目次
Story1 死の風の運び手
Story2 初級:漆黒の息吹
Story3 上級:黒き槍の魔女
Story4 絶級:闇に馳せる影
最終話 破滅級:夜を想う騎士
主な登場人物
story1
…………
静かなる夜道を悠然と進む、漆黒の鎧の騎士――イリア。
彼女は不意に振り返り、不機嫌そうに目を細める。
――同道を頼んだ覚えはない。
でも、ひとりでは危険ですよ、イリアさん。
危険など、承知の上だ。戦場に向かっているのだからな。
でしたら、ますます放っておけません。意地でもついていきます。
……勝手にしろ。
はい、そうします。あ、ケガしたら言ってくださいね。
勝手にしろ、ってことは、とーぜん勝手にケガを治してもいい、ってことよね~?
好きにするがいい。
はあ……とことん無愛想ねえ、アンタってば。
で? この先に何かあるわけ?
……その答はヤツらに聞くのだな。
ヤツら?
キャトラがきょとんとなった時――
鎧をきしませながら、数体の機械兵が周囲に姿を現した……!
な、なんなのよ、こいつらぁー!?
ふん……出たな。滅び損ねた亡者どもめ。
槍を構え、前に出るイリア。
今度こそ――完膚なきまでに葬ってくれる!
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story2
こ、ここ、なんであんなに兵士がいるのよぉ~……
ただの機械兵さんじゃないわ……なにか……怨念のようなものを感じる――
<ような>……ではない。怨念だ。まちがいなくな。
戦場で散っていった兵士たちが、壊れた機械に宿り、夜な夜なうろついている――
そういうウワサが流れていた。だから来たのだ。
全部、ユーレイぃ~!? ひぃいいい~!
亡霊であろうと、実体があるなら破壊は可能だ。恐れることはない。
そういうことじゃなあーいっ!
だが……警戒は必要だな。
え?
ヤツらは意味もなくうろついているわけではないらしい。
これは、軍の動き方だ。統率している何者かがいる……
ゆ、ユーレイの親玉がいるってことぉ~?
おそらくな。
あっさりと言って、イリアはさらなる闇の奥に足を進めていく。
ま、まだ進む気ぃ!?
当然だ。この地に巣食う亡霊どもは1匹残らず滅ぼし尽くす。
地獄に行くのが嫌だと言うなら……私が地獄を見せてやるまでだ――
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story3
オ、オ、オ、オ、オ――――!
すべての手勢を破壊し尽くされた怨霊兵の長が、ぶるぶると震える。
イリア! イリア! イリア! 死の風の運び手! 漆黒の息吹! 屍の丘を築く者!
黒き槍の魔女に呪いあれ! おまえの未来が、冷たい鉄の刃で閉ざされんことを――かつておまえが我らにしたように!
――遺言の続きは終わったか?
憎悪に満ちた罵声を浴びながら、イリアは顔色ひとつ変えることなく怨霊兵に槍を向ける。
ならば散れ。貴様らの居場所はもはやない!
グァァアアァアアアア――――!
イリアさん……今の方々って――
かつて、私がこの地で倒した兵士たちのなれの果てだ。
ええっ!?
……なるほど。
イリアさんは、彼らがさまよってるって聞いて、解放してあげるためにここに来たんですね。
……勝手な解釈をするな。
根こそぎ滅ぼしたはずのものが残っていた……それが気に喰わなかっただけだ。
言って、彼女は身をひるがえし、立ち去っていく。
もー、なーんであんなにサツバツとしてるのかしら!
主人公、アイリス、アタシたちも行こっ!
……そうね。
アイリスは、おもむろに振り返った。
ちょっと、やることやってから……ね。
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story4
……また、ついてくる気か?
夜の道――黙然と歩いていたイリアが、不機嫌そうに振り返ってくる。
もちろんです、イリアさん。
ま、まままままた、ユーレイの出るトコに行くのぉ~? アンタどういう神経してんのよ~!
戦場に亡霊はつきものだ。いまさら恐れるものでもない。
ひょ――ひょっとして、ここも戦場なの?
そうだ。かって大きな戦いがあり、多くの兵が命を落とした場所だ。
前回は亡霊が機械に宿っていたから槍が通じましたけど……
霊体になっていたり、ガイコツに宿っていたりしたら、私の魔法や主人公の剣が必要じゃないですか?
やりにくいのは確かだが、槍がまるで通じぬわけではない。なんとでもなる。
だからこそ、しっかり援護してあげないと。ね、主人公?
アイリスもガンコよねえ……
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最終話
……どうあっても、ついてくるつもりか。
だってイリアさん、放っておいたらケガをして帰ってくるんだもの。
戦いとはそういうものだ。
勝とうが負けようが、どちらも傷を負って終わる……その繰り返しでしかない――
オオオオオオ――……
無数の叫びが、響き重なる。何体もの幽霊たちが、こちらを取り囲んでいる……
ギャ、ギャー! で、出たぁーっ! アイリス! バーンナップ! バーンナップゥ~!
……待って!
この人たちからは、敵意や怨念を感じないわ……むしろ歓迎してくれているみたい。
く、『食いちぎるぞコラァ!』って言ってるようにしか見えないけど!?
……でも、ホントに襲いかかってくる気配ないわね……
ここにいるのって、イリアが倒しちゃった人じゃないの?
私が死なせた相手には違いない。
昔の部下たちだ。ここで、苛烈な戦いの果てに散っていった……
そのせいか、魂が土地に呪縛されてしまい……死してなお、ここを離れられずにいる。
どうにも退屈らしくてな。たまに話をしに来てくれと、私にせがむのだ。
うーん……確かに、こんなトコにずーっといるのは退屈よねえ~。
オォォオオオオン……!!
ぎゃあー! お、怒ったあー!?
同意を示している。
わかりづらぁーい!
……私の祈りで、みなさんの呪縛を解きましょうか?
……! できるのか――?
とーぜんよ! この間の兵士たちもアンタが倒した後で、アイリスが浄化してたんだから!
勝手をしてすみません。でも、勝手にしていいってお話でしたから。
……なるほど。そういうことだったか――
イリアは、亡霊たちに視線を向けた。
すると、亡霊たちが、いっせいに声を上げて答える。
……そうしてほしいと言っている。――頼めるか。
はい。任せてください!
アイリスは目を閉じて、深く祈りを捧げ始めた。場に清浄な光が満ち、亡霊たちを包み込む――
すると、亡霊たちが穏やかな光に変わり、空へと昇っていく……
……もうだいじょうぶです。
これでやっと、あいつらにも静かな夜が訪れたか……
イリアは、うっすらと目を細め、空を見上げてつぶやいてから――
――礼を言う。
一言だけを残して、きびすを返し、歩き去っていく。
ちょっとー! もりちょっとさー、なんか言ってもいーじゃんかー!
いいのよ、キャトラ。私たちも行きましょう。
そろそろ、夜も明けそうだし……ね?
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その他
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