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【黒ウィズ】聖サタニック女学院 Story2

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん



story



 生徒たちについて、校舎の外を移動していた。君と……。

rだーかーら……!あたしは邪神だって言っているでしょ!

 君と同じ時に現れた邪神と、で。

mジャシン?ルルベルみたいな?

rそのルルベル本人だって言ってるの!

 君は目の前に見える巨大な像を見た。

彼女たちの話によると、あれは邪神ルルベルを模して造られたものらしい。

聖サタニック女学院を開いたといわれる邪神。その像がこの建物の中央にドンと鎮座していた。妖艶な雰囲気を醸し出している像であった。

rねえ、そっくりでしょ!

m全然。まったく。何の要素も被ってない。

rえー……。

 面影らしきものは感じるが、像と違って、彼女は子どもっぽい姿だ。別人だと言われてもしかたない。

s残念ながら、似ているとは言い難いわね。

本人は頑なにルルベルであると主張するが、冗談半分でしか信じてもらえず、唇を噛んでいる。

Uこの子も私たちが呼び出しちゃったのかな?

sかもしれない……。

mじゃあ、この子も学級飼育だねー。学級飼育のジャシーン!

 邪神だろうが、ニンゲンだろうが、彼女たちにとってはあまり関係はなさそうだ。と君は思った。

rふざけるなー!……ん?ふんふん、ふんふん。

 言葉の途中で、ルルベルがミィアの匂いを嗅ぎ始める。何か気になることがあるようだった。

rあんたなんかスローヴァの匂いがするぞ。

ミィアを指して、ルルベルはそう言った。

Uミィアちやんはヤガダの一族だよ。

 それを聞いて、ルルベルははたと考え込む。

rズローヴァと……こいつ……。こいつと……ズローヴァ。

全然似てない!

mああ、それは私が直系の一族じゃないからかも。ウチって大ズローヴァの分家なんだよ。

Uへえ。ということは本家の人は、ああいう牛型なんだね。

mううん。人型だよ。

U…………?

r(説明になってねえ……)


 ***


 そんな他愛もない話をしているうちに、校舎の廊下に辿り着いた。

入った瞬間、君は張りつめたような空気を感じる、何かある。達う、誰か来る。

廊下にまばらに立っていた生徒たちが突如、廊下の両脇に避け始める。


自然とできた列の間を通り、歩いてくるふたりの生徒の姿が見える。

sあれが、この聖サタニック女学院の花。全生徒の憧れよ。

 と、シルビーが君に説明してくれた。

ひとりはイーディス・キルティ。

もうひとりはカナメ・バルバロッサ

ふたりとも最上級生だそうだ。確かに他の生徒とは一段達う雰囲気がある。

そんなふたりが、君の前で足を止め、君を見すえる。

Uこ、これはクラスの学級飼育の……。

 彼女たちの様子から、危険を感じたのか、ウリシラは弁護するように説明を始めた。

I……のニンゲン。

説明は不要とばかりに、イーディスはウリシラの言葉を継いだ。

k初めて見たわ。イーディス、あなたニンゲンを見たことある?

Iないわ。

 何気ない会話だが、まるで隙がない。只者ではないことはすぐにわかった。

wそんなにニンゲンが珍しいのかにゃ?

kわお!猫が喋ったわ!

Iこの猫もニンゲンなの?だから喋るの?

wただの喋る猫にゃ。

I猫ニンゲン?

w猫にゃ。

Iふうん。面白い。

k本当にそう思ってるの?

Uあの……!大事に育てますから……その……。なんていうか……。

kあら?イーディス、あなたが怖い顔するから、ニンゲンを取り上げられると思ったみたいよ。

 あてつけを言われた少女は、ちらりと目配せを送る。

k大丈夫。ただ興味があってニンゲンを見に来ただけよ。

I取り上げたりはしない。

 感情の読み取りにくい口調ではあるが、どこか安心させる響きがあった。

その証拠に生徒たちは、一様に胸をなでおろしたようだった。


「それは聞き捨てならない話だな!」

そんな空気を切り裂くような声だった。

見ると、毒々しい殺気をむき出しにした少女がお供の生徒たちとそこに立っていた。

Aイーディス、カナメ……。この女学院のルールは誰が決める?

 廊下にいる全ての生徒に、緊張が走る。

A生徒会長の、このアリーサが決める。忘れたか?そのニンゲンは没収する。風紀を乱すからな。

mええ!そんなぁ……!

Aついでにそのチビも没収だ!

rチビ?あたし?くっそー……。さっきからどいつもこいつも……。

あたしをなんだと思っているんだ!邪神だぞ!

 激昂したルルベルの周りに禍々しい魔力が集まり、彼女の手のひらでチリチリと弾けだす。

r邪神をなめるとどうなるか!

 ルルベルはその手を振りかぶり、

r思い知れー!

 と豪快に振り下ろした。

 ……不発だった。

rあれ?魔力が使えない?

 ルルベルは不思議そうに、何度も自分の手のひらを握ったり開いたりしている。

そんなルルベルの肩に、ミィアはそっと手を置く。

mルルちゃん……。ドンマイ。

rう、うるせー……!

A茶番は終わりか?イーディス、止めるなよ。

Iふふ。別に止めないわ。でも魔族には魔族のルールがあるでしょ。

k女学院のルール以上のもの……。力こそが魔族のルール。

この子たちにそれを証明するチャンスくらい与えてあげたら?

I生徒会が、力ずくでニンゲンを没収するなら、私たちは何も言わない。

Aそれなら簡単だ。こんな奴らが、このアリーサに勝てるわけがないからな。

Iただ、あなたが直接手を出すようなら、私たちも黙ってないわ。

kあなたが出ちゃうと不公平だから。

 冗談めかした言い方だが、その様子には殺意のようなものが見え隠れしている。

彼女たちはみんな、平静さの中にそんなものを平然と隠し持つ。それが魔族というものなのかもしれない。

彼女たちの言葉に冗談はない。君にもそれはすぐわかった。もちろんアリーサにも。

Aイーディスゥ……!カナメェ……!

 歯がゆさに顔を歪ませながら、アリーサは左手を水平に切る。お供の生徒たちが一斉に戦闘の構えを取った。

交渉は成立したようだ。

Aまあいい。ニンゲンなどアリーサが手を出すまでもない!

 イーディスは不敵に笑い、君たちを見た。どこか楽しんでいるようだった。

I自分の身は自分で守ってみせなさい、ニンゲン。

 それが魔族のルールなのだろう。君は小さく頷き、戦闘態勢を取った。


 ***


 生徒会と君たちは激しい攻防を繰り広げる。

聞きつけた生徒たちも、その争いに加わり、さらに過熱していく。

戦いを止めようとしたパブロ先生も……。

pお前たち、何をしているんだ……ぎゃあああ!

 犠牲になった。

Aくそ。埓が明かない。アリーサが直接手を下せれば……。

 だが、睨みを利かせているイーディスとカナメがいるせいで彼女は手を出せないようだった。

そのことは君達に有利に働いていた。相手の数はこちらより多いが、ひとりひとりは大したことはない。

結束して戦えば、勝てる。そのことは仲間たちも感じていた。

m大丈夫。先輩がいなければ、なんとかやれる。ルルちゃん、私から離れちゃダメだよ!

rくっそー……体が小さいから、力も全然使えない。

U私たちの力でニンゲンさんを守ろう。

sついでにジャシンも。

rついでっていうな!

 懸命に戦う少女たちを見て、イーディスは何かを思い出したように笑った。

Iふふ……。

kあら?自分が下級生だった頃でも思い出したの?

I違うわ。ある話を思い出したのよ。

ライオンとロバと狐が狩りに出かけたの。三匹は狩りでとれたものを分けることにしたわ。

ロバは獲物を三等分にしたの。すると、それに怒ったライオンはロバを食べてしまった。

狐は再び獲物を分ける時、自分は少ししか取らずほとんどをライオンに譲ったわ。

ロバの悲劇を教訓にしたのね。

kそれの何がおかしいの?

I最初からロバ食べればよかったんじゃないの?そもそもなんでロバと狩りに行ったの?

むしろ狩られる側じゃない、ロバって。ロバってバカね……そう思ったのよ。

k(全然関係ないー……)

A下級生に遅れを取って、何が生徒会だ!もしこのまま負けるようなことがあれば……!

責任をとってもらうぞ!

 その一言で火が点いたのか。君たちに牙を剥く生徒たちの目の色が明らかに変わった。

きっと背後にある巨大な死の気配がそうさせるのだろう。

wキミ、気をつけるにゃ。

 相手も後がない。一か八かの攻勢に出てくるだろう。油断はできない。

ウィズの言葉に従うように、君は自分の魔力を高める。


 ***


zきゃー!!

 最後の生徒会の刺客が哀れにも消滅していき、ようやく戦いの気配はその場からなくなった。

最後まで立っているのは自分たちの方である。

A全て倒されたというのか……。

Uやったー!私たちの勝ちだね!

mルルちゃん、いえーい!

rい、いえーい……!

sニンゲンさん、いえーい!

 君は仲間たちとハイタッチする。

戦いに勝っただけで、こんなに素直にはしゃぐ彼女たちを見て、君は少し新鮮な気持ちになる。

wたまにはこういうのも悪くないにゃ。

 ウィズも同じことを考えているようだ。目を細めている。

Aこのままですむと思うな……!

 アリーサが苦虫を噛み潰したような顔で、一歩前に出る。

戦いの気配が再び張りつめる。


「こそまでだ。……間達えた。そこまでだ!

なかなか面白そうなことをしているようだね。……でも、そこまでだ。

 年恰好は少年のだが、余裕をみなぎらせた少年だった。

彼の登場で、張りつめかけた空気が変わった。その理由はすぐにわかった。


Aクルス理事長……。

cアリーサくん……。おめめ怖い。

 理事長と呼ばれた少年は、周囲の生徒たちをけん制するように見渡す。

c元気がいいのは構わないが、もうすぐ休み時間は終わりだ。

そろそろ教室に戻りなさい。……理事長の命令だよ。

 いち早く反応したのは、カナメだった。

kさんせー。私は賛成よ。休み時間は終わり。

アリーサも諦めて教室に戻りなさい。

 アリーサは苦々しくカナメを睨みつける。カナメの一言で彼女の状況が不利になったのは明白だった。

cイーディスくん。君は?

Iもちろん賛成です。理事長。

 イーディスの同意の言葉がきっかけとなり、廊下に集まった学生たちはそれぞれの教室へと帰っていく。

どうやらようやく全て終わったようだ。

Uあ、先輩にお礼言わなきゃ……!

sそうだね。

 イーディスたちに礼を言いに行く生徒たち。それとは別に、

rくそぉ……邪神なのに……。

 と悔しそうにつぶやく邪神が君の傍にいた。

力が使えないの?と君は訊ねる。

r不完全な形で復活したせいかもしれない。……ちくしょー。

wどうすれば完全復活できるにゃ?

r前に降臨した時、魔界はもっと瘴気が渦巻いてた。でも、いまはそれがない。

 邪神は環境によって、力が変わってしまうのだろうか?だとしたら完全復活は難しいかもしれない。

それは環境そのものをを変えるということなのだから。それにしても……。

むしろなぜそんな不完全な環境で、彼女は甦ったのだろうか……。

ふと我に返ったようにルルベルは君を見る。

rなんだ、ニンゲン。馴れ馴れしくするな。邪神はニンゲンを堕落させる存在だ。

ニンゲンとは仲良くしない。

 それだけ言って、ぷいと教室に戻ってしまった。

wやれやれにゃ……。うまくいかなくて意固地になっているのかにゃ?

 そうかもしれない、と君は相槌を打つ。

彼女は邪神と言えども、まだ子どもなのだろう。と君は思った。



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story 現代ルルベル講座



pええー。君たちも知っているように、君たちが生まれる遥か昔……。

この学校は邪神ルルベルが従者ズローヴァに命じて作らせたものである。

ルルベルが堕落させたという聖女も関係しているらしいが、諸説あって詳しくは不明だ。

 パブロ先生が授業を進める。どうやら歴史の授業らしい。

この学校についても、いくつか話しているので、君は興味深く授業を聞いていた。

pズローヴァ、いわゆる大ズローヴァと言えば、ミィアの一族の開祖だ。とても偉大な祖先だな。

 パブロ先生はミィアの席を見た。

教室中の視線がミィアに集中すると、彼女も照れくさそうに笑った。

mえへへ……。

pその分、大ズローヴァに負けないよう努力しないとな。

mはーい。

pまあ、それはいいのだが……。

 脱線した授業の流れを戻すように、パブロ先生は教室全体を見渡すように前を見た。

p実は肝心のルルベルについてはそれほど詳しいことがわかっていない。

そこでだ……。今回はせっかくルルベル様が再誕されたことだ。

少しルルベル様本人に聞いてみようじゃないか。さ、ルルベルさん。前に出てきて。

rえ?あたし……。ええー、なんか恥ずかしいな。

 頭をかきながら、ルルベルは教壇に立った。

pルルベルには多くの伝説がある。翼を広げて、ひとつ飛びで魔界を一周し、

 チラリとパブロはルルベルに目をやる。

rま、まあ、余裕よね。いつも2、3周は軽くやったな。

p激しい咆啼で空を裂き、その怒りで大気を震わせる。

rあー、やったやった。すごい覚えてるわー。やった覚えあるわー。

p稲妻を落とし、逆らう魔族に裁きを与え、

rアンタたちも……気をつけるんだな!

p契約したニンゲンを次から次に堕落させる。

rつくづく罪な邪神よねー……。あたしって……。

pというのは、現在ではほぼ出鱈目であったと判明しているんだけどね。

rえー……。

pまあ、このように何かと調子に乗ってしまうという悪癖はあるものの……。

rえー……。

p愛嬌のある性格を愛される、非常に特殊な邪神と言えるね。

君たちも、ルルベルみたいに誰からも愛される、素敵な魔族になれるよう、勉強するんだぞ。

 「はーい」という元気な声が教室に響き渡る。

それだけで、この学校でルルベルがどれほど大事な存在なのかが伝わってくる。

pそして卒業の時には、みんなであのルルベル像に生肉を吊るすんだ!

Usはーい!

rあたしの像にそんなことするなよ……。

 ただ愛され方は、すこし独特のようだ……。



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