目次
Story1 お菓子の家
Story2 れっつくっきんぐ!
Story3 おかしい廊下
Story4 デコチョコ!
Story5 グラグラチョコロード!
Story6 チョコクッキー!
Story7 声の主
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story1 お菓子の家
<森の奥のお菓子の家に捕らわれてしまった三人だったが――>
チョコを作れば、お菓子の家から脱出できる?いったい、どうして……
――来る。
あっ。エレノアさん、シーッですよっ。
<さあ、今日もお菓子の家を作っちゃうわよー♪>
な、なんです、この声は?どこから……
べつの部屋から、拡声されてるの。
(学園放送みたいなものかな)
<私の自慢のお菓子の家もとうとう完成間近ね~♪>
私の……つまり声の主は、家の主人ですか。
そう。私たちを閉じ込めてる張本人。
あのう、おうちの方。なぜ私たちを閉じ込めるんです?
<もうすぐバレンタイン!!!
なのに、チョコが完成してない!ああ、猫の手も借りたいわ!>
まさか、そのチョコって……
お菓子の家みたい。
なんてスケール……!
<結婚してからはじめてのバレンタイン、今までよりずっと甘々にしたい!
チョコ好きの彼もひっくり返るくらいに!>
手伝ってほしいなら、そう言ってくださればいいのに。
<それが出来たら、苦労しないわ!>
どういう意味です?
<…………
さあて、次に作るお菓子はぁ~……!?>
無視されました。
き、きっと聞こえなかっただけですよ。
<どん!チョコのランプよ♪>
壁のチョコレートが溶けて、文字に……
その文字は、料理のレシピ。
ワタシたちはこの流れ、エレノアさんが来る前にー度経験してるんです。
壁のレシピらしきものに従って、チョコのお菓子を作ったら……
別の部屋への扉が現れたわ。
……なるほど。だから『チョコを作れば、お菓子の家から出られる』と。
チョコを作って前進していけば、いつかは外に出られるかもしれない。
もしくは声の主と会えて、直接交渉できるかも!どちらにせよ……
お菓子の家用のチョコを作ることこそが、脱出の鍵ということですね。
協力してくれる?
もちろんです。
ありがとう。
<さあさあ!れっつくっきんぐよ!>
ではエレノアさん、こちらをどうぞ!
これは?
備品の調理服。チョコが跳ねるから着た方がいいって、アナウンスが。
なるほど。ありがたく着させてもらいましょう。
よし、準備万端です。チョコづくり、開始しましょうか♪
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story2 れっつくっきんぐ!
エレノアさん、この台を見ててください。ポチッ。
溶けたチョコがわき出て……
チョコの泉。お菓子を作るとき、このチョコをもらうの。
定石があるんですね……!なるべく早く覚えます!
はじめは頼れる先輩に任せて、気楽にしていてくださいね!
ありがとうございます!がんばります!
キッチンを見て回ってますね。気楽にといったのに。
真面目な人。確認の邪魔しないよう、静かにくっきんぐしましょうか。
(オーダーは<チョコのランプ>か……簡単なレシピも書かれてる。
土台はタルト生地で作るんだ。バターと砂糖、卵を……)
タルトってなんですか?
強そうな名前。
(これ、オーブン!?大きい!)
オーブンから、いつ出す?
まっくろになってれば、確実に火が通ってます!
(他の調理器具も、家づくり用の巨大サイズだ……扱いが難しそうだな)
これは、ハンドミキサーですか。と言っても、ワタシの体くらいありますが……ポチッ。
なんです!?どうしました!?
わあああああああ!!
エプリルさんがグルグル回ってる!?
ミキサー、止めてくださいいい!
手を!手を放してください!
あっ!
きゃあ!チョコで、部屋が、わあ!
ガビビビビビ!
感電……!?チュロスから何か流されてる……!
……ゲボ……たすかりまし夕……
でも、チョコは助からなかったみたい。
…………
あの……ごめんなさい……
い、いえ……
普段の料理とは勝手が違いますから、こういうことも……!
ワタシ、料理の意味自体、よくわかってなくて……
え?
アンドロイドは、食事をしなくても大丈夫なので。ワタシには味覚もインストールされてません。
でも、前に作ってみたことはあったし、先輩なので、見栄を張っちゃいました。
私も、簡単な料理は家族から教わってるから、力になれるかと思ったけど……
経験がないと、人は無力ね。お菓子作りは特に。
<ダメ!こんなのお菓子の家にふさわしくない!>
飛び跳ねたチョコやオーブンの中身が、家に溶けて消えちゃいました……
なんとこの家、自動で清掃するシステムが搭載されてるんです。すごい技術でしょう。
エレノアが来る前にも、散々清掃してもらった……
が、がんばってるんですよっ。本気で……!
(もしかして、このお二方にチョコづくりを任せるのが不安だから、チョコで私をおびさ寄せたのかも……?)
と、とにかく、すぐに作り直しますので!
あ、待ってください!
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?
次は私もお手伝いさせてもらっても?
助かるわ。
いっしょにがんばりましょうっ。
…………
……
あとは、飴細工をかぶせて……完成です。
できた……すごい……!
や、やりましたあ!
<また完成に一歩近づいたわね♪>
家主にも満足してもらえたみたいですね。
<今日中に全部終わるかも!そしたら彼を呼んで~♪>
エレノア、手際が達人だったわ。
そんなことは……!
ほとんどやってもらっちゃって、先輩としてふがいないのです……
――あっちの壁が溶ける。
奥に道が……これで、先に進めるわけですね。
行きましょう。家主の気が変わって、道が消えないうちに。
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story3 おかしい廊下
どうしたんですか?悩みがあるなら、頼れる人に相談するのも手ですよ?
(この子、頼られたいのね。心の声が漏れ出してる)
その……ずらりとチョコの引き出しが。中はお菓子の材料でいっぱいです。
本当ね。カカオだけでも、たくさん。
香辛料なんかも!ナツメグに、ショウガ……
あのっ。こちらは瓶も並んでますよっ。ジャム、ハチミツ、キャンディ……
本当ですね!すごい!
すごいですか!そうでしょうっ。
エレノアってお菓子が好きなのね。
はい♪囲まれてるだけで、わくわくしてしまいます♪
<お菓子で家を作る――
最高のアイデアだと思わない!?>
わかります……!
<もちろん食べてもちゃんとおいしい♪>
たしかに美味しかったです。すごいですね♪
すご……っ!?
食べたの?
ちょ、調理のためにですよ!?つまみ食いでは……
咎めたいわけじゃないわ。危険かもと思って。
<もちろん、食あたりなんて起こさないようにしてあるわ。
最後は私と彼で食べるんだもの。愛のー工夫で、いつでも美味しくしてあるの♪>
ワ、ワタシの解析でも、お菓子に成分劣化は見られませんでしたよっ。安全かと思いますっ。
そういえば、チョコを食べるたびに疲労が薄れるのを感じるんですよね。
(何度も食べたのね)
森で擦った傷も消えてますし……回復効果があるのは間違いないかと。とてもすごいチョコの家です……♪
(むむむ……このままではエレノアさんの尊敬を奪われてしまいます……!)
あ、あのっ。天才の分析によるとですね……わあ!
エプリルがチョコ床に吸い込まれた……?
どうしましょう!?
移動している音が聞こえる――そっちの壁。
だ、大丈夫ですか?壁からニョキっと生えちゃってますけど……
大丈夫ではないでしょう。壁からニョキっと生えちゃってるわけですから。
<んー、この装飾は合わないわね~。>
合わないってなんですか!?勝手に人を埋めといて!
<バカっぽいしな~。>
バ!?
<彼は、私と同じくらいチョコにこだわりがある人だから。
もっと彼っぽいイメージ追及しなくちゃ……>
壁から吐き出された……バカって言われた……
あ、あの、えっと。
無視された……尊敬もとられた~……っ!
エレノア、たぶんエプリルの心は、褒めてはしがってる……
褒める……き、気にしないでください。エプリルさんは、ええと、立派ですよ。
……立派に先輩できてますか……?
先輩……?あ、はい!できてます♪
天才ですか……?
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皆さん、こんなところでめげてはいられませんよ!
さあ、かしこいワタシの後に続いてください!
チョコまみれでニコニコ歩いていっちゃいました。
元気な子、私の妹とは違うタイプの元気。
妹さんが?
ええ。早く探し物を終わらせて、会いに戻りたい。
おばあさんからの頼まれごとでしたっけ。
<甘い思い出>。きっとお菓子の家の中にあるわ。だってお菓子って、甘いもの。
な、なるほど。
(甘い思い出って、恋の話かと思ったけど……)
お二人とも~!なにやってやがるんです~!
いま行く。
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story4 デコチョコ!
<彼には、バレンタイン関係なく毎日チョコをあげてたけど……>
部屋について早々、のろけ話ですか?
(どの部屋にもキッチンがある。不思議な家……)
<最近は彼、忙しくて。新婚生活のために、いっぱい稼ごうって張り切ってるの。
だから久々に上げるチョコは、最高のものにしてあげたいんだ♪>
いや、限度があるでしょう。
<さあさあ!れっつくっきんぐよ!>
次のレシピが壁に。
テーマはデコレーション。アレンジ自由……ですか。
自由にやっていいのなら、むしろ楽かも……
お二人とも、どうしたんです?
いえ、その、さっき……
もしかして、先ほどの料理で失敗したことを気にしてます?
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
では、せっかくですし各々で好きにデコレーションを作ってみましょうか!
ええっ?ワタシたち、足手まといでしょうか……?
お二人は、料理は嫌いですか?
そんなことはっ。料理は発見の宝庫で、楽しいです。
私にとっては、家族と過ごすひととき。作ってるだけで、温かいと感じる。
なら、もっと楽しまなくては損です。私は皆さんと楽しく料理したいな。
やってみる。だからサポートしてほしい。
今度はうんとすごいもの、作ってみせますので!
…………
……
ふう。チョコの花びら完成。あとはコボーを足して……?
シオンさん、ワッフルを焼いてたんですか?美味しそう。
ひまわりみたいな形、妹が好きで。たまに作るの。
これに、チョコで顔を書いたりとか、どうかなって……
いいと思います♪
どうしたの?
チョコ味の飴細工を作ろうと思ったんですけど……
握りつぶしちゃいました。
粉々……でも、きれい。
たしかに。重なって、カラフルな飴の層が鉱物みたいですね。
言われてみると……ハッ。これをトロトロチョコの上にのせて……!
海の中みたいで素敵です♪
……えヘヘ……♪
<うんうん、どれもいい感じ♪
キレイな装飾、彼も喜ぶわ♪それに、きっとおうちも喜んでくれてる♪>
(お菓子の家を本当に大事にしてる……やっぱりこの人、悪い人ではない気がする)
扉が現れました。向こうは……また廊下が続いてるようですね。
やはり、外へ出してはもらえないですか。これはもう、家主に直接交渉すべきなのかもしれません。
こ、交渉するにしても、手荒な真似はやめましょうね。きっと話し合える人だと――
ひび割れの音……!下がって!
板チョコが折れて、シオンさんが床下に……!
ワタシのレーダーなら追えます!ついてきてください!
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story5 グラグラチョコロード!
わあー!グミが転がってきますー!
マシュマロをクッションに……!きゃあっ!
大丈夫ですか!?
なんとか……あ!シオンさんいました!あそこです!
マカロン、てごわい……
て・ん・さ・い・ぱわぁー!
浮いてる……?
重力を操作しました!早くこちらに!
助かったわ。二人ともありがとう。
助けられたのは私たちです。声をかけてくれなければ、三人で真っ逆さまでした。
<急げ!急げ!バレンタインが始まっちゃう!
この家は完成させてあげたい!愛情込めて作ったんだから……!>
家中で、ひどい音……
レーダーを見るに、部屋を丸ごと移動させてるみたいです。
<音声日記、一旦終了!>
音声日記?放送を録音してるんでしょうか。
科学者はよく実験記録をつけますが、それに近いのでは?
お菓子の家の作成記録、ですか。
固い音……あそこ、たぶんお菓子じゃない。飛び移りましょう。
よっと。どうやら家の骨組みのようですね。
この手触り……金属、でしょうか。
ふむ……このお菓子の家、ルーンエ学を土台に作られているようです。
表面はお菓子ですが、基部は金属。この家は機械仕掛けと言えます。
そうなの……うっ。足を怪我されたんですね。チョコをつまんでみてください。ん……本当に痛みが引いたわ。
仕込まれた自己治癒プログラムが、副次的に回復作用を生み出しているようですね。
そんなプログラムを組んで、半永久的に腐らないお菓子の家を作るとは……家主は相当な天才ですよ。
アナウンスさん、アナタいったい何者ですか?
<…………>
無視されました。
た、たぶん席を外しているんですよ。
いいえ、声の発信源は同じ部屋から徴動だにしてない。
えっと、きっと事情が……
微動だに……ですか。
(もしかして……)
この骨組みを伝っていけば、声を拡声してる部屋ヘー気に近づけそう。
家主は私たちが近づいても逃げる気配はない……
会いに来るのを待ってるのかも。
だったら会いに行くまでです。
出してもらうついでに、疑問にも答えてもらいましょう。
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story6 チョコクッキー!
す、すごいデザインの部屋ですね。バターをくり抜いたみたい。
成分を分析するに、その通りかと。ワタシたち、バターの中にいます。
この部屋、調理道具が揃ってない。さっきの改装が原因かしら。
<ええー!?>


?
<うそ、人が玄関の前に……彼が来ちゃったの!?
この場所は秘密のはずなのにー!どうしよどうしよ!
彼が来たということは、ワタシたちもお役御免なのでは?
うれしいですけど、すこし、完成を見届けたかった気も……
壁を見て。
残念だけど、オーダーはまだあるみたい。チョコクッキーの、柱……
ク、クッキー!?このサイズの、ですか……!?
(冷やすとき生地が割れてしまう。温かい状態で空気が入らないよう処理して、牛乳でヒビを埋めて……
だめ、計量を見極められないし、器具も足りない!
どうすれば……でも、経験者の私がちゃんとしないと……)
大きいクッキーって、大きくないとダメかしら?
え?
大きな花畑だって、ひとつひとつの花から作られてるでしょ?
あ……!普通サイズのクッキーを積み重ねて、チョコで接合すれば……
ただ、この部屋の調理器具でどこまでできるか……
ないものは作っちゃいましょう。簡単な道具なら、ワタシのメモリから設計図を出力できるかと。
じゃあ、まず必要なのは……
ありがとうございます。

?
お二人のアイデアは、私一人ではとても思いつけなかった。
一人なら、この部屋から先には進めなかったと思います。
そ、そでした、先に進むために料理するんでした……!
え?
その、料理、楽しくって、ちょっとだけ目的を忘れかけちゃってました……
私も、いっしょに色々考えるの、好きみたい。
……料理は楽しまなくちゃ。自分の言葉でしたね。
楽しみましょう!巨大クッキーづくり!
オーブンの予熱は高めにお願いします!
どんどん作りましょう!バターは壁から直接取り放題です!
そろそろ置き場が足りなくなる。
私のパワーで積み上げちゃいますね!
焼けてきた……いい匂い……!
チョコレートでコーティングして……花の形のクッキーをつけて……
フフン、シオンさん、鼻の頭にチョコがついてますよ。
エプリルはバターまみれ。
ええ!?
ふふふ♪
こんな感じで、どうかしら?
<また完成に一歩近づいたわね♪
今日中に全部終わるかも!そしたら彼を呼んで~♪>
彼は、家の前にいるのでは?
<ああ、もう!来ちゃった以上は、中に入れるしかないか!>
(……なにかしら、この放送の違和感は)
扉が現れましたよ。
声の発信源は、すぐそこ。
……いよいよですか。
<ああ、もう!来ちゃった以上は、中に入れるしかないか!
完成まで秘密にしておきたかったけど、ネタばらしね。
ハッピーバレンタイン、ダーリン!>
TOP↑
story7 声の主
<とても……とても残念なお知らせがあります。>
声は、扉の向こうから。
開きますね。
ー際かわいらしい内装ですが……声の主は?
あそこ、のはずなんだけど。
……見当たりませんよ?
<こうやって喋るのも、これが最後になるでしょう。>
私、あちらを見てきます。
<もうお菓子の家を作ってられないの。>
このチョコから、声がする。
チョコの中に人が?そんなわけ……
<玄関前に来てた人は、ママだった。緊急の用事で……>
これ、音声の記録端末です。
声を残すための機械ということ?
……やはり、そういうことだったんですね。
<彼がケガをしてしまったって。きっともう二度と歩けないって……
これからは私が、いつもそばで支えてあげないと。
でもそうなると、この場所には通えない。彼を連れてくるにも、遠すぎる……ぐすっ……>
あちらで手帳を見つけました!持ち主の名前もあります!
<もう行かなきゃ、マイスイートホーム。私の宝物。あなたを完成させてはあげられなかったけど……>
名前は……
メルチ……!?
<きっと<甘い思い出>になってあなたは私の中で生き続けるわ。
ありがとう。
さようなら……>
完成、させてあげたかったな……
メルチの音声日記……終わり。>
甘い、思い出……
ま、待ってください。混乱しています。
その、メルチさんが、声の主の正体?お菓子の家の主人?
でもその方は街にいるんですよね?
ええ。声の年齢も全然違うわ。
では私たちとずっと話してたのは誰です?
お菓子の家の魅力を私に語ってくれた、あの相手は……!?
録音にしては、あまりに……!
コミュニケーションがとれてました。ん?
ワタシがアナウンスに無視されたり、邪魔されたりするときには、法則がありました。
法則?
図らずも、声の主の正体に言及しょうとした時だったんです。
「アナウンスさん、アナタいったい何者ですか?」
「…………」
ロジックエラーが起きそうになると、アナウンスは沈黙する。その問いには答えたくないというように。
もしくは、自分が何者かわからなかったのかも。本来、心が宿るものではないから……人形と同じで。
……つまり、こう仰りたいのですか?
お菓子の家が、放送を流していた張本人だと。
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家に……心が……?
この家は本来、知能が備わるような設計にはなっていないはず。ですが……
流されるアナウンスはー貫して『家を完成させよう』というものでした。きっと自分を完成させてほしかったからです……
また作ってもらえるのを、森の奥でずっと待ってたんですよ……!
心があるといいと思う……でも……本当のところは確信が持てないわ。
お菓子の家の心は、まだー度も<共鳴>で捉えられてない……
けれど、メルチさんの声に宿る、強い<思い>の残響は、たしかなものだった。
大切な人のため、最高のプレゼントを。
夢の詰まった、すばらしいお菓子の家を……
私は今、その叶わなかった望みを叶えてあげたいと、思ってる。
お菓子の家を、私たちで完成させると?

賛成!大賛成です!お菓子の家も、それを望んで――
実は私たち、すごくピンチだと思うんです。
?
家主が存在しないとわかって、脱出のアテが消えたわけですから。
そ、そでした。
でも私たち、お菓子を作ろうとしてる……ふふ。
ちょっと、呑気かしら。
私たち、ということは……
もちろん、協力しますよ。私、このお菓子の家にはー目惚れしてるんです。
私の世界では望むべくもなかった、夢のような、幸せの形……完成した姿を見てみたい。
だから、おばあさんのためにも、お菓子の家のためにも……私のためにも、えヘヘ。是非お手伝いさせてください
やりましょうっ。叶わないはずだった願い、いっぺんに叶えてみせます!
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