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【白猫】Brave The Lion4Story

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん


2019/08/29




序章


獅子複製計画に関する資料178号■■■■博士の手記より抜粋――

獅子複製計画――

<瘴気>を喰らい莫大なエネルギーを生み出す<ミーチャ>を複製し、兵士を量産する計画。

ソウルを療気に変化させることができれば、量産されたミーチャたちは理論上、永遠に戦い続けることができる。

試作一号<ダニエル>の失敗を経て試作二号<ダグラス>で能力の継承に成功。

ダグラスのクローンを量産することで獅子複製計画は達成された。

だが、試作二号にも欠陥があった。

二号は療気を貯蔵することで長期間の活動が可能だ。それ故に瘴気を吸収しなければ生存を維持できず、また――

貯蔵された瘴気によって確実に肉体を蝕まれていく。

使い捨ての兵士としての役割は充分に満たしているため、獅子複製計画は成功と言えるだろう。

――だが、本当に成功と言っていいのだろうか?ダグラスは不完全だ。

この結果は私にある命題を突きつけているのではないだろうか?

――私は神の領域には至れない。

ああ、当然だ。愚かしい思考だ。だが――

――ミーチャに別のものを<混ぜ>ることでさらなる高みに至れるのではないだろうか?

例えば、ダグラス、他にも魔竜と神獣を合成した双子などは使えそうじゃないか。

可能性があるのならば、試してみる価値はある。


本当にろくでもない男ね、ヨーゼフ……

こんなもの、読まなければよかったわ……どんな顔してあいつに会えばいいっていうのよ……


…………

……



おらよ!!

ダグラス、ターゲットだ。

うおおおおおおお!!



もういいぜ、バイパー、魔物は倒したし、こいつが出してた瘴気も俺が食った。

ああ、確認した。

これでルエル・サクラリッジとデルガドが残した瘴気の発生源は全て破壊できた。

やっと終わったか……つきあわせて悪かったな、バイパー。

気にするな。飲みに行くぞ。

あんた、毎回、それだよな。まあ、かまわねーけどさ……

ヒストリアの件にかかわった連中には声をかけてある。

祝勝会だ!記憶がなくなるまで飲むぞ!

ああ、いいぜ。本当、ここまで来るのに、いろいろあったからな……

クロエ姉ちゃんと出会って、自分がミーチャだと思ってたら実は違っててよ。

ヒストリアでルエルとデルガド、ぶっ倒して、やっと連中の悪さを終わらせられた。

そういう話は酒の席でしろ。

それもそうだな――

ダグラス?

いや、体……が……

ダグラス!ダグラス!!

(まさか……な……)




最終章 Brave The Lion4



story2



おいおい、どうしたんだよ?んなしけたツラしてさ……

ダグラス、本当に大丈夫なの?なんか髪型まで変わってるけど……

大丈夫に決まってるだろ。ここのところ、がんばりすぎただけだって。過労ってやつだ。

髪もまたすぐに伸びてくるさ。

倒れたと聞いた時は心配しましたけど、さすがダグラスさんですね。安心しました。

カティアさまのお墨付きだからキャトラさんも安心してください。

……そうね。過労よ、過労。

ここ最近、ダグラスは真面目にお仕事してたからな。オレが休めって言っても、聞かね~んだもんよ、こいつ。

本当に心配したわよ。もう無理するんじゃないわよ。

悪ぃ、悪ぃ。ただ、こわーいお医者さんたちに寝てろって言われてるからさ、打ち上げ、ここでやろうぜ。

ダグラス、本当に大丈夫なの?

大丈夫だって。姉ちゃんも心配しすぎなんだよ。そんなことより腹減っちまってよ。姉ちゃんのシチューはまだか?

ええ、すぐに用意するわ。

じゃあ、今日はダグラスの家でホームパーティーよ!

…………

料理の準備なら手伝います!

お母さん、僕もお手伝いするよ!

…………

どうした、カティア。

……別になんでもないわ。アンタもボケっとしてないでヨシュアとミレイユを手伝いなさい。

わかった。


……本当にいいの?

本人がそう言ってるならそうするしかないでしょ。私やアンタにできることは、もうなにもないんだから。


…………

……


…………

パーティーの片付け、ひととおり終わったわ。

悪かったな、姉ちゃん。片付け、任せちまって。

気にしないで。それより今日は楽しそうでよかったわ。ゆっくり休んで早く元気になってね。

……実は、そのことなんだけどさ。

少し話があるんだけど、入っていいかしら?


おう!どうした、カティア。

アンタの体調に関してよ。

それ以外にも込み入った話があるから、クロエ、少し席を外してくれる?

ええ。なにかあったら呼んでね、ダグラス。しばらくこの家にいるから。

悪いな、姉ちゃん。

……私一人しかいないんだから無理する必要ないわよ。

ああ、そうだな……

ぐっ……はあ、はあ、はあ……まさか、こんなに痛むなんてな……

瘴気の影響ね。安静にしてれば痛みは引いてくわ。

アンタの容体に関してオズマたちには話してある。ハーブも気づいてるわね。

そうか……

ヨーゼフの資料にも書いてあったけど。アンタの体はもう限界よ。そもそも人にとって猛毒の瘴気を取り込むこと自体、狂ってるのよ。

なんとなく気づいてたさ。自分の体のことだからな。

それを知ってて、後始末なんか続けてたの?

どのみち、瘴気を吸わなきゃ俺は生きていけないんだし、しかたがねえさ。

……根拠のない希望的観測を述べるのは嫌いだからハッキリ言うわね。

瘴気を摂取せずに生活するなら痛みや苦しみはないわ。でも、もって半年ね。あなたの肉体の動力源は瘴気だもの。

…………

瘴気を摂取すれば、一年まで寿命は伸ばせる。でも、その痛みはどんどんひどくなるわよ。しかも、治る可能性はほぼゼロ。

どちらにせよ、結局死ぬわ。長く苦しむか、短く穏やかに終わるかの違いよ。

否定してあげたいけど……ごめんなさい。無理ね。

あんたが謝る必要はないさ。いつかこうなるってわかってたしな。

天才はね……

不可能って言葉が嫌いなの。アンタがどっちの選択をするにせよギリギリまであがいてやるわ。

ありがとな、カティア。ああ、それと、姉ちゃんには黙っててくれ。オレから言う。

……わかったわ。



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story3



みんな帰ったわ。カティアは、また明日来るそうよ。

ああ、わかったよ。ありがとう、姉ちゃん。

…………

そういえば、さっき、なに言おうとしてたの?

ああ、さっき……ああ、ありゃあ……そうだ!シチューだけじゃなくてステーキもうまかったって言いたかったんだよ。

そう、ありがとう。私も帰るわね。

ああ、今日はありがとうな、姉ちゃん。


 ***


「言えるわけねぇよな……」

(いつか限界が来るだろうって予感はあった。覚悟もしてた……

悪くないさ。上等だ。そもそもダニエルがいなきゃ、とっくの昔に終わってた)

まぶたの裏にある闇に自分の思考が飲まれていく気がした。なにか考えなければ、このまま冷たいなにかに飲まれてしまう。

(ああ、オレは満足してる。文句ねえ人生だった。仲間もできたし、守りたい人も守れた。充分だ。それで充分じゃないか)

己を鼓舞する言葉を並べてもそれは意味を持たずに思考の海に散っていく。

――当然だ。全て己に向けた欺鞘でしかないのだから。虚飾の剣を振るったところで襲いかかってくる怪物には勝てない。

<恐怖>という名の怪物には――

「死にたくねえ……」

剣の振り方も知らない新兵のように震えた声だった。

「死にたくねえよ!死にてえわけねえだろ!覚悟なんてできるわけねえ!」

恐怖をはねのけるように怒声をあげる。せめて運命に抗う姿を自分に見せなければならない。まるで言い訳だ。だが、心が砕け散るよりずっといい。

「ちくしょう……!どうしてオレなんだよ?どうして最期までオレにはなんもねえんだよ……

誰でもいいからオレを……助けてくれよ……」

ここまで情けない声を出せるのかと自分で自分に驚く。その驚嘆が恐怖に波立つ心を鎮めてくれた。

(……わかってんだよ。もうどうしようもねえってことくらい。泣いて叫ぽうが、現実は変わらない)

夜の闇と恐怖は似ている。どちらも死を想起させる。

(誰かと話してえ……)

他人がいるなら弱い自分を見せることなく、まだ大丈夫だと強がれる気がした。


 ***


――以上があいつの状況よ。他の連中に話すかどうかは任せるけど、クロエにだけは秘密ね。

私が言っていいことなのかわからないが……辛いな。

やったのはヨーゼフ。アンタじゃないわ。

…………

ちびっこどもは嘘が下手だ。この島にいる間は、秘密にしておいたほうがいいな。

カティア、あがけるだけあがいてくれ。オレはあいつを死なせたくない。

言われなくてもそのつもりだけど本人次第ね。

…………

……オズマ、お前は多忙だろ?どうしてここに来た?

あら話題変えちゃう?

悲しんであいつが救われるならいくらでも悲しむ。だが、そうじゃない。

ジョニーだけではなく、お前も顔を出したということは良くない報せを持ってきてるんだろ?

まあな、こっちも厄ネタだ。本心を言えば、ダグラスに頼もうと思ってたんだが……

まあ、しかたがない。お前さんらに任せるしかないな。

ルエルが生きてる。

ありえない。たしかに死んだはずだ。

詳しいことを話せ。

オレの広くて大きい目と耳の情報によると、クロエの孤児院があった島でルエルの目撃情報があった。

あいつらにとって因縁の場所だろ?不確かな情報なんだが、無視はできない。

お前は来ないのか?

オレだって手伝いたいぜ。それができないからこうして頼みに来てるわけ。

他の方々も手いっぱいなんです。空いてるのは、ここにいる皆さんだけなんですよ。

請け負おう。ルエルと聞いて放置はできん。

了解した。ダグラスに代わって決着をつけてくる。


「おいおい、そういう話はオレにも聞かせろよ。」


ルエルがなんだって?

お前は休んでろ。

ルエルがかかわってるんだろ?おまえらだけじゃあ手に余るだろ?

やりようはある。

気遣う必要はないぞ、バイパー。それにジッとしてるのは性に合わなくてな。

……アンタ、本気で言ってるの?

本気に決まってるだろ。どうせいつか死ぬなら、最後までオレらしくってな。

それに忘れたか?オレはなんでも<できちまう>やつだってことをさ!



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story4



はあ、はあ、はあ……

そっちに回ったぞ!!

逃がすな!追い込め!!

おとなしくしろ、この殺人鬼が!

???

ひっ!は、放してください……

気をつけろ。武器を持ってるかもしれねえからな。

とっとと始末しちまえ!

まあ、どうせ死刑だろうがな。

当然だ。こいつらに十人以上もぶっ殺されてるんだ。ワシの孫娘も……

そんなことしてないです!

黙れっ!

っう……

さっさと連れてくぞ。今夜は紫の月夜だ。こいつの仲間が俺たちを殺しにくる。

やってません。私、そんなひどいこと、やってません。信じてください……

じゃあ、誰が俺の母ちゃんを殺したってんだよ!!

教えてあげたら?真実ってやつを……

!!

??????

ま、言ったところで信じてくれないでしょうけど。

先生、ルエルちゃん……ごめんなさい……

あんたの安い謝罪なんていらないわ。で、フゥ、どうする?

そのガキはうちで面倒みてるガキだ。放せ。

…………

化物……


チッ!夜になったわ。あー、もうめんどくさい!

ごめんなさい……

だから謝るんじゃないわよ!!

あんたがいないとチビたちの面倒、私が一人で見ないといけないの!本当、めんどうくさい!

化け物がぁぁぁぁっ!

うちのガキに手を出すなら多少のケガは覚悟しろ。

男たちの間を一陣の風が吹き抜ける。

ただ触れたように見えた。それだけで男たちは意識を失っていた。

…………

先生、ルエルちゃん、ありがど~!!

うっとうしいから離れてよ!ああ、服に鼻水ついてる!バカ、アホ、トンマ!

ひっく……ごめん……なさい。

……帰るぞ。

この人たちはこのまま置いていくんですか?

職務外だ。

でも、この人たち、魔物に襲われるかもしれないし……ルエルちゃん、どうしよう?

あのね、こいつら、あんたを拉致ろうとしたのよ?それを心配するの?

でも……

……ああ、もう!魔物避けの魔術かけとくわよ!それで朝までなら大丈夫でしょ!

あ、ありがとう、ルエルちゃん。

あんたがいるとイラつくからフゥと一緒に帰りなさいよ、バカ!

うん。本当にありがとう、ルエルちゃん!

だから、帰れって………ああ!もういいわ。好きにしなさい。

ほんと、バカの相手ってめんどうくさい……



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戦いを終えたダグラスは、自らの終わりが近いと知る。

だが、因縁は獅子に安息を許さない。

魔剣士は命を燃やし、最後の戦場へと赴く。





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