【白猫】夢を追え 追って、つかめ Story
2014/11/25
story1
ったく……メンドくせェなァ、魔物退治なんざよォ。なァ~んも、おもしろかねエ。
メンドくさいとかじゃないでしょ!みんなのためよ、エドガルド!
こちとら海賊だぜ。ンなセリフ、口が裂けても言えねェな。
まァいいや。とっとと終わらせて、うまいメシと酒かっくらって寝ちまうとしようぜ。
……不思議だったんだけど、アンタ、死んじゃってるのに、ごはんとか食べられるのね。
おう。<喰うぜ!><飲むぜ!>っつう強工意志さえありゃア、なんとか消化できるってもんよ。
そうだったんですね。なら、今度、エドガルドさんのお好きな料理を作って――
た、助けてくれえ!
な、なに?どうかしたの?
ま、魔物に馬車を襲われてしまったんだ!このままじゃ、積み荷が……ワシの財産がぁ!
ほォう――魔物に、馬車をねェ。
そ、そうなんだ!だから、早く助けに――
三割だ。
え。
報酬は、取り返した分の三割ってトコだなァ。それでどうだい?商人さんよォ。
って、アンタね、こんなときに――
お、多すぎる一割で頼むッ!
おいおい、わかってんのかァ?オレたちが助けに行かなきや、ゼロになっちまうんだぜェ?
それに比べりゃア、三割くれェ、どォ――ってこたねェよなァ。ええ?
頼む!それだけはカンペンしてくれ!頼む、早く一割で頼む!馬車にはまだ子供もいるんだぁ~!
あン?
アンタ、それ……子供を置いて逃げてきたってこと!?
し、仕方なかったんだ。誰かが助けを呼びに行かないといけなかったし、それに……
一割だ。
へ。
一割で、手ェ打ってやる。あっちに行きゃアいいんだな?
は、はいぃぃ!
エドガルドさん……
行くぞ、てめエら。一割がゼロになっちまう前にな――
story
いたわ!あそこよ!
ひ、ひぃっ……く、来るな……来るなあっ!!
<弓を持つガイコツの群れに取り囲まれた幼い少女が、涙目で棒切れを振り回している……>
こ……怖くないんだから……おまえらなんて……おまえらなんて怖くないんだからぁぁぁあーっ!!
<少女の叫びに、風切音が重なる。放たれた無数の矢が、横殴りの雨となって宙を駆け――>
――そうともよ!!
<割り込んだエドガルドの総身に、次々と突き刺さった!>
……ッ!
勝負ってなァ……怯んだ瞬間、おしめェよ……
<矢を、身体中に生やしたまま――
エドガルドは、にィ、と笑って、重いー歩を踏み出した。>
てめエらなんざ、怖かねェ……オレらの方が、もっと怖ェ……そう、叩ッ込んでやるもんさ……
<矢が走る。身体をうがつ。凄惨な笑みを浮それでも男は止まらない――凄惨な笑みを浮かべ、前に進む。>
おいおい舐めてんのかァ?ンなシケた矢ァなんぞで、このオレを沈められるかよ――
<放たれる凄絶なる鬼気に、ガイコツたちはジリジリと気圧され――
ついに弓を捨てて逃げ出した。その直後、目の前にエドガルドが回り込んでいた!>
オレを沈めてェなら、それなりのモン、見せやがれや――
<鈍くきらめく魔性の剣が、禍つの炎を噴き放つ――!>
こんな風になァッ!!
<吹いて荒れるは紅蓮の暴嵐――たじろいで硬直したガイコツがガラクタのように薙ぎ散らされる!
…………!
わかったかい、嬢ちゃんよ。
<ごうごうと燃え盛る、灼熱の業火を背負ったまま――エドガルドは、哄笑を上げた。
ビビらせて……ブッ飛ばす!コイツが、華のあるケンカってヤツよ!ケハハハハハハ!
story
ねえ、おじちゃん……本当に、だいじょうぶなの……?
ああン?言っただろうがよ。シケた矢ァなんざ、いくら剌さろうが、屁でもねェぜ。
そっか……やっぱ、本物の冒険家はスゴいなぁ――
いやいやいやいや信じちゃダメよ!これでなんともないの、コイツくらいなんだからね!
ンなこたアねェって。主人公も、気合入れりゃアこのくれェ、なァ?
ムチャ言わないの!
あたし……
ずっと、冒険家になりたいって思ってて……剣の特訓とか、そういうのもずっとやってて……
でもいざってなったら、ぜんぜんダメで……あたし……
…………
――たりめェだ。気合だけでとうにかなるワケねェだろうが。ガキなんだからよ。
だがま、その度胸だけは、いっぱしだ。あとは、てめェがどんだけがんばれるかどうか、よ。
夢を追え。追ってつかめ。それがガキの仕事、ってな――
おじちゃん……
あ!商人さんよ!
おお!無事だったか!
パパぁー!
パパ……、か。ヘッ――
やれやれ……これであとは、エドガルドが一割をもらったら、お仕事完了ね。
……ん?んん?そんなこと、言ったかなあ~。ごほん、ごほん。
ちょっと!アタシはどうでもいいけどさ、アンタ、エドガルドと約束してたじゃない!
んん~、覚えてないなぁ~。契約書を交わしたわけでもないしなぁ~。
アンタねぇ――
<毛を逆立てるキャトラ――そのうなじを、エドガルドが、ひょいとつかむ。>
行くぜ、てめエら。
って……いいの?エドガルド――
ヘッ。かまいやしねェさ。
<赤毛の少女の視線を背に、ゆっくりと歩き出しながら――エドガルドは、軽く笑った。>
海賊の見つけるお宝ってのはななにも、金銀財宝ばっかじゃねェってことよ。
ケハハハハハハハハ!
あれが、本物の冒険家……
あたしも……なってみせる。みんなを守って戦える……強くてカッコいい冒険家に!
story3 絶句衝撃
えっ……ど、どういうこと?
…………
…………
そ――それ、ホントなの?ホントに……
ホントに……ホントに、ホントなの!?
……だったら、なんだってんだ。
それが本当だったらよ――ンなら、なんだってんだ?ええ?
だ、だって――それじゃあ……!
だから―よ。
行くしかねェんだろうが。オレたちが……行くしか、よ――
エドガルド――!
てめェらはすっこんでな――ガキども。
!!
……行くってのか?
ケケケ――てめェも物好きだな。ええ?
なら――決まりだな。
行くぜ――野郎ども。出港だ――
story
<夜の平原に、舞い踊る少女の影がある。
それは、本当に影だった。かつてどこかにいたはずの、ひとりの少女の、――影でしかなかった。>
怖くない……
おまえらなんて!ぜんっぜん、怖くなんかないッ!
あの人が、教えてくれたんだ……ビビらせて、ブッ飛ばせって!魔物なんてやっつけてやる!
…………
娘が……娘が、死んだんだ!
魔物にやられて、殺されたんだっ!
こ、こともあろうに……
使用人どもなんぞを守ろうとして、戦って……
魔物に食い殺されたんだよッ!!
よォ――小娘。
ハッ!出たな、魔物め!みんなに手出しはさせないぞ!あたしがやっつけてやる!
ククク――クク――ケハハハハハハハハッ!!
そォォォーだッ!魔物だッ!てめェのハラワタ食いに来た、大悪党の幽霊船長だッ!
どうする、小娘ッ!?邪悪で狡猾で醜悪で残忍な魔物を相手に――てめエはどうするッ!?
……倒す!冒険家として……みんなを守るために!
ハ!ハ!吹きゃアがる!ハ!
吹いたからにゃアやってみせろやッ、小娘ェッ!
はぁああぁああああーっ!!
おぉぉおおおおおお――ッ!
閃光――電影。月下に閃く白刃が、おぼろの闇を裂き散らす。
エドガルドは剣を振り上げたまま。少女の影が繰り出す刃は、男の胸を貫いている――
やったッ……届いた!!
ああ――見事だったぜ、小娘。これなら、悪い魔物も一発よ……
あたしも――これで――あの人みたいな、立派な冒険家に……
<転瞬――少女の影は、内側からほとばしる紅蓮の業火で、鮮烈に爆ぜ散っていた。
男の手にした炎の魔剣で、斬られていたのだと――気がつくこともないままに。>
ちいと地味だが――死に化粧としちゃア、こんなもんだろ……
エドガルドさん……
後は任せたぜ、嬢ちゃん。きっちりと、葬ってやってくんな。
はい……
……………………
使用人なんて――放っておいて、逃げればよかったんだ!
あんたの……あんたのせいだっ!
あんたが、娘に妙なことを吹き込みさえしなければ……!
この――、悪魔……め!!
夢を追え……追って、つかめ……
クク――ケケケ――だよなァ……そりゃア、そうだよなァ――
悪魔なんざ、追いかけてりゃ――てめェも悪魔になるわなァ……
ケケ――ケハ……ケハハハハハハハハ……!