アナザーエデン 1.5章 Story1
オーガ戦役 前編
クロノス博士やマドカさんの想いのためにも彼をどうにかしてやりたいのはやまやまなんだが……。
どこかに新たな手がかりか何かがあればいいんだが……。
「それじゃがのアルド?古戦場跡でなにやら異変が起こっているという話じゃ。
何もない荒れ地じゃが近頃どこからか妙な物音やら叫び声やらが聞こえるらしい。
ぼんやりとしたあやしい影がふいにいくつも宙に浮かんだり消えたりもするそうじゃぞ。
「うむ東の暗黒大陸じゃ。もう何千年も昔の話になるが激しい闘いがあったそうでな。
倒れた魔物の血が河のように大地を流れ……あまたの骸が今も地中深くに眠っておるというが……。
hさあ……のんびりしてるヒマはないわよ。
行こうみんな。オレ達の新たな旅の始まりだ!
story
ふざけるな!この森だってもともとは俺達が……
なんだこの声は?
……ル……ドナ……ギルド……ナ……
俺を呼んでいたのはおまえか……?何者だおまえ?
魔獣の王となる16年間の憎しみの生き方を捨てて別の新たな道を歩んで……!
いったいなんの話だ?おまえは……?
…………
……
あれは……蛇頭メズキータ。ということはここは……蛇骨島か?
「ねえちょっと……!そこにいるのはもしかして……?」
兄さんもこの世界に戻って来られたんだ……。ああ……よかった!
ほんとに……ほんとによかった……!
バカな!アルテナは……妹はまだほんのちっちゃな子供のはずだぞ!?
兄さんこそその姿は……?まるで昔に戻ったような……。
あの娘は魔獣王としての時を生き直せとか妙なことを言っていたが……。
ああフィーネね!やっぱりフィーネだったんだ。
きっとフィーネが無意識のうちにジオの力であたし達を救ってくれたんだ。
ありがとうフィーネ。兄さんを救ってくれて……。あたし達を許してくれて……。
兄さんの方は魔獣王とは別の道を生きられるよう出会った当時の状態で蘇らせてくれたのかも……。
でもこうしてまた若い頃の兄さんに会えるなんて……なんだか不思議な感じ!
よくわからないが……俺の方こそまさか成長したおまえに会うことになるとは……!
ともかく……フィーネというのか?あの娘が俺に人生を生き直せと言ったのはほんとだったのか。
あの子……そういう子だから。
いつか兄さんにもちゃんと紹介してあげる。
よし。そういうことなら俺は俺のやり方で精一杯生きてやる。
この星の夢の1頁にしかと刻みつけてやろう。いつまでも永く……どこまでもう深く……!
この俺……魔獣ギルドナのもうひとつの生き様を!
AD300年 暗黒大陸
「現在魔獣城の南南東を航行中。間もなく古戦場跡の上空に到達するぞ。どうするアルド?
「了解した。では降下準備に入る。
***
なにせ騒がしいのは亡者たちの呻き声だからな。
打ち捨てられた武具が朽ち亡骸が風化しようとも遺された無念だけは消えぬものだ。
魔剣と共に生きてきた私は少々そういったものに対して鋭敏になっていてな。
ここは数千年前の戦争ですっかり荒廃してしまって滅多に人も足を踏み入れない禁忌の地となったはず。
それがどうして最近になって急に騒がれ出したのかしら……。
hでもディアドラさんの話を聞くに一筋縄ではいかなそうよ。
亡者の呻き声……だったかしら。合成人間の私にはちっともピンとこないけれど。
……まあ気のせいだよな。
『弟よ……いったいどこへ……
……いかんな。私は部隊を預かる身。私情など挟むわけには……』
***
『大切な指輪がない……この戦いから戻ったらあいつに渡すつもりだったのに……。
……転んだときに落としてしまったのだろうか。たしか大きな剣の近くだったが……。』
「」
『その指輪は!ありがとうこれで思い残すことはない……』
***
『兄さん……いったいどこへ……』
「お兄さんを探してるのか?オレでよければ手伝うよ。」
『本当ですか……!ありがとうございます。
兄はきっと近くにいます。少しの間お供させてください。」
『おお無事だったのだな!
旅のお方よ世話をかけましたな。これで安心して戦うことが……』
『本当にありがとうございました。ようやく僕も兄と同じ戦場へ……』
***
製造元であるKMS社に早急な霊体センサーの追加導入を打診しナクテハナリマセン。
奴らの声はなくなるどころかむしろ強くなる一方だ。
***
『あなたたちもこの戦場に?怪我をしていませんか?私は衛生兵なのですが……。
今も助けを求める声があちこちから……わたしと一緒に怪我をしている仲間を探していただけませんか?』
『わたしの出番ですね。今治療いたします。』
『助かった……ありがとう。自分は戦線に復帰するから隊長によろしく伝えてくれ。』
『隊長残るはあなただけです。最後の治療をいたしましょう。』
『隊員たちを救ってくれたのだね。ありがとうこれで思い残すことは……』
『おかげ様で助かりました。わたしも皆さんのところへ……』
**
しかし亡者とはいっても怨霊のようなものではなく純粋に無念を残した者たちなのね。
このぶんだと祈りの聖剣の出番はなさそうだわ。
魔獣のみんな細心の注意を……ってとても用心してたよ。アナベルさん本当に強いんだね。
古戦場跡の規模から考えるとここは五合目……半分くらいのはずよ。体力に気をつけて進みましょうね。
***
『砲弾を運ぶ輸送兵がこちらに向かっているはずなのだがいつになったら到着するのだ……。』
『ここまでか……しかしこの砲弾だけは何としても砲兵に届けなくては……。
頼むこの先にいる砲兵にこの砲弾を……』
「……この大砲まだちゃんと機能してたのか……!
でもおかげで瓦篠が壊れて先へ進めるようになったぞ。」
『私の役割は済んだ。オーガ族のやつらめ……今こそ……』
『この先に物資を届けたいんだが瓦篠が邪魔で進めないんだ……。』
『瓦疎が消えた!これで前線に物資を届けることができるぞ!お前たち待ってろよ……!』
***
……この地で起きた争いは止められなかったのかしら。
hそうね……リィカは人と共に歩む者として。私は人に敵対する者として。
hええ。だから争いのすべてが止められないということはないはずよ。
よし、それじゃあ行くか。もう少しで奥まで辿り着けそうだから頑張ろう。
**
『敵ながら手の込んだ呪術障壁だな……破邪光の珠があれば解呪できそうだが。』
『おおそれは破邪光の珠!どれひとつこの呪術を解いてみせよう。
これで我が部隊は敵軍へ攻め入れる……君たちには礼を言わなくてはね。
ただこの先からは不穏な気配を感じる。くれぐれも気をつけてくれたまえ……』
***
『ここはまさに決戦の地!三千年以上も昔のあの日確かにこの地で我らは……!
いる!彼奴らは今もここにいる!感じる……彼奴らの血と肉を!はるかに遠き時の彼岸に……!
くッ……!?いったい何が起こってるんだ!?オーガベイン……!?
『あれぞまさしく我らが拠点安住の大牙城……オーガ砦よ!
武器装備品等ヨリ砦と同時代の戦闘部隊と推定サレマス。
『きさまは……雷心王!!
聖剣パルジファルが……!?これはどうしたことか?
「おい!なんだおまえ達は!?どこから降って湧いて出てきやがった!?
h降って湧いたのはこちらではなくて間違いなくそちらの方じゃないかしら?
いくらなんでもそんなたわけた話があるものか!
「おいおいちょっと待て小僧!今なんと言った?
我らオーガ族が滅ぶとかどうとか!聞き捨てならんな。ああっ?
おまえ達は間違いなく滅ぼされるんだよ。そこにいる雷心王の手によってな。
「なぁにぃ!?いい加減なことを抜かすなぁボケ!我らが人間なぁんぞに敗れるはずがなぁい!
たぁわけたデタラメをほざいておぅるとただではぁすまさぁんぞ!こおてんぱんにぶちのめえしてやる!
「バフッバフッ!
『バカめが聞くがいい。オーガ族は敗北し絶滅した……。それはすでに歴史なのだ。
そしてオーガ族の心火が聖剣に取り憑き誕生したのが我らオーガベインだ。
「なんだなんだそのイカレた剣は?ハッ!オーガベインだと?
その剣に取り憑いた情けない怨念が我らオーガ族の成れの果てだあ?
ハッハァ!笑わあせるなよ小僧。そんなあヨタ話誰が信じるかぁ。
「我らぁオーガ族を負け犬の遠吠ええ如きと一緒にいするとは笑止い千万っ!
「バフーバフッ!バフフーッ!
『よかろう……。ならば思い知らせてくれるわ。
三千年前のあの時、我らはしかと誓ったのだ……。
生きとし生けるあらゆるものを斬り裂き滅ぼさんとな!
たとえそれが在りし日の我ら自身であろうと……!覚悟はよいかオーガどもよ!
「ハッハァッ!無敵ぃのオーガドギーがぁいるかぎり俺たちに負けはなぁい!
「バフッ!バフッ!
「こいつに勝てる人間なんかいやしねえ!
ちょっとばかし酒に弱いのが玉に瑕だがなぁ!
「ンバフゥ……ンバフゥ……」
「なぁにぃ!?酒ぇを浴びて俺たちのお可愛いオーガドギーが眠っちまったぁ!
「こいつはいちど眠るとちょっとやそっとじや起きねえんだ!いま攻撃されたらまずいぞ!?
「バカなぁ!無敵いのオーガドギーがやられちまっただとぉ!?
「どどどどうするんだ!?こりゃえらいことになっちまったぁ!
「ぬぅがぁああ……!!我らがここまで追おい詰めらぁれるとは……!
「うぐぐぐッ!お、おのれ人間ども……!
うぎゃあーーッ!!
『きさま……オーガの王……オーガゼノン!
しかし妙な話をしていたなおまえ達。ここが三千年後の未来だと……?いったい何がどうなっている?
それにおまえの佩くオーガベインとやらは………
むッ!?
『オーガゼノン……!ついに三千年の時が溶ける……螺旋律の祈りが解ける……!
よかろう。今日のところはこれまでだ。
とことん叩きのめしてくれるからその日が来るのを楽しみに待っているがいい!
今がいつの時代であろうと人間どもをこの地上にのさばらせてはおかぬわ!
あの結界はちょっと厄介でな。あれを破る手立てがいまだにつかめていないのだ。
『かつて我ら自身が用いていた呪法であろうが今の我らにはもう手も足も出ぬぞ。
だがそのどこかで聞いた話ともだいぶ毛色が違いそうじゃないか。
ミグランス王も今はそこに滞在しておりますのでどうか一度王に会ってお話を……。
「王!しかしあやしげな魔剣を佩く者などと同行してはたして大丈夫なのかどうか……!
それにこの者達あまりに奇態な……!何が起こるかわかったものではありませぬ!
周辺に同じようにこの時代に跳んできてわけもわからずうろたえている仲間も大勢いよう。
その者達を集めて野営地を設立するのだ。
「王!しかし……!
『雷心王我らとおまえとの因縁はひとまず置いておくとしよう。
アルドに力を貸すと誓ったこともあるが……。
なによりかつての我らオーガ族と今の我らとどちらが上か勝負してみたくてたまらなくなったのでな!
「しょ、承知しました。では我らこの地で準備を整えてお待ちしておりますので。
どうかくれぐれもご油断なく!
***
いやたいしたものだ……。こんな大きな街はこれまで一度も目にしたことはないぞ。
三千年という歳月で人間の世界というものはここまで進歩するのだな……。
***
「ああそなた達は……!
残念だがミグランス王ならおられぬぞ。城の様子を見て来るとふらりと出て行かれてしまった。
***
連中を率いる魔獣王というヤツがこいつがまた強敵で……
その魔獣王と最後の死闘を繰り広げたのがまさにこの場所です。
強い敵がいるというのはいつでもよいものだが……
しかし三千年か……余の時代にはこのように高く堅固な城など築きようもなかった。
だがどれだけ文明が発達してどれだけ立派な城や強い軍隊をもってしても戦は止められぬのだな。
はたして余も余の時代にこの聖なる剣でいつ平和な世界を築くことができるやら……
なにやらまた込み入った話になっているようだなアルド。
***
では本当にあなたがオーガ族を討ち滅ぼしたという伝説の雷心王その人なのか!?
三千年という時を超えて今の時代に現れたと……!しかし本当にそんなことが……?
余の聖剣とオーガベインとやらとさらにオーガ族らが時を超えて互いに呼応したようなのだが……。
さもなくば歴史が大きく書き換わってしまうことになる。
その変化の波はいずれ現代にも及んで今あるこの世界を大きく変化させることになるでしょう。
そのような事態だけはなんとしても避けねばならない。
憶えていないのか?その……聖剣に取り憑いた時の状況とか……。
『さあてなにしろ何千年も前……あまりに遣い昔の話だからな。
我らが王の聖剣に取り憑いたというのはまず間違いないところなのだが……。
どのようなものであろうとともかく手がかりが必要でござるからな。
***
第28章
鏡よ鏡いにしえの真実を語れ
古戦場跡で巨大な次元の裂け目が生じ太古のオーガ砦が出現!そこにはオーガ族と戦う伝説の雷心王の姿が。雷心王とミグランス王の二振りの聖剣そして魔剣オーガベインについて真実の鏡は何を語るのか?
***
パルジファルの聖剣……その真実を欲するか。
よかろう我が所有者……ミグランスを統治する者よ。
聖剣はその頃世界を統べていたタイタン族によって原石の貴石を材料にして作られたのだ。
タイタン族が姿を消した後遺された聖剣は人間の手によって発見され今日まで覇王の剣として受け継がれてきた。
今より3300年前人間とオーガ族の間で戦争が勃起した。世にいうオーガ戦役だ。
そしてオーガ族は聖剣パルシファルを凪いた雷心王によって討ち滅ぼされた。
その最後の戦いで聖剣はオーガの魂を宿し。
魔剣オーガベインとして生まれ変わったのだ……。
そしてそれがアルド……そなたの佩くオーガベインだと?
聖剣パルジファルにオーガ族の憎しみ怨念が取り憑いてオーガベインになったって……。
……真実の鏡たる我とて虚実定まらざれば見えぬものもある。
されど……オーガ族が聖剣に怖れを抱いていたのは間違いなきことだ。
いにしえのタイタン族の剣は彼らにとっても未知の脅威であった。
そこで彼らは聖剣に抗うべく幻の精霊の武具を探し求めたが……。
精霊の力をエレメンタルにより統合すれば究極の力となる。
だが今となってはそれも実現することは叶わぬ……。
どうすれば元の時代に戻ることができる?
オーガ族と決着をつけ聖剣と魔剣とオーガとの因果を解くがよい。
さすればすべてはおのずから収まるべきところに収まるであろう。
コチラノケイ酸系知的生命体ヨリ新タナ情報を提供シテもらえると非常に助かりマスノデ!
……見えぬ。虚実の不鮮明はかの砦を中心に発生しているようだ。
「王!なにやら妙な報告が入って来ております。
「それが巨大な魔獣が出現したとのことで……。
急ぎお知らせした方がよいかと存じまして。
「はっ。あまたの翼を有してさながら奇怪な黒き天使のようであると……。
「それが蛇骨島なのです。
先の異変のカオス・プリズマとやらとの接触で異常進化したものが暴れ出しているとか。
オーガ砦の方はひとまずうちの騎士達にも見張らせておく。雷心王の兵と合流させてな。
「蛇骨島は暗黒大陸の南東の沖に浮かぶ孤島です。
かなり凶暴な魔獣だという話なのでどうかお気をつけて。