アナザーエデン 1.5章 Story2
蛇骨島
「蛇骨島……面白い響きの地だ。もう準備が出来たのか?それとも別の場所へ行くのか?
行きたい場所を告げるがよい。
***
「じきに蛇骨島上空に到着するぞ。
「おい。あの岬のところに誰かいるようだぞ。
「お安い御用だ。降下するぞ。
***
わたし自身自分がどう力を使ったか憶えてないの……。
ていうか……若返ってないか!?
フィーネ……おまえの力が俺を蘇らせてくれたようだな。16年前の俺に戻して……。
魔獣王だった以前の俺は魔獣を率いてミグランス軍と闘い……そしておまえ達に敗れた。
俺の16年間の憎しみの行き着いた先が結局敗北と死でしかなかったのなら………
そうして俺とアルテナも本来ならもうこの世に存在すら許されなかったというのなら………
俺の16年は……その間俺がやって来たことはすべて過ちでしかなかったのか……?
フィーネ……おまえは俺にもう一度やり直すチャンスをくれた。
とりあえず俺からも礼を言っておく。ありがとう。
あんたもあんた自身の新しい道を見つければいい。
話したいことも聞きたいこともたくさんあるし……。タケコンブ茶がおいしいんだ!
あたしと兄は一足先に行って村のみんなに話しておくから。
でもアルテナは味に関してはちょっと……ていうかかなり渋好みだからなあ……。
h憎しみと悲しみばかりが常に争いの果てに勝ちを占めるというわけでもないわ……。
タケコンブ茶というのがドウモ気にナッテ仕方アリマセンノデ!
***
***
コニウム村
「おおッ!人間!人間だッ!さてはアルテナねーちゃんの言ってたお客さんてヤツだな。
ようこそぼくらの村コニウムに!ぼくらはおとなしいいい魔獣だから心配いらないよ。
だいじょーぶ。いきなり取って食べたりしないって!よっぽどお腹ペコペコでない限りは。テヘ。
「わしらはもともと人間との争いには反対の立場だったのじゃよ。
この小さな島でひっそりとおとなしく暮らして行ければそれでもう十分じゃしな。
いまさらこの歳で怒りや憎しみばかり抱えて生きるのもつらかろうよ。
最近あちこちで凶獣とやらが暴れておるとかいう話を聞いたが……。
なんでも魔獣が先の異変の際カオス・プリズマとやらに触れて変化したそうじゃな。
連中が災いの種となって世界にまた大きな混乱が起きねばよいのじゃが。まあもちろん俺も和平派だが魔獣と人間が仲良く暮らせる日なんていつかほんとに来るのかねえ。
人間同士魔獣同士でも腹の中を探り合いいがみ合ってる連中なんて幾らでもいるだろう?
まあ決してあきらめずに理想を追い続けるのが重要だってことはわかっちゃいるんだが……。
ギルドナさまももう人間とケンカしないって言ってるからこれからは平和になるよね。
人間だってあなた達みたく話のわかるひとがたくさんいるはずだもんね。
握手して仲良しになるってちゃんと約束すればいいんだよ。ウソついたら針千本って。
***
vやあおまえ達。相変わらずしぶとくやっているようだな。なかなかいい心掛けだ。
なにしろ俺様の大切な緊急時用のエサなのだからな。しっかり頑張ってもらわんと。
v魔獣王様のある所このヴァレスあり。おふたりがこの島にいるという知らせを受けて飛んで来たのだ。
魔獣王様が消滅するはずはないと俺は信じていたからな。ちょっと若返られはしたがまあそれも良い。
v何をおっしゃる魔獣王様!
魔獣王様はお生まれになったその時から亡くなられる瞬間まで常に変わらず魔獣王様です。
ああ魔獣王様から獣性がなくなったということでいっそ魔王様とお呼びしましょうか。
魔王様……。うむ!実に良い響きだ。山より高く海より深い……そんなあなた様のイメージにぴったりです。
よし!これからは魔獣はおろか全魔物の王を目指してもらわねば!
魔王様わいと一緒にてっぺん取ったりましょうやぁぁぁぁ!うわはははは!
vは!?いや俺としたことが。失礼しました魔王様。
いい加減その暑っくるしい戦闘形態解きなさいったらヴァレスちゃん。
vわかった。わかったからミュルス。ちゃん付けはやめろといつも言ってるだろうが。
どれ……。よっと……。
それからいつぞやは手荒な真似をしてすみませんでしたねフィーネお嬢さん。
職務とはいえまことにこころが痛んでやみません……。どうかお許し下さい。
まとう姿仮面に応ジテ人格を変貌サセル超上級エチケットに間違いアリマセンデス!
hそれ限りなく嘘くさいわよリイカ。またヘンな自己啓発本かなにかチェックしたわね?
そのカオス・プリズマに接触した魔獣が変化して凶暴化しているらしいが……。
あんたとアルテナが無事なのは確認できたからそっちの方をどうにかしたいと思うんだが……。
実際に会えるかどうかはわからない。だがうまく行けば竜神の加護を受け新たな力が得られるかもしれないぞ。
それに魔獣王であった俺を倒したというアルド達の力が実際にどれはどのものなのか………
一度この目でちゃんと見ておきたいしな。
だが伝説の竜神に会いに蛇肝ダマクに行く前にいったん魔獣城に寄ろう。
ギルドナ城の書庫に竜神とダマクについて記された書物があったはずだ。そいつを取って来たい。
「兄さん、フィーネ、アルドみんな気をつけて。ダマクは危険だから用心して。
「コニウムはこの私に任せて蛇肝ダマクにて竜神の加護を!
「あなたフィーネでしょ?
「わたし達みんなあなたに会いたかったの!アルテナから話は聞いてるよ。
女の子キノコウメが大好きなんだって?めちゃくちゃ趣味シブいよね!
「申し訳ないけどこの島にはキノコウメは生えてないの。でも安心して!
その代わりもっと超シブいタケコンブやラッキョウマツならたくさん生えてるから。
そうだ!これから一緒に採りに行かない?
「いいじゃない?ねね!?もう人間と魔獣との戦いは終わったんだし。
「戦いはまだ終わってないよ!
「えッ!?
「て婆ちゃんが言ってた。
「ちょっとなんなのよチビ!横から余計な口出ししないでよ。
「おまえ達には関係ない。
あの~ギルドナさま。ちょっとその~大事なお願いがあるんですが……。
「その~村にある魔ジューシー野菜を積んだ荷車にラッキョウマツの実が積んであるんです。
そいつを集会所にいる婆ちゃんに届けてもらいたいんです。
ぼくが勝手に持ってこうとするとまたイタズラしてるのかとアペトスのヤツにどやされちゃうんで。
なんでも婆ちゃんがギルドナさまに話があるらしくって。
「はい。番人がぼくの爺ちゃんで婆ちゃんはその奥さんです。
わかった。お婆の話というのを聞いてみよう。
俺達も魔獣城の書庫へ行くところだったんだ。ちょうど良い。
アルドついでだ。城へ行く前にお婆に会っておこう。
何か書庫の番人に用でもあるのかもしれない。
「あ~んもう!仕方ないかあギルドナさまの用事じゃ。
「どうかよろしくお願いします!みんなアペトスが悪いんです。アペトスがっ!
***
「ああギルドナ様!これはわざわざ……。あの子には自分で取ってくるよう言ったのに。
「実は私の連れ合いの件でして。
「はい……。どうかあの人にもう職務から解放されてこちらに移ってくるよう言ってもらえないでしょうか?
ギルドナ様からそう言ってもらえたらさすがにあの人も首を縦に振るんじゃないかと。
ほんとに頑固な人で私達がなんと言おうとちっとも耳を貸そうとしないんです。
魔獣城には暴れることしか頭にないごろつきばかりがうろついているそうだしな。
わかった。お爺には俺から話をしてみよう。
「ああ、ありがとうございますギルドナ様!どうかよろしくお願いします。
玉座の奥に秘密の入り口がある。そこから書庫のある隠された階層に降りられるんだ。
「ああ、ギルドナ様。少々お待ちを。特製ラッキョウマツ・ジュースをあの人に……。
持って来ていただいた実で今すぐ用意しますので。
魔王城
「魔獣王様……いやギルドナ様!噂は聞いておりましたが本当に若い頃に戻られて……!
しかしともかくご健勝でなによりですわい。
そんなことよりコニウムのお婆からこいつを預かってきた。
「これは婆の特製ジュース……。ギルドナ様にお使いを頼むとはなんと罰当たりな!
それよりお爺。もうおまえもここを離れて蛇骨島に行ったらどうだ?
俺の率いていた魔獣軍もとっくに敗れ散り散りになったというし俺自身かつての俺とは別の道を探している。
おまえがいつまでもひとりここに残って書庫の番人を続けている意味もないだろう。
「ギルドナ様……わしの一族は代々王家に仕えこの番人の役を仰せつかってまいりました。
失礼ながら今のギルドナ様はこの16年間の道のりを捨てられると仰るがわしらはそうもいきませぬ。
そう簡単に生き方を変えるわけにはいきませんでなぁ……。たとえギルドナ様のご命令といえども。
コニウムでお爺を待ってる者がいるのでな。
「御意!そういうことであれば遠慮なく参られよギルドナ様!
こちらも務めなので手加減はしませぬぞ!
***
>思い出しますなぁ。ギルドナ様がまだ幼き頃書庫へ忍び込んだあの日のこと……
この爺も書架を守る者として全力でお相手いたしましたですじゃ。あの日のように手加減はいたしませんぞ!
>むう……ここまでか。どうやら今回もまたこの爺の完敗のようですな。
あの日戦いの後で聞いたギルドナ様が書庫に忍び込んだ理由……今でも覚えていますぞ。
日く本気のお爺と戦ってみたかった……昔から貴方は変わりませぬなぁ。
***
「ふう、わしの敗けですな……。わかりましたギルドナ様。わしの意地もこれまでですわい。
あなた様からお役御免の言葉をいただけたことですし……もうそれで良しとしましょう。
ここいらが潮時でしょう……。わしもコニウムヘ連れ合いや孫のところへ行くことにします。
「ギルドナ様。魔獣のなかにはあなた様のことを裏切り者扱いして恨んでいる者もおります。
どうかくれぐれもお気をつけて。
「さてお探しの書というのはこいつですな?どうぞお持ちください。
ガバラギの奥から蛇肝ダマクに降りられるんだ。うまくいけばそこで竜神に会えるはずだ。
蛇肝ダマク
***
いにしえの竜神の書によるとこいつはその心臓が化石化したものだそうだ。
俺やアルテナが蛇骨島で再生したのもその竜に呼ばれたのかもしれない……。
そしてこいつがその竜の心臓でござると……?いやはやとんでもない話でござるな!
さておまえならどうだろうなアルド?
いにしえの竜神よ……聞こえるかオレの声が?
――ドクンッ
”そこに……おまえが佩くのはオーガベイン……。世界を破滅に導く呪われた魔剣か?
コラペルで会った時から気になってはいたのだが……やはりそうだったか!
”我は太古の竜神の仮の姿……。そして闇に仇なすかたえに立つ者なり。
世界に対する大いなる災いはいまだ芽の内にこれを摘んでおかずばなるまい。
くッ……!?
”覚悟はよいか魔の剣を佩く者よ。我が試練に耐えられるや否や!?
ほう魔剣に認められたことは偶然ではないようだな。
しかし我が試練がこの程度とは思わぬことだ。
……よかろう遊びはこれまでだ。汝の全身全霊を以って打ってくるがよい。
「よくぞ我が試練に打ち勝った。しからばそなたに授けよう我が力の一部を……!
そなたを信じ我らが希望を託そう。たとえそなたが魔の剣を佩く者であるにしても……。
こ、これは……!?
<竜神の力を吸収してアルドのクラスが解放された!>
「アルドと申したか。聞くがいい。
世界には呪われた魔の剣を退け大いなる災いを防がんとする者達が存在する。
彼らを探し出しその力を授かるのだ。この星の未来のために……。
おい!ちょっと待ってくれ!
オーガベインは主を選ぶという話を間いたことがあるが……。
実際オレはただの人間じゃないんだ。元々は猫なんだよ。キロスっていう……。
それでその時フィーネの力でエデンという男の子に生まれ変わることになったんだよ。
そういう意味ではオレもまああんたやアルテナと似たようなものかもしれないな。
おまえはこの先この星の様々な力を吸収してどんどん強く大きくなって行くのかもな。
まあいい……。いずれおまえ自身で答えを見つけ出せばいいさアルド。
しかしこの星の未来か……。フッ……そんなことこれまで考えてみたこともなかったよ。
story
「うぎゃーッ!」
カオス・プリズマによって異常進化したらしい!
――
***
まさかアンギラスとは……!アルテナ……。
しかしムリヤリ切り離された獣の本能が本体を求めるのか?
いずれにせよ面倒なことになった……。
ヴァレス。おまえは村を守れ。他の凶獣がまた現れないとも限らない。
アンギラスの棲家は島の奥蛇頭メスキータの方らしい。蛇首イゴマを抜けたその先だ。
そこで遠くから凶獣の姿を見た者がいるそうだ。
なんとしてもアルテナを助け出すぞ!
残念だが書物が足りぬな……。
気ばかり焦るのもわかるがまずは表にある青い扉の中で書物をあつめるがよい。
これからはこれまで以上に扉の中を調べなきゃいけないと思うけど……
ゆっくりでいいから……頑張ってね。