【白猫】茶熊学園2020 Story6
目次
登場人物
story
体育祭当日――
ソアラさん、来ませんね……もうすぐ開会式なのに……
どうしたのかな……寝坊かしら?
……私、ー度寮に行ってみます。皆さんは待っていてください。
エレノアは開会式のスビーチがあるでしょ?私が行くわ。
いえ、シエラさんは第ー種目の出場選手です。ここは私が……
……ふふ。みんなで行きましょうか。
いますか?ソアラさーん?
んごごごごごごごごご!!!!
えっと……iびき、かしら?
す、すみませんソアラさん……開けますっ!
……はりゃ?どしました皆さんおそろいで?
どしました、じゃないわよ。まったくもう、心配させて……
ソアラさん、もうすぐ体育祭の開会式が始まってしまいます……!
急ぎましょう!まだ間に合いますから!
えっとっすね、それなんですがー。――あたし、今回は欠場させてもらおうかなーと。
もしかして、体の具合が悪いんですか……?私、保健の先生を呼んで――
あいや、心配ねっす。このとーりピンピンしてますんで。
それじゃあ、どうして……?
……ソアラさん。もしかして私、どこかでソアラさんを傷つけてしまいましたか……?
んなことないですって!なして急にそんなことをば?
ここ数日のソアラさん……少し、元気がなさそうに見えて……
……もしも何かあるのなら、話してくれませんか?
あたし、ちっこい頃は神童だの天才児だのって、そこそこ期待されてたんすよ。でもまあ、ちっと壁に当たって、折れちゃって。
そっからは長いこと引きこもってグータラ過ごしてたもんで、集団生活って初めてなんですわ。
そんで、なんつーか……前々から、思ってたんす。<大勢の中のー人の自分>の価値って、なんなんだろなって。
自分の、価値……?
あたしがここにいる価値って、なんなんだろなって。
それがわからねーなら、あたしー人いてもいなくても変わらんのではないかなーとか、思っちまいまして。ナハハ。
そんなこと……!
いやー、この学校ってすげえ人たくさんいるじゃないですか?徒競走でもリレーでも、あたしが負ける可能性なんて大いにあるワケでして。
ですからその、なんつーか……怖いのかもしんねっす。あたしが負けて、皆さんをガッカリさせちまうのが。
「シエラさん、トワさん!ソアラさんがすごいんですよ♪
とっても足が速くて、持久力もすごくて……徒競走もリレーも、ソアラさんがいれば百人力です!」
「そういえばソアラ、体育の授業でもすごいものね?」
「はい。上級生の人たちも、きっと怖くありませんね♪」
……私の、せいで……
いやいや、ちゃいますってば!あたしが考えすぎてるだけです。などと話してるうちにこんな時間ダー!?皆さん、あたしに構わず――
……嫌です……
本当に、ごめんなさい……私、知らないうちにソアラさんを傷つけていました……
いえいえ、ですからエレノアさんはなんも悪く――
でも、違うんです……私、ソアラさんに得点をとってほしかったわけじゃないんです。
みんなでー緒に、素敵な思い出を作りたかっただけなんです……
価値なんて言わないでください……足の速い人が他に何人いようと、私たちのクラスメートのあなたは、ここにー人しか……いないじゃないですか……!
あのね、ソアラ。気持ちはわかる――なんて言葉、おこがましいかもしれないけど――
あなたが怖かったの、わかるの。私も今まで、親友って呼べるような人間の友だちって、誰もいなかったから。
入学してからも内心不安で、どうやって人と仲良くなればいいんだろうって……毎日、手探りだったわ。でも、今は違う。
――これからもっともっと、ソアラたちと仲良くなりたいって。そう思ってる……!
……今まで、私のそぱにはずっと、セツナがいてくれました。
明るいあの子とー緒にいると、内気な私まで強くなれた気がして。知らない人とだって、きちんと仲良くなれて……
だから、セツナがそばにいない私を好きになってくれる人なんて、きっといないと思っていました。
……でも、この学園に来て、そうじゃないとわかったんです。トビコ組の皆さんに……エレノアさんやシエラさん、ソアラさんに、巡り会えて。
気の利いたことは言えませんが――私は、ソアラさんが好きですよ。
…………
……なんつーか、むずがゆいっすね、こういう空気……
んですけども――――嬉しっす!
おっしゃ――――!!ここであたしが立たねば誰が立っ!勇者ソアラの復活だっしょあー!!
……ソアラさん!!
そうこなくっちゃ♪
って、時間が……!もう開会式の時間過ぎてます!急ぎましょう、皆さん!
はい!……ソアラさんっ!
おっすっすっす――ー!!!
お、レクト。おはようさん!早ぇ登校だなー?
おはようございます。さっきまで、部活の朝練で……ダグラスさんも、早いですね?
今日が楽しみすぎて、あんまり寝らんなくてよ。早く目ぇ覚めちまった!
あ、主人公。おはよう。
よ、主人公!おはようさん!
な、なんだなんだ、今の音……!?家庭科室の方から……?
こ、これは……どうしましょう……
おかず、見事に全滅だわね……
おーい、どうしたー?なんかすげえ音聞こえたけど……
あ、ダグラスさん……レクトさんに、主人公も……
何かあったんですかーって、床にお弁当が……!?
……俺が手を滑らせた。弁当を台車に移そうとして。
お、お米は別容器なので無事です。でも、おかずが全部……
体育祭開始まで、あと二時間……
ま、まずいかも……?
――本当に、すまない。余計なことをした。
あ、謝らないでください……!ウェルナーさんは、あ、謝らないでください……!ウェルナーさんは、なんにも悪くないです……!
それに、あんなにがんばって……卵焼き、作れるようになりましたし……!
!
ウェルナーさん、気にしないでください。親切でしてくれようとしたことなんですから。
なんか諦めたような雰囲気出してるけどよ……おまえら。このオレが誰だか忘れたのか?
オレは魔剣士ダグラス。全校生徒の弁当作りだって――<できちまう>男だぜ!?
ヒューヒュー!そうね、アンタがそーゆーならきっとイケるわ!!
……量が量だ。それに、食材――
いえ、きっとどうにかなります!備蓄用の食料を少しだけ使わせてもらえれば、材料は大丈夫そうですし……缶詰とかも使って……って、怒られちゃいますかね?
だ、大丈夫です……!私が責任を持って、学長先生にお願いします……!
事後報告でいいでしょ?どうせカムイなら、即ゴーサインだろーし。
じゃあ急ごう!メニューはもう……考えながらっ!!
Z――話は外から聞かせてもらったアアア!
微力ながら、我々も手伝うぞ!生徒たちの胃袋を守るのもラグビー部の――否ッ!漢の役目だアアッ!!
おっしゃあああああ!!!漢じゃワシらあああああ!!
せ、先輩…………ありがとうございますっ!!
男気センサーにビビっきたァア!何かお困りごとですかー!?
朝から騒々しいね。どうしたんだい?
ゆらーり。なんだか騒がしいのです?
俺に青春と弁当をくださアアアい!
騒ぎを聞きつけて続々ときたわ!
――よっしゃ、心強え!みんなでやってやろうぜ!!
おーいレクト、そっちの竹串とってくれ!
はい、どうぞ!あ、ウェルナーさん、泡立て器使いますか?
ああ。――世話をかけてすまない。
いつまで言ってんだ。それとも誰かこの場にいるー人でも、おまえを責めたか?
――いや。
なら気にしなくていいと思います、……なんて、僕が言っても説得力ありませんけど……
こういうときはよ、ニッコリ笑ってありがとう、でいいんだよ。
……ああ。
<そんなこんなで、いろいろあったものの――
――もろもろのトラブルを乗り越え、体育祭の火蓋が切られた――!>
では少し時間が遅れましたが、茶熊体育祭、これより開幕でーす!
進行はアタシたちが務めるわ♪
なお今回は特別ゲストとして、スパルティ塾の皆さんにもご参加いただいてまーす!
……ありがとう。あの時の約束を、守ってくれて。
礼なんていらねーよ。借りを返してもらっただけだぜ?
友だちとして、こうして皆と体育祭に出れるなんて……本当に嬉しいもぬ!
でも、覚悟なさい?勝つのはアテクシたちよん?
当然だ。正々堂々……叩き潰してあげようじゃないか!茶熊学園生徒諸君!
コヨミたちも負けないよー!
ふふ、優勝するのは私たちカラスミ組だよ。――さあ、いこうか。
♪♪♪
うちらも気合入れてこー!!
はいっ!タラコ組、ファイトー……
オ――――――!!
トビコ組、がんばりましょう!!!せ――の……っ!
いくぞ――ー!!!!
玉入れ、始まるぞー!
ヨ――イ……ぎにゃ――ー!
オレの出番だな!どんな玉だろうが……<入れられちまう>!!
ダグラスー!いい感じー!!
ああ、任せろ!得点かっさらってきてやる!
――!――!
口でくわえて投げ入れている!?は、速い……
ネモー!がんばるのですー!
……わかっている。大声で呼ぶな。
あたしも負けてられるかー!てりゃ――!!
……今投げたのは、お前の式神ではないのか?
ぎゃー!ダイフクごめーん!!
ピー!ピー!!
――ふ、この玉の重さと形状、そしてカゴの高さ及び大きさを<ベルリックカ学公式>に当てはめることで、正確無比な投てきを……
計算してないでさっさと投げなさいよ!!
パン食い競走なのです。負けないのです……!
ルウシエさーん!ファイトですよ――!!
は――い!がんばりま――ーす!!
パンじゃなくて、わかめおにぎりがよかったもぬ……でも、がんばるもぬ!
位置についてー!よーい、スタート!!
やった、ここまでー番です!あとはパンを……はむっ!はむっ、はむっ……!!
エレノア――!?パン食い競走は、別にその場で完食する必要はないのよ――!
ほうはんへふは!?
借り物競走~~~!!パフパフ~~~!
えっと、……あ、「ピンクのハンカチ」……ちょうど持ってた♪
俺のは……『なんかの骨』!?なんだよなんかの骨って!俺のは……『なんかの骨』!?なんだよなんかの骨って!そんなもんその辺にあるわけ――
これをかしてやろう。
あった!?
借り物競争だろうと、アテクシのスクールXYは揺るがない――
オープン!!……き、『気になる異性』……!?
?どうした、こっち見て?
――さようなら。アテクシの借り物競争。アテクシの僣き青春……
私のはっと――『大好きな友だち』……?
――ソアラっ!!ー緒に来て!!
むん?何が書いてあったか知りやせんが助太刀しますぜー!あたっちょ――!!!
障害物競走だ!
位置について、よーい……スタート!
クソッ……!なんで俺が、こんなショボい障害物を避けて通らなくちゃいけねえんだ……!
フフ、お先に失礼。ちなみに障害物を壊したら失格だよ?
わかってんだよ!!
クソ、負けねー……!
コヨミも負けないもーん!
きゃっ……あ、網が服に引っかかって……!
あいた!?トワねーね、だいじょぶ?
どわ――コヨミ!?急に止まんじゃねえええー!!
うわあああ!?セイヤ、急に止まら……!
ぎにゃー!?障害物が崩れる――ー!!!
テメーら……!オレを巻き込むんじゃね――ー!!
運動会といえばコレ!徒競走――!!
よーい……スタート!!
よっほっほ――ーい!!よりによってオスクロルさんと当たるなんざ、運命とは皮肉なもんだぜでも負け――ん!!
陸上部としてーいえ、元魔王として負けられません!
どりゃああああああ!!!クラスの勝ち点稼いだら――い!!
体育祭の種目に水泳がないの超不服なんですけどオオッオオ!?
……昼食だ。
ー列に並んで、受け取ってくださーい!
……!ウェルナーさんの卵焼き、別段特徴はないですけど、全然まずくもないです!すごく普通の卵焼きです!!
……そうか。
ブハッ!?この卵焼き、カラが入ってんぞ!?
ははは、仕方ねえって!急いで作ったもんなー。
ウェルナーさん……!お、落ち込まないでください……!歯ごたえがあって美味しいですよ……!
そ、そうですね……!たまに紛れ込む硬い感触が、いいアクセント……に……
ボリッボリッ食いますぞ――!!
みんな、無理しないで、カラだけぺってしなさい。
――さぁて。午後はいよいよ、クラス対抗リレーだな。
こいつの勝ち点はでけえぞ。みんなの力で、がんばろうぜ!!
ですね。ここは落とせません……!
全員の力を合わせて――
がんばろ――!!がんばりますぞー!
もちろん――
ウェルナーさんもー緒にですよ?
……わかった。
<晴れ渡り紅葉舞う秋空に弾けるような歓声と情熱が溢れかえり――
季節はまた、移り変わる――>