【白猫】黒騎士の夜想曲 Story
2014/10/9 |
目次
主な登場人物
story1
…………
静かなる夜道を悠然と進む、漆黒の鎧の騎士――イリア。
彼女は不意に振り返り、不機嫌そうに目を細める。
――同道を頼んだ覚えはない。
でも、ひとりでは危険ですよ、イリアさん。
危険など、承知の上だ。戦場に向かっているのだからな。
でしたら、ますます放っておけません。意地でもついていきます。
……勝手にしろ。
はい、そうします。あ、ケガしたら言ってくださいね。
勝手にしろ、ってことは、とーぜん勝手にケガを治してもいい、ってことよね~?
好きにするがいい。
はあ……とことん無愛想ねえ、アンタってば。
で? この先に何かあるわけ?
……その答はヤツらに聞くのだな。
ヤツら?
キャトラがきょとんとなった時――
鎧をきしませながら、数体の機械兵が周囲に姿を現した……!
な、なんなのよ、こいつらぁー!?
ふん……出たな。滅び損ねた亡者どもめ。
槍を構え、前に出るイリア。
今度こそ――完膚なきまでに葬ってくれる!
story2
こ、ここ、なんであんなに兵士がいるのよぉ~……
ただの機械兵さんじゃないわ……なにか……怨念のようなものを感じる――
<ような>……ではない。怨念だ。まちがいなくな。
戦場で散っていった兵士たちが、壊れた機械に宿り、夜な夜なうろついている――
そういうウワサが流れていた。だから来たのだ。
全部、ユーレイぃ~!? ひぃいいい~!
亡霊であろうと、実体があるなら破壊は可能だ。恐れることはない。
そういうことじゃなあーいっ!
だが……警戒は必要だな。
え?
ヤツらは意味もなくうろついているわけではないらしい。
これは、軍の動き方だ。統率している何者かがいる……
ゆ、ユーレイの親玉がいるってことぉ~?
おそらくな。
あっさりと言って、イリアはさらなる闇の奥に足を進めていく。
ま、まだ進む気ぃ!?
当然だ。この地に巣食う亡霊どもは1匹残らず滅ぼし尽くす。
地獄に行くのが嫌だと言うなら……私が地獄を見せてやるまでだ――
story3
オ、オ、オ、オ、オ――――!
すべての手勢を破壊し尽くされた怨霊兵の長が、ぶるぶると震える。
イリア! イリア! イリア! 死の風の運び手! 漆黒の息吹! 屍の丘を築く者!
黒き槍の魔女に呪いあれ! おまえの未来が、冷たい鉄の刃で閉ざされんことを――かつておまえが我らにしたように!
――遺言の続きは終わったか?
憎悪に満ちた罵声を浴びながら、イリアは顔色ひとつ変えることなく怨霊兵に槍を向ける。
ならば散れ。貴様らの居場所はもはやない!
グァァアアァアアアア――――!
イリアさん……今の方々って――
かつて、私がこの地で倒した兵士たちのなれの果てだ。
ええっ!?
……なるほど。
イリアさんは、彼らがさまよってるって聞いて、解放してあげるためにここに来たんですね。
……勝手な解釈をするな。
根こそぎ滅ぼしたはずのものが残っていた……それが気に喰わなかっただけだ。
言って、彼女は身をひるがえし、立ち去っていく。
もー、なーんであんなにサツバツとしてるのかしら!
主人公、アイリス、アタシたちも行こっ!
……そうね。
アイリスは、おもむろに振り返った。
ちょっと、やることやってから……ね。
story4
……また、ついてくる気か?
夜の道――黙然と歩いていたイリアが、不機嫌そうに振り返ってくる。
もちろんです、イリアさん。
ま、まままままた、ユーレイの出るトコに行くのぉ~? アンタどういう神経してんのよ~!
戦場に亡霊はつきものだ。いまさら恐れるものでもない。
ひょ――ひょっとして、ここも戦場なの?
そうだ。かって大きな戦いがあり、多くの兵が命を落とした場所だ。
前回は亡霊が機械に宿っていたから槍が通じましたけど……
霊体になっていたり、ガイコツに宿っていたりしたら、私の魔法や主人公の剣が必要じゃないですか?
やりにくいのは確かだが、槍がまるで通じぬわけではない。なんとでもなる。
だからこそ、しっかり援護してあげないと。ね、主人公?
アイリスもガンコよねえ……
最終話
……どうあっても、ついてくるつもりか。
だってイリアさん、放っておいたらケガをして帰ってくるんだもの。
戦いとはそういうものだ。
勝とうが負けようが、どちらも傷を負って終わる……その繰り返しでしかない――
オオオオオオ――……
無数の叫びが、響き重なる。何体もの幽霊たちが、こちらを取り囲んでいる……
ギャ、ギャー! で、出たぁーっ! アイリス! バーンナップ! バーンナップゥ~!
……待って!
この人たちからは、敵意や怨念を感じないわ……むしろ歓迎してくれているみたい。
く、『食いちぎるぞコラァ!』って言ってるようにしか見えないけど!?
……でも、ホントに襲いかかってくる気配ないわね……
ここにいるのって、イリアが倒しちゃった人じゃないの?
私が死なせた相手には違いない。
昔の部下たちだ。ここで、苛烈な戦いの果てに散っていった……
そのせいか、魂が土地に呪縛されてしまい……死してなお、ここを離れられずにいる。
どうにも退屈らしくてな。たまに話をしに来てくれと、私にせがむのだ。
うーん……確かに、こんなトコにずーっといるのは退屈よねえ~。
オォォオオオオン……!!
ぎゃあー! お、怒ったあー!?
同意を示している。
わかりづらぁーい!
……私の祈りで、みなさんの呪縛を解きましょうか?
……! できるのか――?
とーぜんよ! この間の兵士たちもアンタが倒した後で、アイリスが浄化してたんだから!
勝手をしてすみません。でも、勝手にしていいってお話でしたから。
……なるほど。そういうことだったか――
イリアは、亡霊たちに視線を向けた。
すると、亡霊たちが、いっせいに声を上げて答える。
……そうしてほしいと言っている。――頼めるか。
はい。任せてください!
アイリスは目を閉じて、深く祈りを捧げ始めた。場に清浄な光が満ち、亡霊たちを包み込む――
すると、亡霊たちが穏やかな光に変わり、空へと昇っていく……
……もうだいじょうぶです。
これでやっと、あいつらにも静かな夜が訪れたか……
イリアは、うっすらと目を細め、空を見上げてつぶやいてから――
――礼を言う。
一言だけを残して、きびすを返し、歩き去っていく。
ちょっとー! もりちょっとさー、なんか言ってもいーじゃんかー!
いいのよ、キャトラ。私たちも行きましょう。
そろそろ、夜も明けそうだし……ね?
その他
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