【白猫】ルネッタ・思い出
駆け出しのダンサー ルネッタ・ラークスパー cv.河井晴菜 ジョカのステージに立つことを夢見る少女。 踊りは得意だが、歌うのはちょっと苦手。 |
フォースター☆プロジェクト MUGEN Story
思い出1
<――深夜の飛行島に一人の少女が舞い降りた。>
明けない夜に、酔いしれて♪
だ、誰よ!? こんな夜中に……
ミュージック・スタート!
えっ?この音楽はどこから……?
<煌びやかな衣装を着た少女が突如、華麗に踊りはじめた。>
いったいなんなの……
ラスト!ターン!
おっととと――
きゃっ!?
<少女は足を滑らせ、転倒した。>
あいたたた……くうぅ、練習不足だわ……
はあ……<あの人>みたいに上手くはいかないか……
大丈夫ですか?なにか落としたみたいですけど……
あ……拾ってくれてありがとう。
なにそれ?
<ルーン内臓小型スピーカー>よ。これがあれば、好さなとさに音楽を流せるの。
なるほど。じゃあさっきのは……
それはともかく、アンタなにものよ?
私はルネッタ。いちおうダンサーとは名乗っているものの、まだ駆け出しの身で……
そのわりにはけつこう踊れてたみたいだけど?
ううん、全然。キレがなかったし、決めポーズも失敗しちゃったし……
こんなんじゃ、次のオーディションは絶望的……
大変そうな世界ね。
まあ……そう。知名度をあげるためには、仕事も選んでいられないし……
どんなことをやってきたんですか?
最近だとサーカスショーの前座や、ロック歌手のバックダンサーをやったかな。
一番辛かったのは雪山でのイベントね。寒さで体は動かないし、お客さんほとんどいないし……
けど……<あの人>に近づくためなら、こんなのなんてことないわ。
あのひとって?
娯楽の島<ジョカ>で歌姫をやっている人よ。私の憧れなんだ。
いつかあの人と同じようにジョカのステージに立ちたい……
それが私の夢よ。
思い出2
私は小さな田舎町で育った。ごく普通の女の子。
馬の世話に犬の散歩。それが私の日常。
趣味は知恵の輪、靴磨き。そんな私の日常。
初めての家族旅行。夜の街は右も左もカラフルで。
地味だった私の背中をネオンライトが眩しく照らす。
――私に夢を見せてくれる。
ステージを舞う夜の蝶。私の心は晴れ模様。
いつか立ちたいあの場所へ。私の心はあなたのもとへ。
それから私はウェイトレス。生活費を稼いで一人で暮らす。
「お姉ちゃん、テキーラ!」
「はい!」
「こっちもテキーラ!」
「はい!」
チャンスはいつかやってくる。そう信じて……
踊り続けるの~♪
――とまあ。私のこれまでの人生を踊りで表現してみたんだけど……
なんというか……恥ずかしいよね……やるんじゃなかった……
そんなことないですよ。とってもよかったです。
ほんと!
う~ん、でも欲をいえば踊りだけじゃなくて歌ってほしかったわね。
う、歌は苦手で……練習してるんだけどなかなか……
それにしても……ねえ。
なに?
アンタってば、いろいろと苦労してきたのね……
もしかしてその格好、無理してる?
い、言わないで~!
思い出3
――ご声援、ありがとうございました♪
…………
…………
<遊園地のステージに、まばらな拍手が送られた。>
…………
夜の部も、お楽しみに♪
あ、みんな来てくれたんだ。私の踊りどうだった?
前半キレてたわね。とってもキレてたわ。
う、うん。前半はバラード調だったけどね……
それにしても、お客さんが少ないわね……
ここの遊園地っていつもこうなのかしら?
そんなはず……
さあ!ダンスのあとはお待ちかね!星たぬきショーのはじまりだ!
キュッキュッキュー!
わーい!!!
よっ!待ってました!
すごい人気ね……
あっという間に、観客席が埋まったわ。
…………
あ、ごめんルネッタ。
ううん、いいの、これが現実……
キュキュキュー!
かわいいー!
…………
さてと。夜までやることないし、どこかで時間潰しましょうか。
それはいいけど、お金あんまりないから乗り物は……
…………
みんなは帰ってもいいんだよ。夜の部は昼と同じ踊りだから退屈するだろうし……
そんなこと……
あはは……向こうのベンチでストレッチでもやってようかな……
待って、お姉ちゃん!
えっ?
踊り……よかったよ!なんかその……蝶々みたいでその……
とにかく素敵だった!
ほ、ほんと……?
ねえ、お姉ちゃん。サインちょうだい!
えっ、サイン?えっと……どうしよう……
なにもったいつけてんのよ。
だって……初めてなんだもん!
ねえねえ。
と、とりあえず……名前書けばいいんだよね……
ま、がんばんなさい。
思い出4
みんなみんなー!大事件ー!
<ルネッタが全速力で走ってきた。>
どうしたのよ!?
私ー!ジョカのステージで踊ることになったのー!
はあはあ……今朝……連絡があってね……
はい、深呼吸。落ち着いて、わけを聞かせてもらおうじゃない。
すーはー……すーはー……
…………
実は――
…………
……
<――とある酒場。>
ちょっとー!4曲目の衣装はどこよー!スパンコールのやつー!
まったく、本番まで時間ねーっつうのに……
あ、あの~……こんばんは~……
ひえっ!?な、なにこの子……ドロボウ?
い、いえ!?私は先日、オーディションを受けたもので……
オーディション?あ、もしかしてあの子の……
そっ。私の代役。
あんた……右足の調子はどうなの?医者はなんて?
あと1週間は安静に、だってさ。
こんなもん踊ってるうちに治るっていうのに。
無茶しないでよ。あんたはうちの貴重な戦力なんだから。
(なんか……空気が重いな……)
それで、この子の実力はどうなのよ?
さあ、どうかしら。ただ、熱意だけは誰よりもあったわ。
そんな適当な……熱意だけでなんとかなるほど、うちのショーは甘くないのよ。
私……精一杯がんばりますので!
大変だ!バックバンドが遅れるそうだ!
あーもう、次から次へと……
ピアノは?彼だけはリハのときに見かけた気がするけど。
ええでも、リズム隊がいないんじゃ……
オープニングの曲は厳しいか……
あ、あの~……
なに?
私に考えがあるんですけど……
…………
……
<ルネッタがピアノの演奏に合わせてタップダンスを踊っている。>
驚いたわね……ただ踊るだけでなく、ステップでリズムを……
あの子はいったい何者なんだ……
ありがとうございました!
…………
……
――ということがあってね。
それで関係者の目に運よくとまって、ジョカのステージ出演が決まったの。
といっても、2曲程度の前座だけど……
それでもいいじゃない。地道な活動のかいがあったわね。
公演日はいつなんですか?
3週間後だよ。それまでに、しっかり体力つけないと!
トレーニングもいいけど、ケガしないようにね。
ええ、もちろん!
ミュージック・スタート!
思い出5
はあ……私、もうダメかも……
どうしたのよルネッタ?
実は……ショーの出演をキャンセルされちゃって……
うそっ……だって本番は明日だって……
なんかね……世界的に有名なベリーダンサーのツアーが決まったらしくてね……
その人、ジョカとは昔から付き合いがあって、ツアー初日は絶対ここで公演するんだって頼んだらしいの……
それで断れなくて……私は必要ないって……
ひどいはなしね……
あんなに練習したのに……
…………
……
<――本番当日。>
ジョカの街並みはいつ見ても綺麗ね……
アンタ……
ごめんねみんな……わざわざ呼び出して……
今日は一人でいられそうにないから……
ほら、あそこに紫の看板が見えるでしょ? そのすぐ横にね、会場があるんだ……
本当なら今頃……私はあそこで……
…………
わあああああああーーーーっ!!!
!
…………
あはは、叫んだってすっきりしないね……
ううっ……
ルネッタ……
悔しいよ……ここまで来るのにどれだけ苦労したか……
あと一歩のところで……夢の光が目の前で……消えた……
こんなに苦しい思いをするなら……はじめから夢なんて、みるんじゃなかった……
思い出6
えっ?この光は……
スポット……ライト……
♪
踊れっていうの?
でも……私はもう……
あ、あのときのお姉ちゃんだ!
こら!いきなり指さしたら失礼でしょ!
お姉ちゃんの踊り、すごいんだよ!蝶々みたいで!
…………
お姉ちゃん、私ね!お姉ちゃんみたいな踊り子さんになるって決めたの!
それが私の夢!
…………
ずるいよ……そんなこと言われたら……もう……
踊るしか、ないじゃん!
…………
ミュージック・スタート!
<ネオンのバックライトに照らされて、ルネッタは華麗に踊りはじめた。>
おい、なんだあれ……
セクシーな衣装を着た姉ちゃんが踊ってらあ。
なにこれ……歩いてるひとたちがどんどん立ちどなにこれ……歩いてるひとたちがどんどん立ちどまって……
人だかりに……
いいぞ!もっとやれ!
あの子……どこかで……
(みんなの手拍子が力をくれる……体が勝手に踊りだす……)
やるじゃない。
ヒューヒュー!いいぞいいぞ!
お、おい!押すなって!
もう!一体これはなんの騒ぎ!通行の邪魔よ!
…………
<ルネッタは踊るのをやめた。>
なんでえ?もう終わりかい?
みんな……私の踊りに付き合ってくれてありかみんな……私の踊りに付き合ってくれてありがとう……
だけど、私はまだ半人前で……踊れる曲も少ないし、歌だって下手くそだし……
今のままじゃ、みんなを満足させることはできない……だから、もっと上手くなって……
ジョカのステージの上で、待ってるから♪
はっ、生意気なこと言ってくれるじゃないの。
チケットは安くしとけよ。家族みんなで観に行くからな。
私……もう一度夢を、追いかけてみるよ……
…………
……
アイリスー!はやくはやくー!
待って、まだ支度が……
今日はあの子の晴れ舞台よ~!
――夜の数だけ夢があり――
――夢の数だけ恋がある……
潤んだ視線を私に頂戴。代わりに震わせてあげる。あなたの耳柔を、そして、胸を――
永遠の愛を一曲の歌へと替えて――
――明けない夜に、酔いしれて♪
夢に舞う夜の蝶 ルネッタ・ラークスパー
その他