【白猫】ファナ(バレンタイン)・思い出
賢い剣士 ファナ・ステージア cv. 転職を繰り返す魔王の妻。 洗濯物を干してる最中、島の調査の依頼を受ける。 チョコ作りはもちろん、家事全般が得意。 |
2020/02/14
メインストーリー
思い出1
みなさん、こんにちは。
ファナさん、こんにちは。
そういえば、また服装、変わったのね。
はい。みなさんに依頼されたお仕事で、こういう服を着る機会があったんです。
そのせいというわけではないんですけど、剣士に転職しました。
へえ、そうなのね。でも、ファナっておっとりしてるから剣士とか大変じゃない?
向いてないには向いてないんですけど、合ってはいるみたいで……
ほほう。カルロス仕込みの秘策があるってわけね!
ないですけど?
じゃあ、向いてないのにどうして剣士なんかやってるの?
向いてはいないんですが、主婦という職業と剣士って実は相性がいいんですよ。
実は今、カルロスさんは魔王免許の更新のため、しばらく家を空けているんです。様々な講習があるそうで……
魔王って免許制なの?
旅立ちの島周辺では、免許制ですけど?
免許制の魔王とかなんかやっぱりちょっと変よね……
はぁ。
話がそれちゃったけど、カルロスがいないのと剣士ってなにか関係あるの?
剣士の職業って力があがるんです。なので、普段はカルロスさんに頼んでる力仕事がー人でできるんですよ。
力があがるってどれくらいあがるの?
固いジャムのフタを開けられるくらい?
すごいんだかすごくないんだか……
包丁の扱いが気持ち上手になったり?
気持ち分ね。
市場のタイムセールで押し出されなくなったりとか?
所帯じみてるわね!
そうですね。所帯じみたお得さがあるんですよ。ほら、主婦と剣士って相性いいと思いませんか?
いいかもしれないけど!剣士っぽさが足りないわ!ギルドの依頼とか受けてないの!?
受けてはいるんですが……剣の扱いがうまくいかなくて……力があがった分、運が落ちちやったので攻撃が当たらないんです。
じゃあ、ダメじゃない。
だから言ったじゃないですか。向いてないって。
思い出
はあ……
ため息なんかついてどうしたの!?
別にたいしたことじゃないですよ。
たまにはアタシがファナの話を聞いてあげるわ!
本当にたいしたことじゃありませんよ?
いいからいいから!キャトラさんを頼りなさいな!
(キャトラがノリノリ……!)
前に主婦と剣士は相性がいいって言ってたじゃないですか。
言ってたわね。
あれ、違いました。
ふむふむ、なにがあったの?
剣士ってすごくお金がかかるんです。
剣士はパーティーの前のほうに立って魔物と戦わないといけませんよね?
そうね、たしかに前衛職ってイメージが強いわね。
だから、いい装備を用意しないといけないんですよ。
新しい街にいけば、新しい鎧と剣があります。これをずっと使えればいいんですが、基本は使い捨てです。
次の街に行くとさらに強力な装備があるんです。以前の装備を売っても半額でしか買い取ってもらえませんし……
次の街?
次の依頼と言ったほうがいいかも?島によって魔物の種類も変わるじゃないですか。
燃えるウッホに、燃えてる剣で戦っても勝てません。水とか氷の力を持つ剣じゃないと……
まあ、たしかにそういうことはあるわね。
賢者や遊び人は後ろにいることが多いので、装備の重要性が低いんですよね。
でも、剣士は……
たしかに剣士がその辺、ケチったらパーティーが全滅しちゃうわね。
でも、毎回装備を買い揃えるのは大変なんじゃあ……
そうなんです!大変なんですよ!だから、全部は無理でも剣だけ買って、次の街では鎧を買うとか、その都度やりくりするんです。
私は剣から買う派なんですが、それでも依頼料のほとんどが装備代に消えちゃって……
はぁ……もっとお仕事増やさないといけないんですかね……
思い出
おーい、ファナ~!
こんにちは、キャトラちゃん。
あのあと、剣士とお金の件、どうなったの?
どうにかなりましたねえ。
どうにかなっちゃったの!?教えて教えて!ファナの財テク教えて!
財テクというものではないんですけど……
ギルドの待合所には、ギルドで用意した雑誌や新人冒険家の入門書が置かれてるじゃないですか。
たしかに置いてありますね。
読んだことないけどね……
何事も初心に帰るべきだと思い、その手の本を読んでたんですね。
その本から解決の糸口を見つけ出したのね!
はぁ。
どっちなの!
見つけたとも言えますし、見つからなかったとも言えますね。
私、勉強とか苦手なので、細かい字がたくさんあると疲れちゃうんですよね。
元賢者とは思えないセリフね……
でも、がんばって読んだんです。それで気づいたんです。この本、どれも役に立たないって。
じゃあ、無駄じゃない!
はい、すごく無駄なんです。書かれてることは現場の冒険家がほしい情報じゃないんですよ。
それで、これはちょっとあんまり良くないんじゃないかなと思い、知り合いのギルドの支部長さんに言ってみたんです。
アンタってけっこう顔広いわよね……
賢者になる前のツテですねえ。それで、いろいろ支部長さんからお話を同いたんです。
なにやら、あの本は外部委託で作っているものらしく、ギルドの人はほとんどチェックしていないのだとか。
そんなんでいいの?
最初はチェックしてたそうなんですが、それでもあまり読んでもらえなかったらしく、反響の無さに皆さんやる気を失っていき……
なら、やめちゃえばいいのに。
でも、初心者用の教本は必要ですし予算を縮小するくらいなら使い切ったほうがいいという文化だそうで……
お役所仕事ね……
そういうお話を聞いているうちに支部長さんも現場の冒険家にとって有益な本にしなければならないと言い出したんです。
それで、いろいろ手伝ってくれと言われて……それで、いろいろ手伝ってくれと言われて……
ほほう。そこでやっとお金の問題が解決されるってわけね!
はぁ。
だからどっちなの!?
とりあえず主婦と剣士という立場を活かし、コラムなんかを書くことになりました。
私が現場で気づいたことや思ったこと。豆知識に裏技などを書いていたら、そこそこ反響があったそうで。
なんやかんやで読んでる人、いたのね……
コラムの執筆料をもらえるようにはなりましたね。
それで問題は解決ね!
でも、やっぱり装備のほうが高いですよ。
じゃあ、解決してないじゃない!
でも、そのコラムを見かけた出版社の方が、本にしないか?と声をかけてくださったので、将来的にはどうにかなりそうです。
本になるんですか!?
まだ決まったわけじゃありませんが……
アンタ、地味にすごいわね。
はぁ。
だから、その反応は嬉しいの?嬉しくないの!?どっち!?
思い出
はぁ~……
ため息なんてついてどうしたんですか?
冒険家コラムニストとして本まで出すって話になってたでしょ?
そのことなんですが……
ため息の理由はそのコラムね!
はい、そうなんです。私のコラムって、基本的にはあるあるネタなんですよね。
視界の外からケラウノスが飛びかかってきて大変!みたいな冒険家あるあるってこと?
そうです。そんな感じです。それと主婦業と剣士のあるあるネタです。
高い剣はいざという時、お金に換えたいから、そんなに強く振り回せない。結果、ウッドソートのほうが強いかも?みたいな。
それ、あるあるなの?
はい、主婦冒険家あるあるです。よくわかるというお便りもたくさんいただいてます。
そのお便りというのが実は厄介なんです。
いいじゃない。褒めてくれるんだし。
はい、たしかにうれしいんです。共感のお便りがないと落ち込みますし、多いと作る料理にも気合が入ります。
それがなにか問題なの?
お便りをたくさんもらいたくなってしまうんです。でも、あるあるネタって、そんなに転がってるものじゃないじゃないですか。
十個超えたくらいから、結局、私個人のあるあるネタでしかなくなるんです。
まあ、たしかにね。
それでネタを探すためにギルドの依頼を受けることになるんですが、ネタ探しがメインなのでぼうっとしたりしてしまい……
あぶないわね。
そうなんそうなんです。あぶないんです。でもコラムの締め切りはあるので……
はぁ~……どこかにあるあるネタ、落ちてませんかねえ……
思い出
はぁ~……
ぎにゃにや!すごく元気ないけど!!
キャトラちゃ~ん……さすがに疲れちゃいましたよ~……
大丈夫ですか?
やっぱり本を出すのって大変なの?
本を出すのは大変ですけど、本が出なくても大変です。
どういうこと?
コラムを本にするという話があって私もネタ集めをがんばったんです。
それまでは主婦業五割。冒険家四割。残りー割でコラムを書いてました。
でも、本の話をいただいてから七割がコラムのための活動になってしまって……
今はまだカルロスさんが講習から帰ってきてないので大丈夫なんですけど、これは主婦としてどうなのかな?と……
でも、本が出るまでの辛抱じゃない!
そうですよ。瞬間的に忙しいだけですよ。
本、出ません。
どういうこと!?
ネタも集めて原稿も書いてたんです。担当編集の方もノリノリで忙しくてもがんばれたんですが……
つい先日、編集さんが『やっぱダメだったわ。ごめ~ん』と軽い感じで謝罪を……
ダメってどういうこと?本、出るって言ってたんでしょ?
なにやら編集会議というものがあるそうで、そこで私の本の企画が通らなかったそうです。
主婦冒険家なら、冒険家がキャンプしたり、ごはん作るコラムのほうがいいって。
それで、またがんばりましょう!って言われたんですが……
冒険家がキャンプとか外で料理とかすごく普通じゃないですか。でも、そういうのが最近の流行りたって言われて……
はぁ~……がんばったのに報われないのってけっこうつらいですよね……
もうコラム、やめちゃおうかなって思います。
思い出
ぎにゃー!ファナが大変よ!光って!光って応援して!
はぁ。
だから、効果あったの!?無いの!?
どちらでもないですが、少しは元気が出ました。ありがとうございます。
それでどうするの?
う~ん……どうしましょうか……?
…………
あっ、そういえば、私、主婦でしたね。
なに、その確認?
結婚してるんですから、ー人で悩んでもしかたがないかなと。
カルロスさんが帰ってきたら、いろいろ話し合って決めたいと思います。そうですね。
それがいいと思います。
…………
……
やっほー、ファナ、その後、どうなったの?
キャトラちゃん、皆さん、こんにちは。その後というのは?
本のことよ!
ああ、そのことですか。カルロスさんと相談したところ私がやりたいようにやればいいと。
なんか玉虫色な返答ね。
でも、やるなら全力でフォローするって言ってくれました。それはすごく嬉しかったです。
で、どうするの?
本はやめます。
もともと家計の足しになればと思ってコラムを始めただけですし、それも剣士という職業はお金がかかるからという理由でしたし。
そうだったわね。
剣士になったのも私ー人だと力仕事が大変だという理由だったなーと思い出しまして……
カルロスさんが帰ってきたら、無理して力仕事をする必要はないと気づいたんですよ。
じゃあ、カルロスが帰ってきたから……
無理する必要もないという結論に至りました。
なら、どうしてまだ剣士のままなの?
剣士のほうが包丁の扱いがうまくいくからです。気持ち分。
?
気持ち分だけでもおいしいご飯をカルロスさんに食べてほしいからですよ。
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