【白猫】グレイヴ(ダグラス4)・思い出
2019/08/30
Brave The Lion 4 Story
グレイヴ・ローグラド cv. <レディ・キラー>所属のエージェント。 相棒のコテツとともに任務に赴く。 |
思い出1
あら、グレイヴたちじゃない!どうしたの?
いや……
グレイヴさん、こんにちは。
……こんにちは。
グレイヴ、挨拶する時くらい人の目を見ろ。
…………
アンタね、もう人見知りする間柄じゃないでしょーが!けっこう仲良くなったはずよ!
……三人ではしゃべれるけど、二人きりだと喋れない。人見知りあるあるだ。
ぎにゃー!ちょっとショックなんだけど!?
確かにキャトラたちとは知り合いにはなった。でも、それはまだ仮初めの関係だ。
(いきなりなに言ってるんだろう?)
誰でも最初はがんばって自分を取り繕うだろ。それで仲良くなるかもしれない。でも、それは本当の俺じゃない。
徐々に近しい関係になっていくとその仮面を取るタイミングが必要になってくる。
その時にまた人見知りが発症する。その繰り返しだ。
アンタ、最初から素だと思うけど?
……かもしれない。
じゃあ、もうただ単に慣れてないだけでしょーが!
時々会うキャトラたちに心を開くには、もう少し時問がほしい。
その発言、割と心開いてないと言えないわよ。
……なら、俺はもう人見知りをしてないのか?
なーに勝手に結論づけてるのよー!なおってないでしょーが!
……だから、困ってるんだ。
なにかあったんですか?
いや、その……特に困ってるわけでは……
ダグラスが我々のチームから抜けてその穴を埋めねばならなくなった。グレイヴにも後輩ができた。
先輩と呼ばれるようになったし、いろいろと頼られるんだが、その時の受け答えが、今のアイリスとの会話みたいになる。
私がフォローしてるからいいのだが少々ギクシャクしてしまってな。
先輩として見本になるのは誰かと考えた時、ダグラスだと思ったんだ。あいつのように気さくに話しかけられる先輩になるべきではと……
アンタにダグラスの真似は不可能だと思うわ。
俺もそう思う。でも、立場というものを考えた時、人見知りだなんだと言っているわけにもいかないだろ。
……どうしたらいいと思う?
アンタたちの仕事って戦ったり、スパイしたり、そういうのなんでしょ?
おおむね、そのような感じだな。
だったら強くなればいいんじゃない?いざって時にかっこよく決めれば、きっと尊敬されるわ。
そう!先輩に求められるのは尊敬されるってことなのよ!!
長所を活かせばいいということか。たしかに戦闘なら得意だ。
でも、ただ強いだけじゃダメよ!ピンチを覆すような超必殺技を持ってるとか、そういうレベルよ!
なるほど、試してみるよ。
グレイヴさん、大丈夫かな?
思い出2
困ったことになった。
自ら進んで相談に来るなんて猫見知りはなおってきてるようね。
そういうことを言われると意識してしまうからやめてくれないか……
とりあえず稽古の相手をバイパーに頼んでみた。でも、忙しさを理由に断られてしまった。
まあ、あいつも大変だしね。
そこで、稽古の相手をしてくれる人物の紹介状を書いてもらった。
ふむふむ。フゥって名前の奴ね。誰それ?
このあいだの事件で世話になった獣人だ。かなりの使い手なんだ。
……ほとんと話したことがない。
人見知りが爆発してるってわけね。それで?
ついてきてほしい。
却下ね!アンタ、そんなんじゃあ、いつまで経っても人見知りがなおらないわよ!
スッ……
気配消すなー!いい!アンタの問題なんだからアンタが自分でどうにかなさい!
……キャトラは厳しいな。
アンタのことを思ってこそよ。子猫は我が子を千尋の谷に突き落とすのよ。
俺は子猫の子供なのか?
似たようなものよ。ほら、一人で行ってきなさいな!
グレイヴ先輩、どうしたんですか?
いや……
フゥに稽古をつけてもらいに来たのだ。
ああ、そうなんだ。俺はもっと強くな――
断る。
スッ……
気配消すの早くないか!?その技、飲み会以外で使うのは禁止だ!
……フゥさん、その、俺は、もっと強くなりたい。
知らん。
スッ……いや、あなたに関係ないのは理解してる。だが、こう考えてくれ。
俺はレイチェルやルエルと一緒に作戦行動に従事することが多い。
俺が強くなることで、彼女たちの被害も最小限に抑えられると思わないか?
…………
それに俺は自分の限界を超えたい。あなたくらい強くないと稽古の意味がない。お願いしたい……です。
先輩、本当に強いですよ。いっつも私のフォローしてくれますし!
…………
…………
お前さんが死んでもいいのなら、つきあってやる。
……ありがとうございます。
礼は生き残ってからにしろ。明日、森に入る。その犬は置いていけ。
!
俺とお前さん、二人で殺しあうぞ。
思い出3
先生と先輩、森に入ってからもう一週間になるね。
うむ、こんなに長くグレイヴと離れているのははじめてだ。
……二人とも大丈夫かな?
犬だ、ひっぱれー!
肉球肉球、にくきゅうきゅうー!
グレイヴーーー!早く帰ってきてくれーーーー!!
はあっ!
甘いな。
がっ!!
<倒れたグレイヴの頭の上にフウの足があった。>
っ!!
<頭蓋を踏み割ろうとする一撃を転がり、かわす。>
はあ、はあ、はあ……
<フゥの修行は苛烈を極めていた。森に入るまえに言っていた「殺しあう」という言葉に偽りはなく、常に殺気をまとった一撃がグレイヴに放たれる。>
(……状況判断が速い。……いや、違うな。自分で状況を作り上げてる)
<いわゆるサバイバル訓練に近い。ナイフ一本だけで山に入り、自給自足しつつ殺しあう。
しかも敵はフゥだけではない。魔獣や魔物も脅威だった。>
(また消えた!?認識阻害の無音歩法!?)
はあっ!!
ほう……当て返してきたか……感覚はマシになってきたな。
(森に入ってはじめて……当てられた……
クソ……もう……限界……だ……)
はっ!!!
起きたか……
!
そう構える必要はない。準備は終わりだ。
準備?
この一週間で、お前さんの感覚は獣に近くなったはずだ。今も常に気を張っとるだろ?
たしかに見なくても、木や物の位置はだいたい把握できてる……
そういう癖を体に染み込ませるための準備だ。俺も時々、こうして森に入り、感覚を研ぎ澄ます。
明日からは戦う技術を教える。今日は食って休め。
い、ただきます!ガツガツガツ……う、うまいつ!
ガツガツガツ!もぐもぐ……
毒を入れたはずだが効かんな……
毒……ですか?
致死量分、入れたはずだ。どうして死なない?
気をぬいた瞬間、毒殺ですか……でも、俺には無意味です。
俺の体は毒に強い。だから最後まで食べます。ガツガツガツ……
したり顔してるところ悪いが、お前さん、食い方、汚いな。
!…………
……へこんだか?
はい……もう人前で食事をするのはやめようと思いました。
お前さん、体は強くても心が弱いな。
思い出4
フンッ!
はあああああっ!!
…………
当たったはずなのに……効いてない……?
ぐっ!!
まだ甘い……だが、まあ、この程度だろう。
これで修行は終わりだ。森を出るぞ。
俺は、まだやれます。
これ以上は無意味だ。
先生、納得できる答えをいただけませんか?
まだ学べることがあるはずです。これでは中途半端です。
中途半端というのは伸び代があるということだ。このまま続けてもお前さんは俺のコピーにしかならん。
仮にそうだとしても、そこから得るもののほうが多いと思います。
…………
お前さんは、この世で最も多い殺人の動機を知っとるか?
恨みや憎しみ……ですか?
いや、違う。人は憎くなくても人を殺せる。それが<仕事だから>だよ。
…………
お前さんの参考になるか知らんが俺の話をしよう。
俺は孤児院で育てられた――
エルフの女性が切り盛りする孤児院だ。貧しいながらも穏やかな日々だったが、俺は稼げる年齢になると孤児院を出た。
孤児院に金を入れたかった。だが、なにも持たない獣人に与えられる仕事など、そう多くはない。
俺は傭兵になった。人を殺して得た金を孤児院に送り続けた。
…………
自分の愛した場所を守るために人を殺す。殺された相手にも同じものがあると知りながらな。
いつしか、孤児院が失われていることを知った。それでも俺は殺し続けた。それしか生き方がわからなくなっていた。
壊して奪って殺すだけの人生だ。最後はなにも残らんかった……
でも、今は……人を活かそうとしています。
……俺はこの島に戻ってきた時、死ぬつもりだったよ。
孤児院で首でも吊って死のうと思っとった。なのに、俺はガキを見つけた。
誰もいない孤児院に捨てられたガキだ。俺は思ったよ。最後の瞬間まで俺は殺すことしかできないのかと。
俺が死ねば、そのガキも遠からずくたばる。それは俺がガキを間接的に殺したことになる。
だから俺はガキを生かしてから死のうと思った。それを俺の最後の仕事にした。
気づけば、どんどんガキが増えてな。今もこうして死にぞこなっとる。
…………
己のなかに芯を作れ。信念はやがてお前さんの拳にも宿る。
だが、今、殺しの技術を知れば、それに流され、芯すら歪む。
……芯ですか。
時間はあるんだ。悩んで考え、道は己で作れ。
思い出5
やっほー、グレイヴ!特訓はどうだった?
いや、その……
また猫見知りかーい!!
そうじゃない。少し考え事をしてたんだ。
なるほどね。なら聞いてあげるわ。話しなさいな。
俺はフゥ先生に鍛えてもらった。もう少しでフゥ先生に届きそうにはなった。
だが、届く前に、あとは一人でやれと言われた。
それ以降、こうして悩んでいるのだ。
自分のなかに芯を作れと言われた。
ふむ、なかなか観念的な話ね。
キャトラのなかにある芯とはなんだ?
力二カマよ。
……そう言うと思ったよ。真面目に聞いてるんだ。真面目に答えてくれ。
これ以上ないくらい真面目よ。だって力二カマを食べると幸せな気持ちになるでしょ!
つまり、そういうこと!アタシはアタシやみんなが幸せになればいいと思つてるわ!
そういうのをざっくり言うと力二カマって答えになるの!
……深いな。
深いか?
アンタはどうなの?なんか生さる指針とか自分のこだわりとか、そういうのあるでしょ?
…………
俺は俺だということだ。
俺は自分の選択や生き方を誰かが偽造したものじゃないと証明したい。
俺は道化師じゃない。俺は俺だ。それが俺の生きる指針だ。
フゥ先生にそう言ったら、ため息をつかれた。それが割とショックだった……
アタシはなんとなくフゥってひとの気持ちわかるわ。
本当か?
でも、アタシが答えちゃいけないことだと思うのよね。
だから、主人公、ピカッと光ってヒントをあげてちょーだい!
……頼む。
思い出6
これは……
き、さ、ま、らぁぁぁぁぁっ!
俺はお前らのオモチャじゃない!俺は俺だぁぁぁぁぁっ!
邪魔をしないでください!
……ヒントなどくれてやる気はなかったが、少しはいいだろう……
お前さんの前を行く男を思い出せ。
俺の前を行く男……?
!ダグラス……
そうだ。俺はダグラスを参考にした。俺にないものを持っているから……
でも、あいつは俺と同じだ。俺と同じように他人に自分の運命を弄ばれた。
だが、ダグラスは……
あいつは俺と違って、引きずっていなかった……
とらわれていなかった。
ダグラスは怒りや悲しみも全て受け入れ。まっすぐ自分を貫きとおした。ああ、そうか……
わかりました。フゥ先生……
俺の思いは信念ではなくただの執念だ。
お前たちを許すことはまだ難しい。きっと縛られ続けるんだろう。
だが、それを含めて俺は俺だ。だから、受け入れるさ、お前たちを……
まだお前のようにはいかないよ、ダグラス……
なにかわかった?
ああ、わかった。俺は確かに誰かに作られた存在だ。道化師の模造品だ。
それを俺は否定してきた。だが、否定したところで、その事実が俺の一部であることに変わりはない。
自分で自分を否定しながら、俺は俺だと言っていた。矛盾しかないよな……
グレイヴ……
今すぐ恨みや怒りを消すことはできない。でも、それに縛られずにまっすぐ自分の進む道を考えてみるよ。
ようやくわかったようね。
ありがとう、キャトラ。まだ俺の信念はわからないけどそれを探し続ける覚悟は決まった。
なら精神的に成長したアンタならもう人見知りもしないわね!
それとこれとは話が別だと思う。
なんでよー!
人見知りを含めて俺は俺だから。
開き直っただけじゃないのさーー!
覚醒絵・覚醒画像
万象を分かつ者 グレイヴ・ローグラド
その他