【白猫】ジョバンニ(リベンジ)・思い出
思い出1
わっととと!!
<慌てた声に振り向くと、ジョバンニが紙の束を抱えていた。>
……大丈夫?
あ、はい。大丈夫です。
ならいいけど。それってやっぱり楽譜なの?
ええ。そうですよ。
あぁ、うん。相変わらずなのね。
ジョバンニくん、体調とか崩してない?
大丈夫ですよ。以前は心配をかけましたけど、今は倒れたりしてませんから。
そうなの?
飛行島は環境がいいですから。
それに僕も最近は、他の冒険家と活動していて、体力がついてきているんです。
……ジョバンニくんが、冒険に出かけているの?
はい。冒険を経験することで、書くことのできる曲があると、わかってきましたから。
ふ~ん。なんかいい顔してるし、納得してるのね。
はい。僕は今、とても充実しているんですよ。
さて、まだ書きたい曲があるので、僕はこれで失礼しますね。
無理だけはするんじゃないわよ?
ええ、心得てます。
でも、冒険で使った分、作曲時間が減ってますから、がんばって書きあげないと。では!
……ジョバンニくん、本当に元気そうね。
調子もよくて充実もしてるなら、いいことじゃない。
思い出2
――でね、あたしが登場するんだー!
なるほど……それで、どんなのがいいんですか?
あのね!強くて、かっこよくて、あとあと、元気になるのがいいー!
強くて、かっこよくて、元気ですか……え~っと……
頭抱えて、なんか困ってるの?
あ、みんなー!
こんにちは。ミカン、ジョバンニくん。
こんにちは。それからキャトラ。僕は別に困っていないですよ。
でもなんか頭抱えてたじゃない。
どんな曲にしようか、考えていたんです。
あ、作曲中だったのね。
ええ。テーマソングがほしいと、ミカンに依頼されたんですよ。
え、ミカンが頼んだの?
最近は個人からの依頼が増えているんです。
……そうなの?
冒険でー緒になった人たちから、頼まれることが増えましたから。
なるほどね。
<衝動>で書く曲じゃないけど、これもいい経験になるんですよ。
ふ~ん。そういうものなのね。だけど……ミカン?
なにー?
アンタ、忍者でしょ。それがテーマソングとか作ってていいの?
え? ダメなの?強くて、かっこよくて元気なのだよ?
そんなの歌ったら、忍べないじゃない。
……ほんとだっ!どうしよう……
はぁ……じゃあ、こころの中で歌えば?
あっ、そうだね! そうするー!
ジェバンニ、一番カッコイイ歌つくってね!
わかりました。まかせておいてください。
やったー!あとで頭領にも歌ってあげよー!
思い出3
ラー、ラーー、ラー、ラァーー!
……えっと、カモメ?どうしちゃったの?
これはキャトラ航海士!お疲れさまです!
よかった!カモメ、普通にしゃべってるわ!
キャトラ……さっきのはただの発声練習だよ。
あ、そうなのね。でも、なんでそんなことしてるの?
実は今度、帝国軍の合唱団に参加するんですよ。
へ~、合唱団なんてあるのねぇ。
はい。だけど私、合唱の経験がないので……
それでジョバンニくんに、教わってたんですか?
はい。ご指導いただいてます!
ふ~ん。ジョバンニって、そんなこともできるの?
はい。声楽の基礎や発声法くらいですけど。
楽譜の読み方から、リズムを理解する方法まで、丁寧に教えてもらいました!
合唱には知識と技術が必要で、だから相対音感や発声のトレーニングは重要なんです。
はぁ~、すごいわねぇ……
性格は真面目で協調性があり、声も綺麗でカンもいい。
きっとカモメは、すぐに合唱団で美しい歌声を聞かせてくれますよ。
ジョバンニのお墨付きね。カモメすごいじゃん♪
わ、わっ?!ほ、褒めすぎですよ!で、でも……嬉しいです!
カモメが歌うの楽しみにしてるからね。
は、はい。がんぱります!
いいですね。それじゃ発声練習の続きからやりましょうか。
サー!イエッサー!
思い出4
財宝求めてヨーホーホー♪海へ漕ぎ出せヨーホーホー♪
ラムを飲み干し、帆をあげて、力で全てを奪い取れ♪
目指すは死の島、隠れたお宝探しだせ♪
――ヨーホーホー。って、見たらわかるでしょ。
あ、もしかしてカルディナも、歌のレッスンしてるの?
なんでアタシがレッスンなんて、しないといけないの?
あれ? ちがうの?でも今、歌ってたじゃない。
今のは僕の方が、教わっていたんですよ。
えっ、そうなの?!
カルディナには、海賊同士の間で歌われている歌を、教わっていたんです。
こういうのは、本職の方にお願いしないと、なかなか聞けませんから。
……なるほど。そういうことだったのね。
だけど海賊の歌って、アンタの参考になったりするの?
もちろんです。全て僕の糧になりますよ。カルディナには感謝しています。
フフッ。高名な作曲家様に、アタシが歌を教えるなんてね。自分でも驚きよ。
きっとだれかに話しても、信じないでしょうね。
……そりゃそうね。
ま、どうせついでだから、とっておきの歌も教えてあげるわ。
はい! お願いします。
……ほんと、音楽のことになると、加減を知らないわね……
この真っ直ぐなところが、ジョバンニくんらしいと思うわよ。
まあ、そうなんだけどね。
思い出5
ねぇねぇ、ジョバンニ。アタシも一曲、依頼していい?
できたら<キャトラさんのテーマ!>みたいなのがいいんだけど。
ああ……はい。……そうですね……
あ、あれ?ジョバンニ、なんか元気ない?
……大丈夫?
また作曲のしすぎで体調を崩したの?気をつけなきゃダメじゃない。
……いえ、違うんです。体調は悪くはないんです。ただ……
……ただ、どうしたのよ?
最近……僕の中に、<衝動>が湧いてこなくて……
……そうなの?
ええ……だからここしばらく、作曲活動が出来ていないんです。
あれ? でもその<衝動>がなくても作曲はできるんでしょ?
それはできます。でもそれで作る曲は、僕の頭から生まれる曲なんです。
僕が望んでいるのは<心>……その深い場所から湧き上がるそういう音楽なんです。
……ジョバンニくん……
アタシには違いがわかんないけど、ジョバンニにとっては、とりあえず別モノなのね。
……そういうことになりますね。
……<衝動>が湧かなくなった、原因に心当たりはないの?
……そうですね……
僕の中にある音楽の才能が、枯れてしまったのか……
えぇー!?
後は<衝動>をともなわない作曲を続けたから……かもしれません。
みんなの依頼で、作っていた曲のこと?
……僕はあれが、自分の成長の糧になると思っていました。
だけど、もしかしたら……僕の考えは間違っていたのかもしれない。
<衝動>を大事にしない曲作りをしては、いけなかったんです。
もうこのまま……僕は二度と……あの<衝動>を曲にすることはできないのでしょうか……
思い出6 (友情覚醒)
……ルーンの光……この光に励まされるのは、二度目ですね……
そうですね……信じてみます。まだ自分の<衝動>は、消えてなんかいないって。
アタシも、そう思うわよ。
だって本当にジョバンニって、作曲のことばっかりじゃない。
そんな人の中から曲作りの<衝動>が簡単になくなるわけないわ。
そうね。私も信じる。
みんな……ありがとう。
お礼なんていいわよ。アタシたち仲間じゃない♪
それにジョバンニなら、きっかけひとつで、また書けるようになるわよ。
……そう……かもしれませんね。
キャトラなら、どんなことが、きっかけになると思う?
そうねぇ……同じ<衝動>のこもった歌を聞くとか?
……なるほど。いいかもしれないわね。
<衝動>を共鴫させるんですね……そんな方法は考えもしませんでした。
なら実際にやってみましょ!歌はアタシが歌ってあげるわ!
えっ?キャトラが歌うんですか?
そうよ! たった今、アタシの中に湧き上がった歌を聞かせてあげる!
いくわよ。タイトル『力二カマ』。
カーニーカマー。カーニーカマー♪美味しい力二カマー♪
お口に広がるうまみー♪それは最高のしあわせー♪
カニー。力―ニカマー♪アタシを夢中にさせる味ー♪
……ねぇ、キャトラ。お腹空いてたの……?
………………
…………
……キャトラ……
あ……だ、ダメだった?
……ありがとうっ!!
えっ……?
今、僕の胸の中には熱い<衝動>が湧き上がってきています!
今すぐにでも、新しい曲を書き上げたいです!
え、ホントに?!もしかしてアタシが、ジョバンニを冶しちゃった?!
あぁ……僕はすぐに部屋に戻って、この<衝動>を曲にします!それじゃ!
…………
……キャトラ、どうしたの?
主人公、アイリス、アタシ……自分の才能が怖いわっ!
神曲の創造者