急いでる様子ですが、なにかあったんですか?」

「そうそうそう、そうなんです!わたしはいま急いでいるんです!」

『じんじょーじゃないわね!ついてってみようかしら!』

「警備の仕事もひと段落したし……ルカさん、よければお力になりますよ。」

「本当ですか!?うわ~、ガレアさまの言うとおり、親切な方たちです~!」

『とりあえず、じじょーを説明してくれるかしら?』

「わかりました!では、走りながら説明しましょう!

あ!魔物の心配はいりませんよ!みなさん全員――

わたしが守るったるよーい!」

『守るったるよーい!?』


「参りましょぉぉう!」


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story6 遭遇



「……そんな訳で、わたしはその悪魔を止めに古都を出立してきたんです!」

「はあはあ……悪魔といっても、最近は色々な人がいますよね!」

「はい!不の感情を吸収して生きる、新世代の悪魔のことですね!」

「はあ、ふう……ただ、それ以外の悪魔は、人間にその存在を忘れられないようにしなければいけない、と!」

「……ですから、彼らは様々な手段で人間に接触しているのですが!」

『はあはあはあ……いま追ってるやつが、かなりヤバイ、と!」

「ええ、それはもう!……あの、少し休みますか!?」

『そーね!話しにくいったりゃありゃしないわ!はあはあ!』



「汗冷えしてはいけません。焚き火をしましょう!」

『でも、あたりいちめん雪がつもってるわよ。』


「えっさほいさえっさほいさ!!えっさほいさー!!」

 ルカは持っている杖で雪かきを始めた!……猛烈な勢いである!

『荒々しいわね!!』


 ほどよい焚き火スペースを確保するルカ。すると今度は――


「はいっ!はいっ!はーーーーい!!」

 まるで別の生き物のように、するすると木に登っていく!

「ごめんなさいね~。ちょっと、剪定させてくださいね~。」

 ルカは何本かの枝を切り落とす。――手刀である。


『荒々しいわね!!ていうか飛べば!?』


 ***


「ルカさん、ありがとうございます。あったかいです♪」


『……アンタってさ、天使のわりにずいぶんとサッパリしてるわね、色々と。』

「あ、それよく言われるんですよね~。」

『なんか、男気!ってかんじね。』

「……古都では〈男気天使〉で通っております……」

「私はとっても素敵だと思いますよ、ルカさん。凛としてるというか……」

「そ、そ~ですかね~。へへっ!」


「……あ、そういえばわたし、握り飯を作ってきたんです!食べますか?握り飯。」

『握り飯て……』


「助けてええええええ!」

「死にたくねえよお~!」


「な……なにごとです!?」


「ははははは!まてまて~!!」

「おいガキ、そろそろいいだろ。この辺でさっさと――

 ……!」


「あ、あなたは……〈悪魔殺し〉!!」

『こいつが……!』


「……?おねーさんたち、だあれ?村の人じゃないよね。」

「お子様さん!!……えーと、お名前は!?」

「ぼくはロニー。ねえおねーさん、きれーな羽だね。おねーさんも悪魔なの?」

「わたしは、あなたを守りにきた天使です!

さあ、もう安心ですよ!ロニー君、こっちへおいで!」

「そうはいくかよ。」


「……ずいぶんと遅かったじゃねえか。……クソ天使様よお。」


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story7 守護天使と悪魔殺し



「〈悪魔殺し〉。その子を解放しなさい。」

「解放?レイン、このおねーさんは なにをいってるの?」

「オメーは黙ってろ。……テメー、守護天使だな?ハハ、こいつぁいい。」

「渡しなさいと言っています。そして大人しく、国へ帰りなさい。」

「ずいぶんと偉そうじゃねーか?ああ!?」


「――!」

「……んだテメーは。」

「……。」

「……おー、いいオーラ出しやがる。テメーも俺と遊んでくれんのか?

ククク……ブチのめしてやるよッ!


 ――来る!


「この方たちは関係ありません。攻撃するならわたしを狙いなさい。

 ……さあ、ロニー君。こっちへ来るのです。」

「させるか!」


「お、おねーさん!ぼくは行かないよ!

レインといっしょに、せかいをせーふくするんだ!ね、レイン!」

「……悪魔!言葉たくみに、この子の精神を支配しましたね!?」

「好き勝手いってんじゃねえっ!」



「いい機会だ。守護天使と悪魔殺し……

どっちの力が上か、試してみようじゃねえか!!」


「みなさん!ここはわたしに任せてください!」

「で、でも……」アイリス

「大丈夫。わたしは守護天使――

命に代えても、お前ら守ったるかんなああああああ!!」


「レ、レイン――」

「どっか行け、クソガキ。チラチラ視界に入られると気が散ってかなわねえ。」

「……うん……」



『ど、どーする!?』

「……私たちも、まずは下がりましょう。」


 ***


 雪が舞う白銀の空で、

 天使と悪魔は織烈な戦いを繰り広げていた。


「オラァッ!!」

「せぇーいっ!」


「ラチがあかねえ……!」

 レインは膨大な〈気〉を全身に溜め――


「ラァッ!!」

 渾身の一撃を叩き込む!……しかし!


「はっ!!」

 神々しい光を放つ純白の翼がルカを包み込むと、ブ厚い防御壁を形成した!

 破れぬ壁に、巨大な斧はギリギリと悲鳴を上げる――


「あーーー!ウザてえんだよ!!」

「あなたの刃は、わたしには届かない……!あきらめる事ですね!」

「…………」


 レインはその翼をはためかせ、

 何事か測るようにゆっくりと地上に舞い降りた。


「どうやったらテメーをブチのめせるんだろうなぁ。」


「はあ、はあ……」

「!!ロニー君、来ちゃだめ!!」


「もう……もうやめてよ!!」


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story8 尻拭い



「おい、クソガキ!俺の視界に入るなっつったろ!」

「レイン、もうやめようよ!そんな人はほっといて、早くさっきのやつらを――」

「ロニー君!目を覚まして!あなたはこの悪魔に――」

「おねーさんも、もうレインと戦わないで!

……おねがい!おねがいだよ……

レインは……ぼくの たったひとりのともだちなんだ!!」

「えっ……」

「…………何が友達だクソガキ……」

「……!」ルカ

「ほら、いこうよレイン!ぼくに力をかしてくれるんでしょ!?」

「……ねえ、あなた達は……」


『やーっと追いついた!ロニーったら足がはやいのね!』

「ルカさん!大丈夫ですか!?」



「だいじょうぶじゃないんじゃな~い?

だってぼくが来たんだもの。」


「エ……エルゴラム様!」

「レインくぅぅぅぅぅ~~ん。甘いよぉぉぉ。甘すぎだよぉぉぉ。

ずっと〈覗いて〉たけどさぁ~。な~にをチンタラやってんだよぉ。仕事できなさすぎぃぃぃ~。」


「お前は…………エルゴラム……!」

「あ、守護天使ちゃんだ。ぼくの名前知ってるんだね~。ありがたや~。」


『な……なんなの!?こいつ!!』

「〈悪魔殺し〉と同じ……〈サタニアス〉に住む悪魔です。」


「こんな無能と同じにしないでくれる?いちおー、上司だし。

中間管理職って辛いよねー。部下の尻拭いをしなきゃなんないんだから。

あ、愛の女神ちゃんは元気?昔はよく一緒にお茶会とかしたなー。してないけど。」

「ふざけないで!」


「エルゴラム様!俺はまだ――」

「あーいいっていいって。言い訳なんか聞きたくない。

あのさあ、120点の仕事に時間をかけるよりさあ、70点の仕事をパパッっと持ってきてほしいのね、ぼくは。

今のちみ、10点。」


「な、なんなの……!?レイン、この人はだれ……?」

「ぼくはね、レイン君の味方だよ。つまり、きみの味方。

怖がらなくて大丈夫だよ~。だからこっちにおいで~。」

「う、うん……わかった……」


「!! ロニー君、行ってはダメ!!」


「ねね、ロニー君。きみの願い……ぼくがすぐにでも叶えてあげる。」

「えっ……」

「ぼくってば、彼なんかよりずっと役に立つんだ。せかいせーふくなんてあっという間だよ?」

「で、でもぼくはレインと――」

「まあまあまあまあまあまあまあ。そんな事いわずにさ~。」

「……レインといっしょじゃなきゃ、やだ……」



「――おい。こいつら見張っとけや。後は俺がやっからよ。」

「……わかりました。」

(みなさ~ん。……変なマネしたら、ガキンチョの命、いただいちゃうからねん♪)


「そういう訳だ。大人しくしとけ。」

『ひ、ひきょーな……!』


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story9 揺れる心



「さて……ロニー君。おじさんが、本当の事を教えてあげよう。」

「ほんとうのこと……?」

「この男……れいん君はね、きみの事をこれっぽちも考えていないんだよ?

だって、せかいせーふくなんて する気はないんだもの。」


 「…………」


「コイツはねえ……力が弱すぎるんだよ。――人間を支配する力がね。

人の気持ちね、理解する事ができないんだよ~。きみの寂しさ……憎しみ。

そんなもの知ったこっちゃないって感じ。身に覚えがあるだろ?」

「で、でも……」


「はっきり言おうか。……レイン君は、きみと友達になるフリをして、きみの魂を食べようとしているんだよ。

ロニーくぅぅん。きみは騙されているんだよぉぉ~?」


 「エルゴラム!!」

 「黙れ。」


「う、うそだよね……レイン。」

「うそじゃないぉ~。……ねえ、コイツといたら、きみはいつまでもひとりぼっちだよ?

――お父さんとお母さんは、戻ってはこないよ?」

「!!」


 (だめ、このままじゃ……!)

 「……妙なマネはするなよ?」

 (……レイン!……あなたは、本当は……!)


「……やだ……そんなの、やだよ……」

「やだよねえ?お父さんとお母さんに帰ってきてほしいよねえ?

……おじさんの力を使いなよ。そうすれば、二人はきっとまたきみを愛してくれるよ?」

「……どうすればいいの……?」

「きみの魂をちょこっとおじさんに預けてくれればいいんだ。

だいじょうぶだいじょうぶ、ホント、ちろっと預かるだけだから。

ああ、かわいそうなロニー君。……大丈夫!おじさんがウマイ事やってあげるからね……」


 エルゴラムはロニーの頭をゆっくりとなでた。


「さあ選ぶんだ!!レインとおじさん、どっちがいい!?」

「………………おじさん……」


 「…………!」

 (まただ……!何かが、俺を……!)


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story10 2対2の攻防




「いまっ!!」

 一瞬のスキをつき、ルカがロニーとエルゴラムの間に割って入る!


「……レインくぅぅぅぅん。なにしてんのぉぉぉ?」

「……すいません。油断しました。」

「してんじゃねぇよボケェッ!!」


「おりゃー!!」


「ロニー君!こっちに!」

『まきこまれるわよ!ほら早く!』


「…………」



「おい。先にこのクソ天使を始末すんぞ。」

「……了解。」

 言い終わるや否や、悪魔二人の素早い連激がルカを襲う!


「やってやんよぉぉぉ!守護天使の意地ってもんを、見せてやらああああい!!」

 ルカの気合に呼応すかのように、防御壁がその厚さを増す!

 ――しかし!


「おじさん、こう見えても結構強いのよね。」

 エルゴラムの右手から赤黒い光線が放たれ、防御壁をみるみる侵食してゆく――


「忌々しい守護天使が……!そのウゼえ壁、ブチ壊してやるよ!」

「あっ……!!」

 赤黒くなった壁に、ピキピキとヒビが入ってゆく――!


 ――ルカが危ない!


「ハッ!!テメーもやっと遊ぶ気になったか!」


「レイン……!レイン!!聞いて!!

あなたには正しい心……〈善〉の心が宿っているの!!

気づいて!!自分の気持ちに……ロニー君を想う心に!」

「訳わかんねえ事を言ってんじゃねえ!!

俺は悪魔だ!サタニアスに刃向かうクズどもをブチのめす、〈悪魔殺し〉だ!

〈善〉の心?笑わせんじゃねえよ!」


「やるじゃねーか!」



「うーん。なかなか強いね~、ちみたちは。ちょっとナメてたわ。

……じゃあ、こういうのはどうかな?」


「〈サタニアス〉の下っ端どもさ。ぼく、どっちかっていうとこーゆうのが得意でね。」


「主人公!ルカさん!」

「わたしたちは大丈夫!お二人は、ロニー君をお願いします!」

『まかしといて!』


「…………やるんだ……ぼくは……あのおじさんと……せかいをせーふくして……」

『こらロニー!目を覚ますのよ!』


「そうすれば……きっと……!」


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story11 守るということ



「喰らえ赤髪ィ!!」


 ――しまった!

「守ったらああああい!!」


「だめだよ天使ちゃん。こっちに気を取られてちゃ――

かよわい女子供があぶないよ?」


 エルゴラムが作り出した巨大な魔弾が、アイリス、キャトラ、そしてロニーを襲う!


「だめ、間に合わ――」

「みんなにはキズひとつ負わせんよ!!」


「はい、天使チャンのスキ、いらっしゃ~い♪」

「きゃあああっ!!」


「ははははっ!お返しだ~!」

「守るっ!!」

「もう回復したんかい。さすがは守護天使、治癒魔法もお得意な訳ね。」


「…………なぜだ。」

「…………?」

「なぜ、そこまでして守ろうとする?

それがお前の使命だからか?役割だからか?」

「それもあります。そう、わたしは守護天使。人々を守り、正しく導くのが役目。

――でも!!やっぱり!!いっちゃんは!!」

「……?」

「よく聞けレイン!誰かを守るっつーことはなあ!

生きとし生けるもの全てのしあわせなんじゃーーーい!」

 ――

「あ~残念。イケると思ったのに。」


「…………(俺には……わからねえ……)」


「ダメーーーーッ!!」

「――!?」


「おじさん!!」

「ロニー君っ!?下がって!!」

「ぼくもうがまんできないよ!!早くぼくの魂をつかって!

早く……ぼくのお父さんとお母さんをつれ戻して!!」

(わからねえ。悪魔の俺には……)


「うふふふふふ。よくきたロニー君。きみの言うとおりにしよう。」

 エルゴラムはロニーの頭に手を乗せる。

「汝、契約によりてその魂を以下略。」

 エルゴラムの手がドロリと溶け、ロニーの中へと侵入してゆく――!


 (命を奪ってきただけの俺には……!)


「…………ああああああ…………ああああああああっっ!!」

「…………!!」


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story12 心の翼



「おなかが、ムズムズする……!

にくい、にくい、にくい……にくいよおおおおおおっ!!」

「ロニー君!!」


「ははははは!いいかレインっ!

ガキがいう事きかねえ時はこうするんだよっ!よく覚えとけ!」

「…………」


「主人公……!」

「――。」


「ちみたちの出てくる幕じゃないんだよ?ね、ロニーくん。」

「おじさあん……!こわそう!みんな!ぜんぶ!」

「わはは、いいぞ……!力が沸いてくる!これだからやめられんのだ、人間の支配はあ!

ガキの憎しみを、お前らにくれてやる!!――おらよっ!!」


「いけない!!みなさん、わたしの後ろに!!

はああっ!!」



「…………」


 ぼくといっしょに、いてくれるの?


 「だめ……!もたない……!」


 クソガキじゃないよ!ぼくの名前はロニー!


 『ロニー!やめて!ロニー!ロニー!!』


 ……手、にぎってもいい?


 「防御壁が……壊れる……!」



 ぼくの……ともだち……


「ッ!!」



「がはあっ!!」


「――!?」

「レ、レイン……」


「…………お前、何してんの?」

「……わからねえ。さっきから暴れてんだ。俺ん中で。ワケわかんねーモンが。

今まで一度も感じた事ねえ何かが俺を突き動かしてきやがんだ……

あーー、何なんだよこれ!!ウザってえなああああ!!」


「お~~~い。レインくぅぅぅぅぅぅぅぅん。ちみは何を言って――」

「だからわかんねんだよっ!あぁーー!ムカつくぜ!!クソがぁ……クソがッ!!」


 自分がいま何をすべきか。

 撃滅の刃を向けるべきはだれなのか。


 その逡巡に――

 〈悪魔殺し〉の本能が応えた。


 押し寄せる激情の狭間で……

 ――〈心〉は咆哮する!


「――ロニーを返せェッ!!」


「ぐぬうううううう……!

てめ、裏切ったなあああ!?ガキに同情でもしたか!?
甘ちゃんがよぉぉぉ!!ぶっっっ殺してやる!!

……ねぇ、ロニーくぅぅぅぅん!!」


「うわあああああ!!

つらいつらいつらいつらい!!やだやだやだやだ!!

だからこわれて!!こわれてよおおおおおお!!」


「消し飛べレイィィィィィン!!」



「……テメー、何してる!?」

「言ったでしょう!?わたしは守護を司る天使……

悪魔だろうがなんだろうが、全部まとめてムンズと守ったるんじゃーーーい!!」


「バカな……!なぜ受けきれる!?……なんだ、その力は!?」

「燃えてきたのさっ!レイン、お前はやっぱり……漢だなーーーーーーっ!!」

 ――

「いくら攻撃したって無駄です!」

「…………」



「やっぱ、ぼくちゃんには戦闘には向いてないなあ。ね、ろにーくん。」

「きらい……きらい……きらいだよ……」

「やっぱりアレだね、自分の得意な分野で頑張るしかないね。

今の力なら、アイツを呼べるでしょ。」


「…………!あの暴獣を召喚する気か……!」

「……レイン!いまこそ、力を合わせるのです!

天使だ悪魔だいってる場合じゃねーかんな!!」

「クソ……しかたねえ!」



「いくぜ……!――ロニーを取り戻す!」

「がってんしょうち!」


『ア、アタシもいるんだからね!……頼んだわよ、主人公』

「「……。」」


 エルゴラムの目の前で怪しく光る、巨大な魔方陣。そこからゆっくりと――

 ――暴虐を極めし、悪魔の獣が現われる!



 BOSS


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story13 めぐる想い



「……マジか。マジでか。レインくぅん……」


「残るはテメーだ。……エルゴラム。」

「こっちにはガキの魂っつう人質がいるんだが?忘れてたみたいだけどー。」


「……もういいでしょう!?ロニー君を解放しなさい!!」

「いいよー。」

「――!?」

「なんかもう疲れちゃったし。メンドくさいし。色々。

まったくさあ?レイン君。ちみは悪魔失格だね。クビだよ、クビ。

〈サタニアス〉を、追放処分としまーす。……二度とそのツラ見せんな。」

「言われなくても。」


「ああ……!!これで一安心です。」

「じゃそういう訳で、お疲れさまでした~!」


「待ってください!」


「……?何だ、どうした――」


「ウ、ウゥ……

うわああああああ!」


「な……!ど、どうして!?」


「ムズムズするよお……!ああ……さびしいよ……!

いやだ……いやだ、いやだ!まっくらにひとりぼっちはいやだ!ぼくをひとりにしないで!」


「ロニー君……!」

『もしかして……アイツ、アタシたちをだまして――』


「いや……魂の呪縛は解けている……

……エルゴラム……!こいつの魂を、いじくりやがったんだ……!

負の感情だけが、永遠に増え続けるように……!」

「そんな……!」


「きらい、きらい、きらい!!だいっきらいだ!!みんなみんな、だいっきらいだ!!」

「……ガキ……」

「レイン、力をかしてよ!!ふたりで、なにもかもぶっこわそうよ!!」


「…………わたしが何とかします。」

「……どうやって?」

「守護天使の羽は、心が通じあった者に〈奇跡〉を与えることができるのです。」


 ルカはロニーの前にひざまずき彼の頬を両手で優しく包み込んだ。

「なに!?なにをする気なの!?やめて……やめて!!」

「お願いロニー君……!心を開いて……!」

 ルカの羽が、少しずつ輝きはじめる。しかし……

「やめてやめてやめてえ!!そんなのいらないよお!!」

「わたしはあなたを助けたいの……!お願いだから……!」

「やめて!!

レイン!!さあ、こわしにいこう!こわしに……」


「……心を開いてくれなければ、奇跡は起こせない……

このままだと、ロニー君の心が負の感情に耐え切れず、壊れてしまう……!」

『そ、そんな……!』

「……わたしは…………守れないの……?」


「…………」

「…………!」


 これまで数多の同族の命を奪ってきた稀代の悪魔は――

 壊れゆく少年を、静かに抱きしめた。


「クソ天使。俺の命を使え。」

「レイン……」

「エルゴラムの言う通りだ。俺は悪魔失格……

……クソ!ムナクソわりーぜ。……なあ、ロニー……」

「……!レ……イン……」


「ルカ……頼む……!」

「…………!」

 憎しみに歪んでいたロニーの顔が少しずつ和らいでいく……!

「いけるっ!!」

 ルカはその純白の翼を広げ、二人を包み込んだ。


「母なる大地の子よ。守護天使の名において、その御心に聖なる加護を与えん――!」



「……おい、ガキ……」

「う…………こころが、かるい……ぼく、たすかったの……?」

「……レインのおかげですよ。」


『よ、よかったあ……』


「レイン――」

「クソガキィ!!」


「レ、レインさん――」


「悪魔に魂なんか売ってんじゃねえよこのボケがぁっ!

甘ったれてんじゃねぇ!誰かがテメーを助けてくれるほど、この世の中は優しくできてねーんだよ!

テメの人生が気に入らねえなら、テメーで変えるしかねえんだ!テメーが強くならなきゃいけねえんだっ!!

俺が……そうしたように!!」

「…………!」

「……強くなれ。そうすりゃ、オメーは世界だって征服できる。怖いものなんて何もねえ。

いいか、もう二度とこんなマネはすんな。

俺はお前の……ダチなんだろうが。」


「…………」ルカ


「……ごめんなさい……

ごめんなさい……!ごめんなさい!!ごめんなさあああい!!」


 悪魔は――

 自分の胸の中で泣き崩れる少年の頭に、そっと手を置いた――


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最終話 それぞれの生き方



「話とはなんだ?ロニー。俺はこれから仕事があるんだ。」

「……私、眠いんだけど……ロニー、もうちょっと寝かしてくんない?」


「お父さん。お母さん。……なかなおりして?」

「「!!」」

「ぼくは、もうこれ以上、お父さんとお母さんがケンカしてるところを見たくない。

おねがい。ぼく、ちゃんと良い子でいるから。三人で、またなかよくくらそ?……ね?」


「……ロニー…………私だって、そうしたいわよ。でも、この人がちゃんとしてくれないと……」

「お前また、俺のせいにして……!ロニーをひとりにしたのは、お前の責任だろ!」

「はああ!?なによそれ!?毎日遅くまで遊びほうけるようになったのはそっちでしょ!?」


「や……やめて!!ケンカはもうたくさんだ!!おねがいだから――」

「お前は黙ってろ!あのなあ、俺は――」



「おやめなさい……!」

「!!な……なんだお前らは!?」

「守護天使です!」

「悪魔。」

「天使と……悪魔?」


「あなた方は……一体なにを見ていたのですか?なにを聞いていたのですか?

いい加減にせんかぁっ!!

「「!!」」


「なぜ、ロニー君と向き合おうとしないのです!?」

「な……なによ!どこの誰だか知らないけど、知ったような口を利かないで!」

「……こいつはな……テメーらに振り向いてもらいたい一心で、悪魔に魂を捧げようとまでしたんだ。」

「……何だって……?」


「…………」


「必要なら〈お視せ〉しましょうか?ロニー君がどんな想いでいたか……どんなに二人を愛しているか!!」

「……それとも……――悪魔がいかに恐ろしいかを、たっぷりと思い知らせてやろうか?」

「ヒッ……!」


「レイン、脅すのはなし!しかしよく言った!

いいかよく聞けっ!お前らはこの子の親だ!まごうことなき親なんだよっ!!

だったらおのれのタマをガツンと賭けて――死ぬ気で子供を守ったらんかーーーーい!」



「……お父さん……!お母さん……!」

「「…………」」



 ***



『あ……出てきたわ!』

「……どうでした?」


「……もう、大丈夫でしょう。少し時間はかかるかもしれませんが……

家族は、きっとまた一つになる。……ね、ロニー君。」

「うん。……お父さんとお母さん、泣いてた。ぼくのきもちに、気づいてくれたんだと思う。

それに……またケンカしたら、ルカとレインみたいにぼくが説教してやるんだ。」

「ふふ。その意気よ。」


「レイン。ぼく、もう大丈夫だから。強く、なるから……だから……安心して……」

「……まだまだ甘ったれじゃねえか……」

「……また、会える?会いにきてくれる?」

「さあ、どうだかな。気が向いたら来てやるよ。」

「へへ、すなおじゃないなあ、レイン。……顔にさびしいってかいてあるよ?」

「な……!」

「ねー、素直じゃないよねー。」

「うるせえ!!……クソ、俺はもう行くぞ!」

「ありがとうね、レイン……ほんとうにありがとう……!

ずっとずっと、ぼくらはともだちだからねー!」


「……ふん。またな、ロニー……」


 ***


「ねえ、レイン。……わたし達、案外いい相棒になれそうじゃない?」

「……オメーは何を言ってるんだ……?」

「んもう、ホントに素直じゃないのねー。心を通じ合った仲でしょー?」

「……あのなあ、天子と組む悪魔がどこにいんだよ。

そう……俺は悪魔だ。人間同士の争いを生み、争いに加担する……

〈サタニアス〉を追放されても、そこは変わっちゃいねえ。」

「いいえ、あなたは変わったわ。まだ気づいていないみたいだけど……

良き心は、確実に芽吹いた。……あなたはいい人よ、レイン。

だから、わたしが見守っててあげる。……導いてあげる。」

「大きなお世話だ、クソ天使。」

「もう、レインのいけずぅー!わたし、しっかりと覚えてるんだからね!

あなたがわたしの名前を呼んだこと!!」

「気のせいだ。忘れろ。」

「忘れてあげないのよさー!!」


『…………アンタのキャラ、いまだによくつかめないわ……!』


「……お前ら。その、なんだ。メーワクかけたな。」

『いいってことよ。』

「レインさん、行くところがないのなら、私たちの飛行島に来ませんか?」

『アンタみたいな跳ねっかえりもたくさんいるから、安心していいわよ~。』

「……考えておく。」


「もちろん、わたしも一緒にね♪」

「……なあ、なんでこいつは、俺にこんなに懐いてるんだ……?」


「うふふ。……どうしてでしょう♪」



「……………………

(変わった、か……

……わからねえ……あの時は、ただ無我夢中で……)」


「レイン!お腹へったでしょ!握り飯食うか!握り飯!」


(……見極めてやる……

人間という種族を……そして、俺の――)


「ほら食え握り飯!守護天使の握り飯!うまいぞー!!」


「うるせえなあもう!」


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その他



相関図



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