蜀葵の造景
概要
レア度 | 画像 | マス |
---|---|---|
効果
1010
入手方法
厳さま取引
塩商
物語
強は庭に座り込み、完成させたばかりの蜀葵の盆栽をぼんやりと眺め続け、後ろに忍び寄る春花にも気付いていない。春花は強を驚かせようと突然目の前に飛び出てきたが、強は驚くそぶりすらしなかった。春花は強を押してみた。「ねえ、どうしちゃったの?」「今作ったばかりの盆栽を見てるんだけど、どう思う?」春花もしばらくそれを眺めてみたが、美しいという感想しか浮かばず、それ以上の評価ができなかった。「その盆栽は、やっぱり花が大事なんだ。花以外は全部死物だけど、花は生きてるから。」「なるほどね、でもあたしはそういうのわからないわ。ねえ午後から西湖に行かない?この前はちゃんと見られなかったし。」強は立ち上がり、首を振った。「午後は山に行くんだ。」春花は不思議に思った。「なんでわざわざ山に?お花を買うなら、今までは車夫に届けてもらってたじゃない?」強は深く息を吐いて答えた。「さっき聞いたんだけど、花を育ててたお爺さんが亡くなったそうなんだ。今まではお爺さんの花を使ってきたけど、最後は僕からお爺さんに花を送ろうかなと思って。いつか訪ねるよって約束してたのに、本当に残念だよ。」春花はうなずいた。「それなら、お爺さんに花束を捧げないとね。」強は春花の付き添いを断り、馬車に乗ってゆっくりと城外へ向かっていった。「あんなに美しい花を育てられるなんて、お爺さんはきっと、幸せに囲まれた人だったんだろうな。」蜀葵の盆栽が静かに庭に置かれた。その盆栽にお爺さんが育てた花が使われることは、もう二度と無い。庭に立つ春花は、はじめて強が大人になったような気がした。