白猫温泉物語2 Story5
2017/00/00 |
目次
主な登場人物
story1
「温泉街……噂通りにぎやかですね……」
「しかも平和と聞く。ここならルウシエも羽を伸ばせるだろう。」
「ありがとうございます、騎士様。私の我儘を聞いてくださって。」
「気にするな。お前に外の世界を見せてやるのは俺の使命だ。」
「あ、あの……」
「わかっている。温泉に入ってくればいい。
その代わり、はしゃぎすぎるなよ。」
「はい。では、行って参ります。」
***
「ふんふんふふんふん♪
こんなに大きなお風呂に入ったのは初めてです。
聖霊教会にいたころは修道女の方々の目もあって、ゆっくりできませんでしたし……
ふわぁ~、なんだか……眠くなってきましたぁ……」
木の壁に守られた一人だけの空間。それゆえ徐々に気が緩み、無防備になる聖女。
その姿を狙う視線など一切、気づきもせずに……
「クソ、もう少し、ああ、また湯気でなにも見えない……覗き穴が小さすぎるんだよ……」
「それ以上、大きくすると感づかれる。それより、コスモはどこだ?」
「目の前にあるじゃないか。神秘の境界線。その向こう側こそ男の夢。」
「裸になんの夢がある。隠すからこそ宇宙が生まれ、パンツは燦然と輝けるんだ。
……まったく、僕はもう帰るよ。」
「待ってくれよ! まだキミの知恵が必要……」
「おい、そこでなにをしている。」
「うわあ!?」
「まさか、覗きか?」
「こここ、これはですね、男のサガと言いますか……」
「シロアリの駆除を頼まれたんだ。壁の穴はそれが原因さ。」
「……そうか。疑って悪かったな。」
(さすがは軍師。)
「では、そのキリはなんだ。蟻を駆除する道具には見えんが。」
「え、ええっと、これは偶然にもそこで拾って……」
「――顕現せよ、デュナミス!」
「きょ、今日はもうダメだーーー!!!」
「……なにやら外が騒がしいですね。」
「――うおおおっ!!」
「あの声は騎士様?」
次の瞬間、女湯の壁に人が通れるほどの穴があいた。
「しまっ……」
「!? お願い、アラストル!」
その刹那、アラストルが壁を塞ぎ、ルウシエの姿を隠した。
「もう、騎士様ったら。はしゃぎすぎです……」
「クソ……顔がチラッと見えただけなのに、刺激が強すぎて意識が……
「どうした? 起きろ。
…………やはりこの国は危険だ。」
story2
「パンパカパーン! この空っぽの箱からなんと……」
「じゃーん!!!」
「以上、びっくり仰天サーカスショーでした!」
「すごかったですね、騎士様。」
「騎士様、大丈夫ですか? 顔色が優れないようですが……」
「少し疲れただけだ。」
「それはいけません。あそこで腰を落ち着けましょう。休憩してる方が大勢いますし。
……しかし、様子が変ですね。みなさん、足をお湯に……?」
「<足湯>だな。ちょうどいい、俺たちも入るぞ。」
ルウシエとアシュレイは足先をお湯に浸けた。
「あったかくて気持ちいいですね。」
「む? 湯の中に小魚が……」
「あら、ドクターフィッシュは初めて?」
「ドクターフィッシュ?」
「魚たちが足の角質を食べてくれてね。お肌がツルツルになるの。」
「なんと……!」
「……小魚が足に集まってきたな。」
「ふふ、くすぐったいですね。」
「…………」
「あ、ダメです、指の間は……」
「…………」
「ドクターフィッシュ、楽しいですね騎士様。」
「……ああ、こそばゆい。」
「え? 金魚?」
「きんさ~ん、どこですか~。」
「イルカ?」
「どういうことだ。さっきから妙なものが流れてくるぞ。」
「なんだか、わくわくしますね♪」
ちょっとゴエモン、なに流しちゃってんのよ。
今の時代、物珍しさが大事なのだよ。
特別な体験を周囲に晒し、褒められ、承認欲求を満たす。これが昨今の風潮だ。
「イイネ。」
はい、ゲット。
なんの話や。てか、ホメ様が足湯に入っとらん時点であかんのんやないか?
じゃあ、どうなってもいいな。次はこいつを流すぞ。
そのギザギザした魚はもしかして……
ピラニアだ!
ド ア ホ ォ ォ ッ ! !
ぬわああああ!!!
セオリちゃんの雷が直撃したわ!?
「なんだ今のは? 突然、空が……」
「あ、見てください。またなにか流れてきますよ。」
あ、あぁぁ……
「ひ、人です!」
「変質者か。」
「聖霊の御名において、溺れる者に救いの手を。」
ダメよ、ルウシエ! それ以上近づくと、ゴエモンの唇が足に……
「てやっ!!!
……ルウシエ、怪我はないか?」
「は、はい……」
ゴエモンさん、あがってこないわね……
イイネ。使い方おうとるか?
story3
「このステージでは、様々な芸が観られるらしい。」
「ブラボー。おひねりを投げてあげるね。」
この企画はわるくないで、ゴエモンはん。
フラッシュアイデアだ。お前の雷が脳天直撃したのが功を奏した。
ほんなら、あと百発くらいぶちこんだろか。
そいつは勘弁。これからステージがあるんでな。
は?
「あ、次の芸が始まるみたいですよ。
「あいつは足湯のときの……
「あの楽器を演奏するのでしょうか?
「…………
ゴエモンはサックスを投げ捨てた!
「吹かんのかーい!
「まだ練習中なんだよ!
「じゃあ、なんでステージに上がったんや!
「わかったよ! じゃあ踊ればいいんだろ踊れば!
「ヤケになんなや!
「カモン・バックダンサー!
「明けない夜に酔いしれて♪
「特効!
「折り鶴、いつでも飛ばせるよ。
「なんや、ちゃっかり準備しとるやないか……
「ミュージック・スタ――
お、おい、なんだてめえ、ダンサー以外は……
「…………
「えっと……
アオイの国全体が静まり返ってるみたいだわ。
「Oh~、これもワビサビね。
あかん……完全に事故や……
「こ、これは……なにやら一大事のようですね。
私の芸で、この窮地をお救いいたします……
***
……ご静聴、ありがとうございました。
「「「アンコール! アンコール!」」」
えらい、盛り上がっとるな。
ルウシエの歌やダンス、上達してるわね。
アイドル活動、気に入ってたみたいだしね。
「……今日だけは目を瞑っておこう。
「ワォ……アイドル。カルチャーショックね。
なんとかホメ様も満足してるみたい。
「ふふ、どうでしたか騎士様。」
「アイドルは危険だと、再三言っている。」
「は、はい……ところで騎士様。そのお皿は?」
「もしものときは、皿回しを披露しようと思ってな。」
「変わった特技をお持ちで……」
その他
相関図