【黒ウィズ】聖サタニック女学院 Story1
聖サタニック女学院 Story1
聖サタニック女学院 Story4
story1 初級ニンゲン降臨
な、何が起こったにゃ?
クエス=アリアスでギルドの仕事を講け負っていると、君は突然、怪しい光に包まれた。
包まれたと思ったら……。
気づけば、異形ともいえる生き物が君を取り囲んでいた。
まじまじとこちらを見る目には、いったいどんな感情が宿っているのか。
友好か。敵対か。容易には判別がつかなかった。
少なくともここは、クエス=アリアスではない。
これはまずいにゃ……。
とウィズは君に囁く。
ここに来た理由は何であれ、確かにこれはまずい状況である。
もし君の周囲の異形たちが、自分を敵だと判断したら、ただではすまないはずだ。
pど、どうした!一体何があった?
駆けつけてきた青年が君の前に立つ。彼もどこか普通とは違った。
「バブロ先生……。へ、変なの呼んじゃった……。
pこ、これは……。に、ニンゲン?
「ニンゲン……?これがニンゲン?初めて見た。
ざわついているにゃ……。私たちが珍しいみたいにゃ。
どうやら相手の方も、自分たちの登場に驚いているようだった。
このままやり遇ごせればいいのだが……。と思った矢先、
キャーー! ニンゲン!!
ひとりの生徒が悲鳴を上げる。
それを契機にして、連鎖的に他の生徒たちにもパニックが波及していく。
キャーー!ニンゲン!コワいー!
こんなに怖がられるのも変な気分にゃ。
ウィズの言葉も困惑の色が強い。君も同じ気持ちだ。
まさか怖がられるとは思いもしなかった。叫び出したいのは、むしろこちらである。
そんな風に思いながら、君は頬をかいた。
ぶっ殺せー!
あれ? と君は耳を疑う。恐れの混じった悲鳴が、突如狂乱的な怒声に変わったのだ。
ぶっ殺せ、生費にしろ、捕まえろ、なんだかよくわからない憎悪の声が四方から君に投げかけられる。
その場の緊張感が徐々に高まっていくのがひしひしと伝わってくる。
このままでは……。
pおい。お前たち……。落ち着け!ニンゲンは悪さはしな……。
うるせー!邪魔だ、どけー!
異形たちを止めようとする男性の声は空しく響くだけだった。
君を取り囲んだ異形たちが一斉に飛びかかってくる。
な、なんでこうなるにゃ!
***
不気味な意匠が施された部屋を、縦横に飛び交う異形の者たち。
素早い動きだが、捉えられない速さではない。君が手を懐に忍び込ませる。
だが君を制するように、異形の青年が君の手を掴む。
pやめろ! ニンゲン。あの子たちは僕の生徒だ。手を出すのはやめてくれ。
僕が説得する。
彼の熱意のこもった瞳、真摯な言葉に、君は手を引くことを決める。
彼も君を見て、静かに頷くと、「生徒たち」へ向き直る。
p……みんな、聞いてくれ。
邪魔だ、ぼけー!
pガッ!!!
混乱した生徒の一撃が彼の脳天を直撃する。
君の傍に倒れ込んだ彼に触れてみる。
死んでいる……?
無慈悲過ぎるにゃ。
だが彼が死んだところで、生徒たちの興奮は収まらない。
むしろ熱狂は増した。そんな気配すらある。
こうなれば、多勢に無勢とはいえ、やるしかない。
U待ってニンゲン。私たちが手伝ってあげる。
突然生徒の中から君の隣に並び立つ少女が現れる。ここにやって来て、最初に見た少女である。
s元々はアタシたちが呼び出しちゃったもんね。
T責任は取らなきゃ。
なぜだかわからないが、どうやら彼女たちは君に加勢してくれるようだった。
この際、助けは猫の手でも借りるにゃ。
そうだね、と君は答え、四方を取り囲む異形たちを見据えた。
***
Uよーし!これで全員大人しくなったかな。
狂乱状態だった生徒たちも、彼女の豪快なー撃を食らうと目が覚めたようだった。
見た目に似合わない怪力の持ち主だった。
そういう意味では、彼女も異形と呼べるかもしれない。
Tでもやり過ぎちゃった子もいるね……。
Uあー……。
確かにぐったりしている生徒もいる。
Uウリちゃん……。気にするな。
Tいいのかなあ……。
よくはないだろうなあ、と君は思う。
ふと、君はあの先生のことを思い出す。可哀想なことになってしまった。
彼が倒れていた方を見るが、なぜかそこには何もなかった。
あれ?どこ行っちゃったにゃ。
sねえ、ニンゲンさん。あなた怪我はない?
君は微笑んでから、頷く。
Uよかったよぉ!
私たちが呼び出したのに、ズタズタにされて、ゴーモンとかされたら、ちょっとショックだもんね。
それは……。ちょっとショックじゃすまないにゃ。
Tあ、その猫喋るんですね。
いいの?と君はウィズに聞く。
ウィズは、いつもは猫として振る舞うことが多い。隠さなくてもいいのだろうか。
いいにゃ。こんな変なところでわざわざ隠す必要もないにゃ。
ウィズの言う通り、ここはクエス=アリアスの常識とはかけ離れている世界のようだ。
猫が喋ることも、特に驚く様子がない。
君は改めて彼女たちに自己紹介する。
Uへえ? ニンゲンにも名前があるんだ。私はミィア。
Tウリシラです。
sシルビーよ。
彼女たちが自己紹介を終えると、突然君の周りに霧が発生する。
人のような形を形成した。
霧はさらに濃くなっていく。やがて完全な人の姿。あの青年の姿に変化する。
pどうやら騒ぎは収まったようだね。
何事もなかったように彼はそう言った。
sもう先生、簡単に死に過ぎ!
pははは。でも何度でも甦るから、許してくれよ。
とんでもない会話をしているな、と思いながら、君は彼らの様子を見ていた。
Tパブロ先生は霧の魔人なんです。実体がないから死んでもしばらくしたら復活するんですよ。
納得し難い説明だが、これがここの常識なのだろう。君は自分の中の何かと折り合いをつけた。
なんだか変わった人たちが多いにゃ。で、一体ここはどこにゃ?
pここは聖サタニック女学院。魔族の女の子が通う由緒正しい学校だよ。
魔族の学校……。なるほど。だからこんなに変わった人たちが多いのか。
Uねえ、先生。このニンゲン、私たちのクラスで飼っていい?
pおいおいおい、いきなり何を言い出すんだ。
ホントに……。と君は思わず口に出しかけた。
Tでもこのままじゃ、他の生徒にニンゲンさんが殺されちゃいますよ。
pうーん……。それもそうだな。ニンゲンは一度死ぬと甦れないというし……。
大抵の生き物はそうだと思いますが……。と君は補足した。
pよし、わかった。いまからこのニンゲンは学級飼育の生き物だ!
命の大切さを学ぶいい機会だ。ちゃんと世話をするんだぞ!
「「「やったー!先生大好き!
……なんかすごく変なことになったにゃ……。
こちらの意見は聞いてもらえそうにないなあ。嬉しそうに飛び跳ねる少女たちを見ながら、君は諦めの吐息を吐いた。
ふと、妙な声が聞こえた。乱雑に散らかった教室のどこかから聞こえる。
「じゃしん……こー……りーん。じゃしん……こー……りー。」
幼い子どもの声……。君は声のする方へ行ってみる。
「じゃしん……こーりーん……。
片隅で小さな女の子が眠っている。生徒のひとりだろうか?
ところが眠っている少女を見て、ウリシラは言った。
T誰……? この子?
生徒、というわけではないようだ。
story2 ニンゲンって……?
聖サタニック女学院にやってきた君は、「学級飼育のニンゲン」としてクラスに滞在することになった。
そもそも学級飼育ってなんにゃ?
s学級飼育っていうのは、クラスのみんなで生き物を育てることだよ。
生き物……。まあ、間違いではないね。と君はウィズに同意を求めた。
キミがそれでいいなら、私は何も言わないにゃ。どうせ私はいま猫にゃ。
U学級飼育ならこの子も同じです。
と、ウリシラは奇妙な生物を君に見せてくれた。
Mまぷう。
これと同じ扱いなのか、と少し君は残念な気持ちになったが、口には出さないでおいた。
Uこれはマパパといいます。ちょっと触ってみてください。
君は言われた通りに、その奇妙な生物に触れてみる。君は小さな驚きを感じる。
Uふふ。少し湿っているでしょ。マパパはいつもちょっと湿っているんですよ。
ひんやりしていていいね、と君は答える。
Uあと、三日に一度くらいの頻度で分裂します。
それじゃあ増えて仕方がないにゃ。
mまあ、でもここは魔界だから。
どういう意味だろう。あっけらかんとしたその言葉の意味が、君にはちょっとわかりかねた。
mねえねえ、話は変わるけどさ。ニンゲンって、何食べるの?
どうやら魔族と言ってもまだ若い彼女たちは、ニンゲンに興味津々のようだった。
色んなものを食べる、と君は答えた。
s色んなものね。魔族が食べるものと同じものを食べるのかしら。
mどうなんだろ?育てるにあたって大事だよね、そういうの。
豚の血は飲む?
飲まない。と君は答える。魔族はそんなものを飲むのだろうか?
こちらから訊ねてみた。
m飲まないよ。
と即答された。
なんで飲ませようとしたんだろう……。と君は頭を抱える。
sところでさ。ニンゲンって何?
う……。
かなり難しい問題だったので、君は素直にわからないと答えた。だがさらに質問が投げかけられる。
m何のために生まれてきたの?
sどこへ行き、何をするの?
いま、幸せ?
どれも答えづらい質問ばかりだ。君はわからない、と答えるだけで精一杯だった。
sニンゲンって難しいのね……。
まあ、そうです。と君は素直に認める。
Uねえ、みんな、こっちの子の目が覚めそうだよ。
そうだった。君は思い出す。
君以外にもあの事故で、この学校に現れた子がもうひとりいた。
なかなか目覚めないので、安静にさせていたのだ。
Uあ、起きるよ。
少女の瞼がゆっくりと開く。
Rう……ん?
mねえねえ。豚の血、飲む?
R……ぶっ飛ばすぞ、この野郎。