貸出馬車
概要
画像 | マス | 環境 |
---|---|---|
35 |
入手方法
厳さま取引
悪党尋問
塩商
物語
いつの間にか、雨が降ってきた。青石の街路が、雨粒で一瞬で色を変えた。屋根から流れ落ちた水は軒先をつたってザーザーと零れ落ち、無数の雨だれになった。傘をさす者は、のんびりと雨の中を歩き、その姿には羨望の眼差しが向けられた。そして、傘を持たない者は、仕方なく屋根の下で丸くなり、早く雨が止むのを待っていた。その時、蹄の音が青石の街路に響き渡った。聡が、馬車を駆ってやって来たのだ。「帰り道は馬車でいかがっすかー?一回10文っすよー!」「ちょっと高いな、5文でいいかい?」「おっさん、勘弁してくださいよ、雨の日は馬を御すのが難しいんすから。」「まあ、しょうがないか……」そんなやりとりをしつつも、馬車に乗る人は誰かしらいつもいた。……数日後、また雨が降り出した。聡は再び馬車を駆って、客引きの声を上げた。けれど今回は、誰も聡の馬車に乗ることはなかった。不思議に思った聡は、料金を下げてみることにした。「馬車いかがっすかー?一回5文っすよー!」雨宿りする人々が手を振った。「今、この町に貸出馬車が来ててね、手を振ったらすぐ止まってくれるんだ。料金は一回たった1文なんだって、知府さまが言ってたよ。」聡は少し腹が立った。「知府さまは住民の仕事を奪おうとしているのか?」その時、二人の捕り手が現れ、聡を捕まえた。「聡、あなた運転免許証は?」……馬車を運転するには免許試験を受ける必要があることを、その日、聡は牢獄で初めて知ったのであった。