【白猫】悪魔の始動 Story
目次
序章
story1 勢力闘争
「…………っ!!シ、シスター……!」
「?どうしたの、ルーシー。」
「みんな……みんなが、あらそっているのだ……!」
「何のことよ。……もしかして、また負の感情を吸収したの……?」
「……声が聞こえるのだ、シスター。ルーシーが逃げ出した、ルーシーとシスターのふるさとから……」
「……ああ、それね……ルーシー、そんなもん聞かなくていいわよ。あたし、わざと聞こえないようにしてるの。」
「お願いなのだ、シスター……!たいへんなことが、起きているのだ……!」
「……わかったわよ。」
***
――悪魔の国。<サタニアス>地方の境目。
……悪魔の亡骸が、山のように積み上げられている。
「いいか?こいつらは反<サタニアス>の間者どもだ。
我らが誇り高き思想を覆そうとする者……死に値する者達だ。
……最近は、本当に愚かな連中が増えた……――同志よ、なぜ理解しない?」
「同志?笑わせるな。それに理解しないのではなく、理解できないだけだ。
……お前らのやり方は過激すぎる。時代も変わった。だから俺達も変わるべきだ。」
「平和的な布教活動とやら、か?反吐が出る。
我々が気に入らぬのならば、こそこそと間者など送らず、真正面から力づくで変えて見せよ。」
「言われずとも、やってやるさ。……俺達を、あまり甘く見るなよ?
お前達に対抗する為の武器を作った。ありったけの魔術を取り入れてな。」
その言葉を合図とするように、草むらから大勢の悪魔が姿を現した。
怪しく、不気味に黒光りする武器を堂々と掲げながら。
「クク、探す手間が省けたな。……悪魔を殺す悪魔のエモノか。面白い。
骸の山がまた一つ増える訳だ。何、心配するな。その武器は我々が大切に使ってやる。」
「ぬかせ!……みんな、行くぞっ!!」
***
「…………」
「シスター……」
「……まったく、〈サタニアス〉の連中はこれだから嫌いよ。
あたし達の地道な布教活動を台なしにしようってんだからね。」
「……悪魔の国は、これからどうなるのだ……?」
「……わかんないわ。ただ……」
(サタニアスには、アイツがいる……
……昔、戦ってる姿を一度だけ見たことがある。強いなんてもんじゃなかった。
あんなのがいる限り、勝てる訳ないじゃない……!)
「……シスター?」
「……ルーシー。今日だけは、デザート頼んでもいいわよ。」
story2 神と天使は潤う
「よくない流れだ。」
「えっ?なにが~?」
「悪魔が悪魔を殺している。しかも、大勢を。」
「えっ……なんで?」
「考え方の違いだ。人間に寄り添おうとする者と、そうでない者のな。
今はまだ小競り合い程度だが……下手をすれば、あるいは……」
「……ねえ、よくわかんないんだけど。それって、あたし達もなにかしなきゃいけないんじゃないの?」
「……すでにしてるさ。」
「お疲れさまです。」
「……どちらさま?」
「お前と同じ天使のリンデだ。英雄の魂を集める仕事をしている。」
「わあ、そうなんだ!よろしくね、リンデ!」
「ウワサは聞いてるわよ、マール。ラッキープレゼント!つってね。
……ガレアさん、お久しぶりです。……少し痩せました?」
「むしろ太ったかもしれん。」
「ええっ!?ガレア、おなかぷにぷに?」
「それでだ、リンデ。例の〈サタニアス〉の件だが。」
「みましたみました。いやー、ほんと酷いですよねー。勘弁してほしいですよねー。
こっちからしたら余計な仕事が増えるだけっていうか。いや余計って言ったら御幣が生じるんですけどね?
まだウチウチでやるんならいいんですけどねー。いよいよ人間に目をつけてるらしいじゃないですか。
……誰でしたっけ?貧乏クジを引いたの。」
「クジは引いていない。自分から志願したそうだ。愛の女神に仕える――」
「あー……〈男気天使〉……」
「その人、この前ガレアがいってた人?」
「そうだ。リンデ、そういう訳で俺は古都に戻る。出立の儀式に参列しなくてはならんのでな。」
「〈ニカエア〉って、まだそんな風習残ってるんですね。」
「マールを頼んだぞ。……何が起こるか、わからんからな。」
「はい、任せてください。
……マール、あとで私とスイーツ食べ放題の店に行きましょ。女子会女子会♪」
「いいね~!たくさん食べよ~♪」
「…………」
「あ、ところでガレアさん。……ゴッド、見ませんでした?」
「知らん。」
story3 奪う者と護る者
――悪魔が悪魔を滅している。
あまりにも一方的だった。
武器を構えるスキも与えず、その悪魔はケタ違いの強さで次々と同族を微塵にした。
「……格が違いすぎる……!
……くそ…………甘かった……!これほどとは……!
<悪魔殺し>ィ……!」
――<悪魔殺し>。
呼ばれた二つ名に、悪魔はニタリと笑った――
***
天使は悪魔を<視て>いた。
気持ちが、逸る。争いの火種を撒きにやってくるのは、この<悪魔殺し>――
恐れなどなかった。ただ心にあるのは、決して揺らぐ事のない、不動の信念。
<守る>。
守護天使はゆっくりと目を開ける。
出立のときは、刻一刻と近づいていた――