【白猫】茶熊学園2020 Story2
目次
登場人物
5
4
3
story11 どうして私が?
エレノア。ぜひ君を――
――新たな生徒会のー員として迎え入れたい。……でしょ?
キャ、キャトラ……!?
ふふ、ご明察だ。よくわかったね。
やったー!予想テキチューよ!
一本とられたね。見事だ。
イエーーイ♪
もう……
私が……生徒会に、ですか……?
はい。ぜひエレノアさんに、生徒会のこれからを託したいんです。
それも、ただの役員じゃあない。
――君には、生徒会長の座を用意させてもらっている。
まちんしゃい。どうしていきなり、入学したばっかのエレノアなワケ?
順当にいけば、ティナの次は副会長のアイシャが会長になる流れじゃないの?
言ったろ。私は裏方だ。矢面に立つには向いていないよ。
闘争祭のときめちゃくちゃ矢面立ってたじゃん。
それはそれさ。
いきなりこんなことを頼んでしまってごめんなさい、エレノアさん……
いいえ……びっくりはしてますけど……
入学直後に生徒会長なんて、シャルさん以来かな……?
そう。前例はあるというわけさ。
でもシャルは、だってさあ。シャルじゃん?
あの、どうして、私なんですか?
そういえばエレノア、新入生代表だったものね。入試でトップだったとか?
いや。入試の成績は、まあ正直、下から数えた方が早かった。
ううう……
まあアンタ、こっちに来てまだそんな経ってないしね……
一生懸命勉強してたし、合格できただけでもすごいよ。
だが、学長殿の強い推薦でね。
君が提出した入学志望動機――それを見て、是が非でも、と。
志望動機……?
『学園でたくさんのことを学び、大切な人たちの未来を守れる人間になりたい』――
それを聞いて……私も、この人に任せたいなって思ったんです。
大言壮語と呼べばそれまでだ。具体性もなければ、現実昧も薄弱。
だが、私は好感を抱いた。
すぐに返事がほしいとは言いません。ですから、ゆっくり考えて――
やらせてください。
私は、まだまだ未熟です。色んな人に支えられて、助けられて、生きてきました。そんな私でも……皆さんの役に立てるのなら、やりたいです!生徒会長!
……そっか。ま、アンタが自分で決めたんなら文句はないけどね。
がんばんなさい♪
はい。ティナさん、アイシャさん……よろしくお願いします!
肩肘張る必要はないさ。手を取り合い、共に歩もう。よろしく、エレノア。
ありがとうございます、エレノアさん……!私も全力でサポートしますから!
さて。君の勇気ある決断をたたえ、実は贈りものを用意してある。
ついてくるといい。
馬……?
馬さ。
馬ね。
馬だね。
馬です。
――――
エレノア。君の愛馬だ。
ええっ!?
なんでじゃ――い!!!
前の騒動のあと、スパルティさんが『お詫びに』って学園に寄贈してくれたんだよ。
スパルティさんって、<スパルティ塾>の……?
なんでよりによって馬なのよ!!
私もよく知らないけど、すっごい名馬らしいよ?
違うよ、そーゆーことじゃない。
どうして、この子を私に……?
絢爛(けんらん)なる白花(びゃっか)を引き立てるには、ふさわしい花瓶が必要だろう?
白馬を駆る新進気鋭の生徒会長。さぞや画になることと思うよ。
しかもただの馬じゃあない。学長殿の厚意で、この島の遺跡から発見された魔術品の鞍が装備されている。
どんな効果があるんですか?
少し飛べる。
飛べるんですかっ!?
なんじゃそりゃ!!
story12 学園生活、スタンバイ!
トーーーーゥ!ワーーーー!!
……っ!セツナ……!
ごめんごめん、遅くなっちやった。制服、似合ってんじゃーん♪
も、もう……恥ずかしいですから、廊下で大声で呼ばないでくださいっ……
とか言って、ちょっぴり寂しそうだったじゃん?
そんなことありません……!
あそ?残念♪
もう……
ほんじゃ、いこーよトワ!校舎、案内したげる!
はいっ……!
***
校内はこれで大体オッケーかな。あとで寮にも案内したげるね!
同じ学び舎といっても、<清めの宮>とは雰囲気が全然違うのですね……!
あっちは結構、ガチガチな校風だったからね~。
あっちももちろん好きだけど、茶熊学園は自由な校風だからさ。あたしは大好きだよ。
私も、とても新鮮で……こうして見て回っているだけで、心が躍りました。
でしょ?だからさ、明日からトワと一緒に通えるって思うと、あたしも百倍嬉しいよぅ♪
ふふ、困った先輩ですね。
ナマイキな後輩だなー♪っと、ついたついた。
テーブルゲーム部の部室にようこそ!
……意外と、がらんとしているんですね?
そうなんだよー。いつもの面子――じゃなかった!先輩がみんな、校友ってゆーのになっちゃったからさ。
今はあたしひとりなんだよね。
……ここでセツナは、悪い遊びを覚えたんですね?
わ、悪い遊びじゃないよう……ちょっびり夢中になりすぎちゃっただけで……
ちょっぴり、なんて程度ではなかったと思いますけど?
うぅ……ゴメンナサイ……
……ふふ、なんて。別に怒ってませんよ。
へ?
学校や部活のことを、楽しそうに話してくれるセツナと一緒にいて、私も楽しかったですから。
その……少しだけ、寂しかったですけど……
――トワ、いっしょに遊ぼ!今すぐ!
え?ですが私は、麻雀のルーえ?ですが私は、麻雀のルールはわかりませんし……
テーブルゲームは麻雀だけじゃないってば!デッキ、持ってきてるでしょ?
サモンカードのですか?はい、い応……でも学校でカードゲームなんて、本当にいいのですか……?
いいのいいの!ほらほら、スタンバイスタンバイ!
やーーらーーれーーたーー!!
ふふ、私の勝ちですね。
はあ……自信作だったのになー。フラン先輩の洋ナシリソースを、ミラ先輩の栽培効果で無限に増やす<無限洋ナシ爆撃>デッキ……
定石にとらわれない、意欲的な試みだったと思います。もしもあと一手誤ったら、負けていたのは私の方でした。
ん、ありがと!でも改善点は見えたかな。
それならよかったです。ですが、次も負けませんよ?
望むとこ!……あ、そういえばさ!今度ミルフィでサモンカードのおっきな大会やるんだって!
今度、リーチェんとこ行って、三人で特訓しょうよ!
はい♪次こそ、三人で一緒に優勝できるといいですね。
……決めました。私も、セツナと同じテープルゲーム部に入ります!
ここでならサモンカードもたくさん練習できますし――
あのさっ、トワ!クラスの人たちとはどう?
え?どうしたんですか、いきなり?
誰かとお話した?新しい友だちできた?
……シ、シエラさんとは少しお話しましたよ?相変わらずお元気そうでした。
シエラは前、温泉旅行で一緒に遊んだし、顔見知りじゃん?
……他の皆さんは、その……個性的な方が、多くて……
冒険家の人なんて、みんな個性的だってば。
そんなことないと思いますけど……どう話しかければいいのかも、よくわかりませんし……
あはは、そんなことだろうと思った!トワはシャイだからね~。
……仕方ないじゃありませんか。こういう性格です。
ちょっとずつでいいからさ、クラスの人とも仲良くなりなよ?
わかってますっ!もう、セツナは心配性なんですから……
ごめんごめん。……あのさ、トワ?
――あたしたちってさ、家とか学校とか……わりと窮届な環境で育ってきたじゃん?
そうですね……悪しきまがことを祓い漬める、巫女の責務を背負う身ですから。
でもあたし、この学校に来て、色んな人と出会って、新しいことを始めて――視野っていうか、世界が、すっごい広がったんだ。
さっきトワが、あたしの学校や部活の話を聞くのが楽しいって言ってくれたみたいに――
あたしもトワから、なんか新しく始めたこととか、新しい友だちのこととか……たくさん聞きたいんだ!
だから部活、もっと色々回ってみなよ?
あ、テーブルゲーム部はいつだって大歓迎だよ?別に兼部とかでも平気だし!
まだ急いで決めなくていーよ、って話だからさ。ね?
……はい、わかりました。もう少し、自分の目で色々見て、それから決めようと思います。とは言え、今のところ展望はありませんけど……
そりゃまだ一日目だもん。そんなの当たり前だって。
そうですね。がんばります。
で・も!それはそれとして!どうしても決まんなかったら絶対ウチにきてもらうからね!
なんなんですか、もう……突っぱねたり、引き止めたり……
……まったく。仕方ないですね、セツナは。
story13 いそがなくていいよ
(広い校舎……色んな冒険家がいて、色んな部活動があって……目が回りそう。
何かを得るため――そう思って、入学したけれど……何かって、何だろう……まず、何をすればいいんだろう?)
ねえ、フレイヤはどう――
(……って、そっか。……駄目ね、私……まだ一日目なのに、もう……寂しくなっちゃってる)
ジュダにーに!
コヨミたちはね、今日からせんぱいなんだよ!
ああ、そうだな。先輩だ。
わんわん!
……でもせんぱいって、なにすればいいんだろ?
正解はない。
わぅん?
だから、さしあたってはコヨミが正しいと思うことをすればいい。
正しいと思うこと?うーん……ごみひろいとか?
何でもいい。敬意を払うに値する存在を指して、人は「先輩」と呼ぶのだろう?
ならば先輩規範を見せてやればいい。
――そっか!うん、わかった!
それじゃあ、今日の部活動は花壇のお手入れ!きれいなお花で、新入生さんによろこんでもらおう!
わおおおおおおん!!
ワオオオオオオンン!!
!
……いこっ、夕口ー!
こんにちは、新入生さんっ。もしかして、なにかお困りごとですか?
え?その……どうして、そう思ったの?
さびしそうな顔、してたから……
……そうだったんだ。ふふ、ありがとう。心配してくれて。
――久しぶりだな。
あ……ジュダ!戴冠式のとき以来ね!
ジュダにーにとお友だちだったんだ!
ええ。私の名前はシエラ。
えっと……コヨミです!こっちは弟のタロー!
わんわん!
ふふ、よろしくね♪コヨミ先輩に、夕口ー先輩♪
……!せんぱいって呼ばれたよ!夕口ー!
わううううん♪
それで。コヨミの言う通り、浮かない顔をしていたようだが。
シエラねーね、なにか悲しいことあったの……?
ううん、そういうわけじゃないの。ただ、慣れない環境だから、まだ少しだけ戸惑ってて……
くぅん……
……シエラねーね!よかったら一緒に、お花のお世話をしませんか?
コヨミたち、園芸部なんです。きれいなお花に囲まれたら、もしかしたら元気が出るかも!
わぉん!!
部長の眼鏡に適ったな。時間はあるか?
もちろん……でも、いいの?
うんっ!いっしょにいこっ!
――おつかれさまでしたっ!
ええ、お疲れ様。
コヨミ、頬が汚れている。拭いてやる、じっとしていろ。
えヘヘ、ありがとジュダにーに♪
ふふ、二人は仲がいいのね。
ジュダにーにはね、すっごくやさしいし、いっしょにいて楽しいの!
わぅ♪
それにしてもシエラねーね、お花のこと詳しいんだね!今日はたすかりました!
ううん。実家が農家だから、多少はね。
でも、うちは野菜や果物がメインだったから、今日はすごく勉強になったわ。
え?そうなの?
色んな種類の花を綺麗に見せるレイアウトとか、香りのバランスにまで気を配っていたりとか……初めて知ったことが、たくさん♪
……だって♪ジュダにーに、タロー!
日々の成果が出たな。
わぅーーーん!!
今日はありがとう、コヨミ先輩。タロー先輩に、ジュダ先輩も。おかけで不安がまぎれたわ。
……せ、せんぱいって、やっぱり、なんか、てれちゃうね……!
わん♪
あの、シエラねーね!もしよかったら、シエラねーねも園芸部に入りませんかっ?
俺からも頼もう。部員が増えるのは助かる。
どうかな……?
誘ってくれて、本当にありがとう。
でも返事は、もう少しだけ待ってもらってもいいかしら……?
植物に触れるのは慣れてるし、落ち着くし、楽しいわ。
けど――今までしたことのない、何か新しいことをしてみたいって思う自分も、確かにいて――それが何なのかは。自分でもまだわからないんだけど……
――うんっ!わかった!
せっかく誘ってくれたのに、ごめんなさい……
謝る必要はない。ゆっくり悩むといい。
……ありがとう。……あ、でも……
もし他の部活を選んだとしても……たまにでいいから、私も園芸部に混ぜてもらえない……?
楽しかったから。今日、とっても!
――もちろんっ!ジュダにーにとタローもいいよねっ?
反対する理由はない。
わんっ!
story14 保健室同盟
失礼しまーす。
はい――あ、ダグラスさん!
よ、ルウシェ。悪いけど今日も世話になるよ。
はい。……また体調不良ですか……?
そんな心配そうな顔すんなって。ちょっと休めば大丈夫だよ。
……無理はしないでくださいね?体温計を用意するので、ベッドで休んでいてください。
サンキュー、いつも助かるよ。――お?
今日は先客がいたのか。よぉ、ウェルナー。
ちょいちょい授業来てねえけど大丈夫か?油断してっと、試験の時に泣き見るぜー?
……体調の問題だ。
あー、そっか。よかったら、オレのノート見るか?
不要だ。
そーかい。よいしょっと。
…………
あんたとサシで話すのって、そういや初めてだな。
な、ウェルナーはさ、どうしてクラスの奴らとあんま関わろうとしないんだ?
……他意はない。
レクトとは知り合いなんだろ?あいつも心配してたぜ。
以前、一時的に協力関係を結んだ間柄、というだけだ。……特に用事がないなら、休みたいんだが。
せっかくなんだし、もうちょい付き合ってくれよ?
気になってたんだ。なんかウェルナーは、自分からわざと、楽しいことを遠ざけようとしてるみたいでさ。
なんてのは、ただの勘だけど。
――向いていないだけだ。
楽しいことが向いてないヤツなんて、いねえだろ?
あんたがとこの何者で、なんのために学園に来たのかは知らねえけどさ――せっかく、こんな楽しいトコに来たんだ。だったら、楽しまないと損だと思うぜ。
…………
私も、そう思います。――はい、ダグラスさん。お熱を計ってくださいね。
私はまだ、ウェルナーさんのことをあまりよく知りませんけど……
とても良い人だということは、わかります。ですから私も、ウェルナーさんに学園生活を楽しんでほしいです。
……「良い人」の根拠は。
この間、私の背では届かない棚に、薬瓶をしまうのを手伝ってくれました!
結局、手を滑らせて割っただろう……
結果ではなくて、気持ちが嬉しかったんです!
はは、やっぱりおまえ、いい奴じゃねえか。
はい、そうなんです♪
ま、いきなりみんなと馴染めなんて言わねえさ。そうだな……まずはオレたち三人で、保健室同盟ってのはどうだ?
保健室同盟っ!それは、とっても素敵ですね♪
なんだそれは……
story15 がんばり方は人それぞれ
<かくして、ラグビー部に入部したレクトであったが――>
漢ダッシュじゃああああああ!!!
おっしゃあああああああ!!!
やったらあああああああ!!!
新入生も声出していけええ!!お前の中の眠り姫――否ッ!『眠り漢』を呼び覚ませェ!!
う、うぉぉぉおお……!!
おっしゃあああ!!!終わったらすかさずランパスじゃあああい!!!
ひぇぇえ……!!
<超絶対体育系の部活だった――!>
(はあ……今日も……疲れた……僕の覚えが悪いばかりに、今日も先輩たちに迷惑かけちゃったな……。
ボール磨きを終わらせたら、寮に戻って教本を読み込もう。それから写真を整理して――)
ちわっす、レクトさん!
あ、えっと、ソアラさん……だよね?同じクラスの。
はいっす、練習お疲れさんでした。……ボール拭き、もしかして、やらされてるんで?
ううん、そんなんじゃなくて。自主的にだよ。
まだ初心者の僕でも、部のために何かでさるかなって考えたら、これかなと思って。
よっこらほいなっと!んーと、こっちの布って使ってもいいでしょーか!?
!
せっかくなんで手伝うっす。こういうチマチマしたの得意ですしまだ部活も決まってないもんで、実は結構ヒマしてんすよ!
そんな、悪いよ……!制服も汚れちゃうし……
この世に汚れないモンなんてぇのは、一つたりともありゃしませんぜ?
え?うん……うん?
つまり、そーいうことっす!ごしごしごしごし……さっそく一匹、磨き上がりだー!
(制服が汚れることの解決になってないような?)
いいから、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょ。寮のご飯に間に合わなくなっちまいますぜ!
う、うん。ありがとう……!
……時にレクトさん、一つ質問、よござんす?
よござんす……?
部活動。やめたくなったりしません?
ここ数日、ラグビー部の練習、ちょいちょい眺めてたんですがね。
筋肉質な先輩方からゴッシゴッシとしごかれまくってて、見てて結構つらそうだったもんで。全身すり傷だらけですし。
そ、そうだったんだ。みっともないところ、見られちゃったな。
んなことねっす!でも、結構キツそうだったんで。
どうしてやめないか――うん……半分は、意地かな。
お?意外と体育会系なんですな?
そんなんじゃないよ。……こんな僕と、仲良くしてくれる大切な友だちが何人かいてね。
もしいつか、その人たちに学校や部活のことを聞かれたとき、『辛いから辞めた』なんて答えるのは、かっこ悪いから。
まごうことなき意地ですなー。して、もう半分は?
期待されてないから楽……なんだと思う。
?
先輩たちにあんまり期待されてないって、何となくわかるんだ。僕は体格がいいわけでも、運動神経がいいわけでもないし。
そうとわかってるのに、頑張れるもんなんです?
うん。だからこそ、余計なプレッシャーを感じずに打ち込めるっていうか。
仮に僕が途中で脱落したとしても、最初から頭数に入ってなければ、チーム全体への迷惑は最小限にできるでしょ?
――って、駄目だよね。こんな後ろ向きな考え――
いんや。レクトさんの考え、あたしは結構好きっす!
!
ストンと麓に落ちたと言いますか。いつかのあたしに、レクトさんの爪の垢せんじて飲ませたいなと。
え、いやいや!そんな立派な考えじゃないよ!?
おっしゃーボールの汚れめー!擦って擦って擦りまくって、ボールごとこの世から消し去ってくれるぜーーー!!
story16 だってクラスメートだもの
(はあ……結局今日も、部活を決められませんでした……)
トワ。まだ残ってたのね。
あ、こんにちは。そう言うシエラさんも、こんな遅くまで……
色々部活を見て回ってたら、ちょっと遅くなっちゃって。
ふふ、私もです。なかなか決められなくて……
……なんだか、まだちょっと変な気分ね。
?
前にぐうぜん、温泉旅行で知り合っただけの私たちが、こうしてクラスメートになるなんて。
……そうですね。でも、知っている人が同じクラスで少し安心しています。
そういえばフレイヤさんは、ご一緒ではないんですね?
うん……学校に保護者がついてってどうする、ってさ。
心細くはありませんか?
……正直、結構さびしいわ。これでも冒険家だし、新しい環境に身を置くのは慣れてるけど……そばにはいつも、フレイヤがいてくれたから。
……すごくわかります。私も、クラスメートの方たちになかなか話しかけることができませんし……
人見知りは、だいぶ克服したつもりだったのですが――それはいつだって、セツナが隣にいてくれたからなのだと、あらためて実感してしまいました。
『新しいこと』って……探し出すのも一歩踏み出すのも、こんなに難しいのね。
あ、シエラさんにトワさん。お疲れさまです!
エレノア……
その両手に抱えたプリントは……?
生徒会の書類です。誤字や記入漏れがないか、確認しておこうと思って。
今日はティナさんもアイシャさんも他の仕事で忙しいので、私だけで、少しでも進めておきたかったんです。
そっか……エレノアは、生徒会に入ったんだっけ。
それも、生徒会長でしたよね?
あはは……まだ入りたてですから、何にもできないですけど。
あの……エレノアさん。
?
怖くはなかったのでしょうか?入学したばかりなのに、生徒会長なんていう大役を任されて……
怖い、ですか?確かにびっくりはしましたけど……でも、それ以上に、嬉しいなって思ったんです。
たくさんの人のおかげで未来へと歩き出せた私が、たくさんの人の力になれて。あ、いえっ、まだまだ未熟者ですけど……!
それに、わくわくするんです。新しいことって。
これから何が起こるんだろうって。未来を想像するだけで、夜も眠れないくらいに楽しくて。ですから、怖くなんてありませんよ。
ふふっ……そっか。
シエラさん……?私、何か変なことを言ってしまいましたか……?
ううん。――ね、エレノア。もしよかったら、私も手伝っていいかしら?
え、でも……悪いですよ。
……あ、あの!!もしご迷惑でなければ、私にもお手伝いさせてください!
ええ!?トワさんまで……
だ、だって……私たちは……エレノアさんの……
――ええ。クラスメートだもの。だから、ね?
――はい!よろしくお願いします!
story17 舞い散る季節
――五期生たちが茶熊学園に入学して、数日が経った――
アイシャさん!名簿の作成、終わりました!
ああ、感謝する。だいぶ手際が良くなってきたね。
エレノアさん、お仕事覚えるの早いですね!
いいえ、まだまだです!
エレノア。ひとつ提案なんだが。
?
そろそろ、君の主導でひとつ、催しを企画してみたらどうだろう。
あ、それいいですね!新生徒会長のアピールの場にもなると思います!
……でも一体、どんなことをすればいいんでしょう?
そうですね……たとえば、みんながもっと仲良くなるためのイベントとか?
みんなが、仲良くなるため……
夕暮れが綺麗ですね、オハギ。
ギャ!
……部活、どうしましょう。
ギャ……
<一人の生徒が、綺麗なスイングと共に打ち放ったボールが、夕空に向かって飛んでいく――>
あれは、確か……ゴルフというスポーツでしたっけ?……あんな小さな球が……あんなにも、天高く飛んで……
すみませーん。部活、見学したいんですけど――……って、あれ?部室、誰もいない……?
(そっか。テニス部、みんないなくなっちやったのね)
<シエラは、無人の部室をなんとなしに歩き回り――>
(……活動日誌?初心者のための練習メニューが、こんなに丁寧に……
新しい部員が来るかなんてわからないのに……先輩たちが、私たちに残していってくれたんだ)
すまない。いると思わなかった。
あ、いえ……
(ウェルナーさんが入学したのってきっと任務なんだろうな。それも<禁忌>に関わる――)
邪魔をしたな。
あ、あの……ウェルナーさん!僕に手伝えることがあったら、言ってください。
僕なんかでも、少しくらいは、力になれるかもしれませんから……
お前は学園生活を楽しめ。俺は――
……何でもない。ラグビーも、記者の仕事も、成果が出るといいな。
――よしっと。こんなもんか?
ちわっすっす、ダグラスさん!絵、お上手ですねぇ?
よぉ、ソアラか。舞い散る桜があんまり綺麗でさ。描き残しておきたくなったんだ。
むーん。むむむむむうーん……
どうした?
いえ、桜の花びらとかもそうなんですが……たくさんあるものを見てるとふと思っちまうんす。
一枚くらいなくなっても誰も気づかないですし、何にも変わらないんだろうなー。とか?
なんでもねっす!あたしも描いてみていいです?芸術魂に火がついちまったもんで!
……ああ、大歓迎だぜ!ほら、道具貸してやるよ。
俺に……俺に……
俺に青春をくださァァァい!!!
<生徒たち、それぞれの思いが春風に乗って、時と共に流れ――
季節は、移り変わる――>