【黒ウィズ】喰牙RIZE 2 外伝 Story
※本編をクリアしていただくことで、よりお楽しみいただけます。 |
<開催期間>9月21日 16:00 ~ 10月23日 15:59 |
目次
主な登場人物
story ミハネ流
ミハネは、一見、優男である。
長身で、筋肉もしっかりついているのだが、輪郭としては細身の印象がぬぐえない。
色白で、中性的な顔立ちをしていることもあり、”あからさまに強そう”という雰囲気ではない。
なので、こういうことがよく起こる――らしい。
「命が惜しけりゃ、武器を捨てて金を出しな!」
ユウェル | アスピナ | ミハネ |
優男ふたりと、幼い少女の3人旅。
”これは行ける”と踏んだのか、斧を持った盗賊が居丈高に叫んできた。
「ひっ。」
「ケケケ、怯えなくていいんだぜ、お嬢ちゃん。出すもん出したら、命までは取らねェからなァ~~~~っ!!」
アスピナが思わずびくりとしてしまったので、盗賊は、さらにつけあがった。
「おう、そこの!いい武器持ってんじゃねェの、”顔あり”かァ?どうせコケ脅しだろ、俺様によこしなァ!!」
ミハネは無言で刀を振り抜き、男の手にした斧を斬り飛ばした。
「えっ。」
もの言わぬまま、1歩踏み出す。手にした刃が、ギラリと陽光を反射した。
「ひ、ひいいっ!」
盗賊はたちまち顔を青ざめさせ、腰を抜かしてへたりこんだ。
「あの、ユウェルさん、止めた方が……。」
「いや。」
ユウェルは、厳然と首を横に振る。
「いい機会だ。よく見ていろ、アスピナ。」
本気の目だった。
アスピナは、何も言えずに黙り込んだ。
(殺さなくてもいい、って思うけど――)
だが、放っておけば、また旅人を襲うだろう。旅人が抵抗したら、殺してしまうかもしれない。
そうなる前に、ここで仕留めておく。そういう覚悟を覚えろと――ユウェルは、そう言いたいのか。
(でも、やっぱり――)
アスピナが口を開こうとしたとき、盗賊が、裏返った声を上げた。
「ま、待ってくれ! 俺が悪かった!出来心! 出来心だったんだ!
俺ァ、嫁に逃げられて、3人の子供がいてよ!みんな、ひもじくて腹ァ空かしてんだ!飯を食う金もなくてよォ!
それでつい、こんなことしちまったんだ!2度としねェから、見逃してくれよォ~!!」
「まっとうに働け。」
日雇いの仕事なんて、雀の涙なんだよォ。稼ぐはしから飯代に消えちまう!」
「だからといって、人を襲うのはよくない。」
「わ、わかってるけどよォ。他に方法が思いつかねェんだよォ~~!!」
ミハネは刀を下げ、押し黙った。
「…………。」
「あれは、”頭から信じるわけではないが嘘だと決まったわけでもない”と考えている顔だ。」
「…………。」
「”この男を見捨てるのは簡単だが、もし本当に腹を空かせている子供がいたら、かわいそうだ”と考えている顔。」
「…………。」
「そして、”とりあえず、当座をしのげる金を渡し、まっとうな職を探せるようにしてやろう”と考えている顔だ。」
「……よくわかるね。」
「あのアホとの付き合いは、それなりに長いからな。」
ユウェルは、ぞんざいに言った。礼儀正しく、紳士的な青年なのだが、ミハネに対しては、いつもそんな感じだった。
「君も、これでわかっただろう。あいつは、こういう奴なんだ。」
「えっと……優しいんだね。」
「いいんだぞ、アスピナ。”アホ”って言っても。」
ミハネが懐を探り始めたのを見て、アスピナは、あわてて声をかけた。
「ミハネさん。」
「なんだ。」
「その人、嘘ついてる。金のネックレスとか、宝石とか、服の下に隠してるの。」
「んげっ!」
「わかるのか。」
「うん。とにかくお金にがめつい神様に聞いたら、そうだって。」
4「やだな、そんな神。」
ミハネは、盗賊に向き直った。刃の双眸が、容赦のない色をたたえている。
「斬るか。」
「まあ待て。命まで取らんでも、悪事を働けないようにすればいい。」
「利き腕を斬り落とすか?」
「もっといい方法がある。」
ユウェルは、怯えきった盗賊に近づき、にっこりと笑った。
「今からおまえに、盗みを禁じる術をかける。死にたくなかったら、抵抗するなよ。いいな?」
がくがくうなずく盗賊に、何事か呪文を唱え、かけてみせた。
「これでよし。禁を破れば、ひどいことになるだろう。心を入れ替えて生きるんだな。」
盗賊は、ほうほうのていで逃げていった。
「便利な魔法だな。」
「禁術の、1歩手前ってところだ。いちおう相手の合意がいるからな。
とはいえ、相手を騙して合意させる手もある。おまえも気をつけろよ。素直で純真な奴ほど引っかけやすいからな。」
ミハネは無言で鼻を鳴らし、歩き始める。
ユウェルも、アスピナの方を向いて肩をすくめてから、その後に続いた。
アスピナは、ちょっとあきれながら、とてとてと小走りになって、ふたりの背中を追いかけた。
story2
「焼けてきたな。」
ばちり、と薪の弾ける音を聞きながら、オウゼンは言った。
森は、深く沈むような夜に呑まれている。そのなかでは、赤々と燃える焚火も、どこか遠慮がちに見えた。
皮を焼き、内臓を取り除いたうさぎの肉が、焚火のそばに刺した串の先で、じりじりと香ばしく焼けている。
オウゼンは、そのうちのひとつを手に取り、焚火を挟んで向かいに座る女へ差し出した。
「眷族の身に、食事は不要だ。”存在の加護”を失おうともな。」
焚火を見つめたまま、ロギアは言った。
「腹を満たすことだけが、食事の意義ではあるまい。塩が、旨味を引き立ててくれている。」
「姉は、それを味わえない。私だけ楽しむわけにはいかない。」
ロギアは、焚火から目線を上げた。射抜くような眼差しで、オウゼンとプグナを見やる。
「情けをかければ、私が改心するとても?」
「”改心”か。非道を働いた自覚はあるようだな。」
「許される所業ではないと、わかっていて、やった。私はそういう人間だ。」
「俺も、そうだったさ。だから、帰り道を探している。」
「私は、貴様とは違う。帰り道など、探してもいない。」
「俺のやり方を押しつけるつもりはないが。さりとて、おまえを自由にもできん。
命を断てば、禍根も断てようが――
おまえの姉に、罪はない。」
「…………。」
「助けられたとは思うな。俺たちの役に立ってもらうために、拾った。
「人助けのための、奴隷か。
「まさか非道いとは言うまい。」
オウゼンは、つと、木立に視線を投げた。
「納得したか?」
イルーシャ | ファルク |
「同病相憐れむー―ってだけじゃなさそうですね。」
闇そのものから切り取られるように、イルーシヤとファルクが現れた。
「もう悪さはさせないから、その方を見逃せ、と。そうおっしゃていて?」
「ぷぅ。」
黙っていたプグナが、一言を発した。
飾らない重みに満ちた、強い一言だった。ファルクが、軽く肩をすくめる。
「ま……いいでしょ。フグナがついているんならね。」
「すまんな。「構いませんわ。わたくしたち〈死焔族〉の使命は、悪を裁くことでも、罪を償わせることでもありませんもの。」
「死者に迷惑かけねーんなら、それでいい。あんたらがどう生きようが、興味ねーんで。」
「もし、死者になられた暁には、ぜひお声がけくださいませね。」
「ふさわしい黄泉路に、案内してやりますよ。」
ふたりは、闇へときびすを返し、音もなく去っていった。
「〈死焔族〉らしい考え方だ。」
オウゼンは、持ったままの串肉を、隣のプグナに差し出した。
「ぷぅぷぅ。」
「……だろうな。なんだ、喰うのは俺だけか。」
ぼやくように言ってから、鋼も食いちぎれそうな顎で、よく焼けた肉に喰らいついた。
story3
「ライズ――〈鮮血の貴公子〉!”エンペラーズ・エフェクト”!」
「ほう。相手の動きを鈍らせる呪装符か。」
「うん。けっこう役に立つんだよ。」
「それにしても、〈鮮血の貴公子〉とは、ご大層な”銘”ですな。果たして、どのような御仁なのやら。」
「貴公子ってくらいだし、耽美なイケメンじゃない?」
「〈鮮血の〉ってことは、相当、残虐非道なんだろうな。」
「残虐非道で、耽美なイケメンかあ。」
***
「ゲバァッ!」
「うわっ!練習中に血イ吐くなよ!」
「フフ。どうやら誰かが、病弱ですぐ吐血してしまうので”鮮血の貴公子”と呼ばれている、余の噂をしているようだね。」
「クシヤミ感覚で吐血すんな。噂されるたびにそれじゃ、身が保たねーだろ。」
「だいじょうぶ。余って、友だち少ないから!」
「そうか。」
「流すなよおおおおおおおお!余たちマブだろおおおおお!?」
「あーもーメンドくせーなこの貴公子!!」
story3-2
北の街への道中――
L「呪装符拾った!」
「この前みたいに、危なそうなのじゃないだろうにゃ。」
3「んー、そんな感じはしないかな。ちょっと使ってみたら?」
「よーし。ではでは――
ライズ――〈境界騎士団長〉!!」
「「セドリック団長!!?」」
3「え、知ってる人?」
1「知ってるっつうか知り合い――いや、待てよ。
こことクエス=アリアスで時間の流れが違うなら、代替わりした別人って可能性もあるか?」
L「”秘宝剣・彼岸虹鏡”!!」
「あ、本人だ。」
これほど本人特定しやすい”銘”もなかなかないな、と、君もつぶやいた。
***
「くしゅん。」
「真顔でくしゃみする人、初めて見ました。」
story3-2
「ライズ――〈凶騒の支配者〉!”深い闇へと誘う大欲”!
ライズ――〈魔界の妖花〉!”アンチェインデザイア”!」
「ライズ。”O.N.I. イケメン。” ”鬼面嚇人”!」
「TO☆SHI☆GO☆RO☆!」
「うるせーから!」
***
「好き・嫌い・好き・嫌い・好き・嫌い……。
好き・嫌い・好き・嫌い・好き・嫌い……。
好き……♪」
「あ、こら姉ちゃん。果物と野菜わけんな。パセリ食え。」
「にーがーいーの一きーらーいー。」
「なんだこの自由人。」
story3-3
北の街へと向かう森のなか――
「む?そなたら、旅人か?」
「バロン!?なんでバロンがいるにゃ!?」
君がバロンの名を呼ぶと、亜人は首をかしげた。
「バロン? 人違いではないか。私は〈雄魂の魔戦獅子〉をトーテムとする、〈獣王族〉のゴウンという。」
「まさか、〈雄魂の魔戦獅子〉って、バロンのことにや……?」
――励めよ、新人。――
そういえば、初めて会ったときは、威厳のある感じがしたなあ……。と、君は懐かしく思った。
バロンがトーテムだから、その氏族も獅子の亜人なのだろう。人間には、ちょっと見分けがつきづらい。
「我が氏族の使命は、”文武を極め、困難に雄々しく立ち向かう”こと。
そなたらも、困ったことがあれば言ってくれ。我が剣と魔法で、力になろう。」
「別人にゃ。この人のトーテムは、きっとバロンの親類か何かにゃ。」
ウィズは、きっぱりと切って捨てた。
とはいえ、しかし、と君は思う。
魔道士ギルドの頂点たる四聖賢。そのひとりであるウィズが、トルリッカに滞在し、バロンの紹介で君の師匠となったのだ。
このウィズのことである。バロンの人柄や能力に不満があれば、早々にトルリッカを立ち去っていたに違いない。
つまり、ウィズのバロンに対する憎まれ口は、互いの信頼にもとづく、ある種の気安さから生じたものであり――
「シャアー!!」
なんでもないでーす、と君は口を閉じた。
***
「ブェックショイえ一いチクショウめ!」
「うわ。おっさんクシャミでかすぎ。あと何いまの無意味げな呪文。ウルトラひくわ。」
「やかましいぞ新人。四聖賢を紹介してほしいなら、黙ってギルドの依頼をこなしてこい。」
「ほんとに知り合いなんでしょーね。」
「当たり前だ。この私を誰だと思っている。」
「……まったく、あいつめ。どこで、いつまで油を売っているんだか。
おまえの弟子は、めきめきと力をつけている。目を離していると、今に師匠を超えてしまうぞ――」
***
「くちっ!」
「おや。風邪か?それなら、いい薬がある。使うといい。」
「いい人にゃ。絶対バロンが卜―テムのはずないにゃ。」
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