【白猫】Snow Fairy Tale Story2
信じてる――熱い想いが絶望を溶かすと―― |
目次
登場人物
プロローグ
<凍れる白銀の大海の果て。人も通わぬ辺縁の地にて。
<吹き荒れる吹雪の中、少女は小さな白い花を見つめていた。>
…………きれい……
<その花は……冬の終わり、春の訪れを告げる花。>
でも……どんなにきれいなお花も、いつかは枯れちゃう。
<小さな花は凍りついた。>
これでもう枯れないよね。
…………ロッカ。
姉ちゃん。見て……
<マフユはロッカの頬に平手打ちをした。>
バカ……!
どうして……姉ちゃん。
この花は……必死で生きて、咲こうとしているの。
でも、枯れちゃうんだよ?
それが生きているということ。命は巡るもの。花が枯れるのは、次の冬にもうー度咲くため。
もう一度……?
冬はもうすぐ終わる。……私たちの季節も終わり。
…………
……
……そんな……あれに触れることは、誰にも……!!
どうして……そんなことが……!!
全ては我らの失態です……
顔をあげてください。みなさまは務めを果たしました。今度はわたくしの番――
あれを扱えるものは……ファルク家の血筋だけ!
story1 冬に咲く花
なるほど考えたわね!肉まんに力二カマをいれるとは!
考えたでしょ~。じゅわあ~。幸せ~。
ロッカさん……溶け……
溶けるとおもったでしょー。でも、ぎりぎり溶けないんだよー。
うまーく熱を操れば……こうやって~。
ギリギリ溶けてるわ!
あれ?
うまくいかないねー。
主人公、ちょっと……
どうしたの?
冒険家ギルドから、緊急依頼ですって……!
story2 奪われた誇り
<主人公たちは、ギルドの指定した集合場所にたどり着いた。
名うての冒険家が集まっている。今回の依頼は、ー筋縄ではいかないようだ。>
……おかしいなあ。いつもより風が強いみたい。どうしたんだろう。
あれあれ、どうしたの?
アタシからいいたいことが。
何?
ここ、寒すぎるわ!猫は寒さに弱いのよ!丸くなるのよ!
ロッカさん、来てくれてありがとうございます。
私だって冒険家だもん。それに、寒いところなら雪女の出番でしょ?
確かにアンタ、雪女だったわ。肉まん女じゃなくて。
雪の妖精、通称雪女だよー!
みなさま、お集まりいただき、ありがとうございます――
ソフィ……?
<ソフィは見るからにやつれている……>
私より、今回の依頼について、ご説明をさせていただきます。
何があったの……?
我が氷の島より、国の至宝である<永久凍土のルーン>が、何者かに奪われました。
<<永久凍土のルーン>。あらゆる物を凍らせる、大きな力を秘めたルーン。
それが力を失えば、氷の島の氷が溶け、多くの島が海に没する。
その力が暴走すれば、生み出された寒波は、数千の島を凍らせる。>
みなさまへの依頼は、ルーンの奪還です……!!
氷の女王よ、勇気あるものたちに、加護を与えたまえ!
…………
……
<地吹雪の荒れ狂う極寒の地。極寒の地。全ての命が凍りつく白銀の冥府……
街も人も、生き物も、すべてが凍りついている。>
…………
……………………!
…………
……
ソフィさん……大丈夫?肉まんたべる?
私は大丈夫です。ご心配なく。
全然、そんな風に見えないけど。
そうです……よね。
……何があったの?
氷の島が……寒波に襲われたのです。
我が国の国民も、生き物も、全てが凍りつきました。
寒波……?
ルーンは必ず取り戻します。
ソフィさん……!
――それが、王女としての務め。氷の女王の血を引く者の……
大丈夫だよ!…うまくいえないけど、きっと……きっと……
ありが……とう…………うっ……うううっ……!!
…………
……
story3 冬のさだめ
<島には、多くの人々がひしめいていた。>
たくさん人がいるね~。
みなさま、避難をされているのです。
それってまさか……
奪われた<永久凍土のルーン>はすでに暴走を始めています。
どおりで……何年分もの冬が、いっべんに来たみたい。
この寒波の中心に、ルーンを奪ったものがいます……!
<老人と少年が、冒険家たちに温かいものを配っていた。>
……みなさん、我々からの気持ちです。
できたての肉まんです!おいしいですよ!
イーノくん……セルゲイ!
……わしらにできるのは、これくらいじゃからの。
はい、ロッカさん!
<イーノはロッカに、出来立ての肉まんを渡した。>
ありがとう……!!
ロッカ……
私達にまかせて!絶対、みんなを助けるから!
…………
……
<冒険家たちは、飛行艇に乗り込んだ。寒波を追うために。>
……
…………
姉ちゃん、聞こえる……?
<雪の妖精はソウルを通じ、大気に流れる声を通わせる。
ソウルとは自然に満る命の力。妖精とはソウルの結晶である。>
……聞こえるわ。ロッカ。
大変なの。このままじゃ、冬が終わらなくなっちゃう。
あなたは、人に手を貸すの?
冬を終わらせないと!
冬の化身たる、私たちが?
命は巡るものだって、教えてくれたのは姉ちゃんだよ。
私たちが人に関われば、待つのは悲劇だけ。
それでも、助けたいの!
手は貸せない。私には私の戦いがあるから――
姉ちゃん……
でも祈っている。あなたに春が訪れることを。
story4 寒波
<突如、凄まじいまでの冷気が飛行艇を襲う!!
周囲には、吹雪が荒れ狂う。>
……ううう……さむい……
こういうときは肉まんだね!
ロッカさん……
どうせ凍ってると思ったでしょ。でも!
<ロッカの体が、湯気を立てた!>
あ、アンタ!?
これこそ……私の肉まんへの愛が生み出した必殺技!あつあつオヤツ!
<肉まんが蒸し上がった!>
これが愛の力……!
熱を操ってあったかくしたの。はい、ソフィさんも!
私に……
食べて!
……ロッカ様……
私なんかが……うまくいえないけど、でも――食べて!
はふ……ふぅ……はむっ……!おいしいです……
よかった!
……ご心配を、おかけしました。
無理はしないでね。
無理ぐらいは……させてください。ルーンを止められるのは、私だけですから。
不便なルーンだねえ。でもどうしてみんなにはつかえないんだろう。
最初にルーンを手にした方が、ルーンの力をより引き出すため、制約を施した結果だと。
最初にルーンを……?
氷の国の、女王様です。
『私は信じる。冷たい氷の島にも、暖かい春が訪れると』――今も伝えられし女王様のお言葉です。
春が訪れる……そうだね!きっとそうなるよ!きっと……
えっ……!
<突如、凄まじいまでの冷気が飛行艇を襲う!!>
冷気よ!退きなさい!!
みんな!私の背中に!
凍っちゃうう!!
…………えーいっ!寒いのあっちいけー!
…………
……
……寒い……寒いの……
しっかり……するんだ……
おじいちゃん。ロッカさんたち、ルーンを止めてくれるよね。
ああ、もちろんじゃとも。
体が……凍って……!!
ちく……しょう……
……ロッカさん……肉まんをつくって……待ってる……から……
ロッカ……わしはお前さんが……
story5 氷の騎士
<冒険家たちは、かろうじて冷気に耐えたが――>
飛行艇の部品が凍って……動かなくなってる!
<熱を発生するルーンも、異常な冷気の前に効果を無くしていく――>
不時着します!!
…………
……
この寒波……セルゲイたちの……島が……
ロッカさん……!
きっと……きっと大丈夫よ!
いやだ……いやだよ……そんなの……!
ロッカ様――
ソフィさん……?
あのルーンは……我が王家の血筋の女性にしか、扱えません。
じゃあ……!
この寒波をもたらしたのは、私の身内です。
どうして……どうしてなの……!
<!>
この音……!みんな、逃げてっ!!
<雪崩だ!!>
……
…………
……みなさま、ご無事ですか!
誰か――!!
<……吹雪の中から、それは現れた。>
――――!
……あなたは……!
……………………!!
<氷の騎士が腕を振り上げると、凄まじい冷気が溢れだす!>
…………ガアアア!!
…………
……
…………
……………………
……俺は――!
…………!
<なんとか雪崩を避けられた――だが、ソフィの姿がない。>
ソフィさん!!どこなの!?
落ち着いて、ロッカ……!
……でも!
ともかく……移動しましょう!また雪崩が来たらおしまいよ!
story6 氷の女王
<気を操る武人同士の決闘は、まばゆくそして凄まじい――>
(なんという冷気……!!)
……我が剣のサビとなれ!!
えっ!?
これがぁ……秩序だ!!
まさか……!!
<ソフィは片足で立ち、ポーズを決めた!>
……アラ……ベスク……!
クライヴ様……!?
グウアアア!?
正気に戻ってください!
……グオオオウ……!!ぐうううー!!
氷の女王に仕えた、古の騎士――死してなお忠節を尽くすつもりか……!
だが、取りつく相手が悪かったな!このクライヴ!姫を愛する心では、誰にも負けない!
……俺は……!!
俺はクライヴという奴じゃない。だからためらうな!
……そんな……クライヴ様っ!
<凄まじい冷気が溢れだす!そして、再び。
雪崩が襲ってくる!
氷の騎士が、雪崩の前に立ちふさがった!>
凍りつけ!!
<騎士の体が、雪崩もろとも凍りついていく!>
ガア……グオオオウ……
<巨大な氷塊が、ソフィの身を雪崩から守った……>
クライヴ……様っ……クライヴ様ー!!
我が末裔よ。これ以上の不敬、許さぬぞ!
この声……!!誰です!
我は氷の女王……全てを凍らせる我が覇業、邪魔立ては許さぬ。
あなたが<永久凍土のルーン>を!
眠れ――我が末裔よ!
<凄まじいまでの冷気が、ソフィに集中した!>
……お兄様……クライヴ様…………
<ソフィの体は、凍りついた……>
…………
……
<冒険家たちは、凄まじい寒気に耐えながら、ビバークをしていた。>
がくがくがくがくがくがく……
ルーンが……
<熱を発生させるルーンも、ソウルが……命の力がなければ、輝くことはない。>
みんな……!!
<ロッカは、己のルーンを注ぎ、ルーンを輝かせる。>
あったかく……なったわ……
よかった……
主人公……私、行くね?
凍らないでいられるのは、私だけみたいだし。
大丈夫……絶対、大丈夫だよ!
story とこしえの冬7
<凄まじい吹雪――その中で、生きるものがいるとは思えない。
この極寒の中を進める者は、まさしく冬の化身であろう。>
姉ちゃん……
聞こえてるわ、ロッカ。
姉ちゃんは、何と戦ってるの?
残酷で悲しい運命と、ね……
私、知ってるよ?姉ちゃん、いつもクールだけど、本当は凄く優しいって。
私はロッカとは違う。
私だって、姉ちゃんみたいにクールじゃないもーん。
あなたはまるで綿雪。いつまでもその暖かさ、忘れずにいて……
姉ちゃん……?
えっ!?ちょ、ちょっと!?
駄目だよ!凍っちゃうよ!
<主人公は、仲間から託されたルーンを見せた……
凍えるほどの寒さだが、発生する熱で、かろうじて前に進める――>
私じゃ、頼りないかな?
はははは。やっぱり――やさしいんだね。
<永久凍土のルーン>は、もうすぐだよ。早く帰って、肉まん食べよう!
<冷たい――
とてつもなく冷たいものが、近づいてくる――>
来てしまったのね。ロッカ……!
姉ちゃん――?そっか!やっぱり私たちを助けに来て――
…………
……どうして?どうして黙ってるの!?姉ちゃん……姉ちゃん!!
不敬である。わきまえよ小娘。
姉ちゃん、どうしたの!?
我は氷の女王――世界全てを白銀に閉ざすもの。
……姉ちゃんなのに……姉ちゃんじゃない。誰なの……!
私はマフユ。あなたの姉。そして同時に氷の国の女王!
うわああ!!
<ロッカの体が……凍りついた!>
私が……凍る……!
あなたに宿る冬は、春の前に消えて溶けるだけの冬。
私の冬は、とこしえの冬――眠りなさい、ロッカ――
姉……ちゃん……!
<まだ終わらない仲間からたくされた、このルーンの光で!>
邪魔を――!
だめっ!!
<意識が――薄らいでいく。体が凍りつく――
あとは――彼女に――!
ロッカの体が、暖かい光に包まれていく。氷が溶けていく――>
……みんな……!主人公!
……ロッカ、あなたは――!
うおおおーっ!!
story8 雪が降ったら
私のハートは……!!
<主人公と仲間達から託された、最後の想いが……>
あつあつなんだからぁー!!
<ロッカを目覚めさせ、新たな力を与えた!>
――私達に、温もりなど不要。
せめて凍りつくがいい――そして眠りの内に見よ、冬と氷の支配を!
姉ちゃんが女王様で、女王様が姉ちゃん……どういうことなの?
我らは混ぜられた。国を守りたいと願う、氷の女王の魂と――
命が消える冬の訪れを、誰よりも悲しんでいた雪の妖精が、ーつになった。
そんなー!!
<守りたいと願う心。救いたいと願う心。だが二つが混ざることで――
この世の、脅威となった……>
姉ちゃんは、私よりも――悲しかったんだ……
春が来ることが……命がいつか終わることが……
もう……悲しくないわ。私は救ってみせる。全ての命を――!
姉ちゃんに、そんなことさせない!
我が前に立ちはだかるか。冬を誘う娘よ!
終わらない冬なんて、悲しいだけだよ……
ロッカ……!
だから私……終わらせるね?
吹雪よ荒れ狂え――全てを永遠の冬に!
姉ちゃん!
うううう……あああああ!!
<ロッカの体より、暖かい光がほとばしった!>
……残された、温もりを……!
肉まんをあったかくしたい。……それだけ。それだけだったの。
雪女は熱を奪う。だからね……?奪った熱を!
ぐああああああっ!!
姉ちゃん……大好きだよ……
……ロッカ……
姉ちゃん……!!うっ……うああああっ……!
<最後の温もりを受けて、マフユは消える――
マフユが立っていた場所に、ルーンが輝いていた――!!
ルーンは激しい冷気を発しながら、激しく輝く。さながら凍て星のごとく。>
<永久凍土のルーン>――!
……暴走してる……!!このままじゃ!
<ロッカは、ルーンを抱きしめた。>
うああああああ――!!
私に残ったソウルで……ルーンを……!
みんな……セルゲイ……イーノくん……姉ちゃん……
雪が降ったら……私のこと――
story 冬の終わり
ねえ……
うっ……うううっ……ううっ……
…………くっ。
ロッカ……アンタの好きな肉まん……
ロッカ!!
ロッカさん……!
<雪原には……光を失った<永久凍土のルーン>が転がっていた。
主人公は、凍った肉まんを手にする。
せめてこれを――彼女に――>
!!
<肉まんが湯気を立てている!>
冷えた肉まんは――
温め直せばいいんだよ!
……ただいま……帰ってきたよ!!
私――
私――は――
あ、アンタたちぃー!!
……雪の妖精たちよ……これがせめてもの償い……我に残されたソウルで!
女王様!
女王様が……ソウルを……でも、それじゃあ……!
我が末裔よ我は愚かであった。
いいえ、あなたは――
守ろうとしただけ。あなたとーつになったのが私だからこそ、あなたは逸脱した。
汝とーつになったのが我であったからだ……すまぬ……
女王様も、優しい人だったんだね。だから……!
あなた、消えるの――?
我は遠い昔に消えるべき存在。国への想いとみなの想い故、魂だけが残り続けたにすぎぬ。
健やかに――そして幸い有れ。汝らに春が訪れんことを――
…………
……
<全土が凍りついた氷の島。だが寒気は去り、氷は溶け。
凍っていた人や生き物は、蘇った。>
<永久凍土のルーン>よ。氷の島を見守りたまえ。
<ルーンは蘇り、ソフィの母、氷の島の王妃のもとに戻る。>
ロッカさんたち、また来てくれるかな?
また冬になったら、きっとこの島に肉まんを買いにくるじゃろうて。
早く冬にならないかなあ!
<そして――>
はい、姉ちゃん!
<ロッカはマフユに、肉まんを渡した。>
……はむ。
どう?おいしい?
……あったかい、味ね。
そうでしょう!もっと食べて!
<冬は終わり、春が来る。次の冬が来て、また春が来る。命は巡る。永久に――>
Snow Fairy Tale Story2
~END~