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【ストーリー】EPISODE 6-67-2 第2タワー

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最終更新者: novira

EPISODE ◆ 6-67-2

攻略タワー!
冥府の番人

登場人物

レオナ、ジャミル
オルト、ファントム、研究員、タイタン、ナビ


テキスト全文

第2タワー 16話

── S.T.Y.X.タルタロス‐非常階段 ──


ナビ:「『雷霆(らいてい)の槍』省エネルギーモード。」

ナビ:「起動時は操縦者による指紋照合、音声認証、または魔力のチャージを行ってください。」

ジャミル:「よかった、省エネモードなら俺でも扱えそうだ。」

ジャミル:「レオナ先輩、『雷霆(らいてい)の槍』は俺が持ちましょう。」

レオナ:「いい。」

ジャミル:「いえ、そういうわけには……。」

レオナ:「いつまた厄介な敵が出てくるかわからない状態で、大切な切り札をお前に渡すわけないだろ。」

ジャミル:「しかし……いくらレオナ先輩でも、先ほどの戦闘で疲弊しているはずです。」

ジャミル:「ここは俺が……」

レオナ:「あ〜〜〜〜〜〜っ鬱陶しい!!」

レオナ:「余計なことすんな、っつってんだ!」

ジャミル:「余計なこと? 人の心遣いをなんだと思って……!」

ファントム:「ニンゲン! ニンゲン!」

ファントム:「ニンゲンノオト! ニンゲンノニオイ!」

ジャミル:「うわっ、大量のファントムがこっちに向かってくる!」

ジャミル:「レオナ先輩が大声を出すからですよ。」

レオナ:「うるせえ、文句言ってる暇があったら構えろ。今度は庇ってやらねえからな。」


第2タワー 17話

── S.T.Y.X.タルタロス‐非常階段 ──


ジャミル:「払っても払っても、まとわりつきやがって……」

ジャミル:「ウッ!!」

ファントム:「イヒヒッ!ココダ……ココダ……。」

ジャミル:「コイツら、さっきの戦闘でケガした場所を狙ってる……!?」

ファントム:「ニンゲン……ヨワイ……コッチ! コッチ!!」

ジャミル:「ぐうっ! このっ……寄るな!」

レオナ:「チッ。」

ファントム:「ギエエエエエエエ!!」

レオナ:「庇ってやらねえって言ったのに、あまりに見ていられなくて、つい助けちまった。」

レオナ:「俺も人が良いよなァ。涙を流して感謝してくれていいんだぜ?」

ジャミル:「元はと言えば……」

ジャミル:「いえ、言い訳は見苦しいですね。ありがとうございました。」

ジャミル:「次はお役に立てるように、きちんと計画を立てます。」

レオナ:「はあ……それがダメだっつってんだ。」

レオナ:「言っただろう。「思い上がるな」って。」

レオナ:「わからないようならはっきり言ってやるよ。」

レオナ:「お前のそれは熟慮でも配慮でもなんでもねえ、ただの“出しゃばり”っていうんだ。」

ジャミル:「出しゃばり……? 俺が!?」

レオナ:「この俺の横で、お前に出番なんてあると思ってんのか?」

レオナ:「俺を庇えるほどお前は有能だとでも?副寮長如きが、大した自信だな。」

ジャミル:「そ、そりゃあ俺は、リーダーとしての経験は不足してるかもしれません。でも……」

レオナ:「でも? ハッ! いいねえ。今お前が考えてることを当ててやろうか。」

レオナ:「「俺はこれまで日の目を浴びなかっただけ。正当に評価されてないだけで、本当は誰よりも優れている。」」

レオナ:「……そうやって、周りの奴全員を見下してるんだろ?惨めだな。」

ジャミル:「その言葉、ナイトレイブンカレッジでも1、2を争うほど他人を見下してるレオナ先輩が言いますか!?」

レオナ:「俺は良いんだよ。事実お前より高いところにいるんだから、下に見て当然だろうが。」

ジャミル:「すごい言い分だ……。」

レオナ:「俺やヴィルとは比べるまでもねえが、同じ2年と比べてもお前とあの寮長2人じゃ雲泥の差だ。」

ジャミル:「!?」

レオナ:「リドルの魔法発動の瞬発力はチーター並だ。そして、群れを率いて最前線で戦えるだけの火力もある。」

レオナ:「性格と体力を考えれば諸刃だが……アイツはなによりも大切な、ボスとしての自負をとっくに持ってる。」

レオナ:「アズールはタコらしく手数が多い。頭の回転も速く、自分の実力を発揮するためのポジション取りがうまい」

レオナ:「深海から陸へ上がってきたことによる環境のギャップで苦労もしただろうが、それを強みとすら思ってる。」

レオナ:「それに比べてお前は?」

レオナ:「俺は本気を出してない、チャンスさえ有れば俺だって……」

レオナ:「そうやって自分に言い訳してるだけ。ただの負け犬だ。」

ジャミル:「なんだと……もう一度言ってみろ!」

レオナ:「……お、収容所の扉だ。」

レオナ:「雑談はここまで。行くぞ、ファントムに備えろ。」

ジャミル:「はぁ!? ちょっ……おい、言いたいことだけ言って勝手に話を終わらせるな!」

ジャミル:「…………。」

ジャミル:「俺は…………俺は……!」


第2タワー 18話

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「さて。あのチビ、次はなにを仕掛けてくるつもりやら。」

ジャミル:「……なにも起こらない? どうしたんだ。」

研究員:「あっ、人だ! 救援か?」

ジャミル:「ん? 向こうのケージの上に人がいる!」

研究員:「えっ! き、君たちは……被検体BとD!?」

ジャミル:「違います。」

レオナ:「誰が被検体Bだ。」

研究員:「私たちは脱出中、カローンに捕らえられ、ここに連れてこられたんだ。」

研究員:「そして、「鬼ごっこを楽しめ」と一言伝えられて……」

レオナ:「鬼ごっこ?」

ジャミル:「えっ! 今の小さい影は……」

研究員:「そ、その影だ!そいつにIDカードをとられてしまったんだ!」

研究員:「パスワードも変えられてしまい、収容所を出られなくなってしまって……。」

ジャミル:「あの背格好……もしかしてグリムか?」

レオナ:「ユウのところの毛玉?確かに大きさはそれっぽかったが……。」

レオナ:「……素早すぎてはっきり見えねえ。あの草食動物がこんなに早く動けるか?」

ジャミル:「ですが今のグリムはイレギュラーな状態かもしれません。可能性は捨てきれない。」

レオナ:「鬼ごっこ、か。これもおおかたオルトの仕業だろうな。」


がん、がん、がん……


レオナ:「奥の方で、くぐもった音がする。ケージの中に逃げ込んだようだな。」

ジャミル:「相手がグリム……うちの生徒という可能性がある以上、無闇に攻撃するわけにもいかないですね。」

レオナ:「ああ。音のするケージを、1つずつ開けていくしかねえな。」


第2タワー 19話

PTM-749

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


がん! がん!


ジャミル:「ケージが激しく揺れている……。」

レオナ:「開けるぞ。」

レオナ:「!? 中のファントムが、既に溶けて消えてやがる……!」

レオナ:「ってことは、これをやったのは……」

???:「ひーッヒっひ!」

ジャミル:「ア、アイツは……」

ファントム:「ミンナ、ミんナ、アタシのもノ!」

ファントム:「さカラうヤツはいラなイワ!」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ファントム:「ああア、ソンナあ……」

ジャミル:「……結局、黒い影はグリムじゃなかったのか。」

レオナ:「余計な手間取らせやがって。」

レオナ:「あの毛玉……次会ったら覚えてろよ。」

S.T.Y.X.所員:「君たち、無事か!?」

ジャミル:「はい。無事にIDカードを手に入れました。」

レオナ:「他のファントムが目覚める前に、さっさと収容所を出るぞ。」


── S.T.Y.X.タルタロス‐非常階段 ──


S.T.Y.X.所員:「ああ、あのままファントムに囲まれてしまったらどうしようかと……ありがとう! 被検体BとD!」

レオナ:「ああもう被検体XでもZでもなんでもいいからさっさとどっか行け。」

レオナ:「俺たちはさらに下層を目指す。」

S.T.Y.X.所員:「そんな……危険だ! 今すぐ一緒に逃げよう!」

レオナ:「お前らが尻尾巻いて逃げるから、俺にも逃げろって?」

レオナ:「冗談じゃない、実力差をよく見極めろ。」

レオナ:「せいぜい俺たちの戦いに巻き込まれないように、遠くに逃げることだな。」

S.T.Y.X.所員:「……そうだな、君たちのような優れた魔法士に忠告なんて、人魚に水泳を教えるようなものだ。すまない。」

S.T.Y.X.所員:「下層にはさらに危険なファントムが眠っている。無事を祈るよ。」

レオナ:「ふん。祈っても祈らなくても結果は同じだ。そんな余裕があるなら、自分達の心配だけしてろ。」


PTM-603

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「このケージ……見るからにこれまでよりも頑丈な造りをしてやがる。」

ジャミル:「さらに強力なファントムが閉じ込められている……ということでしょうか。」

レオナ:「だろうな。」

レオナ:「……よし。」


ガシャーン!


ジャミル:「思い切りケージを蹴飛ばした!?」

ジャミル:「なに考えてるんですか、レオナ先輩!」

???:「グルルルッ!」

ジャミル:「中のファントムが興奮して暴れ出したぞ。内側から扉を破るつもりか!?」

ジャミル:「…………」

ジャミル:「来る!」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「空振りか。まったく、見掛け倒しもいいところだぜ。」

ジャミル:「IDカードも持っていなかったし、さっき見た小さな影ではありませんでしたね。」

レオナ:「あんな小さくてすばしっこい野郎を追いかけ回すなんて時間を無駄にするだけだ。」

レオナ:「怒らせるなり、油断させて釣るなり、やり方を考えろ。」

ジャミル:「そんな危険な……。」

ジャミル:「……でもさっきもその通りやって、あっさりファントムを倒してしまったんだよな。」

ジャミル:「……いや! 策があるなら先に共有してくれればいいじゃないか!」

ジャミル:「そういうところが杜撰(ずさん)なんだよ。」


PTM-924

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「……いい加減にウンザリしてきたな。」

レオナ:「いっそここにあるケージを全部砂に変えてやりてえ。」

ジャミル:「気持ちはよくわかりますが……。」

レオナ:「わかってる。IDカードを砂にするわけにはいかないし、グリムの件もあるからな。」

レオナ:「せめてこのケージが当たりであることを願うぜ。」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ジャミル:「IDカードは見当たりませんでした。」

レオナ:「そうかよ。」

レオナ:「……はあ、このやり取りもあと何回続くんだか。」

ジャミル:「……意外でした。」

レオナ:「あ?」

ジャミル:「さっきグリムのことを心配している様子だったので……てっきり、どうでもいいのかと。」

レオナ:「心配しているわけじゃねえ。ただ、あの毛玉をうっかり砂にしちまったらうるさい奴らが多いだろ。」

レオナ:「それだけだ。」


PTM-296

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ジャミル:「レオナ先輩、止まってください。」

ジャミル:「あのケージ、わずかに扉が開いています。」

レオナ:「ああ……当たりの可能性が高いな。」

ジャミル:「ファントムが外に出ているかもしれません。俺が様子を見てくるので、」

ジャミル:「レオナ先輩はここでお待ちを。」

レオナ:「はりきってるところ悪いが……」

レオナ:「その必要はなさそうだぜ。」

???:「グワアアアアア!!!」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ジャミル:「今のファントムはIDカードを持っていませんでした。」

ジャミル:「ケージの中も確認してみましたが、なにもなさそうです。」

レオナ:「……空振りか。」

ジャミル:「それにしても……ケージから抜け出した挙句、物陰に潜んで背後から俺たちに襲い掛かってくるとは。」

ジャミル:「これまでのファントムよりも頭が回るようですね。」

レオナ:「ああ。下層に行くにつれて、連中も手強くなっている。」

ジャミル:「この先はより強いファントムに遭遇するかもしれない、」

ジャミル:「ということか……。」


PTM-477

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


がん! がん!


ジャミル:「中から音が聞こえる。IDカードを持ったファントムがいるのはこのケージか?」

ジャミル:「……静かになった。」

レオナ:「こっちの気配に気付いたか。」

レオナ:「扉を開けるなり攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。覚悟はできてるな。」

ジャミル:「はい。」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ジャミル:「……だめだ、IDカードが見つからない。」

ジャミル:「これもハズレだったか。」

レオナ:「ああ、面倒くさくてイライラする……。」

レオナ:「本当にあの毛玉だったら、この俺に手間をかけさせた礼をたっぷりしてもらうぜ。」

ジャミル:「グリムも気の毒に……」

ジャミル:「と言いたいところですが、俺も同じ気分です。」

ジャミル:「この埋め合わせはユウにしてもらいましょう。」

レオナ:「ああ、ソイツは名案だ。」


第2タワー 20話

── S.T.Y.X.タルタロス‐非常階段 ──


レオナ:「さすがに、ファントムどもも手強くなって来やがった。」

ジャミル:「……。」

レオナ:「どうした、さっきから黙り込んで。まさかへそを曲げたのか?」

ジャミル:「そういうわけでは……。」

レオナ:「ああ、ああ、そう無理するな。ショックだったろう?なにせ図星を突かれちまったわけだからなァ。」

ジャミル:「…………。」

レオナ:「可哀想に、心中お察しするぜ。」

ジャミル:「……あんたに…………」

ジャミル:「あんたに俺の何がわかるっていうんだ。」

ジャミル:「俺がこれまでどんな思いで過ごしてきたか! どんな苦渋を味わってきたか!」

ジャミル:「わかるわけがない! 誰にも! あんたと俺は違う!!!」

レオナ:「誰にも理解されないって、そうやって拗ねて、いじけて、言い訳し続けるのか?」

レオナ:「お前の事情は多少知ってる。どうせ自分は、カリムのせいで評価されてないって思ってるんだろう?」

ジャミル:「……この俺が副寮長で、あのカリムが寮長。その結果が、全部証明してる。」

レオナ:「ああ、今はそうだろうな。アイツは魔法も頭脳も出来が悪い。お前とは比べるまでもない。」

レオナ:「だけどアイツには、お前にない求心力がある。」

ジャミル:「求心力?」

ジャミル:「ハッ!」

ジャミル:「あんなの、ただお人好しなだけじゃないですか。それじゃ利用されて、つけ込まれるだけだ。」

レオナ:「誰が人柄の話をした。いいか、最高の求心力っていうのは……」

レオナ:「金だ。」

ジャミル:「金!?」

ジャミル:「た……確かにアジーム家が絶大な富と力を所有しているのは認めますが。」

レオナ:「金は魔法より確かで、不確定要素が少ない強力な力(パワー)だ。」

レオナ:「それに関しちゃ、俺よりもお前のほうが身にしみてわかってんじゃねえのか?」

ジャミル:「それは……。」

レオナ:「そしてカリムは今、その莫大な力を使いこなすための勉強の最中だろう。」

ジャミル:「使いこなす……。」

ジャミル:「……。」

レオナ:「後先考えずに行動する奴は愚かだ。だが、後先ばかり考える奴はもっと愚かだ。」

レオナ:「カリムのように直感で飛び出していく奴は、どう化けるか分からねえぞ。良くも悪くもな。」

レオナ:「飛びかかるタイミングを図りすぎて獲物を逃した時にする言い訳ほど、無様なものはないぜ。」

レオナ:「ハハッ」

ジャミル:「俺は……。」

???:「ギャオオオオ!!」

レオナ:「! おい、お悩み相談室は後回しだ! 構えろ!」


第2タワー 21話

── S.T.Y.X.タルタロス‐非常階段 ──


じゅわああ……


レオナ:「ジャミル、今の位置取りは悪くなかったぜ。」

レオナ:「せいぜい俺の後ろで震えてろ。お前にはそれがお似合いなんだよ。」

ジャミル:「俺は…………レオナ先輩の足手まといですか?」

ジャミル:「だとしたら、俺はここで離脱します。お荷物になるくらいなら、そのほうがいい。」

レオナ:「なんでそうなる……どうしてお前はそう極端なんだ?狭い世界で生きてきたせいか?」

レオナ:「もっと頭を使え。自分の実力を正しく認めて、その上で、どうすればいいか考えろ。」

レオナ:「いいか。例えばお前と同じ2年のラギーは、魔力自体は全然大したことはない。ちんけなもんだ。」

レオナ:「だが、アイツはそれを自覚してる。だから俺に媚びて俺を利用する。それは恥でも、悪いことでもない。」

レオナ:「ラギーの生き汚さは力だ。」

レオナ:「ジャックもそうだ。アイツは気取ったところもあるが今はまだ自分がボスの器じゃないとわかってる。」

レオナ:「だから必要なときには必ず俺(ボス)の指示を仰ぐ。素直で、可愛げがあるじゃねえか。」

レオナ:「……で? お前は?」

ジャミル:「…………。」

レオナ:「お前は1人でなんでもやれるのか?一体どれだけ自分に自信があるんだよ。それだけの努力をしたのか?」

レオナ:「言っておくが「俺はまだ本気出してないだけ」なんて理屈はもう通じねえぞ。」

レオナ:「自分で“そうじゃない道”を選んだんだろうが。なのにいつまで言い訳し続けるつもりだ?」

レオナ:「拗ねるのも、諦めるのも、一度本気であがいてからにしろよ。」

ジャミル:「…………まるで、経験があるように語るんですね。」

レオナ:「ふん……。」

ジャミル:「(俺はずっと、カリムが自分より上に立っていることが許せなかった)」

ジャミル:「(いや、カリムだけじゃない。他の全員だ)」

ジャミル:「(実力を発揮して評価されていく奴らを横目に、俺は頑張っても無駄なのにって……)」

ジャミル:「(必要以上の努力なんて、するだけ無駄だ。どうせ日の目を浴びることはない……ずっとそう思ってた)」

ジャミル:「(俺は……………………)」

ジャミル:「…………。」

レオナ:「はっ、いかにも悩んでますって顔しやがって。まあよーく考えることだな。」

レオナ:「お前は俺とは違うんだから。」


第2タワー 22話

── S.T.Y.X.タルタロス‐非常階段 ──


レオナ:「次の収容所が見えてきたな。地図によれば、これが最後のはずだ。」

レオナ:「強いファントムが収容されているのは間違いない。しっかり気持ちを切り替えろ。」

ジャミル:「はい。」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「あ? 真っ暗で何も見えねえ。」

ジャミル:「いったいどうしたんだ? すぐに明かりを。 はっ!」

ジャミル:「なっ……これは!?」

レオナ:「ケージが、粉々になってやがる。それも1つや2つじゃねえな。」

ジャミル:「これもオルトの仕業?でもどうして……」

ジャミル:「いや、待てよ。」

ジャミル:「……ケージの欠片に、氷の粒が付いてます。」

レオナ:「氷……さっきのタイタンの仕業か。」

レオナ:「あれで終わりとは随分拍子抜けだと思っていたが……面白いじゃねえか。」

ジャミル:「落ちたときの衝撃のせいか、ただ腹が立って暴れたのか……とにかくあたりがめちゃくちゃだ。」

ジャミル:「出口がひしゃげて開いたまま凍り付いている。」

ジャミル:「どうしますか?このまま収容所を抜けるという手もありますが……。」

レオナ:「…今はタイタンの気配に怯えてるが、しばらくすればケージから放たれたファントムたちが動き出すはずだ」

レオナ:「『タルタロス』は一本道。気付けばタイタンとファントムに挟み撃ちされる……なんざ想像したくもねえ。」

レオナ:「安全に進むために扉を閉めるぞ。ここは収容所。どこかに必ず、緊急事態用の施錠装置があるはずだ。」

ジャミル:「施錠装置……地図に確か……」

ジャミル:「ああ、書いてあります!」

ジャミル:「「緊急時に備え、遠隔で扉を施錠するキーを、Bー113の箱に……」……」

ジャミル:「えっ!?」

ジャミル:「施錠用のキーが、ない!」

レオナ:「何?」

レオナ:「……箱にブロットの痕跡がある。ケージから放たれたファントムの仕業だな。」

レオナ:「知恵が回るじゃねえか。俺たちがここを去ったあと、収容所を出て自由になるつもりらしい。」

ジャミル:「きっとどこかのケージに逃げ込んでいるはずだ。探しましょう。」


第2タワー 23話

PTM-65

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「静かだな。ケージの中から音はしないが……」

ファントム:「ジユウ……ジゆウがホシイ……」

ジャミル:「あっ! あれは……施錠キー!?」

レオナ:「当たりだな! キーを手に入れるぞ。」

ファントム:「ジユう……ほし……ホしッ……」

ファントム:「ほジイよおオオお!!!!」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「ちょこまかと逃げ回ってんじゃねえよ!!」

ファントム:「ギヤアあアアアアアア!!!」

ファントム:「ヒかリ……ソと……じユウ……」

レオナ:「悪く思うなよ。俺たちも命がかかってるんだ。」

ジャミル:「(やっぱり、レオナ先輩の魔法は凄い。威力が有るし、無駄もない)」

ジャミル:「(俺は……こんな人を「守ってやろう」なんて考えてたのか)」

レオナ:「おい、ぼーっとしてんじゃねえ。気持ちを切り替えろって言っただろう。」

ジャミル:「あっ……。」

レオナ:「施錠キーは?」

ジャミル:「……ありました! やっぱりさっきのファントムが持っていたようです。」

ジャミル:「これでこの収容所を封鎖できる。他のファントムたちが目覚める前に、外に出ましょう。」

レオナ:「ああ。」

レオナ:「落ちたタイタンは、地上を目指しているはず。」

レオナ:「遅かれ早かれ鉢合わせるだろう。」

レオナ:「これまでのお遊びとは訳が違う。覚悟しろよ。」

ジャミル:「……はいっ。」


PTM-96

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ジャミル:「階層が深くなるにつれて、ファントムが強くなっている。そのぶん、ケージの造りも頑丈だし……。」

ジャミル:「魔力の消耗は最低限にしないとな。どこを狙えば効率がいいだろう。」

ジャミル:「やはり魔力消費を減らすには、脆い部分をピンポイントで狙うしか……。」

レオナ:「さっきからなにをブツブツ言ってやがる。」

レオナ:「ったく、俺の手を煩わせやがって。」

ジャミル:「レオナ先輩!!」

ジャミル:「今俺を狙いましたね!?」

レオナ:「すばしっこさが自慢の蛇ならスルッと避けられるだろ? おら、ファントムのお出ましだぜ。」

ジャミル:「ああ、もう……調子が狂う人だな……!」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ジャミル:「ケージの中にも施錠キーはなさそうだな。」

ジャミル:「それにしても……」

ジャミル:「ケージの側面がかなり深く抉れている。」

ジャミル:「もし直撃を食らっていたら、俺は今頃どうなっていたか……。」

レオナ:「心配なら、今後は俺に背を向けないことだな。」

ジャミル:「この人、本当に味方なのか……?」


PTM-58

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ガタガタガタッ


ジャミル:「あのケージに入っているファントム……さっきからずっと暴れているな。」

ジャミル:「扉が開いた瞬間に飛び出してくるかもしれない。」

ジャミル:「注意しないと。」

ジャミル:「よし、やるか。」

ジャミル:「……ハアッ!!!」

???:「グギャアアアア!!」

レオナ:「フッ!」

ジャミル:「今、俺の髪を掠めたぞ!? 警戒はしていたが、まさかこんなギリギリを狙って撃ってくるなんて……。」

ジャミル:「あの人、絶対に面白がってやってるな……。クソ、とりあえずファントムどもを倒さないと!」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「施錠キーはあったか?」

ジャミル:「いえ、見当たりません。」

ジャミル:「そんなことより……」

ジャミル:「わざわざ俺を狙って魔法を撃つ理由をうかがっても?」

レオナ:「なにかあっても先輩が助けてくれる……なんて油断が命取りになる場合もあり得るからなァ。」

レオナ:「常に危機感を忘れないように、俺なりに気を遣ってやってるんだぜ?」

ジャミル:「心配には及びません。」

ジャミル:「レオナ先輩に背を向けるときは、常に細心の注意を払っています。」

レオナ:「そいつは結構。この先も気を抜かないことだ。」


PTM-72

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ジャミル:「次はあのケージですね。」

レオナ:「ああ。」

レオナ:「……フッ!」

ジャミル:「やっと調子が出てきたみたいですね、レオナ先輩。」

レオナ:「おかげさまで。手のかかる後輩に働かされて、だいぶ身体が温まったぜ。」

ジャミル:「お、俺のせい?」

???:「グルルルル……!」

レオナ:「ハッ、おしゃべりしてる暇はなさそうだ。いくぞ。」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「施錠キーは……」

レオナ:「チッ。どこにもねえ。ハズレだったか。」

ジャミル:「……レオナ先輩。」

ジャミル:「もしもこれまで、気が付かないご迷惑をおかけしていたのなら……」

ジャミル:「その……。」

レオナ:「はあ……なに濡れ鼠みたいなみっともない顔さらしてんだ。」

レオナ:「あれぐらいの軽口でしょげてんじゃねえ。そんなたまじゃねえだろうが。」

ジャミル:「……はい。」

レオナ:「図々しいんだかヘコみやすいんだか、よくわからねぇ奴だな……。」

レオナ:「めんどくせぇ。」


PTM-38

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ジャミル:「戦闘続きで疲れてきたな。ファントム入りのケージもまだ残っているし……。」

ジャミル:「はあ……。」

レオナ:「おやおや、だいぶお疲れのようだ。」

ジャミル:「ええ。誰かさんの人使いが荒いせいで。」

レオナ:「フッ、元気が残ってるのは口だけらしい。」

レオナ:「ケージを開ける役目は代わってやるよ。優しい先輩に感謝するんだなァ。」

レオナ:「ハッ!」

???:「グワアアアアッ!!!」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「施錠キーは……見当たらねえな。」

レオナ:「しょうがねえ、次を当たるか。」

ジャミル:「……さすがだな。ケージを開けるときも、戦闘中もまったく魔力に無駄がない。」

ジャミル:「厄介な人ではあるが……一緒に行動したことでいろいろと勉強させてもらった。」

ジャミル:「魔法士としての才能はもちろん、豊富な知識と冷静な判断力……」

ジャミル:「一口に寮長とは言っても、アイツとはまったく別のタイプだな。」


PTM-28

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ガタガタッ


ジャミル:「ケージの中でファントムが暴れていますね。」

レオナ:「早いところ倒しておくか。」

ジャミル:「わかりました。ケージを開けてきます。」

レオナ:「ああ。ファントムの迎撃は任せておけ。」

レオナ:「上手いところお前を避けてやれる保証はないが。」

ジャミル:「ご忠告どうも。では、いきますよ。」

ジャミル:「……ハッ!!」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ジャミル:「ふう、今回も手強かったですね。」

ジャミル:「施錠キーは……持っていないようだ。」

レオナ:「チッ、労力に見合わねえにもほどがある。」

レオナ:「ふぁ……さすがにダルくなってきたな。」

レオナ:「ふー……。」

ジャミル:「レオナ先輩、空のケージのうえに座り込んでなにを……。」

ジャミル:「まさかここで寝る気じゃないですよね?」

レオナ:「そうだと言ったら?」

ジャミル:「笑えない冗談はよしてください。」

ジャミル:「ほら、先を急ぎますよ。」

レオナ:「そうカリカリするな。さすがに寝る気はねえが、こういうときこそ休息が必要なんだよ。」

レオナ:「お前も休めるうちに休んどけ。」


PTM-47

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「おら、開いたぞ。」

ジャミル:「……ファントムが出てきませんね。空のケージだったのか?」

レオナ:「物陰で怯えて震えているか、それとも俺たちの隙を狙っているか……」

レオナ:「あたりにそれらしい気配はないが。」

ジャミル:「ケージの奥に留まっているのかもしれません。」

ジャミル:「仕方ない、俺が…………。」

レオナ:「「俺が」?」

ジャミル:「……。」

レオナ:「覗き込んだが最後、頭からガブリと食われちまうかもしれないぜ。」

レオナ:「出てこないなら引きずり出してやればいい。」

レオナ:「……こんなふうにな!」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「このファントムは施錠キーを持ってなかったようだな。」

レオナ:「チッ、手間取らせやがって。」

ジャミル:「ケージに隠れて出てこなかったのは、俺たちの不意をつくため……でしょうか。」

レオナ:「さあな。あんな姿になってもなお、生き延びたかったのかもしれないが……俺たちの知ったことじゃねえ。」

レオナ:「いずれにせよ、知能のあるファントムが混じっているのは確かだな。」

ジャミル:「これまでみたいには、いかないってことですね……。」


PTM-73

── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


ガシャン! ガシャン!!


ジャミル:「この音は……。」

レオナ:「だいぶ凶暴なファントムが閉じ込められているらしい。あのケージが壊れるのも時間の問題だな。」

ジャミル:「では、出てきたところを迎撃しましょう。」

ジャミル:「先制攻撃を仕掛けられるし、魔力も温存できてちょうどいい。」

レオナ:「いいぜ。お前の案にのってやるよ。」


ガシャン! ガシャン!!


???:「グワアアアア!!!」

レオナ:「思った以上に時間がかかったな。まったく、待ちくたびれた……」

レオナ:「ぜッ!」


── S.T.Y.X.タルタロス‐収容所 ──


レオナ:「フン、他愛もない。」

ジャミル:「施錠キーも持っていませんでしたね。」

レオナ:「ククッ。」

ジャミル:「?」

ジャミル:「……なにかおかしいことでも?」

レオナ:「ずいぶんと感情表現が豊かになったと思ってな。」

レオナ:「面倒くせえって気持ちを隠そうともしねえ。」

ジャミル:「そりゃ……こんな状況じゃ、疲労もたまりますし……」

ジャミル:「気分を害したのならお詫びいたします。」

レオナ:「いつものすかした態度よりは鼻につかない。」

ジャミル:「すかし……!?」

ジャミル:「別に普段もすかしているわけでは……」

ジャミル:「さっさと次のケージに行きましょう!」


第2タワー 24話

── S.T.Y.X.タルタロス‐非常階段 ──


レオナ:「うっ!」

ジャミル:「この息も凍りそうな冷たい突風は……」

タイタン:「コオラセテヤルウウウ!」

ジャミル:「タイタンだ! 階段を這い上がってくる……!」

ジャミル:「レオナ先輩! ここは……」

ジャミル:「ここは……。」

レオナ:「……。」

ジャミル:「ここは!!」

ジャミル:「よろしくお願いします!!!」

レオナ:「はははっ! 身の程をわきまえてきたじゃねえか。」

レオナ:「いいぜ、任されてやる。」

ナビ:「操縦者認証。全魔導回路、および安全装置の

ロックを解除。照準サポートモードで起動します。」

レオナ:「見せてやるよ。お前と俺の、」

レオナ:「格の違いってやつをな!」


第2タワー 25話

── S.T.Y.X.タルタロス‐非常階段 ──


タイタン:「ウグオオオオオオ!!!!!」

ジャミル:「タイタンが……『タルタロス』に、落ちた……。」

レオナ:「はあっ……はあっ……」

レオナ:「今度こそ終わりだろう……」

レオナ:「ウッ!」

ジャミル:「あっ、レオナ先輩!先輩が膝をつくなんて……大丈夫ですか!?」

ナビ:「『雷霆(らいてい)の槍』のバッテリー残量が低下しています。残り10%です。」

ジャミル:「当然か。持ち上げるだけでも消耗する槍を1人で、……しかも2回も使ったんだ。」

ジャミル:「地図が正しければ、この先にまた格納庫があります。そこで休息を取りましょう。」

レオナ:「はあ、やっと一息付ける。」

レオナ:「おい、蛇野郎。あそこにあるステーションで『雷霆(らいてい)の槍』を充電しておけ。」

レオナ:「この先、どんな奴が待ち受けているかわからないからな。」

ジャミル:「はい。わかりました。」


ガチャ……


ジャミル:「あの……レオナ先輩、先ほどはありがとうございました。確かに俺は、驕っていたようです。」

レオナ:「ふうん、やけにしおらしいじゃねえか。」

ジャミル:「はい……俺はずっと、俺以外みんな馬鹿か無能、あるいは怠惰でぐうたらな奴だと思ってました。」

レオナ:「最後のは誰のこと言ってんだ? ああ……?」

ジャミル:「でも……それは、俺がそう思いたかっただけなのかもしれない。」

レオナ:「少しは理解できたか? 自分の立場ってやつが。」

ジャミル:「ええ。俺はまだ、勝負の場にも上がってなかった。つまり……」

ジャミル:「俺には誰よりも伸びしろがあるって話ですよね?」

レオナ:「ハハハッ! 言いやがるぜ!」

ジャミル:「ふっ。生き汚さは力、なんでしょう?」

レオナ:「上等だ。」

レオナ:「とりあえず、充電が終わるまで休憩するぞ。カイワレ大根どもはもう目の前だからな。」

ジャミル:「……はい!」

レオナ:「それじゃあまず飯だ。格納庫の中にある備蓄食料を探してこい。当然俺の分もだ。」

ジャミル:「は、はい。」

レオナ:「ただしパサついた味気ねえ携帯食料なんか持ってくんなよ。俺の舌は繊細なんだ。」

レオナ:「あと今は水よりスポーツドリンクの気分だ。持ってこい。隅々まで探せばどこかにはあるだろ。」

ジャミル:「え……。」

レオナ:「その次は寝床だな。この俺をこんな固い床の上で眠らせる気か?」

レオナ:「どこかで毛布を見つけてくるなり、てめえが上着を脱ぐなりして、俺の寝床を整えろ。」

ジャミル:「……。」

レオナ:「んで学園に戻ったら……」

ジャミル:「学園に戻ったら!? そこまで面倒みるなんてごめんですよ!!」

レオナ:「そうか? しゃしゃらねえなら、俺が使ってやっても良いと思ったのになァ。」

レオナ:「くくっ、断っていいのか?俺についた方が得かもしれないぜ。」

ジャミル:「結構です! 断固として辞退します!考えただけでゾッとする!」

レオナ:「そこまで言うか……。」

ジャミル:「俺は、誰かにかしずいたまま終わる気はありませんから。」

ジャミル:「……これまでも、これからもな!」


第2タワー 26話

ジャミル・レオナ:「……。」


ドゴオオオン!!!


ジャミル・レオナ:「!?」

ジャミル:「今のはなんの音だ!?」

レオナ:「『冥府』の方から聞こえてきたな……」

レオナ:「おい、『雷霆(らいてい)の槍』の充電は!」

ナビ:「現在、充電は30%完了しています。」

レオナ:「チッ。燃費が悪い上に充電も遅いときた。」

ジャミル:「すごい振動だ……」

ジャミル:「室内にいると危険です!外に出ましょう。」

レオナ:「まあ、何もないよりはマシか。槍はこのまま持って行く。」

レオナ:「行くぞ。」


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