【白猫】プリティフレンズ Story
目次
「さいかわ猫決定戦2016」
優勝 すず
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<降り注ぐ太陽の光と、寄せては返す潮騒の音の中、大勢の人たちが働いていた。>
……撮影って、こんなにたくさんの人が関わるのね……
アタシもちょっとナメてたわ……
でも今回の仕事はモデルなんだし、準備は任せておきましょ。
そうね。キャトラは段取り覚えてきた?
新商品の<力二カマ>を美味しそうに食べたらいいんでしょ。
まかせて!イメージトレーニングは、バッチリよ!
??? |
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へ~、イメトレしてきたんだ。良い心がけじゃない。
すずさん、はいられましたー!
おはようございます。
おはようございます!
えっと……誰?
今日いっしょに撮影をする、すずさんよ。
あ……思い出したわ!ごめんね、今日はよろしく♪
ええ、よろしく。でも――
共演者の名前も覚えてないとか、真面目に仕事する気がないなら、帰ってもらっていいから。
え……
それじゃ!
怒らせちゃったみたいね……
たしかにアタシも失礼だったけど、あの態度はないでしょ!
でも報酬のことしか頭になかった、キャトラもちゃんと反省しないとね。
撮影はじめまーす!準備してください。
ほら、出番よキャトラ。笑顔で、ね?
はーい!
……フン!
かっちーん!アンタねぇ――
ちょ、ちょっと、なによあんた?私のお仕事を邪魔する気!
違います!魔物です!
魔物っ?!
なんでこんなタイミングで出てきてんのよ?!
……たぶん、この香りだわ。
香りって……この新商品の力二カマ?
それってつまり……アイツら、アタシの力二カマを狙ってんのね!
……あんたのじゃないでしょ……!
許せないわ!いくのよ、主人公!
アイツらー匹のこらず、やっつけるのよ!
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すごい……っ!?きゃっ!!
<魔物の攻撃からすずを庇いつつ、主人公は魔物を切り伏せた。>
これで全部片付いたわね!
あの……大丈夫ですか?怪我とかしてませんか?
だ、大丈夫よ!だけどその……えっと……あ、あ、あ……
あ、あんたたち、なかなかやるわね。強いじゃない。
ふふーん♪あの程度ならアタシたちの敵じゃないのよ!
それより早く、撮影よ!力二カマがアタシを待ってるわ!
……すみません。撮影は中止です……
え……な、なんでよ!?
実は……機材と商品が……
<スタッフの視線を追うと、メチャメチャになった機材と商品があった。>
これじゃ撮影は無理だ。悪いが今回の仕事はキャンセルさせてくれ……
そ……そんな……じゃあ、アタシの力二カマは……?
悪いな。
そんなあああああ――ッ!!?
ちょ、ちょっと、そんな大げさな……
アタシの……アタシの力二カマがあああ!
ねえ、聞いてる?ねえってば!
キャトラ……元気出して?
でも、アタシの……アタシの力二カマが……
ちょっと、私の話を聞きなさいよ!こらぁー!
……これじゃ、仕方ないわよ……今回はあきらめましょ。ね?
なんで無視するの!無視しないでよ!
……うん……
ちょっと待ってよー!もー、ばかー!!
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ねえ、ねえったら、待ちなさいよ!
あ……?あれ?アンタ、撮影の時の……なんでここにいるのよ?
あんたたちが私の話を聞いてくれないからでしょ!
だいたい、なんでさっさと帰るのよ!
だって力二カマも無いのに、いてもしょーがないでしょ。
それは、そうかもしれないけど……
文句とか聞くつもりはないわよ?
そ、そんなんじゃないわよ!
なら、なんなのよ?
え、えっと、えっとね。その――
さ、さっき魔物が出てきたから、あんたたち仕事がキャンセルになったでしょ。
……ええ。そうですけど……
それがアンタになんか、関係あるの?
か、関係はないけど、あんたたちは悪くないじゃない。
ま、魔物だって追い払ってくれたし……それに……
なによ?
わ……私は頼んでないけど、いちおう助けられたでしょ。
だ、だから、その……お礼っていうか……
ほうほう。なるほど。つまりアレね。
アンタはお礼を言いに来たのね。なんだ思ったよりイイ子じゃない。
い、イイ子ってなによ!子供じゃないんだからね!
はいはい。それじゃ早く、お礼の言葉聞かせなさいよ。ほらほらあ♪
うぐぐ……
ねぇねぇ……あそこにいるのって……
え……あっ?!ちょ、本物!?まぢで!?
‥……なんだろう。すごく注目されてるみたい……
もしかしてアタシの可愛さに、みんなメロメロになっちゃった?
どちらかというと、注目されてるの、すずさんみたいだけど……
え?あっ!?
……あの、すずさん……?
ちょ!?こんな街中で名前――ああもう!こっち!走って!
え、え?!
な、なによ、いきなりっ?引っ張らないでよー!!
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こ、ここまでくれば、もう大丈夫よね……?
はあはあ、な、なんなのよ。なんで逃げるのよ?
だって、あのままたったらファンに囲まれて、大騒ぎになっちゃうじゃない!
大げさじゃない?そんなの――
隠れて!
<すずに小さな路地へ押し込まれると、大勢の走る足音が近づいてきた。>
な、なにこれ?!地響き?!
しー!
あーん!見失っちゃったぁ!すずちゃーん!!
きっとまだこの辺にいるって!あっち探してみようぜ!?
<…………>
さっきの話……本当だったのね……
なにそれ!ホントに疑ってたわけ?
今はもう信じてるわよ。でも相手がファンなら、逃げなくてもいいんじゃ……?
ダメよ!騒ぎになったら、事務所に迷惑がかかっちゃうもん!
それに次のお仕事だって……あーっ!?
どうしたんですか?
次の現場……反対方向だった……
アンタ……結構なドジっ娘ね。
そ、そんなことないわよ!こんなのたまたまなんだから!
うんうん。そーねー。
あんた、信じてないでしょ!
だいたい時間だってまだあるし、急げば間に合うんだからね!?
でも、このままファンから逃げ回ってたら、遅刻するでしょ?
それは…………そんなのは……ダメよ……
ダメって言っても、仕方ないんじゃない?
それでもダメなの!
なにか理由があるんですか?
…………
私……今はモデルで人気も出て、ファンもたくさんできたけど……
元は……捨て猫だったの……
そんな私を拾ってくれたのが、おかあさん……事務所の社長なの。
私、おかあさんに、たくさん優しくしてもらったし、たくさん幸せにしてもらったわ……
だから私、おかあさんに絶対、心配や迷惑をかけたくないの!
……そうだったんですね……
オッケー!アンタの気持ちはわかったわ!アタシたちにまかせなさい!
任せろって……どういうこと?
アンタを見つからないように、次の仕事先まで送ってあげるのよ。
絶対、時間に間に合わせてみせますから、安心してください。
……あんたたち…………
ほら、そうと決まったら急ぐわよ!
――う、うん!
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……よし、ファンはいないわね。ほら、次の路地まで、ささっと移動するわよ!
う、うん……でもさ……
なによ?
こんなにコソコソしてたら……余計に目立たない?
ファンに気付かれなきゃ、それでオッケーなのよ。
それは……そうなんだけど……
しっかし、モデルって大変ねえ……アンタのファン、全然あきらめないし。
人気商売だから、熱心なファンがいてくれるのは嬉しいけどね……
人気商売……モデルのお仕事って、そういうものなんですか?
だから私は、いつだって魅力的でいないといけないのよ。
プロ意識ってやつね。ちょっと見直したわ。ただのエラそうな奴じゃないのね。
誰がエラそうなのよ!
だって最初に会った時、ものすごいイヤミ言われたし。
あ、あれは共演者の私を知らないっていうからよ!
イメトレしてきたって言ったから、真面目な子だって思ったのにさ。
キャトラがしてきたのは、美味しく食べるイメトレだけだったから……
こっちは久しぶりに誰かと一緒の撮影で楽しみにしてきたのに……
ん?アンタ、仕事はいつもひとりなの?
うっ!……そ、そうよ。私と共演してくれる子、すっごく少ないの!
そうなんですか?
アンタ、アレでしょ。共演者にも厳しいから、嫌がられてんでしょ?
な、なんでわかるの?!
ここまで話せば、なんとなくわかるわよ。アンタちょっと真面目すぎだし。
しょーがないでしょ、お仕事は大切だって、社長に言われたんだから!
……たしかにいつも真面目すぎで、つまらないって言われるけど……これが私なの!仕方ないでしょ!!
すずさん……
ま、機会があれば、またアタシが共演してあげるわよ。
ほ、ほんと?
アタシもやりかけでモヤモヤするしね。感謝しなさいよ♪
なっ!なんで感謝しなきゃいけないのよ!あんたこそ感謝しなさいよ!!
すずさん!
ねえ?今こっちから声が聞こえなかった?
すずちゃーん!
いきなり大声なんか出すからよ!
だってしょーがないでしょ!
あっ……
急いで逃げるわよ!ダーッシュ!
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ついたわね。ココでいいんでしょ?
――ええ!時間も……間に合ったわ!
よかったですね♪
ええ!あっ、その……あんたたち……
あ、ありがと。ここまで送ってくれて……
へ~♪アンタ、ちゃんとお礼いえるんじゃない。
あ、あたり前でしょ!バカにしないで!
それじゃ、あとはしっかりやんなさい。
え……
ふふ。お仕事、応援してますね。頑張ってください、すずさん。
あっ、ま、待って!
なに?まだなんかあるの?
え、えっと……あっ!私の最初の用事が終わってないわ!
最初の用事……って、なんだっけ?
魔物退治して助けてくれたでしょ!私まだ、お礼してない!
ああ、そういう話だったっけ。
なんで忘れられるのよ……って、もういいわ。時間なくなっちゃうし。
なんか今さらになっちゃったけど……はい、これ。
<すずはずっと持っていた紙袋を、差し出した。>
これは……?
新商品の力二カマよ。あんたたち報酬無かったでしょ。
力二カマっ?!
私、サンプルでもらってたの。キャトラはこれが欲しかったんでしょ。
アンタ……アンタ、イイヤツね!
いいのよ……そ、それから……中に……お、お礼も入れてあるから……
ほうほう。どれどれ……これ、かつお節?
‥……私のお気に入りよ。力二カマより美味しいんだから!感謝して食べなさい♪
ありがと。でも……美味しいのは、力二カマの方に決まってんでしょ。
はあ?なに言ってるのよ。かつお節のが美味しいわよ!?
アンタこそなに言ってんのよ!力二カマのが美味しいわよ!?
かつお節だってば!
力二カマよ!
かつお節よ!
力二カマ!!
かつお節!!
大丈夫よ主人公。だってふたりとも楽しそうだし、それに――
喧嘩するほど仲が良いっていうでしょ♪
仲良しじゃないわよ!!