魚釣り庵
概要
レア度 | 画像 | マス |
---|---|---|
効果
3510
入手方法
桃花村の謎
物語
日が沈み、小魚たちは水面に顔を出して息をついていた。谷は池のまんなかの石に腰をおろし、足をぶらぶらさせながら、釣竿を握っていた。魚たちは餌を食べようともせず、だらしなく水面に浮かんでいた。夏の夕暮れになると、世のすべてが、気だるげに見える。視界が静止したかのような中、セミがミンミンと鳴く声だけが、時の流れを思い出させてくれた。石がポトリと池に落ち、のろのろしていた魚たちを驚かせ、うとうとしていた谷を起こした。「お医者ちゃんお前、何やってんだよ!」谷はむっとして立ちあがり、頬をふくらませて、西を指さした。「魚釣りというより、魚につられてるんじゃない?あはは!」西が天を仰ぐほど笑っているのを見て、谷は腹を立てて両手を腰に当てた。「村長さんが、人を引き連れて読書堂を修理してるんだよ!見に行かない?」西の言葉を聞いた谷は、さっきまで自分が怒っていたことも忘れて、喜んで答えた。「行く行く!お医者ちゃん、早く連れてってよ!」「お医者ちゃんって呼ぶなら、連れてってあげないよ!西姉さんって呼んで!」「なんでだよ!」「私の方が背が高いから!」谷は、西へ怒った顔を向けた。爪先立ちしなくても、彼女はすでに自分より背が高かった。「ふん、ならいいよ、他の仲間に聞いてくるよ。」「もう、ケチ。いいよ、連れてってあげる。あんたは弟分だから、しょうがないもんね。」谷は釣竿を地面に放り投げると、西を追いかけた。二人は稲の波の中に姿を消した。静けさが戻った魚釣り庵に、再びセミの声が響き始めた。