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【黒ウィズ】エターナル・クロノス3 Story1

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story1



当然、追いかけようとしていた少女は、人ごみの中に消えていた。

それでも、アリスを受け止めていなければ、今頃どうなっていたかわからない。


「いつもいつもごめんなさい、魔法使いさん。」

「怪我がなくてよかったにゃ。ほんと、どうなることかと思ったにゃ。」

君は謝るアリスを安心させるために、気にしないでいいと言う。

けれども彼女は落ち込んでいるようだった。

「私って、魔法使いさんに助けられてばっかり……。」

「落ちてくるなら、受け止めるのは当然にゃ。」

ウィズは言い終わると、ふと思いついたように呟く。

「もしかして、緑があるってこういうことかもしれないにゃ。」

もうちょっと穏やかな緑であってほしい。君はウィズの意見にそんな風に思う。

「縁……。そうだ。魔法使いさん、実はお願いが……。」

初めは勢いよく声を上げ、最後は少し気まずそうに声はすぼんでいく。

彼女なりに大事なことを思いついたのだろうが、この状況で言い出すのは気が引けるかもしれない。

君は、これも縁だからとアリスが言葉の上に置いた蓋を取ってやる。

アリスはとても嬉しそうに目を輝かせた。


 ***



そこはー軒の邸宅であった。

周りを囲う柵は、生い茂った葉で覆われ、上品な花々がぽつぽつと控えめに顔を出していた。

門から邸宅の入り口まで続く小径も、夏の濃い緑色が綺麗に整えられている。

そこだけ時間がとまっているようで、まるで造形物のような美しさがあった。


「さ、こっちです。」

と、アリスに導かれるまま小径を歩いていると、入り口からは見えなかった中庭で、何やら楽し気な様子で談笑する姿が見えた。 


「あ、アリス。遅刻よ、どこ行ってたの?ティータイムに遅れちゃダメなんだよ☆」

のんびりとした声で、君とアリスに呼びかけるのは、セリーヌ・エヴァンス。こう見えて神様である。

間延びした言葉は、じっくりと現在を楽しむようでもある。

「魔法使いさんもー緒なのね。さ、ふたりとも、座って座って。お茶いれるね。」


「お待ちください。セリーヌ様は座ったままで。いまルドルフ様が席を用意してくださいますわ。」

「吾輩ですか……?」

席を立ちかかるセリーヌを制したのはエイミー・キャロル。時計塔のメイドである。

ルドルフにやんわりと殿方としての振る舞いを促しながら、彼女自身もそつなくアイスティーを人数分用意する。

手慣れた動きは華麗ですらあった。


さあさあ、ティータイムに一番大事なのは、楽しいおしゃべりだよ。魔法使いが楽しませてくれるさ。

みんなを楽しませる自信はないと、前置きして席に着く。

君に無茶な役割を振るのは、時計塔の女神のひとりステイシー・マーキュリーである。

未来とは彼女らしく向こう見ずなのだろう。


「お久しぶりですね。」

着席した君に、懐かしさをにじませながらそう言ったのは、イレーナ・フリエル

短い一言ではあったが、過去を司る彼女らしさがある言葉だった。


現在、未来、過去。3つの時間を司る女神や、ルドルフ、それにエイミーやミュウもいる。


「こんにちは。」

「おやおや、これは懐かしい人に会えてとてもうれしいです。とエリカは社交辞令的に言います。」

「そっちこそ相変わらず一言多いにゃ。」

そして、アリスの分身であるエリカも。ヴァイオレッタは外に出るのが嫌だったらしく、その場にはいなかった。

それは、いつか出会った頃と変わらない面々だった。ただ、ふたつほどいつもとは違う。

時計塔ではないこと。それとユッカがいないことを除けば。


「それにしても、みんな一体どうしてここにいるにゃ?」

ウィズの言う通り、彼女たちは時間を管理する役割上、時計塔を離れるわけにはいかない。

しかも、そうそう簡単に外には出られないという話ではなかったのか。

そんな疑問を君は抱いた。


「その……いま私たちは……。」アリスは言いよどむ。迷いが見えた。


「いま私たちは時間を取り戻すために、ここに来ているのです。」

はっきりと言い放ったのは、イレーナであった。

「ユッカはお留守番さ。全員がいなくなるわけにはいかないからね。」


セリーヌは黙って、グラスを見つめながら、ストローでアイスティーをかき混ぜていた。

こういう時、彼女は他のふたりに任せるのだ。

それは決まって、真剣な話の時である。




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story2 初級 イエェーイ! 夏だ!



時計塔の人々も君と同じように、この世界に移動してきたらしい。

ただ、彼女たちは自分たちの意思でここに来ていた。

今日、この世界では年にー度のお祭りが行われます。


この世界では、カヌエとソラという神様が崇められている。

カヌエの宗派であるヴィジテとソラを崇めるマニフェ。

そのふたつに分かれて、激しいとまではいかないが、緩やかに対立していた。

常にどちらかの優劣を競う二派の対立が、修復不可の決定的なものに至らないように、―年に一度の祭りでうさを晴らす。

そういう意味合いがあるらしい。

でもまあ、暴力はないけど、みんな真剣そのものだからね。勝つのはけっこう大変だと思うよ。

そして、彼女たちは時を取り戻すために、マニフェを勝利に導かないといけないのである。


私が過去を見て、調べたところでは、ヴィジテの御子であるサマーという少女がこの年の祭りで、神であるソラに呪いを受けてしまうのです。

この年の祭りはヴィジテが勝利するから、その時にソラが嫉妬したのよ、サマーに。

それが、時の淀む遠因となり、時計塔の異常が起こって、今現在の状況があるんだよ。

もしかして、私たちがこの世界に来てしまったのも、時計塔の異常が原因にゃ?

時間がおかしくなったら、時間を構成する要因である空間も歪んでしまうから、可能性としてあると思う。

工ターナルハチャメチャです。


君はアイスティーを手に取り、口に含んだ。ふんわりと柔らかい香気が口の中から、鼻に抜けてゆく。

冷たさはありながら、紅茶独特の香りを失っていない。エイミーの腕の確かさが感じられる。

君はグラスをテーブルに置く。そのわずかな時間で充分に考えが整理された。


アリスたちを手伝う。

もちろん時間と空間が元通りにならなければ、クエス=アリアスに帰ることができないからでもある。

君の意思を聞いた時計塔の人々は、ほっとしたような表情だった。


で、その祭りはどんな競技があるにゃ。

ふたつあるけど、同時に行われるから、どちらかを選ばないといけないんです。


カップをソーサーの上に置くカチリという音が聞こえた。

この暑さの中、温かい紅茶を飲んでいるのは、ルドルフだけだった。

本人の話では「自分は筋金入りの紳士」なのだとか。


ですが、選ぶ必要はありませんぞ。なぜなら、吾輩の発明で勝利は確定しておるのですからな。

ピンと伸びた髭を指で撫でる。その様は確かに紳士然としていた。

そうでしたね。ルドルフが用意してくれたんでしたね。

イレーナに頭を撫でられるがまま、髭をいじり続ける様は、紳士というよりはただの兎だった。

吾輩、紳士ですから。


話の続きを、ステイシーが継ぐ。

競技のひとつのゴンドラレースがあるんだけど、ウチらそれに参加しようと思つてるのよ。

でも、女の子ばかりで力仕事には不向きだから、ルドルフにゴンドラに着けるモーターを作ってもらったの。

そんなもの使っていいにゃ?


一同が示し合わせたように。アイスティーを飲み始めた。氷の踊る音が空しく響く。

駄目なんだろうな、と君は思った。


ま、いわゆるひとつの、ズルですかな?

そんな発言すらも、紳士然とした態度を崩さない。

はっきり言って居直りジェントルだ、と君は思った。


でも勝たなきゃいけないから……。

勝利こそ正義です。とエリカは本気でそう言い切ります。

なんとなくみんなが切実なのはわかった。もちろん時間という唯一のものを取り戻さなければいけないのだ。

手段は選んではいられないだろう。


 ***



俺の名はマッサ・デカント。このマニフェのゴンドラ戦の責任者である。

参戦の意思を協会に申し出ると、君たちは集合場所を指定した案内書を渡された。

マニフェを象徴する紫の旗が踊る集合場所に行ってみると、声の大きな男性に並ぶように言われ、指示通りにした。

どうやら参加者のほとんどがこの場所に集まっているようだった。

ちなみにゴンドラ戦では水しぶきで濡れるからたいていの人は水着になっていた。

そんなことを気にせず、男性は大きな声で続ける。


貴様ら、今日は何の日か知っているか!?もちろん知っているな!

知らないと言う奴はそうそうにこの場を去れ!……知っていると言う奴だけ、ここに残れ。

いいか! 俺はお前たちに多くを求めない!単純なことだけを求める!

ヴィジテの奴らを叩き潰せ!わかったか!

参加者たちが彼の言葉に続き、気勢を上げた。


す、すごい雰囲気……。

暑苦しいです。


マッサが君たちの方を見て、少し演技がかった調子で、おやという顔をしてみせた。

女が多いな!

彼がそう言うのも無理はなかった。

参加者の中で自分たちだけが、目立っていた。

どう考えてもゴンドラを漕ぐ力はなさそうだった。

俺は女も男も区別はしない! 誰でも歓迎する。ただし弱い奴と強い奴は区別する!わかったか!

は、はい!

あ。ウチ、こういう雰囲気好きかも。

いいか! 俺が求めるのは名誉や称号でもない!ヴィジテの奴らを叩き潰したという事実のみだ!

手段や方法は問わん!ヴィジテの奴らを叩き潰せ!わかったか!

参加者たちは彼の呼びかけに応じて声を上げた。


声が小さい!

はい!

まだまだ!

はい!

もういっちょ!

君もやけくそ気味に声を上げる。


君を含めたマニフェの声は海から吹く風に運ばれ、街の隅々に行き渡っただろう。


 ***


その声は、街の二分するマニフェとヴィジテの境界線を超え、純白の旗が踊るヴィジテの中枢まで届く。

開け放たれた窓の傍に立ち、少女はマニフェの居住区に向けて耳を澄ましていた。

風が一陣吹き込むと、少女は嬉しそうに、振り返った。


ねえ、聞こえた?マニフェの人たちの声ですよ。



サマー。貴方はヴィジテの御子です。

戒めるような口調で、お付きの女性が言った。

彼女の名はテタニア。厳格で、無駄口は叩かない。それゆえにその言葉は明確かつ、重い。

不謹慎?でもカヌエもソラも元々はひとつの神ですよ。彼らも私たちも兄妹みたいなものです。



そう思わない人もいらっしゃいますよ、サマー。

そ、じゃあ今の発言はここだけの秘密ね。でも私もー度でいいからやってみたいわ。

私はサマー・エイジア!このヴィジテの御子である!なんてね。


御子はそのように誇示するものではありません。人々と共に祈る存在です。

諭すような口調。それでも御子と称される少女の笑顔は変わらない。

笑顔は変わらないが、それは表面上、変わっていないというだけでしかない。


そ、じゃあ今の発言もここだけの秘密ね。

それだけ言って、少女は再び窓の外を見た。その後、しばらく黙って景色を見続けていた。



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story2-2



ゴンドラ戦。それはサンザールの街に張り巡らされた水路を使い、行われる競技である。

マニフェとヴィジテ。街を二分するように構成された、それぞれの居住区の端が出発地点である。


時計塔の鐘の音がスタートの合図となり、一斉に大人数でゴンドラを漕ぎ始める。

後のルールは単純。早く時計塔まで辿りつくだけである。

ただしお互い、反対側から進んでいるので、敵チームの動向が分らない。

自分たちがいま勝っているのか負けているかすらわからない所が、この戦いの難しい所である。


君たちは、ルドルフ特製のモーターを搭載したゴンドラで、トップグループを追走していた。


順調ですね。

ウチらにかかれば、こんなもの余裕よ!

すべて吾輩の発明のおかげですぞ。

水しぶきでぐしょぐしょになった自慢の毛並みを整えながら、ルドルフは満足げに言う。


エリカは人形なので、こういうのは苦手です。

あ~、びちょびちょにゃ~。

どうやら、毛並みのある者と布で出来た者には、―評判が悪いようであった。


両者ともゴンドラの端の方で、水しぶきを避けることで必死のようである。

君にとっては、水しぷきも、風を浴びるのも、この暑気のおかげで心地よいくらいであった。

一艘のゴンドラが、太鼓を激しく打ち鳴らす音と共に、君たちのゴンドラに並びかけて来る。


イエー―イ!イカしたゴンドラに乗っているじゃないか、お前たち!

腕をぶんぶん振りながら、船首に立ったマッサが、大声で声をかけてきた。

そうでしょー!? イエーーイ!

イエェェェーーーーーイ!

相当なご機嫌なのか。腰やお尻を激しく振って、まるで踊っているようである。

君は、この人ゴンドラを漕がずに何やっているんだろうとすら思った。


イエェェェーーーーーイ!

この人も。と君は思う。と同時に、マッサが明らかに君を指さしていることに気づく。

イエェェェーーーーーイ!


腰とお尻を小刻みに振りながら、君に向けてアピールしてくる。同じように「やれ」ということなのだろうか?

そんなことよりも、ゴンドラの権を漕いだ方が生産的だと思った。

思つたが、彼の気合はそれを許してくれそうにない。


仕方がないので、君は「イエェェェーーーーーイ!」とやってみた。

やってみると楽しかった。気分がぐんぐんに上がった。

顔に当たる水の飛沫。風の中を突き進む感覚。全身で感じる太陽の光。

最高だった。何かいつもの自分から解放されたような気がした。


イエェェェーーーーーイ!もうすぐゴールだぞ。

イエェェェーーーーーイ!

いつの間にか、君もステイシーやマッサと一緒になって、狂喜していた。


なんか変なテンションになってきたにゃ。

エターナル夏のせいでしょう。



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story2-3



君たちのゴンドラは奇声を上げながら、ゴールである時計塔へと押し寄せた。

情熱と熱意と気合と気迫とその他諸々のアツい感情こそがマニフェの神であるソラの真骨頂である。

もちろん。信徒たちも自分たちの仕える神に倣う。

イエェェェーイ!

船首に片足をかけ、体を乗り出すように、雄たけびを上げる。

マニフェの先陣を切るのは、マニフェのゴンドラ戦にこの人ありと言われたマッサ・デカントである。

初めはただの漕ぎ手だった。

だがよく通る大きな声と理解不能な行動力を見込まれ、ゴンドラ戦でリーダーを務めるようになると、彼はゴンドラを漕ぐのをやめた。

その代わりに、船首に立ち大声をあげ、漕ぎ手たちを鼓舞するようになった。


―見、意味不明な行動ではあるが、それがマニフェの気風に合っていた。

彼がリーダーとなってからマニフェは不敗である。

よし! ウチたちの勝利よ!


ゴールの時計塔目前の最後の急力―ブを、漕ぎ手全員の体重移動で乗り越える。

ゴンドラは傾き。船尾が水面を滑るように急反転し、―時計塔のおひざ元〈黎明の入り江〉に突入する。

あとは、時計堰の前まで、全力で漕ぎ続けるだけである。

けれども、そこでマッサの声が止んだ。


イエェ……?

すでに〈黎明の入り江〉には、多くのヴィジテのゴンドラが入っていた。

う、うそ~どうして?

君もその光景を見て、愕然とした。

自分たちもルドルフの発明品に頼つたとはいえ、最大限の努力をしたはずである。

あるいは、声を上げずに懸命に漕いでいたら、結果は変わったのだろうか。


 ***


うっうっうう……。くそ……俺は、俺は……。

ゴンドラから降りても、マッサは泣き続けた。年に一度の祭り。年に一度の大舞台。

彼の涙は一年という時間の蓄積であるだけに、重い。悔しさは時間とともに増してゆく。

それは、時間を取り戻すことを賭けて戦ったアリスたちも同じである。

残念ですね。

頑張ったのにね。

ゴンドラ戦には参加しなかったイレーナやセリーヌも残念そうに肩を落としていた。


皆さん。下を向くのはそこまでです。

立っていたのは、キリリとした目つきが印象的な少女だった。彼女は一同に言った。

負けてしまったものをクヨクヨするのは、我々の信条に反します。もちろん、ソラの御心にも。


「ホリー様」というつぶやきが、周囲から漏れ聞こえる。

マニフェの御子さんですよ。

「御子」と言われ、君は少し納得した。彼女の立ち振る舞いや態度は年相応には見えなかった。

自分の親以上の者たちが落胆している中、自らを毅然と保っている。

彼女の姿を見て、泣いていた者も、その涙を拭い始めた。


また来年があるではないですか。

彼女の眼に優しい光が宿った。

また来年頑張ればいいのです、時間は常に進んでいるのです。前を見ましょう。

それがわたくしたちマニフェの生き方です。

懸命に努力し、懸命に生き、常に前を向く。そうではありませんか。


彼女の言葉は、その場の空気を一変させた。

悲しみはもはやなく、午後の太陽も時間の経過と共に激しさから優しさへ移行しつつあった。


君は、それがどことなく慰めのように思えた。

話によれば、『カヌエ』と『ソラ』は両者とも太陽の神だという。

そんな話を聞いたからか。もしくはホリーの言葉に触発されたのか。

徐々に柔らかい光に移ろう太陽が、まるで敗者を慰めているように思えたのだ。



いやいや、なんか工ターナルいい感じの光景ですけど、全然よくないです!

このままじゃ、ユッカは眠ったままです!


アリスはすぐさまエリカを抱えて、胸元に引き寄せ、口を押える。

エリカ!

ふぐふぐふぐぐぐ………いやいや、エリカは別に口から声を出しているわけではないです。

口を押えられてもいくらでも喋れますよ。謎の部分で喋ってますから。

もう……。


諦めたアリスはエリカを解き放つ、エリカもエリカで反省の色なく飛び回る。

君は改めて、エリカの発言の意味を問いただした。

答えたのはイレーナであった。


そうですね。手伝ってもらう以上隠しておくわけにもいきませんね。

ただ隠そうと思ったわけじゃないよ。……余計な心配をかけたくなかったのさ。


確かにその後知らされた事実には、君も少なからぬ精神的な打撃を受けた。









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