桐花の奥
概要
レア度 | 画像 | マス |
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効果
5010
入手方法
イベント
物語
その後、黄道婆は再び瓊州に戻り、奇偉の墓を江南水都に移した。「二人でいられる場所こそ家よ。」また清明節がやってきた。黄道婆は早々に出かけ、霧雨が顔を覆う中を歩いていた。「黄道婆さん、おはようございます。」杜牧が唐傘を手にやってきた。「また奇偉さんに会いに行くのですか?お送りします。」黄道婆は礼を言いながら、傘の下に歩み寄った。「杜くんは何を?」「秋娘のために酒屋を探しています。」杜牧のまなざしが優しくなった。「桐の花で作った酒が飲みたいそうでして。」黄道婆は微笑み、二人は肩を並べて桐の木の奥まで歩いた。「桐の花、まだ咲いていませんね。」杜牧は少し落胆した。杜秋娘念願の桐花酒は飲めないのではと憂えた。黄道婆は奇偉の墓の前に彼の好物を置き、三本のお香をあげた。「あなた、会いに来たわ。」杜牧は邪魔にならないようにと、お参りを済ませて立ち去ろうとしたが、ふと黄道婆に呼び止められた。「ほかに何かご用でしょうか。」黄道婆は高い桐の木を眺めて告げた。「好きな人には気持ちを伝えて、会いたい人には一日も早く会わないと。人生は瞬く間に過ぎ去るものだからね……」杜牧はしばらく黙ると、一礼して、一人で山を降りて行った。黄道婆は墓石の苔を掃除しながら、「奇偉」という二文字を見つめ、「昨夜もあなたと夢で逢ったわ……」と呟いた。風が立ち、桐の木を吹き抜ける。桐の花がたちまち咲き、花びらがふわりと黄道婆の肩に落ちた。まるで、奇偉が優しく彼女を抱きしめるように。