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【白猫】帝国戦旗 Story3

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん

2017/10/13





目次


Story13 囚われし狼

Story14 二人の欠員

Story15 残された匂い

Story16 誰がための帝国

Story17 憎しみは消えることなく



story13 囚われし狼


うっ……ここは――

<ジュダは、全身を魔法の糸で拘束されていた……>

こんなもので、俺の自由を……奪ったつもりか……!

<しかしジュダは……身動き一つできない。>

――あの男の力か――くそっ、元老院の犬め――

――あいつは――いや、あれは分身だ――だが、本体がやられていたら……!


zなるほど、こいつが<闇>か……

w上の命令はなんだって?

zとりあえず解剖しろとか。

wそいつは楽しみだな……

――首から上が動けばいい。全員噛み砕いてやる……!


……

…………


ガルルルゥ!!ガルッ!グルルゥ!!

zちょっと黙らせろ。

w静かにさせればいいんだな?……むぐっ。

z何を食ってる……ジェリービーンズ?

<ドンッ!>

zぎゅう。

wふむ。パイナップル味か。再起の暗示だな。

貴様、は……!

w君を迎えに来た。


……

…………


飛行艇をチャーターできてよかった。気分はどうだい?ジュダ。

早く拘束を解け。

私には無理だ。<不在の戒め>を解けるのは<穢れた白>だけ。

あのキリエという奴か。

交渉次第で、君を拘束から解放できるだろう。

交渉だと?お前は連中の仲間だろう。

私は誰の仲間でもない。だが敵はいる。

レヴナントか――

奴らを滅ぼすために、君の協力がいるんだ。

……従うと思うのか。

従う必要はない。信頼も友情も不要だ。目的が同じならばな。

帝国を守れといったな。

いったか?

お前は、死を覚悟していた。

敵が脱出用の<浮遊>のルーンをもってて助かったよ。で、覚悟してたら何だ?

そういう人間とは思わなかった。それだけだ。

――勝手に私を定義するな。

レヴナントは、お前にとって何だ?

私の仇だよ。恋人も友人もすべて奴らに殺されてしまった。と、でも言えば……満足かな?

今のお前は、人間の匂いがする。

……人間、ね……



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story14 二人の欠員



<ジュダがアイシャに支えられて、アジトに帰ってきた……>

お疲れ様。お互いのためにも、早く拘束をときたいものだね。

――どうしてここに戻った?


お帰り、ジュダ、アイシャ。

貴様……!

やあ、キリエ。

解放しろ。

いいとも。

<――ジュダの拘束が解けた――>

余裕だな。

状況を聞かせてもらおう。

我々はレヴナントの一件から、手を引くことになった。

やっぱりか。

奴らは帝国の脅威だ。妥協など、成立するものか。

妥協っていうか、むしろ……手を組んだってとこかな?

正気の沙汰とは思えん。

元老院の方々、レヴナントのデモンストレーションが、お気に召したようでね。

お気に召した……だと?

烙印のルーンだよ。兵器としてはかなり魅力的だ。

奴らと、取引をしたのか。

レヴナントは烙印のルーン十万個を、提供するそうだ。

忠実な魔物たちがいれば、国民なんかいらない……そういうことかもね。

お前はそれに従うと?

ボクたち、元老院直下の……特務機関だからねぇ。

だったらまず、お前から葬ってやる。

待てよジュダ。本気で従うつもりなら、こいつはここで私たちの前に現れたりしない。

そういうことだ。レヴナント……奴らを信用していい理由は、ひとつもない。

――だったら貴様――

そういえば、狩猟戦旗に、ちょうど二人ほど欠員が出てしまってねえ。

一人は飛行艇の事故で。一人は帝都の爆発事故で。

なるほど、悪くない状況だな。

俺たちに、裏からレヴナントについて探れと?


ボクからも一つ、頼むよ。

…………無事だったか。

ああ、おかげでね。

もう、ジュダったら~。ボクの<分身>が壊れたくらいでキレるなんて~!

本体がやられたと思ったんだ!

……君が防いでくれなかったら、それもありえたねぇ。

奴らを滅ぼす。いいな。

探れっていったのに……

それで済むわけがあるか。むしろ事態は一刻を争う。

このわたしも!全身全霊でサポートします!こっそりと!

では、さっそく頼まれてくれ。キリエ。君の手も借りたい。

おやおや、何をするのかな?


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story15 残された匂い


w被検体十三号、搬入します。

z待ちわびたぞ……この変身プロセスが判明すれば、烙印のルーンが改良できる。

wでは、研究棟に運びます。

お前……覚えておけよ。

<ジュダは、全身拘束されている……>

w減らず口を叩くな、怪物め……!


…………

……


フン……!

<ジュダは、己を縛る魔術の糸を引きちぎった。>

wソウルの量が半分とはいえ、<不在の戒め>を引きちぎるか。

どうということもない。

では行こうか、ジュダ。

手間をかけたものだな。

レヴナントと帝国が組んだことで、警戒が厳重になっていた。こうするしかない。

今更ここで何を調べる。

――気になることがあってね。見過ごしてはいけないのさ。


……

…………

気になること、か――あのジェリービーンズか?

忘れてたよ。あったなそんなもの。


なんだその書類は?

実験の認可が下りたか。機材の搬入と人員の割り当て。面白くないな。

お前は何を言っている?

もう少し付き合ってくれ。……この程度じゃ終われない。



そういえば――思い出したぞ。あの時嗅いだ匂いか。

何の話だ?

ジェリービーンズの瓶に残っていた匂いを、オペラ座で嗅いだ。

何だって――!?

どうした。

いや、何でもないさ……


…………

……


<アイシャが、ファイルに目を通している――>

違う……あいつだったら、こんな計算式は使わない。

これも違う。発想が平凡すぎる。やはり気のせいか――

何を探してる?

いってもわからない。

俺は鼻が利く。……クンクン……これだな。

<ジュダは、一冊の本を手にした。>

オペラ座にいた奴の匂いを?

余計なことをしたか?

――いいや。

<アイシャは、本を手に取る……>

インペリアルプックス刊行、著書ロマン・モンタルバン。初版本か……

<簒奪者ツァラ>オペラにもなったベストセラー。血沸き肉躍る歴史ロマン。

あのオペラの原作か。

『我は認めない。簒奪者よ。我はこの悲劇を拒絶する』

皇帝の台詞だったな。

ああ――そうか――だとしたら……

帝国は滅びる。



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story16 誰がための帝国


私の考えを述べる前に、一つ教えてくれ。

お前たちとつるんだ理由か。

教えてくれるかい?

俺は、ある男を追っている。

簒奪者ツァラ……彼だね?第十三軍団が動く理由は、それしかない。

――そう思うか?

ツァラは、六百年前に死んでいる。死人は蘇らない。だが、後を継ぐことはできる。

そんな後継者がいたとして、周囲に自分を認めさせるには?

簒奪者と、同じことをする。

だから奴は帝国を滅ぼす。

ワァーオ。怖い話してるねぇ。

ホントですねマシューさん。スコーン、焼きましょうか?

ボクは大丈夫だよ~。

スコーンより、データの解析だ。

は、はい~。

で、どうやって滅ぼす?

奴らは十万個のルーンをどうやって作るつもりだ?

ルーンを作っちゃうの?

確か、グレイスルーンがルーンを生み出す仕組みを利用するんだとか。

グレイスルーン……帝都のグレイスルーンか!

つまり、<道のルーン>を使って烙印のルーンを?

元老院が許可しないと思うんだけどなぁ。

グレイスルーンは元老院が管理をしてますものね?

元老院は、レヴナントにグレイスルーンを使って実験をする認可を与えたばかりだぞ。

お前が研究所で見つけた書類か。そこまでわかってたのなら、先に言え。

わかってると思ったんだが。

実験はいつ行う。

被害が最大になる日だ。

被害?ルーンを作る実験をするんじゃ?

実験は建前だ。連中の目的は、暴走状態の熔印のルーンを帝都の中心部に発生させること。

……建国記念日だ!!帝都で記念式典が行われる!

烙印のルーンの発生数は、推定十万。発生直後、帝都では人口の三割が魔物化。

ツァラの後継者が、魔物たちを従えて帝国に君臨する。

――させるものか。

ああ。六百年前の悪党には、永遠に眠ってもらおう。



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story17 憎しみは消えることなく



ここがグレイスルーンヘの近道とは、恐れ入ったね。

さっさと通り抜けるぞ。

その方がいいね。精神衛生上も。

オペラ座の男を――お前は昔から知っていた。

名推理じゃないか、ジュダ。

お前がレヴナントに敵意を向ける理由と、無関係ではないのだろう。

敵意?奴らは私を退屈から解放してくれる。

ろくでもないな。お前も――奴らも。


…………

……


――おっと、こいつはいかん。


z待テ!

wヒッ、ヒイイイ!!

魔物に変わった者か!

w白ノ王国ハ蘇ル!悪シキ皇帝ヲ倒シ、世界ヲ救ェ!

彼を殺してどうする?

z皇帝二死ヲ!邪魔スルナ!帝国ノ犬!

お前が死ね……!

zグアアアア!

wやめろ!やめてくれ!

やめろだと?

w息子なんだ……!

どうして反皇帝派に?

w仕事を奪われたんだよ。獣人族に……少なくとも、息子はそう思っている。

息子さんは、もう戻れない。

wなんでだ……!なんで息子がこんな目に……!

――送ってやる。俺は弔い手だ。


…………

……


あの若者を追い込んだのは、他でもない帝国だよ。

そうなのだろうな――

ジュダ――?

俺には聞こえる。報われぬ嘆きの声が――

随分と厄介だね。同情するよ。

奴を倒しても、魔物になろうとする若者が減ることはなかろう。

君は正しいよ、ジュダ――


……

…………



ようやく、この場所ともおさらばか。

グレイスルーンは、目と鼻の先だ。

警戒は非常に厳重だ。私と君でも、発見される可能性が高い。

――どうする。

”私におまかせを!”

何をするつもりだ?

”お二人を、グレイスルーンの所までご案内いたします!”



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