【白猫】ドリーマーズ・ハイ Story
てっぺん突破!宇宙へ飛び立て!!
2017年03月25日
目次
登場人物
story1 可能性の戦い
<ここは<宇宙>を夢見る者たちの集う島――<ネクサス>
今日も彼らは夢と可能性に挑んでいる――
管制塔!こちら、アンドリュー&メカコーンポップ。準備完了だ。
<彼は、誰も見たことのない<宇宙>を目指す青年。アンドリュー・ウチウスキー。>
フヒーッ!コーン・ホップ!ハイテンション!!
<彼はアンドリューの友人であるコーン・ホップの分身。メカコーン・ホップ。>
了解。現在、天候はくもり。ロケットの打ち上げに問題はありません。
メカコーン・ホップ!姿勢制御プログラムを起動してくれ!
ハジケル!!ハジケル――ッ!イエロ――――ッ!
自動カウントダウンシーケンス開始。ロケット系の電源が外部から内部に切り替えられました。
ダイチ!クサビ!タチキル!!コーンポップ!!
点火回路、準備完了。搭載計算機シーケンス、タイムスタート。駆動用電池起動。
全システム準備完了。メインエンジンスタート。ロケットブースター点火。リフトオフ!
すごい圧力だ……このまま高度を上げ……
メカコーン・ホップ!?
コーン……ホップ……ガガガガ……
こちら管制塔。アンドリュー、どうした?
姿勢制御プログラムに問題が発生した。このままでは大気圏突破は困難だ!あくまで私の想像だがっ!!
姿勢制御って、そのサポートメカの役割よね!?だから、そんなもんに頼るなって言ったでしょーが!
君のチームにメカコーンポップのメンテを頼んだがなにかしたか……
ちょっと、こっちの腕を疑うつもり?あんた以上に完璧にしあげたっつーの!燃料だって純度の高いもん入れたっての!
それだ!彼の燃料はトウモロコシ燃料だと言ったはずだろ!
高純度の燃料のほうがいいに決まってんだろ。それに合わせて機関部まで総レストアしたんだぞ。
メカコーン・ポップにはトウモロコシ成分が必要なんだ!そういう存在だと何度も言ったじゃないか!
……いや、議論している暇はない。このままでは墜落だ。
そうね。被害を最小限に抑えるため、不時着の座標を指定する。
了解。生きて帰れたら、決着をつけよう。ハリー。
上等。勝手にくたばんなよ、飛行士。それとあたしをハリーって呼ぶな。
…………
……
<アンドリューたちは帰還できたが、ロケット打ち上げ実験は失敗に終わった。>
今回の失敗原因はサポートロボ。どう考えても言語プログラムがおかしいっしょ?
コーン・ホップ!フヒー!!ブフー!!
なに言ってんのかもわからないのにサポートもなにもないっての。
私にはわかる!そもそも彼は我々の知識で説明できるものじゃない。だからこそ、天才的発想が……
ロジックで考えろよ!完全にオカルトだろ!
ロジックだけが全てじゃない。世のなかには宇宙のように簡単には説明できないことがある!
だから、そういう不確定要素を利用するのが、前提として間違ってるって言ってんの。
言わせてもらうが、そもそも君がメカコーン・ホップに変な燃料を入れるから……
燃料間違えたのは謝るけど、それとプログラムは関係ないっしょ!
プロジェクトメンバー |
---|
君たちはあいかわらずだね。
今回の失敗に関してはレポートにまとめた。次こそは必ず成功するはずだ。
だから、不確定要素のせいだっつってんじゃん。
メカコーン・ホップ以上の演算能力を持つ存在がいないんだから、彼に頼るしかないだろ。
ああ、非常に言いにくいことなんだが……次があるかはわからない。
どういうこと?
今回の失敗で、出資者が減った。このままではプロジェクトが凍結される。
story2 宇宙コンビ
<冬の国・女王>インヘルミナ |
---|
それで用ってなんなの?女王さま。
わらわがアンドリューのロケット開発に出資をしているのは存じておろう?
そういえば、そんな話してたわね。
空よりも高い宇宙に進出しようとするアンドリューの革新的な考えに、わらわも感銘をうけた。
それで、うまくいってるの?
結論から言えば、うまくいってはおらぬ。金食い虫のプロジェクトよ……
そのせいで、プロジェクトはわらわの道楽などと言われる始末……
先見性のない浅慮な俗物どもよ。このプロジェクトの可能性に気づいていないのだからな……
とはいえ、次の打ち上げ実験で成果をみせなければ、これ以上の出資は難しいだろう。
アンタもいろいろと大変なのね。
なに、次の打ち上げが成功すれば、連中を黙らせることはできる。
そこで其方らに頼みたいことがある。
…………
……
だからメカコーンポップの言語プログラムにバグはない!
どこからどう見てもバグっしょ?あたしは姿勢制御プログラムをアレに任せるの、反対だから。
だったら、他に方法があるのか?
それを考えるのが、プロジェクトリーダーの仕事だろ?あたしは技術屋だから、知らんっての。
だから、ルーンエ学とアルゴリズムに関する論文は提出しただろ。
あれが論文?曖昧な夢みたいな事ばかり書かれてたけどね。
確かに、あの理論は私の想像だ。だが、証明するための技術が足りない。
喧嘩してるね……
それで困っておる。
ロケットの設計思想者にして飛行士のアンドリュー。そして技術者として超ー流のハリエット……
この二人はプロジェクトに必要不可欠な人材だ。だが、このとおり険悪だ。
ちょっとー!アンタたち、仲良くしなさいよ!
私に喧嘩する気はない。プロジェクトのため、言うべきことを言ってるだけだよ。
あたしだって無駄な口論したくねーって。こいつがわからず屋すぎる。
わからず屋なのは、君のほうだろ?
だったら、合理的に説明しろって。
だから、説明なら論文で……
……と、このような有様だ。出資者として、このままでは成功するものもしないと思っておる。
其方らで、こ奴らの仲を取り持ってくれないか?
だから、アンタら、喧嘩すんじゃないわよ!!
喧嘩なんてしてないっ!!
story3 エマージェンシー
ー番から五番バルブに異常は?
問題ありません。ルーンジェットエンジンの燃焼実験は成功です。
次の実験ってなんだっけ?
プール内で有人機動ユニットの作動実験です。
やっほ~。元気そうね、ハリエット。
別に普通。で、なんの用?
アンタとアンドリューってもう少し仲良くできないの?
それって必要なこと?
必要でしょーが!
みなさん、心配してます。
……作業が遅れてるわけじゃないんだしさ。悪いけど、対人関係にリソース割いてる暇ないから。
行っちゃったわね。
管制塔、こちら、アンドリュー&メカコーン・ホップ。これより有人機動ユニットの作動実験を開始する。
コーン・ホップ!
そのトウモロコシのバグ、修正したの?
管制塔、何度も言うが彼のプログラムにバグはない。
フヒー!
管制塔。どこからか浸水してきている。通電を止めてくれ。感電する可能性がある。
……こちらからのフォローはできなくなるけど、大丈夫?
問題はない。だが、手動で開けられないロックに関しては、そちらからの物理的なアプローチが必要だね。
……そうね。しくじったわ。了解、こちらでハッチは強引にこじ開ける。
了解した。宇宙服の酸素は、もって30分くらいだ。
……了解。電源を落とすわ。以降は宇宙服の通信デバイスを使って。
至急、プールからユニットを引き上げて!
それが、クレーンにトラブルが発生して……
わかった。あたしが見る。飛行士、聞こえてる!?
管制塔。こちらアンドリュー。どうしたんだい?
ユニットを引き上げるクレーンも誤作動を起こした。こちらのミスよ。
どんなに急いでもー時間はかかる。あたしならギリで45分。酸素の消費、抑えといて。
君が言うなら、そうなんだろうね。わかった。
ガス!イエローフヒー!トウモロコシ!!
なるほど!!
管制塔!姿勢制御用の窒素ガスがある。それを利用すれば、推力で浮上は可能じゃないかな?
さすがは飛行士!あんたのやり方に乗るわ。
だが、こちらからのアプローチは不可能だ。外部からコントロールするにせよ、ユニットに通電する必要が……
バカげた空想を実現化するのが技術屋の仕事!あたしに任せろっての!
story4 喧嘩するほど……
ハッチ、開いたわ!!
<アンドリューは差し出された手をつかんだ。>
よかった。間に合ったか……
管制塔。こちらアンドリュー。無事にユニットから抜け出せたよ。
大変だったわね。
ま、こういうアクシデントは、よくあることさ。本番で事故が起さるよりマシだよ。
あんたのアイデアのおかげで助かったわ。今回はさすがの飛行士も死んだかと思って、内心かなり焦った……
メカコーン・ホップのおかげだよ。それと、君たち優秀なスタッフのおかげだね。
コーン・ホップ!ハジケル!
あいかわらず、なに言ってるかわかんないけど、助かったよ。
なんか、仲よさげね……いつも、こんな感じにできないの?
別に普通っしょ?
ああ、普通なことだ。君たちは誤解しているようだが、私たちは別に嫌い合っているわけではない。
本気で仕事してるんだからぶつかる時はぶつかるでしょ。仕事に好き嫌いもちこむほどガキじゃねえって。
インヘルミナさんの勘違いだったってこと……?
よく言うアレね。喧嘩をするほど仲がいいってやつ!
仲良くはないね。まあ、私の想像だが。
うん、仲良くはない。想像じゃなくて事実。
こっちは仕事だし。もらえるもんもらえれば、責任持ってやり遂げる。あんたらの依頼人にも伝えときな。
…………
……
わらわの勘違いだったか……それならば、よい。
めんどうな二人だってことは確かね。
わらわとしては、打ち上げ実験さえ成功してくれればよい。
そういえば、あの時の実験、失敗しちゃったけど、大丈夫だったのかな?
やっぱり有人ロケット打ち上げは、現状じゃあ危険が多いって。
…………
前に打ち上げも失敗したし、出資者もいい顔しない。リスクのほうが多いっての。
それに有人機動ユニットの気密性も完全じゃなかった。設計上は大丈夫だったのにね。
原因はなんなんだい?
単純なヒューマンエラー。あたしが使うように頼んでたネジを使ってなかった。
そのネジなら大丈夫だったはず。……それを確かめる実験は、もうできないけどさ。
……わかった。有人ロケット打ち上げは諦めよう。
意外ね。てっきり、自分の夢を優先させるかと思った。
今や、私だけじゃなく、みんなの夢だからね。
夢云々じゃなくて、ビジネスの話だっつーの。そういうところは甘ちゃんだな。
ビジネスの話をするなら、次はミスを犯さないでくれよ。
つーか、ミスったの、うちのチームじゃねーから。あんたが連れてきた奴だよ。
あんたさ、宇宙に興味あるからって誰でもプロジェクトに入れんなよ。変な奴だっているだろ。
ああ、わかってるさ。でも、今は人手が足りない。
とにかく今は、やるべきことをやっていこう。
story5 友よ……
とうとうこの日が来たわね!
しばらく音沙汰がなかったから忘れかけてたわ!
つめたいこと言うねえ~。
ハリエットさん、こんにちは。
それでそれで?飛ぶの?飛ばないの?
飛ぶに決まってんだろ。あたしが作ったエンジンだぞ。墜ちるとしたら、バグのせいだね。
だから、メカコーン・ホップにバグはないと言ってるだろ!
アンドリューじゃない。ねえねえ、飛ぶの?飛んじゃうの?
必ず飛ぶさ。飛んじゃうさ。
メカコーン・ホップさんは?
トウモロコシなら、ロケットの中だよ。
機械の体なら酸素は必要ないからね。まあ、宇宙に酸素がないのは私の想像なんだが。
悔しいけど、トウモロコシ以上に正確な姿勢制御プログラムが完成してなくてさ。
でも、どうやって戻ってくるの?
もともと彼のボディは小型のロケットだからね。宇宙へ上がり、記録をしたら、単身で帰ってくる予定だ。
てことは、メカコーン・ホップが初めて宇宙に行く人になるのね!
そのとおり!さあ、そろそろ打ち上げだ。管制塔まで来てくれ。
こちら管制塔。メカコーン・ホップ、応答願う。
"ハジケル!イエロー!アイアムメカコーン・ホップ!"
了解。現在、天候はくもり。ロケットの打ち上げに問題はない。我々の夢を君に託す。
自動カウントダウンシーケンス開始。ロケット系の電源を外部から内部に切り替える。
点火回路、準備完了。搭載計算機シーケンス、タイムスタート。駆動用電池起動。
全システム準備完了。メインエンジンスタート。ロケットブースター点火。リフトオフ!
<ロケットが天高く飛び上がっていく――>
なっ!
爆発……したの!?
こちら管制塔!メカコーン・ホップ!応答願う!メカコーン・ホップ!!
……無駄だっての。通信、できるわけ……ないじゃん……
応答願う、メカコーン・ホップ!コォォォン・ポオオオオオップ!
…………
……
…………
……いつまで、そうしてへこんでるつもり?もうー週間経つんだけど?
……君か。もうプロジェクトは解散した。ここにいても、なにもない。
要するに諦めるってわけ?
……私は自分の夢のため、友を犠牲にした。許されることじゃない。
失敗した原因も特定せず、終わるってんなら……トウモロコシは無駄死にだな。
っ!!
犠牲が出たんなら、二度と同じ過ちを繰り返さないよう前に進むべきっしょ?
へこんでる暇があるなら、ダチのためにやることやれよ。
あんたが、あたしらを巻き込んだんだろ!もう、あんただけの夢じゃないんだっ!!
…………
……君は厳しいな。でも、確かに、ここで折れたら、責任放棄になるね。
爆発した原因を解明しょう。墜落した機体は回収できたかい?
あんたがへこんでる間に準備しといたよ。
…………
……
あの爆発は、どう考えても機関部から発火していた。言いにくいことだが。エンジントラブルだと思う。
でも、エンジンの燃焼実験なら何度も成功してた……
なのに、なぜだか失敗する……特にここ最近は、まるで計ったかのように……
実験失敗の原因箇所を担当した人物はまとめてある。
このなかに、エンジン開発に関わってた人物はいるかい?
いる。
なら、彼の担当した箇所を念入りに調べてくれ。なにかわかるかもしれない。
了解。あんたは?
私にも調べることがある……
最終話 空飛んで、地固まる
それで話ってなんですか?もうプロジェクトは中止になったはずですよね?
ああ、中止にはなったけど、原因究明を進めていてね。
事故が起こるのは、常にあんたの周辺だった。
そ、そりゃあミスはありましたけど、全部が全部じゃないですよ。
たしかに全て君だけというわけじゃない。だが、いろいろと調べた結果、わかったことがある。
出資者のなかに、女王様がいた。彼女には政治的な敵対者が多い。
出資してるプロジェクトが失敗すれば、女王を叩くいい口実になるわねえ。
君たちが、その手の連中に送り込まれてきたことは、わかっている。
っ!!
バーンナップ!!
逃がさないわよ!!
か、勘弁してくれ……
いや、しっかり責任は取ってもらう。君たちはもちろん、プロジェクトを邪魔した連中にもね。
彼奴らには、必ず責任を取らせてやる。……連れていけ。
はっ!
それにしても、あんたらってやっぱり冒険家として優秀ね。しっかり情報集めてきてくれたし。
当然ね!
これで……友の仇は取れた……すまない、メカコーン・ホップ……
"コン……ザザザ……ホップ……"
なんだ?この電波は……
"コーン・ホップ!カエッテキタ!!パンチ!パンチ!"
まさか……夢じゃ……
"コーン・ホップ!ハジケル!ロケッパンチ!パンチ!"
爆発する前に脱出したのかいでも、ふき飛ばされて……海を漂流……漂着した島で直してもらった……
"オレオマエトモダチ!カナラズ……ハジケル!!"
よかった……本当によかった……おかえり、メカコーン・ホップ……
"ロケット!ウチアゲ!!フヒー!!"
いや、もう無理なんだ。失敗したせいで出資者が去ってしまった。
"コーン・ポップ!!ロケット!!ハジケル!イエロー!!"
なるほど!!その手があったか!やはり君は天才だっ!
どんな手があったっての?
プロジェクト再始動だ!!
…………
……
それで話ってなんなんだい?
集まってもらってすまない。プロジェクトを再開したいと思う!
でも、資金が……
それなら問題ない。今回のロケット開発で様々な新しい技術が生み出された。
ロケット開発の副産物が、他の分野に転用できる。その有用性が証明された。
それはつまり……
新しい技術を発見し続ける限り、ロケットを作ることが許された!
うおおおお!!
今までみたいに好き勝手はできないからな。あくまで新技術の開発がメインってことだから。
ああ、それでも、また我々は宇宙を目指せる!夢を叶えられる!!
いや、夢もいいけど、やらなきゃいけないことのほうが多いから。
それは、わかってる。けど、夢がー番大事だろ!
いや、成果をあげるのがー番大事っしょ?だいたいあんたはさ……
またはじまっちゃったね。
要するにアレね。
喧嘩するほど仲がいいってやつよ!
なるほど、確かに言われてみれば仲はいいかもしれない。同じ夢を追う同志だからね。
……いや、そういうんじゃねえし。別に仲良くねえでしょ。仕事だ、仕事。仕事の関係!
……あんたら、もうずっとやってなさいな。