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ふたりの騎士と祈りの魔剣 Story1

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん
ふたりの騎士と祈りの魔剣
開催日:2018/00/00

パーソナルキャラクター
アナベル・ネロ・ミーユ・ソイラ

目次


第1話 魔剣士ディアドラ

騎士団の中で帰りの遅いー団があるらしい。

どうやら黒い噂の絶えない日くつきの傭兵が関わっているようだが……。

Story2

Story3

Story4

Story5

最終話



主な登場人物


ディアドラ
アナベル
王国騎士団に所属する凄腕の女性騎士。優れた武勇と固い忠義をい併せ持ち『聖騎士』の称号を国から賜っている。
ネロ
ミーユ
ソイラ



「魔獣王を討伐したアルド殿では?

もしやカレク湿原に用があるのかね?

「だとしたら何かあるのか?

「いや突然すまない。先ほど魔獣と中規模の交戦があったんだが……

帰りの遅い分隊があってね。心配しているんだ。

「兵士さんは行けないのか?

「私はここの門番を任されていて動こうにも動けないんだ。

「なるほどな……。そういうことなら様子を見てくるよ。

「おお、ありがたい!

「その分隊何か特徴とか目印みたいなものはあるのか?

「ええとだなあまり大きな声では言えないが……

紫色の髪をした……女剣士がいるはずだ。

「どうしてそれが大きな声では言えないんだ?

「おっと口が滑ったか……。

俺も詳しくは知らないが最近騎士団に配属された傭兵でね。

破竹の勢いで武勲を上げているんだよ。

「なんだいいことじゃないか。

「いやそれがな。戦果そのものは素晴らしいんだが……

どうにも黒い噂が絶えないんだ。

命令違反も日常茶飯事だというし。宮廷魔導師から聞いた話では邪法にも手を染めようとしているとか……。

今回分隊の帰りが遅いのも彼女が何かよからぬことを企てたのではないかと思うと……。

「そうか……事情は分かったよ。

紫色の髪の女剣士がいる分隊だな。任せてくれ。


 ***


「あれは紫の髪……?

それに魔獣……!まだ交戦中だったのか!

「お、おのれ……しつこい連中だ……。

「ふん、みすみす逃すと思ったか?

私を他の甘い騎士連中と一緒にしないでほしいな。

「ディアドラ!何度言えば分かる!

騎士団長命令で深追いはするなとのことだ!さっさと……。

「この程度で深追いだと?

笑わせてくれるな……私にとっては準備運動にもならん。

もそも私は指図されるのが嫌いでね。

そんなに命が惜しいなら私を置いて城へ逃げ帰ればいいじゃないか。

「貴様……っ言わせておけば……!

「なんだ……?仲間割れか。くくっ背中がガラ空きだぜぇ!


「な、なん……だと……

「あくびが出るな……。

さてお前たちもやるのか?

「ひ、ひぃ……っ!

「残念……お仲間は逃げてしまったようだな。

お前は気概のある魔獣か?それとも……

腰が抜けただけか?

「う、うわぁああ!

ちくしょうもう知らねえ……呼んでやる……呼んでやるよ!

ひひっ覚悟しな。死なばもろともだ……っ!


「ほう。ようやく少しは骨のありそうな奴が出てきたな。

「ば……馬鹿者!あれは魔獣どもの奥の手だぞ!

我々の手に負える相手では……

「何を言っている。

それほどの上物だからこそ……我が魔剣の贅にふさわしいのではないか。

「……つ、付き合いきれん!

おいお前たち我らだけで帰投するぞ!

「は、はい……っ!


「おいあんたら……!まずい……!あの子一人になったぞ!

一人じゃ危険だ!加勢する!


「……お前どこから出てきた?騎士……ではなさそうだな。旅の者か?

「話は後だ来るぞ……!

オレが引きつける!君は隙を見てとどめをさしてくれ!

「そこだ……隙あり!

「ギャァアアアア……ッ

「よし……っ!いいのが入った……!

「感謝するぞ旅の者。

一対一では力の加減ができなかったかもしれんからな……!

そうら久方ぶりの馳走だぞ。貪れ……フェアヴァイレ!


「………………。

……ちっ、こんな上物でも駄目か。随分と舌の肥えた魔剣様だな。

「フェアヴァイレ……?何なんだその剣は。本当に魔剣……なのか?

「本当だとも。ただし今は本来の力を失っているようだがね。

「魔剣か……ミグランスの騎士ってそういうのとは無縁だと思ってたよ。

「ふん……私を騎士などと一緒にしてくれるな。奴らは正義だの騎士道だの形のないものを守ることにご執心のようだが……

手段を選んでいるようでは真に守るべきものを守ることはできん。

「ずいぶん騎士が嫌いなんだな……。それならどうして騎士団に?

「私は正規の騎士ではない。便宜上雇われの傭兵として騎士団に所属しているだけだ。

「なるほど……なにか目的があるってことか?

「……魔剣に本来の力を取り戻すことだ。上質な魔物の血を吸わせてやれば目を醒ますかと思ってな。

騎士団に籍を置けば強大な魔物や魔獣に嫌でも巡り会えるだろう?

「本来の力……?何か取り戻さないといけない事情でもあるのか?

「………………。

……それは自分でもよく分からない。ただ嫌な予感がするんだ。

早くしなければ何もかも失くしてしまうような……。

……おかしなものだ。元より失うものなど何もないというのに。

「………………。

「……そういえば。お前なかなか腕に覚えがあるようだな。

とぼけた顔をしているが修羅の道を歩んできたと見える。

名は何と?

「オレはアルド。バルオキー村の出身だ。それととぼけた顔は余計だぞ。

「私はディアドラという。

アルドお前の旅に同行させてほしい。

「ええっ!?いきなりだな!

「安心しろ荷物にはならん。強力な魔物は私に任せるがいい。

「ま、まあ……オレはいいけど。仲間は多いに越したことはないしな。

ただちゃんと騎士団には今回の戦闘のこと報告しにいくぞ。

「ふふ、決まりだな。

フェアヴァイレ……次こそは極上の馳走を喰わせてやろう。


 ***


「あれ?この辺にいたんだけどな……。

「待ちくたぴれて持ち場を離れたか。無責任な兵士もいたものだ。

それなら無理に報告する必要もなかろう。


「そんなことで報告の義務が消えてなくなるわけないでしょう……ディアドラ。

やはりアナタのような規範を守れない者はこの騎士団に向いていないのではないかしら。

「おやおやこれはこれは。聖騎士サマは今日も潔癖でいらっしゃる。

「……安い挑発には乗らないわ。

「ふん……先に喧嘩を売ってきたのはそっちだろう。

「………………。

「………………。

(なんだこの空気……!)


「……そんなことよりアナタまた団長の命に背いたのね。

「命令を無視したつもりはない。分隊長と私のあいだに認識の相違があっただけのことだ。

「屁理屈ばかり並べて……

アナタが引き際をわきまえないせいで魔獣は切り札のキマイラを呼び出したのでしょう?

「ふん……あの程度の魔物が切り札だと?フェアヴァイレの餌にすらならなかったではないか。

ああ……そうだ。そんなに規範とやらが大事ならお前から団長に伝えてやってくれ。

「……いいのかしら。私に任せるということはありのままを隠さず伝えられるということよ。

「ふん……全く構わんとも。私は自分の考え方に忠実なだけだ。探られて痛い腹などない。

だがくれぐれも私の手柄……横取りはするなよ。

「………………っ!私をアナタのような人と一緒にしないで……っ!


「何の騒ぎですか~?

あら~アナベルさん。それにディアドラさんも~。

「お前たしか遊撃隊の……

「はい、ソイラです~。

お昼寝していたら大きな声が聞こえてびっくりしました~。

ダメですよ~?同じ騎士団員なんですから仲良くしましょうね~。

「なんというか……気勢の削がれるやつだな……。

「私としたことが……らしくないことをしました。

どうもアナタの相手をしていると調子が狂うわ。

機れた心にあてられるのか顔を見ただけで頭痛がするの。

「奇遇だな。私も聖騎士サマの聖人君子ぶりには頭が痛くなるほどでね。

「お、おい二人とも……。

「……誇りなき剣に真の勝利はありません。

王国騎士団に籍を置く以上そのことゆめゆめ忘れないで。

「……その誇りとやらで守るべきものが守れるならいいんだがな。

「何ですって……?

「……いいや、何でもないさ。

戦果は上げているんだ。とやかく言われる筋合いはない。


「……随分仲が悪いんだな。何かあったのか?

「いや別に。出会ったときからこの調子だよ。

もともと反りが合わないのよ。考え方が正反対すぎてね。

「そ、そうなのか……?

「……ふふっ余計な心配だったみたいですね~。

喧嘩するほど仲がいいって言いますから~。

それじゃあ私は井戸に戻ってお昼寝の続きです~。

「井戸の中で昼寝!?

「はい~。ひんやりして気持ちいいんですよ~?

ぽかぽかの日向でうとうとするのと甲乙つけがたいですね~。

「……こんなのが騎士で大丈夫なのか?この国は。

「……アナタは他人のことをとやかく言える立場じゃないでしょう。

当面アナタを戦線には送れないわ。王都の見回りをして頭を冷やしておくことね。

「誰がそんな地味な仕事を。強い魔物に出会うため私はアルドの旅に同行するつもりだ。


「はあ……ずっとこの調子だな。

ソイラ昼寝はいいのか?

「ああ そうでした~。

でも……やっぱり唸り声が怖いので井戸の中はやめておきましょうか~……。

「唸り声……?

「そうなんです~。先ほど井戸で寝ていたら地の底から響くような声が~……

「……んちょっと待て。井戸の中で唸り声だと……?

「何か気になることでもあるのか?

「……いや。気になるというのもはばかられる程度の引っかかりだが。

……少し調べたいことができた。アルド井戸まで付き合ってくれ。


 ***


「ソイラが言ってた井戸はここだな。

確かにひんやりしてるけど昼寝はしたくないなぁ。

「ふむ……。

「でも唸り声なんて聞こえないぞ。もしかしてソイラの夢だったんじゃ……

……それで調べたいことってのは何なんだ?

「なにちょっとした噂話を思い出してな。私も小耳に挟んだ程度なのだが……

日くミグランス城の地下には広大な迷宮が隠されているらしい。

「……都市伝説みたいなものか?

「私もついさっきまではそう考えていた。

まあ話半分でもいいから聞いてくれ。

王城地下の噂は話す者によって少しずつ違いがあるんだ。

やれ金銀財宝が眠っているだの恐ろしい化け物が封じられているだの……

「噂が広がるうちに尾ひれ背びれがつくのはよくあることだな。

「ああ。しかし全ての噂に共通することもある。

「共通すること……?

「なにそう難しいことではない。至ってシンプルな共通点だよ。

それはな……『王城地下は広大である』ということだ。

もしも地下空間が実在していて……もしも地下空間が実在していて……

それが城下町の方まで広がっているとしたら……?

「まさか……っ!

「当たりだ。この一箇所だけ音の反響が違ったからな。どうやら都市伝説はただの噂ではなかったようだぞ。

「本当に地下迷宮が……!?いいやまだそうと決まったわけじゃ……

「もちろんその通りだ。さあ……確かめにいくぞアルド。


 ***


「ずいぶん広そうだけど……

「仮にこれが例の地下迷宮だとすれば噂は本当だったということになる。だとすればここには……

やはり現れたな化け物め……!

「ただ者じゃないぞ……!

「これはどの上物ならば満足だろうフェアヴァイレよ!

「オオオオオオオオォォ……

「待ちなさいディアドラ!

王城の地下にこんな怪物が……?

「手を出すなよ聖騎士サマ。こいつは私の獲物だ。

感じるぞ化け物。怨念……妄執……いくつもの負の感情……

まとめて我が魔剣の糧としてくれる!


 ***


「せやあああああーッ!!

ち……っなんだこいつは……!痛みを感じないのか……?

ふふ……だがいいぞ……!それでこそ魔剣の贅にふさわしい!

「まったく……見ていられないわね。

「貴様邪魔をするなと……!

「この怪物を外に出すわけにはいかないわ。アナタは大人しく見ていることね。

はっ!

「オオオオォォ……ッ!!


「体勢を崩した……っ!

「魔剣などに頼っているから剣筋が鈍るのです。

「ふん……まぐれ当たり一つで調子に乗るな。


「喧嘩してる場合じゃないだろ!今がチャンスだ!

「好機……!

フェアヴァイレ!その者の闇……貪り尽くすがいい!

「オオォォ……ォォ…………ッ

「くく……これはいい!感じるぞ!

魔剣が目を醒ましたようだ……っ!これで二度と聖騎士サマの手など借りずに済む!

「まさかアナタ……魔剣のためにあの怪物を呼び覚ましたの……!?

「ふん……だとしたら何たというんだ。

「もしも怪物が街に解き放たれていたら!そう考えはしなかったの……!?

「……確かにそれは正論だ。返す言葉もない。

だが……私のように地を這って生きてきた者には他人を思いやる余裕などないのだ。

「………………っ。

「結果として化け物は消えた。誰も不幸になってはいない。聖騎士サマはこれでも不満なのか?

「んなの結果論でしかないわ……!

……よく分かりました。やはりアナタを野放しにするのは危険だということが。

このことは後で騎士団長に報告させてもらいますから……。


「……なあディアドラ。何もそんなに喧嘩腰にならなくても……

「私たちの関係に口出しは無用だ。理解し合うことなど永遠にかなうまい。

「………………。

「どうあれ魔剣は目を醒ました。もうここに用は……

フェアヴァイレ……?

……そうかまだ物足りないというのだな。どこまでも貪欲なやつよ。

「どうしたんだディアドラ?

「……気が変わった。

この地下迷宮……もう少しばかり調べさせてもらうとしよう。




「ここが行き止まりか……?

「そのようだが……何だこの妙な仕掛けは。どうやら扉のようだが……

む……開かんぞ。鍵がかかっているのか?

「お、おいディアドラ……罠だったらどうするんだ。もうちょっと慎重に……

 ………………………………示せ。

「誰だ……っ!?

「どうしたんだ?何か聞こえたのか?

 真実が知りたくば……力を示せ。

「真実……力……

「ディアドラ……?

「アルドには聞こえなかったのか?妙な声が真実を知りたくば力を示せと……

「いやオレには何も……

「……私だけに聞こえたということはやはりこの魔剣が鍵なのか。

ふん……どうやら覚醒させただけでは足りないらしい。

ならばこの迷宮で集めた魔物どもの魂を魔剣に喰わせてやるとしよう。

「それでどうするんだ?

「まあ待て。今から集めた魔力をフェアヴァイレに込めるところだ。

上手くいったようだ。

カを示せというからにはこれで何かが起きるはず……こいつは……!魔剣の力を試そうってのか!

さしずめ試験官といったところだな。お望み通り力を示してくれよう!

力あるものに真実の片鱗を……。

「く……っこれは……!?何かが頭に流れ込んでくる……!


……この魔奥り……膨大……力が込めら……いる。

こ……使えば……さんは一命……り留……はず……


「う……ぐあ……っ!

「ディアドラ大丈夫か!

「………………っ。

……平気だ。妙なイメージがちらついただけ…………ぐっ!

「無理をするなディアドラ!

扉は開いたんだ。一旦街に引き返してもいいんじゃないか?

「私は無理などしていな……く……っ。

「ディアドラ……!


「そこの方々!」


「あなた方がこの迷宮を発見されたのですか?ここは騎士団の管轄下に置かれることになりました。速やかに退去を……

「そんな横暴が聞けるか……っ。私は真実を……

「よかった衛兵さん。ディアドラは魔物の毒にやられたんだ。肩を貸してくれるか?

「アルド何を!

「かしこまりました。地上までお連れします!


 ***


「……余計な世話を焼いてくれたなアルド……。

「ごめん出すぎた真似だったよな。でも見てられなくって。

「ふん……まあ戻ってきてしまったものは仕方ない。

軽く休養をとりつつ次の方策を練るとしよう。

……アルド。この件に関してもはやお前は無関係ではなくなった。

そで振り合うも多生の縁というやつだ。とことん付き合ってもらうぞ。

差し当たり地下迷宮で見た妙なイメージだが……

扉め……一体私に何を伝えようとしているのだ?


 ***


助けて……!

ここ……どこなの……?

お願いよ誰か助けて……!




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