【白猫】Wings of hearts Story 中編
Wings of hearts Story2
目次
story4 ムカつくやつは
ふあ……
……おはよう、レイン。
(…………)
……あさごはん、つくろ……
……?外にだれかいる……?
だれ……?
……チッ、起きてきやがった。
あ……くだもの屋の……!
ダンナ。こいつも悪魔なんですかい?
ああそうだ。まだ子供だが……もう一人の方がやべえ。
え……なにをいってるの?
おいガキ。あいつはどうした。
いえでねてるけど……
よし、早いとこ済ませちまおう。
<村人はロニーの家の周りに油を撒き始めた。>
ちょ、ちょっと……!なにしてんだよ!
悪魔め……!家ごと燃やしてやる!!
悪魔!!この村から出ていけ!!
うそでしょ……?や、やめて……!やめて!!
俺の店を潰しやがって……!同じ目に遭わせてやる!
それは、おまえが ぼくを どろぼうあつかいするからだろ!
おい、もう充分撒いたろ。……よし、みんな、火をつけろ!
なんだよ……なんだよ!せっかく、ころされるところを助けてやったのに!
<ロニーを押しのけ、村人たちがたいまつを手に家へと近づいてゆく。>
全部燃えちまえ!!死ね!!悪魔!!
…………
レインのいうとおりだ……ムカつくやつは……しんだほうがいいっ!!
レイィィィン!!
うるせえ、ガキ!!お前はあとでたっぷりと――
外がうるせーから何かと思えば……ガキィ、オメーいい感じじゃねーか!
レイン!!こいつらみんな……ブチのめしちゃおう!!
ハハハハハッ!そうこなくっちゃナァ!?
……おい。話が違うぞ。なんだよこいつ……!
いや……!殺される!殺されるー!
逃げろおおおお!!
おい!逃げんな!!くそ、腑抜けどもが……!
まずはこいつだな?
やって!ねえ、やっちゃってよ!
…………ひいいぃぃぃ!!
……いいね、追いかけっこだ。レイン、あいつらをいっぱい怖がらせてあげよう。
……フン!
そうだ……そうだ!!ぼくにはレインがいる!!
ぼくはなんだってできる!!なんだって思いのままだ!
お父さんとお母さんも、きっとぼくを見てくれる!
――レインさえいれば!!
…………?
(何だ……?)
story5 男気あふるる
<――時は少し前にさかのぼる。>
パトパトパトパトパトロ~ル♪朝っぱらからパトロ~ル~♪
アイリス、いじょーがあったらすぐに知らせるのよ!
うん。……いまのところは大丈夫だね、主人公。
<主人公たちは、ギルドの依頼で街の警備を請け負っていた。>
……このところ、警備の依頼がぐんと増えたよね。
悪いやつが のさばってるのよ!ゆるせないわ、ほんまにもー!
すいませーん!通りまぁぁぁぁす!
なにかが猛スピードではしってったわ!
おもしろそーだからおいかけるわよ!ぎにゃー!!
あ!ま、まって!主人公、私たちも!
いそげいそげいそげいそげ~!
……だいぶ遅れてますね!もうすでに、悪魔は人間に接触しているはず……!
いまならまだ間に合います!……間に合わせらーい!!
はっ……はああ……ひいい……ふうう……
ばあちゃーん!だいじょーぶぅぅぅ!?
苦しいんですか!?大丈夫、わたしがすぐに治したりますよ!
背中がカユイ。お嬢ちゃん、すまんがカイてくれんかのう。
……あら。そうなのですね……――では、カキカキします!
おほ~う……ごくらくごくらく…………オヤ、天使が見える。気持ちよすぎてお迎えがきちゃったかい?
いーえおばあさん!あなたはまだまだ長生きしますよ!わたしが保証したります!
ありがたやありがたや……
失礼しまぁぁぁす!
おまち!!
待ちます!!
……天使……?
はい、いかにも!わたしはルカ・フォルテス。古都<ニカエア>からやって参りました――
人々を守り、悪を退け、正しき心へと導く守護天使です!
きもちのいい自己しょーかいね!アタシはキャトラよ。
アイリスです。こっちは主人公。
ああ!!あなた方が、飛行島の……!?
私たちをご存知なんですか?
はい!ガレアさまから色々話は聞いていました!うわ~、お会いできて光栄です!
あ、ガレアってかみさまなんだっけ?
急いでる様子ですが、なにかあったんですか?
そうそうそう、そうなんです!わたしはいま急いでいるんです!
じんじょーじゃないわね!ついてってみようかしら!
警備の仕事もひと段落したし……ルカさん、よければお力になりますよ。
本当ですか!?うわ~、ガレアさまの言うとおり、親切な方たちです~!
とりあえず、じじょーを説明してくれるかしら?
わかりました!では、走りながら説明しましょう!
あ!魔物の心配はいりませんよ!みなさん全員――
わたしが守るったるよーい!
守るったるよーい!?
参りましょぉぉう!
story6 遭遇
……そんな訳で、わたしはその悪魔を止めに古都を出立してきたんです!
はあはあ……悪魔といっても、最近は色々な人がいますよね!
はい!不の感情を吸収して生きる、新世代の悪魔のことですね!
はあ、ふう……ただ、それ以外の悪魔は、人間にその存在を忘れられないようにしなければいけない、と!
……ですから、彼らは様々な手段で人間に接触しているのですが!
はあはあはあ……いま追ってるやつが、かなりヤバイ、と!
ええ、それはもう!……あの、少し休みますか!?
そーね!話しにくいったりゃありゃしないわ!はあはあ!
汗冷えしてはいけません。焚き火をしましょう!
でも、あたりいちめん雪がつもってるわよ。
えっさほいさえっさほいさ!!えっさほいさー!!
<ルカは持っている杖で雪かきを始めた!……猛烈な勢いである!>
荒々しいわね!!
<ほどよい焚き火スペースを確保するルカ。すると今度は――>
はいっ!はいっ!はーーーーい!!
<まるで別の生き物のように、するすると木に登っていく!>
ごめんなさいね~。ちょっと、剪定させてくださいね~。
<ルカは何本かの枝を切り落とす。――手刀である。>
荒々しいわね!!ていうか飛べば!?
…………
……
ルカさん、ありがとうございます。あったかいです♪
……アンタってさ、天使のわりにずいぶんとサッパリしてるわね、色々と。
あ、それよく言われるんですよね~。
なんか、男気!ってかんじね。
……古都では<男気天使>で通っております……
私はとっても素敵だと思いますよ、ルカさん。凛としてるというか……
そ、そ~ですかね~。へへっ!
……あ、そういえばわたし、握り飯を作ってきたんです!食べますか?握り飯。
握り飯て……
助けてええええええ!
死にたくねえよお~!
な……なにごとです!?
ははははは!まてまて~!!
おいガキ、そろそろいいだろ。この辺でさっさと――
……!
あ、あなたは……<悪魔殺し>!!
こいつが……!
……?おねーさんたち、だあれ?村の人じゃないよね。
お子様さん!!……えーと、お名前は!?
ぼくはロニー。ねえおねーさん、きれーな羽だね。おねーさんも悪魔なの?
わたしは、あなたを守りにきた天使です!
さあ、もう安心ですよ!ロニー君、こっちへおいで!
そうはいくかよ。
……ずいぶんと遅かったじゃねえか。……クソ天使様よお。
story7 守護天使と悪魔殺し
<悪魔殺し>。その子を解放しなさい。
解放?レイン、このおねーさんはなにをいってるの?
オメーは黙ってろ。……テメー、守護天使だな?ハハ、こいつぁいい。
渡しなさいと言っています。そして大人しく、国へ帰りなさい。
ずいぶんと偉そうじゃねーか?ああ!?
――!
……んだテメーは。
……おー、いいオーラ出しやがる。テメーも俺と遊んでくれんのか?
ククク……ブチのめしてやるよッ!
<――来る!>
この方たちは関係ありません。攻撃するならわたしを狙いなさい。
……さあ、ロニー君。こっちへ来るのです。
させるか!
お、おねーさん!ぼくは行かないよ!
レインといっしょに、せかいをせーふくするんだ!ね、レイン!
……悪魔!言葉たくみに、この子の精神を支配しましたね!?
好き勝手いってんじゃねえっ!
いい機会だ。守護天使と悪魔殺し……
どっちの力が上か、試してみようじゃねえか!!
みなさん!ここはわたしに任せてください!
で、でも……
大丈夫。わたしは守護天使――
命に代えても、お前ら守ったるかんなああああああ!!
レ、レイン――
どっか行け、クソガキ。チラチラ視界に入られると気が散ってかなわねえ。
……うん……
ど、どーする!?
……私たちも、まずは下がりましょう。
…………
……
<雪が舞う白銀の空で、天使と悪魔は織烈な戦いを繰り広げていた。>
オラァッ!!
せぇーいっ!
ラチがあかねえ……!
<レインは膨大な<気>を全身に溜め――>
ラァッ!!
<渾身の一撃を叩き込む!……しかし!>
はっ!!
<神々しい光を放つ純白の翼がルカを包み込むと、ブ厚い防御壁を形成した!
破れぬ壁に、巨大な斧はギリギリと悲鳴を上げる――>
あーーー!ウザてえんだよ!!
あなたの刃は、わたしには届かない……!あきらめる事ですね!
…………
<レインはその翼をはためかせ、何事か測るようにゆっくりと地上に舞い降りた。>
どうやったらテメーをブチのめせるんだろうなぁ。
はあ、はあ……
!!ロニー君、来ちゃだめ!!
もう……もうやめてよ!!
story8 尻拭い
おい、クソガキ!俺の視界に入るなっつったろ!
レイン、もうやめようよ!そんな人はほっといて、早くさっきのやつらを――
ロニー君!目を覚まして!あなたはこの悪魔に――
おねーさんも、もうレインと戦わないで!……おねがい!おねがいだよ……
レインは……ぼくのたったひとりのともだちなんだ!!
えっ……
…………何が友達だクソガキ……
……!
ほら、いこうよレイン!ぼくに力をかしてくれるんでしょ!?
……ねえ、あなた達は……
やーっと追いついた!ロニーったら足がはやいのね!
ルカさん!大丈夫ですか!?
「だいじょうぶじゃないんじゃな~い?」
だってぼくが来たんだもの。
エ……エルゴラム様!
レインくぅぅぅぅぅ~~ん。甘いよぉぉぉ。甘すぎだよぉぉぉ。
ずっと<覗いて>たけどさぁ~。な~にをチンタラやってんだよぉ。仕事できなさすぎぃぃぃ~。
お前は…………エルゴラム……!
あ、守護天使ちゃんだ。ぼくの名前知ってるんだね~。ありがたや~。
な……なんなの!?こいつ!!
<悪魔殺し>と同じ……<サタニアス>に住む悪魔です。
こんな無能と同じにしないでくれる?いちおー、上司だし。
中間管理職って辛いよねー。部下の尻拭いをしなきゃなんないんだから。
あ、愛の女神ちゃんは元気?昔はよく一緒にお茶会とかしたなー。してないけど。
ふざけないで!
エルゴラム様!俺はまだ――
あーいいっていいって。言い訳なんか聞きたくない。
あのさあ、120点の仕事に時間をかけるよりさあ、70点の仕事をパパッっと持ってきてほしいのね、ぼくは。
今のちみ、10点。
な、なんなの……!?レイン、この人はだれ……?
ぼくはね、レイン君の味方だよ。つまり、きみの味方。
怖がらなくて大丈夫だよ~。だからこっちにおいで~。
う、うん……わかった……
!!ロニー君、行ってはダメ!!
ねね、ロニー君。きみの願い……ぼくがすぐにでも叶えてあげる。
えっ……
ぼくってば、彼なんかよりずっと役に立つんだ。せかいせーふくなんてあっという間だよ?
で、でもぼくはレインと――
まあまあまあまあまあまあまあ。そんな事いわずにさ~。
……レインといっしょじゃなきゃ、やだ……
(――おい。こいつら見張っとけや。後は俺がやっからよ)
……わかりました。
(みなさ~ん。……変なマネしたら、ガキンチョの命、いただいちゃうからねん♪)
そういう訳だ。大人しくしとけ。
ひ、ひきょーな……!
story9 揺れる心
さて……ロニー君。おじさんが、本当の事を教えてあげよう。
ほんとうのこと……?
この男……レイン君はね、きみの事をこれっぽちも考えていないんだよ?
だって、せかいせーふくなんてする気はないんだもの。
…………
コイツはねえ……力が弱すぎるんだよ。――人間を支配する力がね。
人の気持ちね、理解する事ができないんだよ~。きみの寂しさ……憎しみ。
そんなもの知ったこっちゃないって感じ。身に覚えがあるだろ?
で、でも……
はっきり言おうか。……レイン君は、きみと友達になるフリをして、きみの魂を食べようとしているんだよ。
ロニーくぅぅん。きみは騙されているんだよぉぉ~?
エルゴラム!!
黙れ。
う、うそだよね……レイン。
うそじゃないぉ~。……ねえ、コイツといたら、きみはいつまでもひとりぼっちだよ?
――お父さんとお母さんは、戻ってはこないよ?
!!
(だめ、このままじゃ……!)
……妙なマネはするなよ?
(……レイン!……あなたは、本当は……!)
……やだ……そんなの、やだよ……
やだよねえ?お父さんとお母さんに帰ってきてほしいよねえ?
……おじさんの力を使いなよ。そうすれば、二人はきっとまたきみを愛してくれるよ?
……どうすればいいの……?
きみの魂をちょこっとおじさんに預けてくれればいいんだ。だいじょうぶだいじょうぶ、ホント、ちろっと預かるだけだから。
ああ、かわいそうなロニー君。……大丈夫!おじさんがウマイ事やってあげるからね……
<エルゴラムはロニーの頭をゆっくりとなでた。>
さあ選ぶんだ!!レインとおじさん、どっちがいい!?
…………
……おじさん……
…………!
(まただ……!何かが、俺を……!)