九間楼
概要
レア度 | 画像 | マス |
---|---|---|
効果
なし
入手方法
イベント配布
物語
今年、路地の入口に立派な建物が新築され、有名な学者が引っ越して来た。書院の学生たちはみな見に行きたがったが、先生は白髪交じりの髭を撫でながら戒尺を叩いた。
「あそこは徐さまのご邸宅だ。お邪魔してはならん!」
もとは無関心だった沐も、「徐さま」という言葉を聞いたとたん、耳をそばだてた。先生はよくこの方の名を挙げる。博識で、多くの西洋書を翻訳し、著した農業書も少なくなく、民にとって守り神のような人だと聞いている。
会ったことはないが、沐はすでに心の中で、この男を目標としていた。
ある日授業終わりに、沐は一番最後に書院を出て、路地を曲がり、一人で例の建物の前までやって来た。
柵のそばにしゃがみ、そっと中を覗いてみると、扉も窓も閉まっており、誰もいないようだ。
「こんな大きな屋敷なのに、人がいないなんて......」
諦めて帰ろうとした沐は立ち上がると、肩を軽く叩かれた。
「誰かお探しで?」
驚いて沐が振り向くと、本を持った男が彼を見ていた。こんな状況は初めてだ。 当惑と緊張で声
が震える。
「じ、じょ……徐光啓さまに会いたいです。」
「僕ですが?」
沐はさらに驚いた。どうしても、目の前の男を先生の言う才人と結びつけられなかった。
幸い沐はすぐに反応し、袋から一枚の紙を取り出して相手に見せた。
「じ、 徐さまのお話は先生からよく聞い てます。これは僕の前回の試験用紙です、一位を取りました。いつも一位で、先生から、将来は徐さまのように民のために働く学者になれるかもと言われてます。」
俯きながら一気に言いきったはいいものの、伝わったかもわからず、まして相手の顔色を窺う勇気もなかった。どれくらい経ったか、沐の肩がまた叩かれた。
「中に入ってみるか?」
こうして沐は、この大きな屋敷の広い書 斎に入ることに成功した。 二人の間に交わされた言葉はわずかだったが、 机の上に置かれた書き込みだらけの本は、その後の長く苦しい沐の勉強人生にとって、最大の励みになった。