【白猫】レイヴン(ギャラクティカ)・思い出
レイヴン・ザ・ダークホロウ CV:石川界人 黒き炎をまとう騎士。 全てを忘れても、誰かが覚えている。 | ||
2017/09/25 |
思い出1
<レイヴンの手にした鎌が、ちろりと焔を吹いた。>
思い出2
<レイヴンが、己の荷物を調べている……>
全てが失われるわけではない。
具体的には、己に関する記憶だけが失われる。
体で覚えたことや、一般的な事柄は、失われない。
レイヴンは、わずかな荷物から小さなメモ帳を取り出した。
メモ帳に、何かが挟んである。
書かれていたのは、文章ではなく、絵であった。
子供らしいタッチで描かれた、女性と子供、そして黒い翼を生やした甲冑の男。
思い出3
数ヶ月前――
「おい、兄ちゃん。
「隠れた方がいいぜ。ここはアイツらのナワバリだ。
浜辺には、打ち上げられて久しい廃船がある……
レイヴンは廃船の中に隠れた。少年も後に続く。
「気が合うね、兄ちゃん。
「あのガキ、どこにいった……!
「よく探せ、ボスはガキにちゃかされるのがお嫌いだ。俺も嫌いだがな。
「仕返しだよ。大人だってするだろ?
二人は声を潜める。
「ご明察。
「今日はいいほうだよ。だれも死んでないし。
***
「危ない真似をして……!
母親は、少年を抱きしめた。
「母ちゃん……
「その人は?
「俺は……
少年は、小さな手帳を読んでいた。
「兄ちゃん……記憶が無いのか?
「勝手に取るなんて……
「悪かったよ。レイヴン兄ちゃん。
「あっ!?
「来やがった……!村の中にまで……!
「聖堂にいきましょう。あそこなら大丈夫。
「兄ちゃん、早く。
レイヴンは、手にした武具を構える。
思い出4
視界を埋め尽す敵は、およそ数百。
巨大な獲物を手に、炎まとう影は荒れ狂う。
築かれる、無数の屍。
「すげえ――すげえよ兄ちゃん!
「伏せろ。
「うわぁ!?
少年の背後にいた魔物が、断ち切られる!
***
「この島は、見捨てられたんだ。
「島では収穫を、税として納めていたのですが……
魔物が増えて、畑が荒らされて……納める税が減って……
「だから、駐留する兵を減らしたのか。
「ほら、浜辺にいた連中だよ。あいつらが島を守る兵隊様。
***
古に建造された、村の聖堂―
そこは今、荒くれものたちの根城と化していた。
「なんだてめえ、やろうってのか!?
「まあまて。俺が話す。
「ボス……!
「……あんたも俺達と同じ、傭兵らしいな。
「だったら、わかるよな?
「傭兵は命をさらして稼ぐ。だが命ってのは一つしかない。
「稼げない戦いはしない。それが流儀か。
「こんな島、守る価値はねえ。
「それよりあんた、俺らと稼がねえか?
「ブーツに気をつけろよ。御同輩。
***
「馬糞つめてやった。
「すみません、こんなものしか……
テーブルの上にあるのは、薄い麦がゆだ。
「味わって食べるよ。
「それがいい。
「なあ兄ちゃん、傭兵って稼げるんだろ?
「兄ちゃん、商売に向いてなさそう。
「こら!
「俺が兄ちゃんくらい強ければ、いっぱい稼ぐんだけどな!
「でも、この島じゃ稼げねえ。
***
レイヴンは、空を見つめた。
思い出5
レイヴンは、空を見つめている。
その結果、誰かが救われたか。それとも、誰も救えなかったか。
俺にはわからない。
***
激しい嵐と共に――奴らは現れた。
村に接近する魔物の数は、数千に及ぶ。
「クソっ、魔物どもめ……!ああ、貧乏くじだな全く!
「ボス……大丈夫ッスかね。
「聖堂ってのはな、避難ができるように、頑丈に作られているもんだ。他よりはマシだ。
「ボス、村の連中が、聖堂に入れろと。
「追い散らせ。村の奴らを食って腹が満たされれば、連中も巣に帰るだろう。
「おい、聖堂に入れてくれ!頼む!
「もう、おしまいじゃ……!
「許して……こんな島で、あんなひどい暮らしをさせて。こんな最後なんて。
「母さん。俺、レイヴン兄ちゃんの手帳を読んで、わかったんだ。
「何が……?
「兄ちゃんは、力を使うと記憶がなくなっちゃうんだ。
「そんな……それじゃあ……
「もう、お別れなんだ。
***
レイヴンは、己の手帳を開いた。
黒い炎を使う前に現在までの記憶を、できるだけ書き残しておくつもりであった。
いままでの自分も、そうしていた。それに意味があるかどうかは、わからなかったが……
手帳の脇に置かれていたのは、一通の手紙。
「俺には――過ぎたものだ。
レイヴンは、簡潔に、島での出来事を手帳に残す。次の自分のために。
「武具よ、思い出を燃やせ――
黒き翼は、空へとはばたく。
***
「。
「思い出すのが、辛いことなら……
やってくれ。
思い出6 (友情覚醒)
「思い出したみたいね!
レイヴンの体から、黒い炎が吹き上がった!
「――。
……見たくないものを、見るかもしれないぞ。
「それでも、私たちは――
***
「うっ、うっ……あの人が……あの人さえ、こなければ……
「――バカなガキだったな。
「――どうしたんですか…… ?
「魔物の、生き残りが……息子を……
「そんな……!
「やはり……仕損じていたか……
「あの子が、村人を逃がすために、囮になって……
「レイヴン兄ちゃんみたいに、みんなを守るんだ~。だってよ。
「なきがらはとこだ。
「いまごろ、魔物の腹の中だろ?
***
「レイヴン兄ちゃん……俺は……
少年の腹から、血が溢れた。傷口を抑える指から、力が失われていく。
「ううっ……
少年は、瞳を閉じた。
もう二度と、瞼を開くことはない。そう思うと、ただ怖かった。
「!
「あの子がどこにいるか、わかるの!?
***
「<*×○■!&%$…………>
アイリスの魔法が、少年の傷を癒やしていく……
「……あれ? ここはどこ……?
そこは……少年とレイヴンが、初めて出会った場所。あの廃船の中だった。
「にい……ちゃん……!
「主人公さんと……アイリスさんに、キャトラ?
「手帳を読んだんだ。
レイヴンは、武具を振り上げた。
記憶されし黒翼
その他