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【黒ウィズ】幻魔特区スザク 外伝 Story

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん
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目次


Story キワム編

Story アッカ

Story ヤチヨ

Story トキオ

Story スミオ

Story ヴィルゴ

Story ヴィルゴ

Story トキモリ

Story タモン



story キワム



333号ロッドのある日、キワムが愛犬クロをつれて草原の中を散歩している。

「クロ、今日いい天気だなあ。」

『ゥワン!! ワンワン!』

「いやいやいやいや。それはない。マジで絶対大丈夫。降る訳ないって。」

『ワンワン!』

「うんうん。わかるよ、お前のカンが鋭いのは。でも見ろよ、雲一つないじゃないか。」

クロと話を弾ませながら、散歩を楽しむキワム。


「キワムー。」

と、そんなキワムを見つけたヤチヨが声をかけてきた。

「よーヤチヨじゃん。」

「クロのお散歩?」

「まーなー。お前たちも散歩?」

『訓練よ、自警団の。アンタみたいにヒマじゃないんだから!

っていうかアンタ、相変わらずハタから見るとぶつぶつ一人でしゃべってる不審者ね。』

「シキ! ちょっと言い過ぎよ。フォナーを使ってちゃんと会話してるんだから。」

キワムの持っている携帯通信機器。フォナーには犬の言葉を翻訳する機械がついている。

クロの携帯にいてるホネ型マイクと連動し。クロの言葉を画面上に表示するのだ。

『ワンワン!』

と、クロがしっぽを振りながら、ヤチヨの足にすり寄ってくる。

『ゥワン!』

『ぷぷっ。クロがこんなにジャレつくなんて。ひょっとしてアンタ、ヤチヨのこと……』

「ばばばば、ばっきゃろう! な、なんでおおおお俺が……」

『図星ね。ガーディアンもペットも、その人のありのままを表わしてるんだから!』

「わわわ、こっち来んなよ! やめろって!」

『ほら、ちょっとそのフォナー見せなさいよ!』

シキは身軽に体を翻し、キワムの背後へと回り込む。

フォナーの画面を見られまいと、キワムは脱兎のごとく駆けだした。

「マジでやめろって!」

『ほらほら早く見せてみなって! きっとクロ=アンタの本心が映ってるんだから!』

逃げ惑うキワムをシキが執拗に追い詰めていく。

その時――

「シキ! もういい加減にしなさい!」

「キャッ!」

ヤチヨがシキの服をつかんだ。

『もう、なんで止めるのよ! っていうか、ヤチヨ、なんか焦ってなーい?』

そんなシキの一言に、キワムが反応する。

「ヤ、ヤチヨ……お前まさか……」

「そ、そそんなワケないじゃない。えっと……ていうかほら、訓練に遅れるわよ。」

『ちょっと! そんなに引っ張んないでよ!』

あからさまに取り乱した様子のヤチヨは、シキの腕を握ったまま走り出す。

『ワンワンワン!』

ヤチヨを追いかけて、クロも走り出す。

「ったく! なんでクロまで行くんだよ! ちょっと待ってくれよー。」

一人残されたキワムも、みんなを追って自警団の訓練場へ向かった。


 *******


自警団の訓練が終わった昼下がり。

『ははははっ! ほうらこっちこっちー!』

『ワン! ワンワン!』

追いかけっこをしてはしゃぎ回るシキとクロ。

その様子を少し離れた所から、キワムとヤチヨが見つめていた。

「っていうか、あいつら結構仲良いよな……。」

「そ、そうだね……。」

「それでさ、お前……俺のこと……。」

「うん……。」

うつむいたまま、ヤチヨはコクリと頷いた。

「あ、ごめん。こう言うのってホントは男が切り出すもんだよな……。」

「いいの。シキの言う通り、ガーディアンは私のありのままの姿……黙っていても、いずれは伝わってたと思うし……。

だからちゃんと私の口から言うね。」

ヤチヨは意を決した様に顔を上げ、キワムのことをじっと見つめる。

「……(ゴクリ)」

「やっぱり、散歩してる時のキワム……。ちょっと一人でぶつぶつ言ってるみたいで怪しいよ。」

「え!?」

「だから、もう少し、小声で話した方がいいとおもうよ。」

「お、おう……って、そっちのことかよっ!!」

「うん? ほかに何があるっていうのよ?」

「いや、あの、その……なんでもないです……以後気をつけます……はい……。」

「うん、それでよろしい。」

ヤチヨはキワムの反応にホッとした顔をみせ、それから優しく微笑んだ。



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story2



キワムたちとアッカが出会う少し前のこと。

アッカは『収穫者』の追つ手から逃れるべく、広大な平原を突き進んでいた。

「……お腹、空いた。」

『ギシシ、最近はまともに食事もとれてないもんね。ほら、見てみなよ。』

そういうと、ロッカはアッカの首にかかっている鏡を手に取り、鏡面にアッカの顔を映す。

「見て見て、今のアッカに変身してみたよ。顔色悪いでしょ~?ほらほら。」

鏡にアッカの姿を映すことで、ロッカはアッカの姿になる事ができるのだ。

「ほんとだー……それに髪もボサついてるし……今直してあげるね、ロッカ。」

「ギシ、それじゃあ私はアッカの髪を直してあげるね。」

「んしょんしょ……。」

「さらさらーっとねー。」

「……何やってるんだろうね、私たち。」

「疲れて判断力が鈍ってるんじゃない?ギシシ!」

「はあ~、どこかに休めるところないかな。」

「遠くにロッドが見えるから、あそこまで行けば往があるんじゃない~?」

「……ロッド、かぁ……。」

「あれ、あんまり乗り気じゃない?」

「このあたりは『収穫者』もいるし、あのロッドも標的になってるかも……。」

「でも、美味しいご飯とふかふかのベッドが待ってるかもだよ?」

「う……ご飯……ベッド……。」

「きっと大丈夫だって!それに、なにがあっても私がアッカを守るからさ、ギシシ!」

「……ありがとね、ロッカ、心配してくれて。」

「ギシシ、ほらほら、早く行こうよう~。」

「あ、ちょっと、ロッカ~!待ってよ~!」

ロッカに手を引かれ、アッカはロッドのある街を目指す。


 ***


「もうちょっとで着くね、ロッカ。」

「そうだね、アッカ……でも、世の中、そう上手くいかないようだねえ~、ギシシ!」

後ろを向くロッカの視線を追うアッカ。大人数の集団が接近する物々しい気配がする。

「あーあ……嫌な予感、的中しちゃったね。ロッ力、いけそう?」

「ギシ……ちょっと数が多いかも。半分くらいなら楽勝なんだけど。」

「なら私が囮になって追っ手を分断するよ。それならいけるでしょ?」

「ギシ、それはイヤ。アッカこそ街の方へ逃げて。連中の狙いはガーディアンの私なんだし。」

「ロッカを置いて逃げろっていうの?それは絶対にイヤだよ。」

「ウギギ……私が囮になるって言ってるじゃん!」

「だーめ!私が囮になるってば!」

「おーとーりー! ウギギギ……!」

お互いー歩も譲らず、喧嘩が始まる……かと思いきや、二人は顔を合わせて意味深に微笑んだ。

「じゃあ、こうしよう。」

「うん、そうしよう。」

“私があなたの囮になる。”

二人は声を合わせて、お互いがお互いのために囮になることを宣言したのだった。

「追っ手を片付けたら、すぐに助けに来てね。」

「アッカも、上手く敵を引きつけておいてね。」

“頼りにしてるから。”

お互いに全幅の信頼を寄せる二人は、最後に目配せすると、互いに逆方向へ向かって駆け出した!


 ***


「ふう……うまく追っ手を分断できたかな。

……ロッカ、信じてるからね。」

その時、ー息つくアッカの前に、追っ手の機械兵が現れる!

「え、うそ!……先回りされてた!?」

機械兵たちは瞬く間にアッカを包囲した!

(うう、ごめん、ロッカ……せめてあなただけでも……)

機械兵たちがアッカを捕縛せんと殺到した……その時。


「……我が心から這い出でよ、月白の蛇骨エクスアルバ”!」

「……え!?」

機械兵たちは、突如現れた蛇のような怪物に襲われ、次々とその凶牙の餌食となった。

(あれ……もしかして、ガーディアン? 一体誰の……)

「怪我はないか、君。」

蛇の主――眼鏡をかけた青年が、へたりこむアッカを見下ろす。

「え!あ、えっと、その……。」

「……大変な目に遭った直後で悪いが、君には色々と聞きたいことがある、ー緒に来てもらおうか。」

「で、でも私、ロッカを探さなきゃ……。」

「ロ……なんだって?」

「あ、いや……。」

(敵……じゃないとは思うけど、ロッカのことはまだ話さないほうがいいかもしれない……)

「……特にないなら行くぞ。さっきの連中の仲間がどこかに潜んでいるかもしれないからな。」

「はい……。」

期せずして333号ロッドに行くことになったアッカ。

キワムたちと出会い、ともに『収穫者』との戦いに身を投じるのは、そう遠<ない未来の話――。




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story



「……誰もいない……わよね?」

『うん、行くなら今しかないわね……でもヤチヨ、いつまでこんなこと続けるわけ?』

「仕方ないでしょ、キワムたちには秘密にしておきたいんだから。」

『ふーん、ま、確かに恥ずかしくて言えないわよねー、まさかヤチヨが……。』

「……シキ、不用意な発言は身を滅ぼすわよ。」

『ちょ、冗談だって!そんなに睨まないでよ~。』

「まったくもう……行くわよ、シキ。」

『はいはい。』

ヤチヨとシキは、周囲に人がいないことを確認し、人目を避けるように平原へと向かう。

……そんな二人を偶然見つけた人物がいた。


「あれ、あそこにいるのって……ヤチヨとシキ? コソコソしてどこに行くんだろ?」

『ギシシ、なんかおもしろいことが起こりそうな予感!』

「にしし、そうだね。こっそり付いてってみよっか!」


「……ん?」

『ヤチヨ?どうかした?』

「今、誰かの視線を感じたような……。」

『んー……誰もいないわよ?』

「……気のせいだったのかも、先を急ぎましょ。」


「あ、危なかった~、この距離で気付かれちゃうなんて……。」

『ウギギ……ヤチヨ、恐るべし……!」

アッカは、付かず離れずの距離を保ちつつ、ヤチヨの後を追う――。


 ***


「……うーん、見失っちゃった……ヤチヨ、どこに行ったんだろう?」

アッカが周囲を見渡し、ヤチヨの姿を探していると……。

――……~~~……。

『ギシ? なんか聞こえるよ……あっちから!』


何かが聞こえる方向に進むアッカ。次第にその何かがはっきりと聞き取れるようになり……。

「これって……もしかして……?」

アッカたちが岩陰に隠れ、恐る恐る音の発生源をのぞき込むと……。


「~~~♪~~~♪」

ヘッドホンに手を当て、声高らかに歌うヤチヨの姿が!

『レッツゴ~! ヤチヨ~! フゥーフゥー!』

……さらに、ヤチヨの歌に、どこかズレた合いの手を入れるシキの姿も……。

「おお……すっごい夢中で歌ってる……でもなんでこんなところで……?

『ヘイヘイ、ヤチヨ~! ラブリーヤチヨ……あ! ヤチヨ! 大変! 見つかっちゃった!』

「~~~♪~~~♪ーー!ーー!!」

『ヤーチーヨー!もうー!』

ゲシゲシ、とシキがヤチヨを小突く。

それに気づいたヤチヨが、渋々とヘッドホンを ろす。

「もう、何よ……せっかくノってたとこなのに。」

『ア・レ!』

「ん~?……あ。」


「あ、あははは……。」

苦笑するアッカを見て、ヤチヨが石像のように固まる。

「……聞いてた?」

「う、うん……。」

「そう……。」

「…………えーっと……。」

二人の間に、何とも言えない沈黙が流れる。そして――。


「アッカ。」

「なに?」

「ごめん。」

「……え?」

ヤチヨは、首にかけたヘッドホンを再び耳にかけた!

「花開け、我が心に咲く赤い果実よ!”インフローレ”!」

「あ、あれー……ヘッドホンってそういう風に使うモノだっけー……違うよねー……。」

『ヤチヨの命令じゃ、記憶が飛ぶくらいにはやらセてもらうぞ、すまんな。』

「ひええええええ!!!」


 ***


「あー、ひどい目に遭った……そんなに秘密にしたかったの?歌ってること。」

「だって……その……恥ずかしいじゃない。歌は好きだけど、人前で歌うなんて……。」

『ま、そんなワケもあって、こうしてこっそり歌の練習をしてたってわけよ。』

「へぇ~、歌、好きなんだね。いつもヘッドホンしてるから、もしかして~とは思ってたけど。」

「アッカ、お願い!キワムたちには黙ってて!」

「ん~、別にいいけど~……代わりに私からもーつお願いしていい?」

「う……な、なに?」

アッカは、ニヤリと意味深に微笑む。

「今度ちゃんとヤチヨの歌を聞かせてほしいかな!」

「え……えええ!で、でもそれは……。」

「だってもったいないよ~、せっかく上手いのに!」

「う、上手い?私が?」

「うん、もちろんお世辞とかじゃないよ。」

「……そんなこと言われたの、初めてだわ……。」

『そりゃあ、誰にも聞かせたことないしねっ!」

「う……そういえばそうだったわね。」

「私が観客になってあげるからさ、それで人前で歌えるように練習しようよ!」

『いい機会じゃない、ヤチヨ!とりあえずがんばってみたら?」

「うーん、そうね……まあ、アッカだけなら……。」

「うんうん、徐々に慣れていって、将来は歌手デビューだね!」

「か、歌手!? 無理無理無理無理! 絶対無理!」

「じゃあ私とデュエットしよっか!」

「なんでそうなるの!?」


『二人とも仲良いわねえ……。』

『ギシシ!』

果たして、ヤチヨがキワムたちに歌を披露する日は来るのか。

それはまた別の話――。



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333号ロッド襲撃事件から時は遡り……、街から離れた場所にある平原。

スミオ、ヤチヨは、333号ロッドの自警団に入団するための最終試験に臨んでいた。


「今回の試験は、俺が監督を務める。」

試験に合格し、訓練課程を修了すれば、お前たちは晴れて自警団のー員となる。

「ふ~ん、トキオ兄ちゃんが監督かあ~。」

「……スミオ、トキオさんだったら採点も甘くくれる……なんて考えてないでしょうね。」

「べ、べべべ別にそんなこと思ってねーし!」

「……言っておくが、身内だからといって特別扱いするような真似はしないぞ、スミオ。

素質なしと判断すれば、俺は容赦なく不合格にする。くれぐれも気を抜くなよ。」

「わかってるって! トキオ兄ちゃん!」

「……スミオ。」

「あっ、えっと、し、失礼しました、監督殿!」

「もう、兄弟だからって調子に乗ったりするから……。」

「…………。」

(すまんな、スミオ。だがこれもお前のためなんだ。わかってくれ……

……とはいえ、少し言い方が過ぎたか?威圧感を与えて、逆に緊張させていないか?

……俺としたことが迂闘だった。だが今からフォローを入れるのも不自然だな……くっ)

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ……。

トキオは、眉間に皺を寄せ、手元のライターの蓋で忙しなく音を立てる。

「もう、スミオのせいでトキオさん怒ってるじゃないの。」

「うう、早速やっちまったかな、俺……。」

(……とにかく今は、監督役に徹しよう)

「準備ができたなら、ガーディアンを展開しろ。まもなく試験をはじめる。」

「了解!」

「りょ、了解!」

スミオとヤチヨは、それぞれ自身のガーディアンを展開した。

「花聞け、我が心に咲く赤い果実よ!”インフローレ″!」

「我が心を貫き出でよ、雷牙の機神!”エクスマキナ”!」

「よし……試験開始だ!」


 ***


「よっし!ここまで順調だぜ!」

「もう、だから調子に乗るなって言ってるでしょ!トキオさん、こっち睨んでるわよ?」

「っと、そうだった、試験に集中しないとな……。」

「…………。」

(やるな、スミオ。昔に比べてガーディアンの扱いが様になっている。

お前の成長は、兄の俺が誰よりも知っている。この試験、お前ならきっと乗り越え……む!?)

「スミオ!後ろ!敵!」

「……な、しまっ……!」

スミオが背後から攻撃され、地面に叩きつけられる!

「くっ、この!」

素早く援護に入ったヤチヨが、スミオを助け起こす。

怪我をしてうずくまるスミオ。その彼の前に、トキオが立つ。

「どうした、スミオ、もう終わりか?試験はまだ続いているぞ。続けるか、諦めるか……選べ。」

(くそ!俺は何を言っているんだ!早く手当をしてやるべきなのに……!スミオ……!)

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ……。

トキオの焦りを表すかのように、忙しなく開閉を繰り返す手元のライター。

(試験には合格してほしいが、お前の身に何があっては元も子もない……くっ!)

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ……。

「トキオさん……。」

トキオがスミオに問いかける。そしてスミオは……。

「……試験は続け、ます……俺は、まだやれます。」

「……わかった、それなら持ち場に戻れ。試験も大詰めだ、次こそ気を抜くなよ。」

「はい!」

(スミオ……よく言ったぞ!俺の知らない間にお前も成長していたんだな……)

トキオが見守る中、スミオとヤチヨは最後の試験に挑む!


「二人とも、ご苦労だった。試験の結果についてだが……。」

「…………。」

「…………。」

「ヤチヨは文句なく合格だ。スミオは減点こそあれど、総合評価では及第点に達している。」

「じゃ、じゃあ……!」

「ああ、スミオ、お前も合格だ。」

「よっしゃーー!やったぜーー!」

「  !スミオ!」

「……あ!じゃなかった……ありがとうございます、監督殿!」

「ふっ、もう試験は終わっているぞ。……それより傷を見せろ、手当てしてやる。」

「え、いいよ、自分でできるって。」

「いいから大人しくしていろ、お前は色々と雑すぎるからな。」

トキオは、スミオが負った傷を手当てした。

「……これでいい、しばらくは無茶するなよ。」

「うん、ありがとう、トキオ兄ちゃん!」

「あ、ああ……次からは気をつけるんだぞ。」

(まったく、スミオもまだまだ子供だな。やはり兄である俺がついてやらないとな……)

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ……。

「あの、トキオさん……。」

「ん?どうかしたか、ヤチヨ。」

「えっと、細かい事なんですけど、そのライター……。」

トキオは自分の手元のライターを見て、まるで不可解なものを見るように首をかしげる。

「またか……実は、知らないうちにライターを手にしていることが多くてな、自分でも妙とは思う。」

「あと、結構頻繁にフタを開け閉めしたりして……。」

「……なに、本当か?俺にはそんな記憶まったくないぞ?」

「本当ですよ、スミオを叱ってる時とか、スミオが怪我した時とか、あと手当てしてた時も……。」

「……そ、そうか、気を付けるとしよう。」

(内心の動揺が手慰みとして出てたか……俺もまだまだだな、兄としてしっかりしなければ)

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ……。

「あ、ほら、また。」

「……あ。」

冷淡な司令塔トキオ・ネジヅカ

彼は、とても弟想いの兄だった――。



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黒猫を連れた魔法使いが去ってからしばらく後の話――。

333号ロッド周辺の草原で、スミオがガーディアン「ノイズ」を整備している。


「よっしゃっ!今日も絶好調だぜ!」

スミオは手にした機械「GMD」に映し出された数値を見て満足する。

そこに、テストフライトを終えたノイズが戻ってくる。

『エンジン、通信システム、全て正常。本日の点械作業終了。』

「まだまだ!頼むよ!もうちょっとだけ遊ぼうよ!あとー回!」

その携帯ゲーム機の様な機械「GMD」は、ノイズとのコミュニケーションツールになっている。

そしてスミオはGMDを使ってノイズをラジコンの様に遠隔操作して遊ぶのが大好きなのだ。

『スミオの「あとー回」が本当にあとー回だった確率、2.35%……要求を拒否する!』

「えー!いいじゃないかよ。もうちょっと俺と空の旅を楽しもうぜ!」


『こら、スミオ! ガーディン使いが荒いわよ!』

「ノイズはオモチャじゃないのよ。ちゃんと彼の意見を尊重してあげなきゃ!」

『ワンワン! ワンワンワン!』

「ははっ!言えてる。ガキっぽい主を持つと苦男するな、だってよ。」

『ギシシッ。マーヌケ!』

「そうよ。マヌケよ!ガーディアンとの信頼関係が一番大切なんだから!」


「なんだよ、お前ら!俺とノイズの絆の固さ、見くびるんじゃねーぞ!」

「信頼関係なら俺とクロだって負けないぜ!」

『ワン。』

「私だってそうよ。」

『ギシシ!私たちの方が最強!』

「よっしゃ、誰のガーディアンが一番最強か勝負しようぜ!」

とりあえず一番速いヤツが最強な!

そう言うと、スミオは突然、GMDを操り、ノイズを急発進させる。

『あ、ずるい!』

『ウギギ、卑怯!』

『ワン!』

ノイズの後を追い、ガーディアンたちが猛然と走り出す!


 ***


結局、高速で飛行するノイズに追いつけるはずなく――。

『スピードで私の右に出るモノはいない。』

『ギシシ!速さと強さは関係ない!』

『それに得意分野で戦うなんて卑怯よ!』

『警戒レベル上昇。戦闘形態へと移行する!』

展開したがーディアンたちが三つ巴に睨み合う。

互いに火花を散らすがーディアンたちに、スミオとアッカが追いついた。

「フー、やっと追いついたぜ!やっぱノイズが一番……ってエクスマキナ!」

『All energy lines connected. I’m all set up here.』

「あー、疲れた!ってロッカもトイボアになってるし!あなたたち一体何を――。」

『ギシシシ。誰が最強かーー決める!』

「そういう事かよ!よっしゃ!エクスマキナ、お前の力を見せてやれ!」

『こんな茶番、やにわに終わらせてくれるわ!』

『アーハッハッハ!』

三者の間合いが一気に詰まる!


 ***


「やめなさい!」

ようやく追いついたヤチヨが、ガーディアンたちを一喝する。

「いったい何の騒ぎなのよ! これは?」

「い、いや、ただ俺たちは誰のガーディアンが一番最強かっていうのを――。」

「一番最強とか意味わかんないから!大体、そんなもの決めて何になるのよ?

私たちは仲間なんだから、協力して戦えばいいじゃない!

いい?ノイズにはノイズの、ロッカにはロッカの、シキにはシキのいいところがあるでしょ?

一番なんて決められるワケないし、決める必要もないじゃない。」

「お、俺はただ、最強を決める男の勝負を……。」

「私もアッカも女ですけど!男なのはスミオだけじゃないの!って……アレ?」

その時、ヤチヨが何かに気が付いた。

「キワムとクロは?」

「あ、そういえば!アイツらどこ行ったんだ?」


『ワン!ワン、ワン!』

鳴き声のする方を見ると、遥か後方に蝶を追いかけて遊ぴまわるクロの姿がある。

「おいクロ、遊んでないで早く走ってくれよ!もうみんなゴールしちゃってるぞー。」

『ワン!ワン、ワンワン!』


「可愛さ勝負なら、クロが一番最強……」

そこにいる全員が、そう思った――。


「っておい!これって俺の外伝じゃなかったのかよー!」



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333号ロッド襲撃事件――。

あの惨劇から時は遡り、ヴィルゴ率いる『収穫者』の部隊は、逃亡中のアッカを追跡していた。

「逃げ足の早い小娘め……手間をかけさせてくれる。」

苛立つヴィルゴ――その時、背後に冷たい何かを感じ、振り向くと……。


「……これはトキモリ女史。あなた自らこちらに出向かれるとは……。」

「状況はあまり芳しくないようですね。」

「……はい。」

「責めているのではありません。小娘とはいえ相手が相手です。あなたの手にも余るでしょう。」

(……言ってくれる。ガーディアンが使えない私では手に負えない、ということか)

「この先には333号ロッドがあります。我が部隊の斥候を潜伏させ、挟撃の手筈を整えます。」

「……わかりました。必ず確保してください。頼みましたよ、ヴィルゴ。」

そう言うとトキモリは、空気に溶け込むかのように、陽炎のごとく消え去った。

「……言われずとも。」

ヴィルゴは部隊を率いて、アッカの追跡を続行する――。


 ***


視界を最大広角にし、周囲の平原を窺うヴィルゴ。そして……。

「ようやく見つけたぞ、アッカ・フロレンテ……。」

平原の只中に佇む少女の姿を認めたヴィルゴは、即座に部隊に指示を送ろうとするが……。

「……ちっ二手に分かれたか。」

(ガーディアンの変身能力を使って、撹乱とは、小賢しい真似をするが……甘かったな)

ヴィルゴは特殊な視界モードに切り替えた。

片方のアッカから、体温、脈拍、心音を捉える。もう片方には……通常の生体反応がない。

「ふん、所詮は小娘の浅知恵だな。」

(あんな子供程度がガーディアンを持つなど……まったく度し難いことだな)

「各隊に通達。目標は予定通り333号ロッド側に追い込んだ。挟撃して捕獲するぞ。」

(これでチェックメイト、だ)

ヴィルゴ率いる部隊は、本物のアッカを追って333号ロッドに駆け走る――!


 ***


333号ロッドに到着したヴィルゴの部隊。

しかし、街に人の気配は感じられず、アッカの姿も見受けられなかった。

「……我々の接近を察知して潜伏したか。」

ヴィルゴは次に取るべき行動を考え……そして、嗜虐的な笑みを浮かべて、各隊に指示を送った。

「各隊へ通達。ロッドおよび周辺施設を破壊しろ。ネズミをあぶりだせ。」

ヴィルゴの号令で、機械兵たちがー斉に動き出す。

333号ロッドは無惨にも折られ、周囲のありとあらゆるものが破壊される。そして――。


「……貴様ら、自分たちのしていることがわかっているのか?」

「…………。」


(333号ロッド自警団所属、トキオ……奴が新手のガーディアンの使い手か)

ここまでは先行部隊の情報通り。ヴィルゴは油断なく陣形を組み、二人を包囲する。

「くっ……多勢に無勢だな……。」

(そうだ。いかにガーディアンの使い手だろうと、この数に抗する術はない。ここで終わりだ)

「333号ロッドの自警団トキオよ。大人しくその娘を渡せ、貴様も死にたくは無いだろう?」

ヴィルゴは二人に宣告し、銃口を向ける。

この瞬間から、ヴィルゴとキワムたちの因縁の判いが始まったのだった――。



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story7



スザク大ロッドに続く列車の線路脇――。

真の姿になったクロによって列車から投げ落とされたヴィルゴは、辛くも命を繋ぎ止めていた。

『グオオ……コ、コンナ、ハズ、デハ……ワタシハ……ワタシハ……!』

憎悪と後悔。

その二つの巨大な負の感情が、辛うじてヴィルコの理性を保たせる。

『ウグア……テッタイ、ダ……タイセイヲ……タテナオスノダ……!』

おぼろげな意思の中で、兵士としての経験が、摺の生存本能を突き動かす。

ヴィルゴは、負傷した体を引きずり、這うようにその場を後にした――。


 **


『ハァハァ……ハァ……!』

「……まだ生きていたとは驚きです。耐久力はガーディアンとほぼ同等といったところですか。」

『!ト、キ、モリ……ジョシ!』

ヴィルゴの中で燻っていた憎悪の炎が、ー気に燃え上がる。

『キサマ……!ヨクモ……ワタシヲ……ダ、マシタナァ!』

「人聞きの悪いことを言わないでください。あなたがそのような醜態を晒した理由はーつです。」

トキモリは、眼鏡を押し上げ、冷淡に告げた。

「あなたが、“その程度の価値”しかなかっただけです。」

『ナ……ナ、ナンダト……!』

「そもそも、あなたは勘違いしているようですね。」

『カン、チガイ……!?』

「あなたは元人間で、身体を機械化することで常人以上の力を得ましたが、傲慢も良いところです。

“私たちは人間ではありません”。すでにあなたたちとは立っているステージが違うのです。

機械に身を委ねたところで、あなたが私たちと同じ領域に入るなど、最初から無理だったのです。

……まあ、それを試験するための「実験」だったわけですが。」

『キ、キサマ……サイショカラ……ナニモカモ……ググググ……。

グガァァァッァ!!!』

激昂したヴィルゴがトキモリに飛びかかる!

「……愚かな獣ですね。」


 ***


『グガァ!?』

ヴィルゴがトキモリを襲おうとした直後、その全身には無数のナイフが突き立てられていた――!

『ナ、ナゼダ……イツノ……マニ……!』

トキモリの背後に控えるガーディアン、「ベイト」が、ナイフを手に悠然と立っていた。

「言ったはずです。あなたとはそもそも立っているステージが違う、と。この結果がその証明です。

……もっとも、あなたは人から、さらに獣へと堕ちたようですが。」

『ググ……ワタシハ……ワタシハ……ワタシハワタシハワタシハワタシハワタシハワタシハ……!』

突き立てられたナイフと、行き場のない悔恨に悶え苦しむヴィルゴ。

「……耳障りですね。ベイト!」

主の言葉に即座に反応したベイトは、ー本のナイフをヴィルゴに向かって投げ放つ。

『――――ア。』

ナイフはヴィルゴの眉間を正確に貫く。

死に際に見ると言われる過去の情景も、楽園のような世界を垣間見るようなこともなく――。

ヴィルゴ・ニーダは、そのー瞬で呆気なく果てたのだった――。



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story



トキモリは、333号ロッドから黒煙が立ち上る様を、遠目から観察していた。

報告によれば、アッカ以外にも4人のガーディアンの使い手が参戦し、ヴィルゴは敗走。

「数を揃えたところで、やはり雑兵は雑兵に過ぎないということでしょうか。

……ですが、妙ですね。」

アッカ捕獲を妨害した4人は、トキオ、スミオ、ヤチヨ、そして……。

「黒猫を従えるガーディアンの使い手、ですか……まさかあのような伏兵がいたとは。」

あの者の素性だけは、どう調べても掴むことはできなかった。ー体何者なのだろうか。

「……これはー計を案じる必要がありますね。」

トキモリは、懐から不気味な光を放つコインを取り出した。

「イレギュラーには、イレギュラーを以て対処するとしましょうか……ふふ。」

トキモリは妖しく微笑し、その場を後にした……。


 ***


333号ロッドから帰還したヴィルゴが、トキモリにこれまでの状況を報告する。

「なるほど。子供とはいえ、ガーディアンのポテンシャルはかなりの力のようですね。

彼らが憎いですか、ヴィルゴ?」

トキモリの言葉に、ヴィルゴは静かにうなずき、光るバイザーを彼女に向けた

「良い返事です。その強い意思があれば、ガーディアンを御することもきっと可能でしょう。

ええ、あなたにこれを授けましょう。」

そう言ってトキモリは、その手のコインをヴィルゴに見せる。

「あなたには、これを然るべき場所で使っていただきます。

すぐに追跡部隊を編制してください。おそらく彼らはスザク大ロッドに向かっているはずです。」

「了解しました。」

敬礼し、意気揚々と立ち去るヴィルゴ。その後 を冷たい眼差しで見送るトキモリ。

「……ええ、頼みましたよ、ヴィルゴ……ふふ。」


 ***


「タモン様……。」

「いやァ、トキモリちゃんも丸くなったねェ!あんな雑魚ー匹に情けをかけるなんてさァ!」

「……ああ、そのことでしたら……。」

トキモリは眼鏡の縁を押し上げ、淡々と語る。

「あのコインは、まだ未知数なところがあります。実戦時のデータは多ければ多いほど有益です。」

「ヘェ~、つまりィ~?」

「あの機械兵には『被験体』になっていただきます。」

「うわァ、ひどいねえ……トキモリちゃんにはりょーしんのかしゃく、ってモンがないの?」

「路傍の石を気にかけたところで、我々には何ら益などありません。」

「ク、クク……アハハハ!それでこそトキモリちゃんだ!意地悪いこと聞いてごめんねぇ!」

「……いえ、私は……。」

「そんじゃ早くガキどもを追おうじゃないの!楽しいショーが見れそうだなァ、おい!」

狂喜的な笑いを上げながら先を行くタモン。トキモリもまた彼に続<。


(私たちは壊さなければならない。この狂った世界の仕組みを……呪われた運命を……)

誰にともなく内心で告げるトキモリ。

トキモリが「収穫者」に身を置く理由とは。冷徹な眼差しが見据える未来とは。

それは、彼女のみぞ知る――。




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ここは「スザク大ロッド」。

キワムたちがヴィルゴと列車上で死闘を繰り広げていた頃、ー人の男がこの地に降り立った。


「ふィ~、ここに来んのも久しぶりだねェ……。

……あのガキどもは今頃、トキモリちゃんの玩具と遊んでる頃かね。」

タモンの言葉に反応して、彼のガーディアン、『ハッピー』が肩越しにタモンの顔を覗き込む。

「なんだ、ハッピー、お前も遊びたいって?ああ、俺もだよ、遊びたくてウズウズするぜェ。

だがもうちょっとの我慢だ。そう、もうちょっとだけ……な……クク、ククク……!」

これから起きる出来事に思いを馳せ、歪んだ笑みを浮かべるタモン。

「ロッドをぶっ壊し、ガキどもとガーディアンをぶちのめす……最高の日になりそうだなァ!」

狂気じみた笑みを浮かべ、タモンはトキモリと合流地点へ意気揚々と向かった。


 ***


キワムたちがスザク大ロッドに到着した頃、街の奥まったー角では……。

「んで、アッカちゃんを守ってるナイト気取りのガキども……どうするかね?」

「……可能であれば、彼らを我々の側に引き入れたいと考えます。」

「……ふーん、なんで?」

「見たところ、彼らは〝何も知らない〟ようです。真実を話せば考えを改めるかもしれません。」

「ヘェ~、冷酷無慈悲のトキモリちゃんにしては随分と甘いねエ!

まァさァかァ~……怖気づいた……ってーわけじゃないよねェ?」

「……すべては我々「収穫者」の悲願のためです。同志は多いに越したことはありません。」

「なるほどねェ、ま、いいけどさ……だがねェ。」

タモンの肩の上で、ハッピーがその目をギョロギョロとさせる。

「少しでも反抗する素振りをみせたら、容赦なく潰す。俺のハッピーの餌になってもらうぜ、な?」

タモンの肩の上で、ハッピーがその目をギョロギョロとさせる。

「はい、その際には、タモン様のご随意に。……ただ、ーつだけご注意ください。」

「あ?何をだ?」

「あの者たちの中でー人、我々とは異質な力を持つ者がいます。」

「ヘェ?誰だそいつァ?」

「“黒猫を従える者”です。」

「ほーう、黒猫とはまたシャレてるねェ! そいつもガーディアンの使い手ってことか?」

「……いえ、戦い方こそ似ていますが、力の性質が根本的に違うように思えます。」

「歯切れの悪い言い方だなァ? 結局、何モンなわけよ?」

「……申し訳ありません。あの者の素性については、私もまだ確証を得ていません。」

「……トキモリちゃんにそこまで言わせるとはねェ。ま、いいや。

んじゃ俺は手筈通り、あっこで待機してるわ。」

そう言ってタモンは、ひと際高い建物の屋上を探した。

「お願いします。私は彼らの監視を継続します。……それでは。」

音もなく消えたトキモリ。タモンもまた、その場を後にする。

「ククク……楽しくなりそうだなァ……。」


 ***


「お~、やってんなァ~!」

眼下で繰り広げられるトキモリとキワムたちの戦いを、建物の屋上から見物するタモン。

「えーっと、トキモリちゃんが言ってたヤツは……お! アイツか!」

黒猫を従え、キワムたちと共に戦う者。タモンは、その様子をつぶさに観察する。

「ヘェ~、ありや相当戦い慣れてるな。クク、楽しみが増えてなによりだ……ん?」

ふと、タモンは気づく。

トキモリと戦っているのは、キワム、アッカそして黒猫を従える者。

敵の数は――”3人”。

「3人……だとォ?3……さん……サン……だとォォォ?

イカンわなァ……イカンよなァ……!」

タモンの身体から、ゆらゆらと殺気がほとばしる――!

「俺はなァ!「3」の数字が、大嫌いなんだよねェェェェェ!」

狂ったように激昂し、屋上から豪快に飛び降りたタモン。

「見よ、我が影は立ち上がる、尽く征し喰らえと――”アドヴェリタァアアアアス”!!」

タモンの肩に乗っていたハッピーが、巨大な二頭の怪物へと変身する!

タモンの暴力的な狂気が、キワムたちの身に降りかかる――!




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