【白猫】帝国戦旗 Story1
2017/10/13
目次
登場人物
story1 影にありし忠
<帝国は一枚岩ではない。国内には様々な勢力がせめぎ合っている。
中でも過激な活動で知られるのは、皇帝を廃し帝国の変革を望む<反皇帝派>である。
<反皇帝派>が何らかの工作を試みていると察したジュダは、一人アジトヘと潜入した。>
条件にあう検体は、A棟に連れていけ。
了解。こいつら、どんな魔物になるんでしょうね?
玉座のネズミをあがめるクソどもをぶっ殺してくれるなら、どんな魔物でもいい。
確かにな。いい筋書きだ。
<真の皇帝>に乾杯。ネズミはくたばれ。
<暗闇の中から、一人の男が現れる。>
つまらん筋書きだ。とはいえ……聞き逃すわけにはいかんな。
……誰かいたか?
ワオーン。
なんだ、野良犬か……
…………
……
だめっ……おかあさんに、ひどいことしないで!
ああ……
ひどいことをされるのは、君だよ。おかあさんにね……
何をするんです……!
奥さん、あなたを魔物に変える。
魔物に……?貴方たちは、何を……!
魔物になると……普通は、理性を失うのだが……
実の娘の前で……何分……理性を保てるのか……計測したいわけでね。
君は自分が……何分後に……実の娘を……捕食すると思う……?
殺して……!
<――>
……ヒッ!?
<研究員は、影に呑まれた――>
……消えちゃった?
だ、誰……!?
静かにしろ。
<母と娘も、影に飲み込まれた……?>
……残りの仕事を片付けるか。
……
…………
ぐはっ……ぐはっ……!
こうやって……君の体に……罰を与えているのは……何のためだと思う?
知らない……!私は何も知らない!
報いを与えるためだ。<真の皇帝>でなくネズミに従い、帝国を裏切った報いだよ。
ぎひゃああああ!!
<諜報員は、闇に呑まれて消える。>
<真の皇帝>か……詳しく聞かせてもらおう。
だ、誰だ!?
六百年前。皇帝の座を脅かし、帝国をわがものとした男。
――簒奪者ツァラ。今でも奴を崇拝してるのか。
どうやってここを……嗅ぎつけた……?
俺の鼻はごまかせない。
帝国の犬め……
俺は狼だ。
<真の皇帝>の<白の帝国>に、獣どもの居場所はない!
そういえば奴は、人間以外の種族を滅ぼそうとしていたな……
奴らは<闇>だ……!そうか、お前も<闇>だな!?
<闇>だと?一緒にするな。
<男は、ルーンを掲げた。>
熔印のルーン。生き物を魔物に変える……おぞましい玩具か。
退け闇よ!双頭の竜は蘇る!
お前は人として死んだ。ならば弔おう。
story2 帝国にようこそ
ここが帝国……?でっかい国……なのよね?
<村一つ、港一つの、とても小さな島である。>
のどかでかわいい島ね、主人公。
おやおや、こんな島に珍しいお客さんだね。
おじさん!ここって帝国なの?
ああ、帝国だよ。
へぇ~!いい島ね。アタシ気に入ったわ。
そりゃあよかった。ゆっくりしてくといい。
ところで、ユニコーン通りってどこかしら?ギルドの支部があるっていうんだけど。
急いで報告に行かないといけないんです。
ふーん、そこは……ただの通りだからねぇ。
じゃあ、ユニコーン通りは?
飛行艇に乗って、海を二つ越えて、すぐだよ。
<小さな島の上を、飛行艇が飛んでいく……
空の旅は、数日に及んだ。>
お客様、紅茶はいかがですか?
(クオリティーシーズンの茶葉にベルガモットのフレーバー。懐かしい香りだ。)
いただきます。ところで……ジェリービーンズはありますか?
ございますよ。こちらでよろしいですか?
問題解決のためには、宝石のごときジェリービーンズ。
<水平線の向こう側が――街の明かりに埋め尽くされる。
眼下に広がるは、空前の大都市。帝国の首都である。>
皇帝万歳――
<アイシャは、真っ赤なジェリービーンズを指で弾いた。>
…………
……
??? |
---|
お帰り、アイシャ。お姫様になる夢を叶えた気分はどうかな?
熔印のルーン三千個、いまだに所在が知れない。
状況をどう見る?
占ってみるかい?キリエ。
ジェリービーンズ占いか……もったいつけるねえ。
ゲン担ぎさ。さあ、何が出るかな……
ジェリービーンズは好きだよ。あの味以外はね……はむっ……んん?ああ~!言った先からこれだ!
おめでとう。リコリス味は試練の暗示だよ。
それ、テキトーだよね!?…………………………………………………………後味がまた……ヒドイな。
私は好きだがね。人にはすすめないが。
とりあえずは、元老院の方々のご意向をうかがっておこう。
老人たちは動かんよ。賭けてもいい。
ははは……、賭けにならないねぇ。
story3 ありふれた花
むかしむかし、帝国にとっても偉い人がいたんだ。
皇帝陛下よりもえらい?
権力をもっていた。
けんりょくってなーに?
わがままをするための力さ。
いっぱい、わがままできるの?
ああそうさ。いっぱい……わがままをしたよ。
そしてできたのが、このご立派な宮殿さ。
お花畑も?
お花畑をつくったのは、ボクだよ。
あっ、こんなところにいた。ほら、行こう。
行かなきゃ。ありがとね、おじさん。
ああ。元気で。
おやおや、軍人さんだ。どうですかな、この花畑は。
<踊る花>か。
今が盛りなんですよ。ご覧あれ、この美しさ。
三百年前だったか。開拓者たちが発見し、お前に捧げた花だ。
風に吹かれると、花弁が踊る。ワルツを踊るように。初めて見たときは驚いたね。
いまでは珍しくもない、ありふれた花だ。
多くの人に愛されたからね。この花は帝国そのものさ。
――そうだな。我が友よ。
<帝国>皇帝 |
---|
お帰り、ジュダ。
…………
……
陛下、お体の具合は……
ああ、大丈夫だよ。下がっていい。
はっ……
反皇帝派のバカどもが、<熔印のルーン>を使って、魔物どもを増やしている。
後ろで手を引いてたやつはぶっとばしたのにねぇ。
ビゴー・マグナスか。
スポンサーが変わったのかな?
<ロンダミア大公、ビゴー。しかしその正体は<闇>と呼ばれるこの世の脅威であった。
ビゴーは皇帝の命を受けたジュダにより、棺を送られ、永遠に葬られた。>
それにしてもだね。いきなり悪いニュースから伝えるのは、君の悪い癖だよ。
もっと悪いニュースがある。
何だって……?
<ギギッ……>
おやおや。右腕にオイルを差す頃合いかな。
双頭の竜が帰ってくると。
<バギッ……>
笑えない冗談だね~。あいつは……六百年前に死んだはずでしょ。
あの簒奪者は不老不死の存在だ。存命の可能性はある。
なるほど、ボク……今まで楽観的すぎた?
<熔印のルーン>の出どころが判明すれば、敵の尻尾をつかめる。現在、手がかりはそれだけだ。
熔印のルーンねぇ……心当たりがないでもないけど……
時間がない。誰に聞けばいい?
――元老院。
story4 狩猟戦旗
<帝国元老院・議事堂――神獣宮。
その一角に、いくつかのソウルの塊が浮かんでいる……
帝国の貴族……神獣の血の末裔が送り込んだ、己の分身である。>
1――ヒストリアのー件――諸君らはどう見る?
2二度目の大崩壊は近い。
1存外長く続いたものだな、この帝国は……
3再び白と黒がせめぎあう時代となれば、こんな国、欠片も残らぬよ。
1ならば、利用できるうちに、利用しておかねばな……
m――ご報告申し上げます。<特務>より緊急の事案ありと。
3――定命のものなど、いくらでも替えが効く。勝手にやれといっておけ。
<帝国首都――その地下深く――>
――――
……………………
――――
……………………
はい、静粛に~。
誰も喋ってないぞ。
ありゃ。
??? |
---|
うわぁ~!!おくれちゃった!おくれちゃった!
<むにゅ。>
うわあああ!ぶつかっちゃった!ごめんなさい!
こっちは大丈夫だ、ニナ。ぶつかった相手が私でよかったな。
アイシャさん~!おかえりなさ~い!ぎゅ~。
よしよし。
話、始めていい?
――
同意と判断するよ~。さて諸君!我々は何だ。
掃除屋。
のぞき屋。
狩人。
どれも正解。我らこそ――帝国の舞台裏で働く、特務機関。その名は<狩猟戦旗>。
(ゴクリ……)
目下の問題はーつ。奴らだ。我々にとっては、影の組織の先輩だね。
――レヴナント――
はるか古から存在し、無数の人々を支配し、一切が謎。
…………
――――
彼らが反皇帝派を動かし、<焙印のルーン>を国内にばらまいている。
さあ、どうしようねぇ。
――――――――――――――――――
………………………………………………
滅ぼす。
おっと結論が出た。
他に選択肢があるか?
とはいえ連中は未知の存在だ。最善を尽くしたい。
よって……狩猟戦旗はここに新たな旗手を迎える。
えーっ!?
聞いてないぞ。
紹介しよう。――彼こそは、帝国の棺!
――!
………………!!
<男は、影の中より現れる。>
――帝国第十三軍団、大佐、ジュダ。
……十三軍団……?ちょっと待ってください、そんな軍団ないですよぅ!
<葬送>の第十三軍団。構成員はただ一人だけ。
皇帝陛下が御自ら死を賜るとき、十三番目の軍団が棺を運ぶ。
伝説です……!
貴様らが、元老院の飼い犬か。
くくっ……
ふふふ……
レヴナントといったな――覚えているぞ。束ねられし民。帝国の敵だ。
奴らの仕業か。あの忌まわしいルーンも。
その通りだ、ジュダ。
俺が棺を送る相手は決まった。
いいだろう。私は専門家だ。ついてきたまえ。
お前たちとつるむ気はない。
時間がない。君にはあるのか?
誰に向かって口を聞いている!?
アイシャ・アージェント。アイシャでいいとも。
ガウウウッ!!
いっちゃいました……!
完全に無視された……!
…………
……
何処に行く。まさかこの先に、レヴナントがいるとでも?帝都の心臓部だぞ!
どうしても寄る必要があるんだ。レヴナントはその後だ。
……フン。……悠長なことを。
まっすぐつっこんで勝てるような簡単な相手じゃないぞ。理解したまえ。