月見の庭
概要
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効果
入手方法
イベント
物語
中秋の日、満月の夜。知府さまは中秋の祭りを催し、町中の文人たちを招いて、月を見ながら詩を詠むことを楽しんでいた。飛は学問を諦め、商売をしてきたが、心の中にはまだ学問への情熱を捨て切れていなかった。好きな詩人が大勢集まると聞き、飛は自分も行ってみようと思い立った。羨ましい人生を送る人達を見てみることにしたのだ。中秋の日、月見の庭には蝋燭の炎だけが揺れ、月の光が庭一面を照らしていた。淡き白い月光と黒い影とが交錯し、なかなか趣きがあった。飛が月見の庭に着いたとき、詩吟大会はすでに始まっていた。青年男女が会場に黒山の人だかりを作っているのを見て、飛は野次馬を諦めた。庭は広く、閑静なところも多かった。飛はひとりでぶらぶらしていると、ふと一つの屏風が目についた。屏風のそばの机には、文房四宝が並べられていた。その傍らでは、蝋燭の薄明かりが、何かに運命を定めたかのように揺らぎ続けていた。思わず右手を差し出した飛は、竹を編み続けて傷だらけになったその手を見ながら、独り言のように言った。「どうだ、試したくないか？」二度目の落第以来、飛はほとんど筆に触れていなかった。机の前に座り、目の前に広げられた画仙紙、硯で研いだ墨、そして筆立ての上に置かれた筆を、彼はじっと見つめた。「やってみなきゃわからない！」かすかに震える右手でゆっくりと筆を握ったその瞬間、飛は、まるであの頃に、意気盛んで才学に満ちていた青春時代に、戻ったかのようだった。筆を止めると、頭上の月も昔のように丸く輝いていた。詩吟大会が終わった時、飛は早々に帰った。一人の女性が侍女を連れてここへ戻り、荷物をまとめて帰ろうとしていた。「お嬢様ったら、ちょっと遊びに来るだけと仰っていたのに。旦那様のお説教は免れませんよ。」「そんなことないわ。今回の帰省を終えて、明日には帰るのよ。お父様、今夜は絶対酔いつぶれるまでお酒を飲むはずだもの。」「お嬢様、この紙、絵が描かれてますよ。」女性はそれを聞くと、月明かりをたよりにその絵を見た。遠い山々のもと、傘をさした女の子が、霧雨の中をゆっくりと歩いていた。「お嬢様、早く帰りましょう。」女性は絵を丁寧に巻きあげ、侍女と共にその場を後にした。二、三歩も行かないうちに、女性はふと振り返り、見まわしたが、あたりは静まり返り、誰もいなかった。彼女は眉を下げて、自分の簪に手を伸ばした。その簪は、十二歳の誕生日に父親から贈られたもので、彼女のお気に入りだ。絵の中の女の子の簪と、そっくりだった。
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