アナザーエデン 1.5章 Story2
蛇骨島
「蛇骨島……面白い響きの地だ。もう準備が出来たのか?それとも別の場所へ行くのか?
行きたい場所を告げるがよい。
***
「じきに蛇骨島上空に到着するぞ。
よし……それじゃどこかに降りるとしようか。
「おい。あの岬のところに誰かいるようだぞ。
岬……?ああ、あそこね。
うん?あれは……?合成鬼竜あそこに着けられるか?
「お安い御用だ。降下するぞ。
***
アルテナ!
フィーネ!
ああよかった! 大丈夫アルテナ?なんともない?
ええ。あたしなら大丈夫。この通りピンピンしてるわ。
よかった。あなたにまた会えて……ほんとにほんとに嬉しい!
あたしもよ!すべてあなたのおかげなんでしょ?ありがとうフィーネ!
ううんそんなこと……。無意識の内にジオ・プリズマの力を開放しちゃったみたいで……。
わたし自身自分がどう力を使ったか憶えてないの……。
けど魔獣王あんたの方はなんだかちょっと雰囲気が変わったような……?
ていうか……若返ってないか!?
アルテナから大体の話は聞いた。おまえ達がアルドにフィーネか。
フィーネ……おまえの力が俺を蘇らせてくれたようだな。16年前の俺に戻して……。
魔獣王だった以前の俺は魔獣を率いてミグランス軍と闘い……そしておまえ達に敗れた。
俺の16年間の憎しみの行き着いた先が結局敗北と死でしかなかったのなら………
そうして俺とアルテナも本来ならもうこの世に存在すら許されなかったというのなら………
俺の16年は……その間俺がやって来たことはすべて過ちでしかなかったのか……?
フィーネ……おまえは俺にもう一度やり直すチャンスをくれた。
とりあえず俺からも礼を言っておく。ありがとう。
いえそんな……!
今はまだわからぬが……だが俺はこれまでとは違う新たな道を探しながら生きるつもりだ。
ああ……そうだな。アルテナやフィーネにいろいろと教えられたしな。
あんたもあんた自身の新しい道を見つければいい。
ねえフィーネ。この近くに小さな村があるの。とりあえずそこでひと休みして。
話したいことも聞きたいこともたくさんあるし……。タケコンブ茶がおいしいんだ!
あたしと兄は一足先に行って村のみんなに話しておくから。
うん!わたしもアルテナに聞いてもらいたいことがいっぱいあるんだ。
でもアルテナは味に関してはちょっと……ていうかかなり渋好みだからなあ……。
さあそれじゃコニウム村に戻りましょ兄さん。
ああそうするか。
しかしよかったでござるな。アルテナとギルドナ……ふたりとも元気そうな様子で。
あのふたりが人間に争いをしかけるなんてことも今後はもう二度とないでしょうしね。
うん!よかった……ほんとに。
h憎しみと悲しみばかりが常に争いの果てに勝ちを占めるというわけでもないわ……。
デハ早速コノ島ノ村というのに行ってみマショウ!
タケコンブ茶というのがドウモ気にナッテ仕方アリマセンノデ!
そうだな。それじゃあ早速行ってみるか。
***
***
コニウム村
「おおッ!人間!人間だッ!さてはアルテナねーちゃんの言ってたお客さんてヤツだな。
ようこそぼくらの村コニウムに!ぼくらはおとなしいいい魔獣だから心配いらないよ。
だいじょーぶ。いきなり取って食べたりしないって!よっぽどお腹ペコペコでない限りは。テヘ。
「わしらはもともと人間との争いには反対の立場だったのじゃよ。
この小さな島でひっそりとおとなしく暮らして行ければそれでもう十分じゃしな。
いまさらこの歳で怒りや憎しみばかり抱えて生きるのもつらかろうよ。
最近あちこちで凶獣とやらが暴れておるとかいう話を聞いたが……。
なんでも魔獣が先の異変の際カオス・プリズマとやらに触れて変化したそうじゃな。
連中が災いの種となって世界にまた大きな混乱が起きねばよいのじゃが。まあもちろん俺も和平派だが魔獣と人間が仲良く暮らせる日なんていつかほんとに来るのかねえ。
人間同士魔獣同士でも腹の中を探り合いいがみ合ってる連中なんて幾らでもいるだろう?
まあ決してあきらめずに理想を追い続けるのが重要だってことはわかっちゃいるんだが……。
ギルドナさまももう人間とケンカしないって言ってるからこれからは平和になるよね。
人間だってあなた達みたく話のわかるひとがたくさんいるはずだもんね。
握手して仲良しになるってちゃんと約束すればいいんだよ。ウソついたら針千本って。
***
あ、来たわね!いらっしゃいフィーネ。迷わなかった?
うん!大丈夫だったよアルテナ。って……あなたは!?
vやあおまえ達。相変わらずしぶとくやっているようだな。なかなかいい心掛けだ。
なにしろ俺様の大切な緊急時用のエサなのだからな。しっかり頑張ってもらわんと。
ヴァレス!おまえもここに来てたのか。
v魔獣王様のある所このヴァレスあり。おふたりがこの島にいるという知らせを受けて飛んで来たのだ。
魔獣王様が消滅するはずはないと俺は信じていたからな。ちょっと若返られはしたがまあそれも良い。
ヴァレス。だから俺はもう魔獣王ではない。ギルドナでいい。
v何をおっしゃる魔獣王様!
魔獣王様はお生まれになったその時から亡くなられる瞬間まで常に変わらず魔獣王様です。
ああ魔獣王様から獣性がなくなったということでいっそ魔王様とお呼びしましょうか。
魔王様……。うむ!実に良い響きだ。山より高く海より深い……そんなあなた様のイメージにぴったりです。
よし!これからは魔獣はおろか全魔物の王を目指してもらわねば!
魔王様わいと一緒にてっぺん取ったりましょうやぁぁぁぁ!うわはははは!
ヴァレス……。いいからちょっと落ち着け。
vは!?いや俺としたことが。失礼しました魔王様。
ギルドナ様。兄がいつも至らずに……誠に申し訳ありません!ほんとにもうこんな兄で……!
えーっと、ちょっと待って!兄って……このヴァレスが!?あなたヴァルアスの妹なの!?
ええそうよ。私達兄妹なの。双子の。
はい?
ほらいつまでもそんなカッコしてないで!
いい加減その暑っくるしい戦闘形態解きなさいったらヴァレスちゃん。
vわかった。わかったからミュルス。ちゃん付けはやめろといつも言ってるだろうが。
どれ……。よっと……。
げげッ!お、おまえが……ヴァレス……!?ウ、ウソだろ……。
ほう!これはこれは……。あのカブトは本来の姿ではなかったというわけでござるか。
ウソッ……!
いかにも。私がヴァレスです。
ミュルスだよ~。
…………。
これが自分の普段の姿ですが……どうかしましたか?そもそもカブトじゃありませんし!失敬な!
それからいつぞやは手荒な真似をしてすみませんでしたねフィーネお嬢さん。
職務とはいえまことにこころが痛んでやみません……。どうかお許し下さい。
………!え?あ……は、はい。なんの問題もありませんです。すべてお水に流しましょう。
ヴァ、ヴァレス……おまえなんだか口調が……?
ヴァレスちゃんは変身すると性格が変わるタイプなの。ねーヴァレスちゃん?
自分は別段いつもと変わらないつもりなんですが。いやわからないものですね。
デュアル・ペルソナ……トゥー・フェイス!
まとう姿仮面に応ジテ人格を変貌サセル超上級エチケットに間違いアリマセンデス!
hそれ限りなく嘘くさいわよリイカ。またヘンな自己啓発本かなにかチェックしたわね?
ところで魔王様。例の凶獣とやらの件ですが……。
時の暗闇というヤツが降った際に異常化したプリズマの一部があちこちに落ちたようだな。
そのカオス・プリズマに接触した魔獣が変化して凶暴化しているらしいが……。
なあ。実はオレ達もその凶獣っていうヤツが気になって調べに来たんだ。
あんたとアルテナが無事なのは確認できたからそっちの方をどうにかしたいと思うんだが……。
そうか……。ふむ。なあアルドおまえその前に俺と一緒にひとつ試してみないか?
試すって何を?
この島の伝説のいにしえの竜神に会いに行くんだ。
実際に会えるかどうかはわからない。だがうまく行けば竜神の加護を受け新たな力が得られるかもしれないぞ。
ほう伝説の竜神でござるか。なにやら面白そうな話でござるな!
竜神の加護か……。
兄さんでもあの洞窟かなり危険なんじゃ……?
アルド達の腕なら大丈夫だろう。
それに魔獣王であった俺を倒したというアルド達の力が実際にどれはどのものなのか………
一度この目でちゃんと見ておきたいしな。
わかった。オレの方は構わない。凶獣とかいうヤツを調べる前に自分の力を試してみるのもいいだろ。
よし決まりだな!
だが伝説の竜神に会いに蛇肝ダマクに行く前にいったん魔獣城に寄ろう。
ギルドナ城の書庫に竜神とダマクについて記された書物があったはずだ。そいつを取って来たい。
魔王様。自分も一緒に……。
いや凶獣のこともあるしおまえは村で待機していろ。
は。承知しました。ではお気をつけて。
ああ。行ってくる。さあ行こうアルド。みんな。
「兄さん、フィーネ、アルドみんな気をつけて。ダマクは危険だから用心して。
「コニウムはこの私に任せて蛇肝ダマクにて竜神の加護を!
「あなたフィーネでしょ?
え?ええそうだけど……?あなた達は?
「わたし達みんなあなたに会いたかったの!アルテナから話は聞いてるよ。
女の子キノコウメが大好きなんだって?めちゃくちゃ趣味シブいよね!
えッ!?ええッ……?キ、キノコウメ!?
「申し訳ないけどこの島にはキノコウメは生えてないの。でも安心して!
その代わりもっと超シブいタケコンブやラッキョウマツならたくさん生えてるから。
そうだ!これから一緒に採りに行かない?
え?えええ……?これから?タケコンブにララッキョウマツ!?
「いいじゃない?ねね!?もう人間と魔獣との戦いは終わったんだし。
「戦いはまだ終わってないよ!
「えッ!?
「て婆ちゃんが言ってた。
「ちょっとなんなのよチビ!横から余計な口出ししないでよ。
「おまえ達には関係ない。
あの~ギルドナさま。ちょっとその~大事なお願いがあるんですが……。
俺にか?なんだ願いというのは?
「その~村にある魔ジューシー野菜を積んだ荷車にラッキョウマツの実が積んであるんです。
そいつを集会所にいる婆ちゃんに届けてもらいたいんです。
ぼくが勝手に持ってこうとするとまたイタズラしてるのかとアペトスのヤツにどやされちゃうんで。
なんでも婆ちゃんがギルドナさまに話があるらしくって。
おまえの婆ちゃんというのは確か魔獣城の書庫の……。
「はい。番人がぼくの爺ちゃんで婆ちゃんはその奥さんです。
ふむ……。なんだろう?ラッキョウマツの実をおまえの婆ちゃんに届ければいいんだな?
わかった。お婆の話というのを聞いてみよう。
俺達も魔獣城の書庫へ行くところだったんだ。ちょうど良い。
アルドついでだ。城へ行く前にお婆に会っておこう。
何か書庫の番人に用でもあるのかもしれない。
ああ構わないよ。
そんなわけだからみんなゴメンね!また今度ね。
「あ~んもう!仕方ないかあギルドナさまの用事じゃ。
「どうかよろしくお願いします!みんなアペトスが悪いんです。アペトスがっ!
***
小僧に頼まれてラッキョウマツを持ってきたが……。
「ああギルドナ様!これはわざわざ……。あの子には自分で取ってくるよう言ったのに。
構わん。それでなにやら俺に話があるそうだが?
「実は私の連れ合いの件でして。
うん?書庫のお爺がどうかしたのか?
「はい……。どうかあの人にもう職務から解放されてこちらに移ってくるよう言ってもらえないでしょうか?
ギルドナ様からそう言ってもらえたらさすがにあの人も首を縦に振るんじゃないかと。
ほんとに頑固な人で私達がなんと言おうとちっとも耳を貸そうとしないんです。
ふむ……。今となっては書庫の番人の任を解くのも俺がきちんとやっておくべき仕事のひとつだろう。
魔獣城には暴れることしか頭にないごろつきばかりがうろついているそうだしな。
わかった。お爺には俺から話をしてみよう。
「ああ、ありがとうございますギルドナ様!どうかよろしくお願いします。
気にするなお婆。ちょうど用事があって書庫へ行くところだったんだ。
よし。じゃあ魔獣城へ行こう。
玉座の奥に秘密の入り口がある。そこから書庫のある隠された階層に降りられるんだ。
ああわかった。
「ああ、ギルドナ様。少々お待ちを。特製ラッキョウマツ・ジュースをあの人に……。
持って来ていただいた実で今すぐ用意しますので。
魔王城
よしここだ。秘密の通路の入り口があるんだ。そこから奥に進める。
久し振りだな番人のお爺。
「魔獣王様……いやギルドナ様!噂は聞いておりましたが本当に若い頃に戻られて……!
しかしともかくご健勝でなによりですわい。
ああ。いろいろ事情があってな。それなりに俺も考えさせられて……。
そんなことよりコニウムのお婆からこいつを預かってきた。
「これは婆の特製ジュース……。ギルドナ様にお使いを頼むとはなんと罰当たりな!
気にするな。俺達もちょっと用事があってな。竜神とダマクについて記された書を取りに来たんだ。
それよりお爺。もうおまえもここを離れて蛇骨島に行ったらどうだ?
俺の率いていた魔獣軍もとっくに敗れ散り散りになったというし俺自身かつての俺とは別の道を探している。
おまえがいつまでもひとりここに残って書庫の番人を続けている意味もないだろう。
「ギルドナ様……わしの一族は代々王家に仕えこの番人の役を仰せつかってまいりました。
失礼ながら今のギルドナ様はこの16年間の道のりを捨てられると仰るがわしらはそうもいきませぬ。
そう簡単に生き方を変えるわけにはいきませんでなぁ……。たとえギルドナ様のご命令といえども。
そうか……。ならば仕方あるまい。力づくでもお爺を番人の務めから外させてもらうぞ。
コニウムでお爺を待ってる者がいるのでな。
「御意!そういうことであれば遠慮なく参られよギルドナ様!
こちらも務めなので手加減はしませぬぞ!
***
>思い出しますなぁ。ギルドナ様がまだ幼き頃書庫へ忍び込んだあの日のこと……
この爺も書架を守る者として全力でお相手いたしましたですじゃ。あの日のように手加減はいたしませんぞ!
>むう……ここまでか。どうやら今回もまたこの爺の完敗のようですな。
あの日戦いの後で聞いたギルドナ様が書庫に忍び込んだ理由……今でも覚えていますぞ。
日く本気のお爺と戦ってみたかった……昔から貴方は変わりませぬなぁ。
***
これまでだ。勝負あったようだなお爺。
「ふう、わしの敗けですな……。わかりましたギルドナ様。わしの意地もこれまでですわい。
あなた様からお役御免の言葉をいただけたことですし……もうそれで良しとしましょう。
ここいらが潮時でしょう……。わしもコニウムヘ連れ合いや孫のところへ行くことにします。
ああそれがいい。
「ギルドナ様。魔獣のなかにはあなた様のことを裏切り者扱いして恨んでいる者もおります。
どうかくれぐれもお気をつけて。
わかっている。俺なら大丈夫だ。心配するなお爺。
「さてお探しの書というのはこいつですな?どうぞお持ちください。
よし!じゃあ俺達は蛇骨島に戻り蛇背ガバラギに向かおう。
ガバラギの奥から蛇肝ダマクに降りられるんだ。うまくいけばそこで竜神に会えるはずだ。
蛇肝ダマク
よし、ここだ。秘密の入り口から奥に進める。行くぞアルド。覚悟はいいな。
ああ、オッケーだ。
***
これは……!?
この島は元々太古の巨大な竜の化石……骨であったという言い伝えがあってな。
いにしえの竜神の書によるとこいつはその心臓が化石化したものだそうだ。
俺やアルテナが蛇骨島で再生したのもその竜に呼ばれたのかもしれない……。
なんと!島全体が一匹の巨大な竜だと言うでござるか!?はるかいにしえの……?
そしてこいつがその竜の心臓でござると……?いやはやとんでもない話でござるな!
………。それでギルドナ。どうすればいいんだ?
書によると大昔聖剣を佩いた者が呼べば竜神が永い眠りより覚めて力を授けてくれたそうだ。
さておまえならどうだろうなアルド?
わかった。何かどうなるか……ともかくやってみよう。
いにしえの竜神よ……聞こえるかオレの声が?
――ドクンッ
はッ!?
な、なんだ……!?こいつは……!?
やはりアルドの呼びかけに反応したか!
”そこに……おまえが佩くのはオーガベイン……。世界を破滅に導く呪われた魔剣か?
………!?オーガベインだと!
コラペルで会った時から気になってはいたのだが……やはりそうだったか!
おまえは……?
”我は太古の竜神の仮の姿……。そして闇に仇なすかたえに立つ者なり。
世界に対する大いなる災いはいまだ芽の内にこれを摘んでおかずばなるまい。
なんだと!?それはどういう意味だ!?
くッ……!?
”覚悟はよいか魔の剣を佩く者よ。我が試練に耐えられるや否や!?
気をつけろ!来るぞアルド!
あれが竜神の遣いだとすればかなりの力を持っているに違いない。油断するなよアルド。
竜神……お前がオレとオーガペインを試そうっていうなら全力で相手になるぞ! 行こうギルドナみんな!
ほう魔剣に認められたことは偶然ではないようだな。
しかし我が試練がこの程度とは思わぬことだ。
なんだ!?足場に亀裂が……!
もたもたしている暇はなさそうだな。手早く片付けるぞ!
……よかろう遊びはこれまでだ。汝の全身全霊を以って打ってくるがよい。
「よくぞ我が試練に打ち勝った。しからばそなたに授けよう我が力の一部を……!
そなたを信じ我らが希望を託そう。たとえそなたが魔の剣を佩く者であるにしても……。
我らが希望……?いったい何の話を………
こ、これは……!?
<竜神の力を吸収してアルドのクラスが解放された!>
「アルドと申したか。聞くがいい。
世界には呪われた魔の剣を退け大いなる災いを防がんとする者達が存在する。
彼らを探し出しその力を授かるのだ。この星の未来のために……。
なんだって!?
おい!ちょっと待ってくれ!
災いを防がんとする者達?力を授かるってどういうことだ……?
面白い……。アルドおまえ思った通りただの人間ではないようだな。
オーガベインは主を選ぶという話を間いたことがあるが……。
え?ああ……そう言えばあんたは知らなかったっけ。
実際オレはただの人間じゃないんだ。元々は猫なんだよ。キロスっていう……。
ねこ?というとまさか……ニャーニャーゴロニャ~ンのあの猫か?
そのまさかだ。それが16年前にある事件というか事故に巻き込まれてしまって………
それでその時フィーネの力でエデンという男の子に生まれ変わることになったんだよ。
そういう意味ではオレもまああんたやアルテナと似たようなものかもしれないな。
なるほどそれでか……。おまえに不思議な能力が備わっているらしいのは。
おまえはこの先この星の様々な力を吸収してどんどん強く大きくなって行くのかもな。
オレが……?この星の力を……?
そうだ。だがそれが魔剣オーガペインとどう関係するというのか……。
まあいい……。いずれおまえ自身で答えを見つけ出せばいいさアルド。
しかしこの星の未来か……。フッ……そんなことこれまで考えてみたこともなかったよ。
さあそれじゃ竜神の力は手に入れたんだし。村に帰りましよ。
うん!きっとアルテナが待ちわびてるよ。おいしいタケコンブ茶いれて。
ああ……そうだな。それじゃあこの異界から元いた場所に戻るとしようか。
story
「うぎゃーッ!」
な、なんだ今の叫びは!?
向こうだ!
あれは凶獣!?黒い天使……まさか……!?
間違いない。アルテナから分離した凶獣アンギラスだ!
カオス・プリズマによって異常進化したらしい!
兄さん!
アルテナ!大丈夫かアルテナ!?待ってろ。今行く!
ぐあッ……!
ヴァレス!
きゃあッ!!
しまった!アルテナ!?
――
ヴァレス!?
***
ううッ……!ま……魔王様……。申し訳ありません……。
大丈夫だ。心配するなヴァレス。
まさかアンギラスとは……!アルテナ……。
くそッ!オレ達がついていれば………!
アルテナ……。
大丈夫かヴァレス?
魔王様申し訳ありません。ふいをつかれて……!
すみませんギルドナ様!兄がついていながら……。
気にするな。アレが相手ではちょっとやそっとの腕ではどうにもなるまい。
しかしムリヤリ切り離された獣の本能が本体を求めるのか?
いずれにせよ面倒なことになった……。
お兄ちゃん!アルテナを助けなきゃ!
わかってる。ギルドナ急いでアイツを追おう!オレ達も一緒に行く。
よしここはおまえ達の力を借りるとしようか。
ヴァレス。おまえは村を守れ。他の凶獣がまた現れないとも限らない。
はっ承知しました。仰せのままに。
よし。では行くぞアルド!
アンギラスの棲家は島の奥蛇頭メスキータの方らしい。蛇首イゴマを抜けたその先だ。
そこで遠くから凶獣の姿を見た者がいるそうだ。
なんとしてもアルテナを助け出すぞ!
残念だが書物が足りぬな……。
気ばかり焦るのもわかるがまずは表にある青い扉の中で書物をあつめるがよい。
これからはこれまで以上に扉の中を調べなきゃいけないと思うけど……
ゆっくりでいいから……頑張ってね。