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【黒ウィズ】ミラノ編(ザ・ゴールデン2016)

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最終更新者:にゃん
2016/04/28


目次


Story1 クエス=アリアスの異変

Story2 偽物のミラノを探せ

Story3 本当のこと、本物のミラノ




story1 クエス=アリアスの異変






その日、君とウィズは、バロンから至急の案件があると連絡を受け、ギルドに向かっていた。


「やっぱりにゃ。何かおかしいと思っていたにゃ。」


ウィズがそう言うのには訳があった。

バロンから声がかかる前に、君も妙な気配に気づいていた。

世界全体が醸し出す違和感とでもいうべきものに。

一見すると、いつもの世界と変わらないのだが、本質的にはまるで違うような。

例えるなら、鏡に映った自分の姿似ていた。


「おお、やっと来たか。」


バロンはすぐに用件を切り出した。それほどのことなのだろう。


「お前も気づいたか?」

君はコクリと頷いた。

「魔道士なら気づかぬわけはないか。この妙な気配……。」

バロンが言いかけた時、繁華街の方から声が上がった。

「食い逃げよ!」という叫び声だった。

「なんと。こんな時に人騒がせな……。一体誰だ。」



「にゃ!」

「私が……。つまりまあ……こういうことだ。町中で、偽物があふれ出しているのだ。」

「それは一大事にゃ……。」

「うむ。早急に原因を探らなければいけない。」


食い逃げをしたバロンを追ってきた繁華街の人々が君たちを取り囲んだ。


「食い逃げなんて許さないよ。」

「代金も払わないなんてふてぇ野郎だ。」

「皆の衆、安心してくれ。犯人はここに捕まえている。」

「共犯までいるなんてね。ふたりでどれほど悪さをしたんだろうね。」

「何から何まで吐いてもらおうか……。」

「は?」

「さあ、みんな! しょっ引いてやんな!」


「ちょ、ちょっと待て! 私は、私は……おい! お前も何とか言ってくれ!」

後は任せて下さい。と君は言った。

「この薄情者!」

そしてバロンは連行されていった。しばらくすると見物人の輪も解ける。ウィズは君に向き直り、言った。

「大変なことになったにゃ。バロンの為にも事件を解決するにゃ。」

そうだね。と答え、君はその場を離れた。



 ***



「ふふふ……カナブンいっぱい。チッタ驚くだろうなぁ。」


「…………。」

魔力の気配に神経を傾けながら、街を進んでいると路地の片隅で、君は奇妙な少女を見つけた。

わずかに彼女から魔力の気配がしていた。

「キラキラ光って綺麗。」

少女はつまんだカナブンを太陽にかざした。光を反射してカナブンは彩り豊かな光沢を描く。


「……君、声かけるのかにゃ?」

だって魔力の気配を感じるから……。と君は自分に言い聞かせるように言う。

「確かに怪しいと言えば怪しいにゃ。色んな意味で……。」

ねえ、君? と君は少女に声をかけた。少女はギクリとしたように、君の方へ振り向いた。

「誰……?」

もしかして、別の世界から来た人? と君は訊ねる。

「もしかして、この世界に住んでる人?」

君は少女の言葉に頷く。

「カナブンいる?」

いらない。

「マジカルカナブンだよ?」

いらない。と君は念を押した。

「綺麗なのに……。」

君は少女にいくつか質問する。名前や来た場所のことを。

「名前はミラノ。どこから……? あたしの家から鏡の中を通って来たよ。」

「鏡の中に入るなんて聞いたことないにゃ。間違いなく別の異界の人間にゃ。」

「もしかして猫と喋ってる?」

「しまったにゃ……!」

ウィズの慌てた様子とは裏腹にミラノは特に驚いたふうでもなく、言った。

「まあ、鏡の中ならそういうこともあるか。」

どういうこと? と君は彼女の独り言に反応する。

「あたし、鏡の中なら何でも思い通りに作れるの。この世界はたぶん私の妄想から生まれてる。

だったら喋る猫くらいいるでしょ。」


「何となく分かって来たにゃ。」

とウィズは君に囁く。

「詳しくは街に戻りながら説明するにゃ。

彼女の魔力につられたのか、魔物の気配がそこら中でするにゃ。」

確かに……。と君は改めて周囲の気配に気をやる。

「何? どうしたの? 何が始まるの?」

君がカードに手を伸ばすのを見て、ミラノは興味深そうに訊ねる。

君はただ……。見ていればわかるよ、とだけ答えた。






街へ戻る道すがらで、君はウィズの推論を概ね聞き終えていた。

ウィズが言うには、ミラノが鏑の中で生み出した世界とクエス=アリアスが偶然一致してしまい、世界と世界が結びついてしまった……

……かもしれない。そして、そのせいで街で見たように偽物が増殖しているのかもしれない。

「うーむ……。にわかには信じがたいが……。」

君の口から、その推論を聞いたバロンも、さすがに半信半疑といった様子だった。

事態が大それているし、何より事件の張本人が……。

「…………?」

ただの少女にしか見えなかったからだ。しかし一番の問題がまだあった。

「あたし、元に戻す方法知らないよ。というか……。

どうしてかわからないけど、戻せないの。」

「困ったな……。」

「友達のチッタなら何かわかるかもしれない。すごくしっかりしてる子だから。」

その子はどこにいるの? と君は聞いた。

「知らない? こっちに来た時にはぐれちゃった。

でもチックは珍しいものが好きだから楽しい場所に行けばいるかも。」


「つまりそれは……。」

「あたしを楽しいところに連れて行ってほしいな?」

「やれやれにゃ……。楽しまれても困るにゃ。」

とウィズはこっそりと君に愚痴を言った。

「ちょっと待ってね。身支度整えてくる。

久しぶりに外に出たから、髪がボサボサになってそう!」

世界の行く末を握る少女は、そんなことよりも、自分の髪型の方が気になるようだった。



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story2 偽物のミラノを探せ





身支度を整えるミラノを待つ間、ふとあることを思い出した。

偽物のバロンはどうなったのだろうか。

君たちがギルドに戻って来た時、バロンはすでにギルドにいた。

「ああ、それか。あれからすぐに疑いが晴れた。

あっちが偽物だとすぐに判明したからな。どうやら偽物は鏡に姿が映らないようなのだ。

理由は分からんが、あのミラノという少女の能力が鏡に関係しているせいかもしれんな。」

それでその偽物はどこに行ったのだろうか?新たに生まれた疑問を率直にバロンにぶつけた。

「それが……消えたよ。私が名前を呼んだらな。

……ん?

そういえばお前! あの時はよくも!」


あの時の事を思い出したバロンに追い回されていると、別室からミラノが戻って来た。

身支度が終わったのか、と彼女を見やる。が、特に以前と変わった様子は見受けられなかった。

髪も整えられた様子はなかった。


「…………?」

「おう。準備は整ったかな?」

「うん。バッチリ。あたしを街に連れて行って。」

そう言って、ミラノは部屋の扉を押して、外へ出て行った。

「その役目は君に任せたぞ。私は他の情報でも集めておく。

ただ……。彼女が鍵を握っていることは間違いなさそうだ。目を離すんじゃないぞ。

あるいは私のように、彼女の偽物がいて、何か悪事を働いているのかもしれない。」

「その可能性は十分あるにゃ。」

と、ウィズが君に囁いた。

君はその言葉に小さく頷くと、ミラノを追って、街に出た。





しばらくの間、君はミラノと一緒に街を見て回った。

「すごーい。」

よっぽど珍しいのか、彼女はクエス=アリアスの建造物や服飾、料理、どんな他愛のないものにも目を見開いて、驚いて見せた。

「ミラノはあまり外に出ないにゃ?」

「まったく。」

「どうしてにゃ? いまのミラノはすごく楽しそうにゃ。

それなのに、外に出ないなんて変にゃ。」

「そうかな? でも何となく外にはあまり出ないな。

こんな風に、街を見て回るのも初めてかも。

こんなに楽しいのなら、もっと前から外に出ておけばよかった。


そんなことを話していると、君は市場の方が騒がしいことに気づいた。

ミラノを伴って、騒動の場所を覗いてみると、


「さあ来い!」

と数人の大人に囲まれた少女がいた。


「チッタだ! お願い、チッタを助けてあげて。」

「キミ!」

ウィズに促されるよりも早く、君は群集をかき分け、チッタと徒党の間に割って入った。



「無事でよかったね、チッタ。」

「う、うん……。」

「ありがとう、黒猫の魔法使いさん。」

どうやらチッタを取り囲んでいたのは無数に出現している、どこかの誰かの偽物だったようである。

彼らが市場で騒動を起こしている所に、正義感の強いチッタは飛び込んでいったらしい。

助けられた負い目からか、チッタは少し動揺しているようだった。

「ミラノ……。」

親友の顔を見る視線もどこかおぼつかなかった。

「魔法使い! すぐにここを離れよう。」

「どうしたの? チッタ?」

「いいから! ……ミラノも!」

「ちょっと、チッタ! どうしたの?」

チッタは強引にミラノの手を取ると、彼女を引いて、市場の中を駆け抜けていく。

まるで何かから逃げるように……。

「キミ、追いかけるにゃ!」

君はすぐに彼女たちの後を追った。




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story3 本当のこと、本物のミラノ



一心不乱に走り抜け、息も絶え絶えになった所でようやく少女たちは立ち止まった。

「はあ、はあ……もうチッタってば、いきなりどうしたのよ……。ああ、疲れた。」

「ミラノ……。ここに来た時のこと覚えてる?」

「ううん……。さっばり。それでちょっと困ったことになっているんだ。」

「知ってる。偽物がいっぱい出てきてるんでしょ。」

「それはたぶん、ミラノの力が悪さしてるんだと思う。」

その辺りのことを詳しく話してほしい。と君はチッタに申し出た。

チッタの話は、ウィズの推論とそれほど違いはなかった。

「あたしが妄想の世界を鏡の中に作り出した時、ごくたまに、他の世界とそっくりのものが生まれるんだね。」

「うん。そういう場合はいつもなら、その世界と繋がるだけで、特におかしなことにはならないんだけど………。」

「でも今回はなぜか元に戻せないんだよね。」

「私とミラノの考えでは……。

この世界で起こっているようにミラノの“偽物”がミラノの力に干渉しているはずだと。」

「なるほど。ではそのあたしの偽物をなんとかすればいいわけだね。」

「……うん。」

バロンの話だと、偽物は本人が名前を呼ぶと消えてしまうらしい。君は彼女たちにそう伝えた。

そして、もうひとつの事実。偽物を暴く方法を口に出そうとした時、ウィズが君の注意を引くように鳴き声を上げた。

「少し待つにゃ。」

と、ウィズが囁く。

「状況をよく理解するにゃ。

話をまとめると、あたしが偽物の名前を呼べば、偽物はポンと消えて、万事解決なのね。」

「うん……。」

「世界は元通りになる。問題は偽物の居場所だね。」

「それなら大丈夫。案内できると思う。

ミラノのいる場所は、わかる……。」


ウィズは君だけで聞こえる声で言った。

「何となく理解できたかにゃ……。」

たぶん。と君は答えた。

そして、君たちはもうひとりのミラノがいる場所へと向かった。






やって来たのは街の宿屋だった。ただし、見たこともない宿屋だった。

「こんな所に宿屋なんてなかったにゃ。」

「ミラノが作ったんだ。」

「え? あたしが? 全然覚えがない……。」

「もうひとりのミラノだよ。」

「ああ、偽物か……。」


宿の一室では、少女が巨大なぬいぐるみを抱え、ぐうたらと寝そべっていた。


「あ、チッタ……。どうだった?」

「…………。」

チッタは気まずそうな沈黙だけを寝ころんだ少女に返した。

「……そういうことか。」

沈黙の意味を悟り、少女はぬいぐるみを抱えて立ち上がった。


「これがあたしの偽物……。さあミラノ。悪いことはやめて、大人しく消えなさい。」

ミラノが偽物の名を呼ぶ。報告通りなら、このまま偽物の姿は消える。……はずである。


「……消えるとしたら、それはあなたよ。」

だが姿を失わぬまま、その少女は言った。

「は? あたし……?」

 「やっぱりにゃ……。」


「……お前はミラノじゃない。」

おそらくチッタはすぐにわかったのだろう。君たちと同行しているミラノこそが偽物だということを。

親友である彼女だからこそ、察知できる何かがあったのだろう。

「偽物は鏡に映らない。」

と彼女は目の前に大きな鏡を生み出す。その鏡面には、君やウィズやチッタの姿が映し出されていた。

「…………。」

彼女だけが映っていなかった。

「君が身支度を整えると言って、出来なかったのは自分が鏡に映らなかったからにゃ。」


「え、じゃあ、消えるの……あたし? いやだ……いやだよ?

あたし、消えるのなんて、いやだよ……! こんなに楽しいのに!

こんなに楽しい発見がいっぱいあるのに!

ねえ、教えて? 消えたらどうなるの?」

偽物に対処することはこんなに辛いことなのか、と君は思わずつぶやいた。

「たぶん私のだからこんなに自我がはっきりしてるんだよ。

私が魔力の中心だからかな?」

「なるほどにゃ。」

「ちょっと……。何、冷静に話してるのよ! こっちはそれどころじゃないのに!

「いや、いやいやいや! 消えてなくなるなんて絶対にいや!」

彼女の周りに、禍々しい魔物の姿が浮かび上がり、こちらに向けて、牙を剥く。

「私のくせに、すごく能動的だね……。まあ、仕方がないか。」

君はすぐさま魔物に対して迎撃の姿勢を取る。






「はあ……、はあ……。」


襲い掛かる全ての魔物は、君が叩き落した。

力を使い切ったのか、ミラノは肩で息をするだけで精一杯のようだった。


「キミ、よくやったにゃ。」

「…………。」

君には少しだけ気になることがあった。

その間、もうひとりのミラノはー切抵抗せず、ぬいぐるみの上で事の成り行きを見守っていた。

どういうつもりなのだろうか。


「子どもの頃、内気だった私はひとり遊びばかりしていた。パーキー・パーキーや……。」

彼女はぬいぐるみをより一層抱きしめる。

「チッタという友だちができる前までは……。

でもひとりだけ……大事な友だちがいた。性格は私なんかより明るくて、積極的で……。

私の憧れが詰まった存在だった。でもいつの頃からか、その子と遊ばなくなった。

私が成長していくにつれて、段々離れていった。鏡の中だけの私の友達と……。」

「…………。」

「ごめんね。色んなことがあって、あなたのこと呼ばなくなっちゃった。

あなたはミラノなんて名前じゃない。別のちゃんとした名前がある。」

そう言われると、もう一方のミラノはハッと顔をあげる。

何か思い出したようだった。

「あたしミラノじゃない。いつもミラノが呼んでくれる名前があったね……。」

懐かしいような、それでいて寂しいような声で彼女は呟いた。

「あなたはずっと覚えていたんだね、私のこと。」

「忘れないよ、ずっとー緒だったから……。私の憶れだし。」

「ありがと……。あたしのこと、もう消していいよ。」

「もっと遊びたいんでしょ? まだまだ付き合ってあげる。私も。みんなも。」

その言葉にもうひとりのミラノは首を横に振る。

「違うよ。たぶんあたしは、あなたに名前を呼んでほしかったからここにいるんだよ。

そうじゃなかったら……あたしはこんなところにいない。

……だからお願い。名前を呼んで。」

「…………。」

覚悟を決めたように少女の唇が震えた。

少女がその名前を呼ぶと、世界を覆っていた違和感がきれいに拭われた。

何が変わったわけではないが、鏡に映った自分を見るような違和感はすっかり消えた。


「さて、そろそろ帰ろっか? ミラノ。」

「うん。」

ミラノとチッタは、鏡の前に立った。

チッタが片足を鏡の中に踏み入れる。ふとミラノは何かを思い出したように君を見た。

「迷惑かけてごめんね。それと……ありがとう。

久しぶりに友達に会えたし……楽しかった。そうだ、これ……。

そっと彼女は白く細い腕を、君の方へ差し出す。その手は優しく握られている。

「感謝のしるしに受け取って……。

カナブン。」

いらない。と君は首を横に振る。

「マジカルだよ?」

いらない。と君はやんわり断った。

「綺麗なのにな……。じゃあ、またね。」

「また、はちょっと困るにゃ。」


そうしてふたりの少女は鏡の中に消えて行った。

残された君は鏡の前の自分を見る。隣にはウィズがいる。

目の前のもうひとりの自分と話すことができたら君は自分になんというだろうか?ふとそんなことを君は思った。

「私は人の姿の自分になんと言われるかわかったものじゃないにゃ。」

そうかもね。と君は答え、その部屋を後にした。






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