白猫温泉物語2 Story7
2017/00/00 |
目次
story1
――旅館。受付。
え? 他のお客様と相部屋ですか?
それって二人が泊まれる部屋がないってこと?
すまへんなあ。こちらの手違いで……
いいじゃねえか。部屋代を折半できるし。
あんたはだまっとき! 誰のせいやと思っとるんや!
まあ、仕方ないですね。
いいんじゃない、楽しそうだし。それで誰と相部屋するの?
まさか男性……
そこは配慮して、女性限定にしとるよ。
一応、あんたらを含めて五人部屋や。ちなみに、一人ならもう来とるで。
rダディとは別々の旅館か……
あ、あの……あなたが相部屋の?
rてことは、あなたたちが? よかった、優しそう。
あたしはセツナでこっちはトワ。二人とも巫女なんだ。よろしくね。
rわたしはルミエ。おばけだよ。
え? オバ、オバ……
セツナ、落ち着いて。どう見ても霊体ではありませんよ。
どういうこと?
ややこしいけど、<おばけ>っていう種族で寿命もあるし病気もする。
半獣みたいなものと思ってくれていいわ。
よくわかんないけど、オバケじゃないってことよね。
rおばけだよ?
じー……
rな、なに……?
あなたの背後から嫌な気配を感じます。
rま、まさか、幽霊がカバンの中に……
ひえええっ!? やっぱりー!
きゃああっ! オバケ! 巫女パンチ! 巫女エルボー!
やだー! すり抜けるー!
はあ……物理効かない系の除霊は私の役目でしたよね。仕方ありません……
今も賜る天津水を天の真名井の真清水と受けしめ給え……
神火清――
rえひーー!!!
え、えひ?
rうう……頭が痛い……
…………神火――
rえひーーーー!!!
ど、どったのあの子?
おそらく、私の除霊術が効いてるのだと。
なにそれ。やっぱりあの子、オバケ?
rごめん……その呪文、もうやめて……
……まあ、結界を張ったので、私のそばにいれば霊は近づけません。
rほんと!?
だ、だからって抱きつかれると……
待って! あたしもトワに!
あ、あなたまで、苦しいですよ……
両手に花ね。
はあ……セツナが二人に増えたみたいです……
story2
s私はシエラよ。よろしくね。
ルウシェです。こちらこそよろしくお願いします。
相部屋になってすまへん。うんとサービスするんで堪忍な。
sそういうわけだけど、どうするフレイヤ? 小さくなればなんとか……
私は外にいます。
sそう……わかった。
騎士様、男子禁制だそうですけど……
……5人部屋なら安心だ。俺は別の宿を探す。
ほんなら部屋へ案内するな。
「先に3人いるのよね。仲良くなれるかしら……」
「ま、待ってください。荷物が……」
「大丈夫? そのカバン重そうだけど……」
「はい……この中にはルーンスタンガンや防弾チョッキ、あらゆる防犯グッズが入っていますので……」
「あんまり旅行っぽくないわね……」
「騎士様が心配性で……」
「とにかく、手伝ってあげようか?」
「いえ、大丈夫です。こんなときは……
アラストル!」
「な、なにそれ?」
「自然界に宿るソウルの化身……<アルマ>です。
アルマは私の意志通りに動かすことができるんですよ。このように……」
<アラストルが軽々とカバンを持ち上げた。>
「ヘー、便利ね。他にもいろいろできそう。」
「力仕事だけでなく、細かい作業もできるんですよ。」
「畑を耕したり?」
「はい?」
「種まきとかも?」
「は、はあ……おそらくは。」
「でも、頼りすぎちゃうと、体なまっちゃうんじゃない?」
「やっぱりそうですよね……気を抜くとすぐお腹まわりが……」
「それに比べて、シエラさんはスタイルいいですよね?」
「そう?」
「なにか特別な運動をなさってるとか?」
「農作業はしてるけど……」
「それはなんとも奥が深そうですね……!」
「今度やってみる?」
「是非♪」
お~い、どうしたんや二人とも。はよいくで~。
「「は~い。」」
「ミーの部屋はどこ?」
「あー、満室なんでお引き取りを。」
「Oh~、残念ね。」
「やべっ……本読んでたから、うっかり……」
***
「さてと、どこにステイしましょうか。」
「こちらの宿はいかがですか~! 今なら、食事代もタダ。なんなら、宿泊代も……」
「あんた、もうおよし……そんなことしても、お客さんらは帰ってこん……」
「クソ……みんな見てくれだけの宿に流れやがって……
そら、わしらの宿は古臭いかもしれん……けんど、真心だけはどこにも負けとらん……」
「このご時世じゃ……誰もそんなもの求めとりゃせん……悔しいけど、あきらめるしかないんや……」
「…………ミーは褒め間違えてたね……」
story3
rこのサクランボ、美味しいね♪
シエラさんの畑では、他に何を育てているんですか?
sナスにジャガイモに、あとトマトとか……
rトマト!? わたし、大好物なんだ~。
s今度、あなたの島に送ってあげるわね。
私にはナスを。
ふふ、みなさんすっかり仲良しですね。
よかったね、トワ。友達たくさん増えて。
<セオリたちがふすまの隙間から、中の様子を伺っている。
……よし。作戦通り、極上のサービスで挽回や。
旅館のクレームはホメ様の評価に繋がるかもだもんね。
そいや、ホメ様はどないしたん? 姿が見えんようやけど……
そこは抜かりなく。さっき俺が案内してやった。そふぉにな……
は? 最後よう聞こえへんかったけど、大丈夫なんやろな?
セオリちゃん、大変よ! 準備してた夕食が……
なんやこれ! ご飯、味噌汁、納豆、たくあんだけって……質素やな!
ん? 他のおかずは俺の<まかない>じゃなかったのか? 食っちまったぞ。
そんなわけあるかい! てかわざとやろ! わざとやな! わざとじゃなくてもわざとや!
落ち着いてセオリちゃん! とにかく今は、この夕食を出さないと。
買い出しにいきましょう! 主人公もついてきて!
このとおり、平に! 埋め合わせはするさかい!
いえいえ。私はこのくらい素朴な食事のほうが好きですよ。
これが納豆……初めて見ます。
あたし苦手だな。臭いが……
rわたしも。口の中がネバネバするし……
sそんなこと言ったら大豆が可哀想よ。食べないなら私がもらうから。
今のところ……なんとか、クレームはなさそうやな。
sねえ、ルミエ。それなに?
rこれはカメラだよ。あ、そだ。せっかくだから記念撮影しよ。
いいねえ。じゃあ、シャッターは……ダイフク!
変身した……?
撮影ならアイドル活動をしていたときに経験があります。例えばこう。
えっ……私もそんなポーズとるの? 恥ずかしいんだけど……
rとりあえず、みんな近くに集まって。
私は端っこに……
なんで、トワは真ん中でしょ。
や、やめてください。私は目立ちたく……
え? この方は? どうして真ん中に?
芸子さんだよ。
sヘ、ヘンタイ?
ただのゴミや。すんまへん、今片すんで……
やだやだやだ! 俺だって青春したいー!
おっさんが駄々こねんなや!
あ、あの……暴れられると……
やだやだ!
s写真が……
や――
rドロップキーック!!!
ぬわああぁぁぁっ!
rさっ、これで大丈夫。
ナイスキック!
sはい、撮れたみたいよ。
ちょっと天后! あたしまだポーズとってないんだけど!
写真は自然体のほうがいいとも聞きますよ。
変な顔してませんでしょうか……
r写真できたよ~。
sヘー、意外としっかり撮れてるじゃない。
ばっちりカメラ目線ですね。
二人とも、よくあの状況で……
私は変な顔じゃなくてほっとしました。
rみんな、なんだか気品があるよね。
なんたって、あたしとトワは<清めの宮>に通ってる、神に仕える清らかな巫女だからね。
セツナが清らか?
にらまないでよ……
rルウシェはどうなの?
私は……最近まで教会に幽閉されていました。
sさらっとすごいこと言うわね……
私にとってはそれが当たり前でしたので、よくわかりません。
r……なんかみんなと比べると、わたしだけ平凡な気がする。
ルミエの両親はなにやってるの?
rダディは怪談師で、マミーはもういないけど……立派なおばけだったよ。
うん。ルミエが一番、変。
rえひ~。
sそういえば、この写真一枚しかないけど……
どうしましょう。
rじゃんけんで決める?
あみだくじ、でしょうか。
麻雀は?
sなにそれ?
r待って、待って。今気づいたけど、わたしの後ろ……幽霊が映ってる!
ええ、やだ! 墨で塗りつぶそう!
そのような写真いりませんよ。
いらないの?
墨がついたらの話です!
sで、結局どうするの?
一発芸で決めましょう。
ルウシェからまさかの提案。
rある意味それが一発芸だよね。
sじゃあ一発芸で決定。はじめるわよー。
女子たちが盛り上がっているころ……
主人公たちは夕食の買い出しに向かっていた。
どいて! どいて! ぎにゃー!
ワビサビ、真心……
?(ホメ様が思いつめたように、なにかを呟いている。)
story4 就寝時間
さ、布団を敷きましたよ。
sごめんね。みんなのぶんまで任せちゃって。
いいんです。布団はきちんと並べたい性分でして。
それって、あたしが雑に敷いたせい?
それでは寝ましょうか。ふぁ~、騒ぎ疲れました……
r今夜はぐっすり眠れそう……
s明かり消すわよ。
rひえええっ!? 真っ暗~~~
あの、ルミエさん、私の布団に入ってこないでください。
ずるい! あたしもトワと寝る!
あ、暑苦しいです。あと、へ、変なとこ触らないでください。
s騒がしくて眠れないわね……
すやすや……
sルウシェ? よくこんな状況で眠れるわね……あら?
んん……振り付けは完璧です。
s布団どころか、服もすごいはだけてる。寝相が悪いのかしら。
直してあげましょ。
あらふとるございます……むにゃむにゃ……
sアラフトル?
ね、ねえ……ルウシェの上にでっかい影が……あれって……
rひえええっ!? 幽霊~~~!!!
仕方ありませんね。除霊を……
rえひー! 頭が痛いー!
まだなにもやってませんが……
sもう! いい加減にして!
これはルウシェが出したもの。幽霊じゃないわ。
そうなの? でもなんで今それを……
sさあ。単に寝相が悪いんだと思う……
ルウシェさんの近くで寝るのは危険な気がしますね……
rあわわわ……
ルミエが気絶してる!? いや、寝てる?
sなんにせよ。これで静かになったわね。
おやすみ。
***
ん~、よく眠れました~。
ルウシェは背伸びした後、戸を開けて、朝の日差しを部屋に招き入れた。
みなさん、おはようございます。清々しい朝ですね。
私事なのですが、スキーに興味がありまして、今日はあそこの雪山で……
……みなさん?
rか、怪物が……
オバケ怖い……
二人とも離れてください……
sうるさくて眠れなかった……
その他
相関図