桃花塢
概要
レア度 | 画像 | マス |
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効果
5010
入手方法
イベント
物語
時は三月、灼灼たる桃の花が咲き乱れていた。花びらが舞う中、春は満開の花々に夢中になり、桃花塢の小道に沿って先へ先へと歩みを進めた。いつしか桃林の奥へと至り、ふと、数本の大きな桃の木に囲まれた小屋が目に入った。暖かな日差しに照らされた小屋は、この世のものではないような雰囲気に包まれていた。春は驚き、急に恐ろしくなった。出かける前に母親がこう忠告していた。美しい景色に見入って桃林の奥に迷い込んではいけない。そこには頭のおかしい酒飲みが住んでいる。決して会ってはいけない、と。「もしかしてここって……あの酒飲みの家?」春は勇気を出して小屋を覗き込もうとした。しかし次の瞬間、足元の何か丸いものを踏んでしまい、前に躓いて転んでしまった。足首のあたりに痛みが走る。落ち着いて見てみると、地面に空になった酒瓶が転がっていた。突然、背後から足音が響いた。振り返ると、うらぶれた老人がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。「おやおや、大変だ。足を怪我したのかな?」春は、きっとこの老人が「例の酒飲み」だと察し、警戒の眼差しで相手を見つめた。老人は気にするそぶりもなくにこりと笑った。「若者よ、運がいいな。ちょうどうちに軟膏がある。取ってくるから待っておれ。」老人は小屋に入っていき、軟膏と桃花餅の小箱を持って出てきた。春は薬を受け取って礼を言った。この老人はみんなが言うほど恐ろしい人ではなさそうだ。そう思うと大胆になり、春は菓子を食べながら桃の木の下に胡座をかき、老人に話しかけた。相手は桃花の酒仙と名乗り、酒造りの名人だという。偶然にも春の家も酒屋をやっているため、酒造りの相談に乗ってもらった。珍しく自分と会話してくれる若者に出会えた老人も、妻と酒造りをしていた頃について語った……それはとても美しい物語だったが、無情にも、結婚した日に二人の物語は終わってしまった。足首の痛みが治まるのを待ち、春は尾を引く悲しみの中、桃林から出てきた。それ以来、彼はしばしば周囲の人々にこう伝えている。桃花塢に住んでいるのは酒狂いではない。ただ恋に狂ってしまった人なのだと。