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【白猫】バトルアイランド Story1

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目次


Story1 ゲーム開始

Story2 氷闇の牙

Story3 待ち伏せ

Story4 黒獅子

Story5 山岳のブドー

Story6 共同戦線?

Story7 ふざけるな!

Story8 再開

Story9 呪縛

Story10 激突

Story11 むかつく奴

Story12 迷う者

Story13 ピットフォール

Story14 臆病者

Story15 カモン!

Story16 杯の番人

Story17 神泉の雫

Story18 ひとつの決着

Story19 兄の背中

Story20 レイガの目的

Story21 人造種

Story22 折れない心

Story23 超越する光焔

Story24 覚醒する氷闇

Story25 最速の冒険家

Story26 それぞれの信念

Story27 名乗り上げ

Story28 最後の注文

最終話 サイキョウの荷馬車



登場人物


bp 



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ここが剣闘の島、コロッセオね。

金かかってんなー。ここでやんのかー。

そーいえば、アンタ。ヴィストリニルグがよく参加を許してくれたわね。

あ?トリ公?あのヤキトリが許すわけないっしょ。黙ってるに決まってんじゃん。

えっと、ここはどんな島なんですか?

戦うため作られた人工島らしいぜ。


よー、久しぶりだなあ、オウガよお!

……久しぶりだな。ライネルの叔父貴。

こいつがあんたの知り合い?

ああ、俺様がライネルだ。よく来てくれたな、存分に暴れてってくれや。

じゃあ色々と準備があるからな。楽しみにしてるぜえ。

なんかギラギラしてんなー。

血の気の多い奴だからな。やりすぎなきゃいいんだが……

もしかしてあんた、あいつが悪さしてねーか確認に来た、とか?

……抜けたとはいえ、荒野の民だ。悪いか?

べつに。つかあたし関係ないし。ちゃんと賞金さえ出れば、お好きにどーぞって感じ。

お金のことはっかねえ。

ことばっかじゃないし。それしかないの。

それにしても、たくさんの人がいるね。みんな参加者なのかな?

ああ、そうだぜ!ざっと100人ってとこか?この大会に参加すんのはよ!

びっくりした!急に誰よ!

あっとすまねえ!オレはエディ。この大会に参加する冒険家だぜ!

いや、ひとりじゃ心細くてよ。あんたら話しかけやすかった……か、ら……マジかよ!

あ、あんた……!あんたは……!

ん?あたし?なに?

ミコ!ミコミコミコ!光焔の御子!?御子さまじゃねえか!

マジかよ嘘だろ!

アンタ、シャルの知り合いなの?

違うぜ!けどな、知ってるよオレ!だってルクサントの出身だからな!

御子さまは旅に出て、今世界中を見て回ってんだろ!すげえよなあんたマジ尊敬!

ねえねえ御子さま、なんで参加してんの?やっぱり修行?御子ともなると、休まず?

……その通りです。わたくしが守らなければならないもののため、研鑽(けんさん)を積んでいます。

ほう、そうだったのか?

(うっせえ!御子ブランドは守っといた方が便利なんだよ!)


皆様、大変長らくお待たせいたしました!

きゅ、急になんなの?

静かに!いよいよ始まるみたいだぜえ!

己こそ最強、そう信じて疑わない強者たちよ――

その力、ここで証明してみせろ!

wうぉぉぉぉぉ!!!

なら、こいつを受け取れー!

なんだこりゃ?

今お配りしたのは、<剣闘のルーン>ッ!!この島で行われるのは、弱肉強食のバトルロイヤル!

そのルーンは闘志や体調によって輝きを変えます!すなわち、ルーンの輝きが失われれば失格!

ルールはシンプル!皆様はルーンの輝きを失うことなく、島の北端にある闘技場、<コロシアム>を目指してください!

コロシアムにたどり着く前には!森、遺跡、市街地などの様々なフィールド!そこにはゲームを有利に進めるアイテムが!

つまり!他の参加者はガンガン蹴落としてOK!最後に残った参加者がコロシアムで激突し、真の強者を決めるのです!

wおおおおお!!!

そして今回は新ルール!時間制限を設けさせて頂きます!

時間が経過するごとに、スタート位置に近いエリアでは、ペナルティを設けます!

休んでるヒマなし!ペナルティを受けたくなければ、コロシアム目指して進むしかない!

wおおおおお!!!

す、すごい熱気だね。

いいからさっさと始めようぜー。


最後のひとりに与えられるのは、最強の名誉と!<莫大な富>!

お前達、欲しくはないかー!

wおおおおお!!!

しゃああああ!!賞金はあたしのもんだー!

では参加者のみなさん!準備はいいですか!?

この会場を出たら、各自のゲームスタート位置まで移動をお願いします!

wおおおおお!!!


バラバラのスタートみてーだな。ははは!手加減はしねーぞ!

しゃあ!!興奮してきたあ!ですよね御子さま!

……問題ありません。わたくしは全力で挑むのみ!

さすが御子さまだぜ!やべえ!アドレナリンが止まらなくてゲロ吐きそうだ!おえええ。

どうしよう、流れにのっちゃったし、アタシたちも参加しちゃう!?

ダメだよ。危ないからみんなを応援しょうね。

あん?ホントに出ねえのか、赤獅子!!

ったく!しゃあねえなあ!楽しみにしてたのによお。

試せ、己の強さッ!!挑め、己の限界ッ!!大変長らくお待たせしましたッ!!

それではゲーム、スタートですッ!



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<剣闘のルーンが強く輝いた!>

ふーん、今のがスタートの合図ね。

……さて、なるべく楽したいんだけど、どうすっかなー。

おーい、御子さまー!

げっ、めんどくさそーなのが来た……


いやー最初に遭遇したのが、御子さまでよかったぜ!

貴方は、たしか……

エディ!アンディでもコーディでもない。オレの名前はエディだ!

(害はなさそうだけどなあ。面倒くせえから脱落させようかな……)

ねえねえ御子さま。突然だけど、オレと組まねーか?

(フツーに考えりや組むほうが楽。最後は後ろから斬ればいいんだし。けど戦力的にこいつはどうなの?)

ありがたい申し出です。

ですが共闘するならば、貴方の力を知りたい。失礼ですが、今まで何を?

(冒険家なら及第点。騎士とか、戦士とか兵士なら、戦闘でも問題はねーだろ。)

オレは、御者だよ。御者!

御者……?御者とは、あの荷馬車などの手綱を引く……?

そう、それそれ!

それじゃねえよ!ー般人じゃねえか!

え!?御子さま……!?口調が……!

やめだやめ!あんたみたいなのに猫被っててもメリットなし!

猫被ってたの!?そりゃないよ!

こっちがねえよ!利用価値ないなら、リタイアしろ!

嘘だろ!ガキのころから憧れてたんだぞ!光焔の御子によ!

ルクサント王国を救う救世主!光焔の主に選ばれし者!光の瞳と焔の瞳を宿す英雄!

見ろよ、この目!御子に憧れて、ガラスでカラコンまで作ったのに!

うるせえ!知るか!ただのやベーやつじゃねーか!ここでリタイアさせてやらあ!

待って!オレ役に立つ!マジで!

この大会の参加者の情報とか!戦い有利に進む感じのやつ!

……おし。聞いてやる。言ってみ。

ありがと御子さま!マジ天使だよベイビー。

有力候補は山岳のブドー。剣の達人ミヤモトタケシ。拳撃の天才アレイ。

マジヤバは剣闘士グラディール!歴戦の冒険家だよ!優勝候補のー角。

それとアレン・ルロワ。実力もヤバイけど性格も超好戦的!めっちゃ優勝候補!

どう?オレ役に立つだろぉ~?

ん~惜しい!

惜しい!?

あとちょっと!どうせあたし戦わないから、参加者の情報はなあ……

だって、光焔の御子はいつだって正々堂々――

後ろから刺します。

やめて!オレの御子を汚さないで!

役立たずはここで退場しなさい!

剣を振り上げないで!わかったごめん!

この先にある橋!さっさと渡ったほうがいいとか!どう!?

ふーん、どういうことよ?

最初の海岸線からコロシアムのある島に渡る橋は隠れる場所のないー本道さ。

もし他の参加者に先を越されると、待ち伏せを食つちまって、ちっとばかしメンドーかも!

なるほどね。おっけ。おっさん、合格。

じゃあ、オレは――

しゃあない。組んでやるよ。でも御子さまやめろし。名前でいい名前で。

おっけー!シャルちゃん!

シャルちゃん~?……ま、いいや。さっさと行くぞーエディのおっさん!


…………

……


ゲームなんてどうでもいい。早く兄さんを、見つけないと――

…………

私なんかに兄さんが、止められるのかな……

w待ちなよ。逃がしはしないさ。

――誰?

ボクは剣闘士グラディール。運が悪かったね。開始早々にボクとぶつかるなんて!

動かないで。喋りもしないで。ただそこで立ち尽くして、私が行くのを待って。

――リタイアしたくないなら。

……なに?

今、急いでるから、私。

待てよ。女だから手加減するとは言ってないぞ。

あっそう。……あなた、強そうね。

急に媚びるのか?臆したなら、素直にそう言えばいい。

わからない?

何がだ?

あんまり喋らない方が、恥の上塗りしなくてすむって言ってるんだけど。

――さすがに、笑えない冗談だな。死ぬよ、君。

……はぁ。

気にすることないよ。あなたが弱いわけじゃない。

私が強いだけだから。



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こ、このボクが……バカな……ー体どれほどの鍛錬を積めば、君の年で、そんな力を……

さあ、知らないけど。でも生まれたときから、剣は握ってた。

剣に愛された少女、か、ー完敗だ。

(ホントは五才くらいからだけど、ま、いいか)

もう時間制限?ペナルティはめんどくさいな。移動しなくちゃ。

……待ってて、兄さん。


…………

……


くそ!!

どこだ!どこにいる!?

ここだ。

いつの間に……!

ダメだ。速い!速すぎるぞ!!

貴様ら程度に、俺の<神気脚>は捉えられん。

うわあああ!!

……つまらん。――貴様は、楽しませてくれるか?

はははっ!待ち伏せたぁ、燃えるじゃねえか!

ふん。初撃は防ぐか。だが、貴様も敵ではない。

どうだかな。決めんのが、早すぎやしねえか?


調子乗ってんじゃねえ!オラァ!!

……なに!?手応えがねえ!

――残像だ。

ぐあ……!

諦めろ。貴様のスピードでは、俺を捉えることはできない。

棄権しろ。俺が戦いたいのは、強者だけだ。

確かに強えよ、オマエ。……名を名乗りな。

――アレン。

(動きは直線的で未熟だ。まだまだ経験不足。とりあえず話して時間稼ぐか。)

名乗っといて、オレの名前は聞かねえのか?

知るのは強者の名だけでいい。貴様に興味はない。

へっ、そうかよ。だが断言しとくぜ。――勝つのはオレだ。

俺の動きも捉えられないようだが?

それはどうかな?こっちは年季がちげえのさ。オラア!

<オウガが地面を蹴り、アレンに砂を浴びせた!>

やれやれ、無駄な足掻きだ。

そいつはどうかな?

自らー本橋の上に……愚かな、自分で逃げ道を塞ぐとは!

やはり貴様は、期待外れだ!

へっ!待ってたぜ――

ぐっ!!なにっ!?

……なぜだ。貴様は、俺の姿すら捉えていないはず……!

来る方向がわかるならよ。速いだけなんざ、どうとでもできるぜ?

言ったろ。場数が違うのさ、ルーキー。

……貴様、名は。

<金獅子>オウガ・ザ・ドレッドレオン。

くくく!ははははは!!こうでなくてはな!

強者との戦いだけが、俺を強くしてくれる!

俺は嬉しい!がっかりさせるなよ、オウガ!

ハハハ!その台詞、そっくり返すぜ!

wおいお前ら!勝手に暴れてんじゃねーぞ!

wこのゲームの参加者はお前たちだけじゃねえ!

ははは!面白え!

チィ!邪魔をするな!



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案内ご苦労さん。で、なにここ、街?

無人だけどな!市街戦を想定して作られてるらしいぜ!

はー、金かかってんなー。何してんの、おっさん。

いや、アイテムが隠されてるって聞いたからさ!なんかねえかなと思ってよ!

まだまだ長丁場のサバイバルだぜ。食料とか、武器とかよ、飛び道具があればゴキゲンなんだが――

ふーん。じゃ、あそこの家で休んでるわ。

ぇえ!?そりゃないよ、シャルちゃん。

協力すんでしょ?あんたがアイテムなり食料探して、あたしは昼寝してっから。

これで分担できてんじゃん。

分担、なのかあ?オレの憧れたのはよお、もっとこう、なんか……わかる?

わかんない。よくあんだよねー、勝手にイメージ押しつけられること。そもそも御子の前に、あたしはあたしなわけ。わかる?

わかんねえよ!じゃあオレはどうやって御子になりゃいいんだよ!

知らん。筋トレでもすれば?

そもそもこんな状況で昼寝するの?御子以前の問題としてどうなの?他の参加者はどうすんのよ?

っさいなあ。昼寝しないと、力出ないの。他の参加者は無視してよし!

そんな……なんかよお、そんなのよお……

ごちゃごちゃうっせえ!さっさと行ってこい!なんの成果も挙げられなかったら、ぶった斬るぞ!!

ちょっと、剣!あぶない!わかったわかった!行く!行くってば!!

ったく、仕方ねえ奴だな。じゃー昼寝昼寝♪


 ***


おー、ベッドあるじゃん!

ん、なんだこれ?地図?

ヘー、島の全体がわかるじゃん。エディのおっさんが帰ってきたら確認させるか。

(この足音、おっさんじゃねえ。他の参加者か?)

悪いけど、あたしが先にとったから。

地図、か。悪いが俺もそれが必要だ。

あっそ。じゃあやるよ。

<シャルロットが地図を放り投げた!>

なんつーと思ったか、よ――!

今のかわす?マジ?

邪魔をするなら、ここで散れ。

俺は<黒獅子>のレイガ。お前を狩る者の名だ――



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街外れまで来たのに、なんも見つからない!シャルちゃんに殺される!

ダメだダメだ。御者やめてこんな大会に出たって、母ちゃんに知られたらよぉ。

考えただけでも、背筋がブルっちまうぜ……

ん、おいおい!こりゃあ、なんだ!?

<エディは重火器のような武器を見つけた!>

やったじゃん武器だよ!よっしゃあ、これがありゃ、オレだって戦えそうだぜ!

しかしなんだこれ、大砲か?撃ち方とかわかんねえぞ……?

b待ちな!お前さんよお!

あ、あんたは……ブドー!

bほう、オラの名前知ってるのけ?そういうお前は誰だってんだい?

オレは、オレは……

(ヤバいよ!どうしよう!戦ったら死んじゃう!)

b答えろ!お前さんは誰だ!

えっと、オレは、オレは……

bその目の色の違い!まさかお前さん、あのルクサント王国の、光焔の御子……!?

…………

そ、そうだ!……よくわかったな!

bまさかここで出会えるとはな。参加しているという噂は聞いていたが、これこそ戦士の誉れ!

ああ、ああああ!!光栄だなあ!!そう言ってくれるとお!!

よし、やるか!やるかあ!!

b……まさか、お前さん、ビビっとんのけ?

……びびるだ?誰がだよ!誰がビビってんだよ!!

bぜははは!まさかあの御子がタマナシだとはのお!

(確かに本物はタマナシだけどよ!)

b期待外れもいいところだ。うむ。今回だけ、見逃してやろう。骨のない奴と戦うつもりはない!

(た、助かった……?いや、ここで折れちまったら、オレは……

なんのために参加したんだよ。ビビるためじゃねえだろ!エディ!)

ま、待てよ!おい!

b……言ったはずだぞ。今回だけだと。

お、おう!聞いたぜえ!来いよ!来いよオラァ!

b……その意気に免じて、今回だけ見逃してやる。……次はないぞ。

見逃さなくていいって言ってんだろ!!

bお前さん、死にたいか!?見逃してやるって言ってんだよ!わかれよ!おいい!!

舐められるのはごめんなんだよ!!か、かかってこい!

b……その意気は見事なり!だが、もう次はない!これが最後だ、本当のな!

じゃあね!!

だから待てって言ってんじゃん!オレはよ!チビリながら勇気出してんだよ!

ムゲにすんなよ!戦えよ!

bなんでよ!無駄な血流さなくていいならそれでいいじゃん!オラだって御子と戦いたくない!

……え?

b……あ。

いいから、やるぞ!やるぞおおお!!!おいいい!!

bホントけ!?来んのけ!?来んのけえええ!!

あああああああ!!!

bあぶな!!ふりまわすの、それ!撃つんじゃないの!?

知るわけないだろ!使い方知らねえからよ!!ああああああ!!!

bあ、危ない!ちょ、あぶな!あぶないから!

うわあああああ!

bちょっと!!ごめん!ストップ、話聞いて!話聞いてえ!!



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これならどうだ!

――なっ!全部弾くとか、曲芸かっつーの!!

剣に必要なのは力ではない。正確さと――

相手の意表を突く、アイデアだ。

ぐあッ――!!

ハァハァ……ざっけんな……

あきらめろ。

素養は悪くない。だが雑念の多い剣だ。まるで俗物、宝の持ち腐れ――

うるせえ!あたしは上からモノ言われんのが、大嫌いなんだ!

ごちゃごちゃ言うのは、このー撃をさばいてからにしやがれ!

……ほう。

はあああああ!!

とでも思ったか?この野郎!

ばーか!ばーか!このアホー!

ハァハァ――!ひとりでやってろ!得もねーのに、誰が本気でやるかってんだ!


 ***


クッソ。今のマジでヤバかった……

リタイアとかシャレになんないし!勝ちきれないなら逃げる!あいつは後でシメる!

っ!

……前くらい見て走ったら?

悪い悪い。ちょっと逃げてたもんでさ。

……そう。それで、どうする?

急いでるから、あんまり構ってる暇ないんだ。やるなら、さっさとすませよ。

いや、やめとかない?あたしもうムリ。疲れたもん。

……はあ?

剣で語り合うとか、そういう気分じゃないのよ。つか語り合えるわけねーじゃん。

とにかく!あたしはもう戦いたくない!疲れたの!

何が何でも襲いかかってくんなら仕方ないけどさ。できるならお互いスルーしない?

……よくわかんないけど、じゃあ何のために参加したの?

優勝賞金。

なるほど、わかりやすい。

でしょ!だから、隠れて優勝できるならそれでいいのよ。

じゃあ、私と戦う気もないんだ?

ないない。漁夫の利しか興味ないから。

……変なやつ。

私はヨナ。あなた、名前は?

シャルロット。シャルでいいよ。

ならシャルロット、聞きたいことがあるんだけどー

はあっ!

びっくりしたー。さんきゅー。

お礼はいいよ。

代わりにこの魔物の群れ、どうにかしよう。

はぁ……昼寝どころか休憩もナシか……

しゃーない。とりあえず、片付けますか。



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……っ!あんなにたくさん。

落ち着け、ヨナ。

落ち着いてるし、ぜんぜん恐くないから。

恐いかどうかは聞いてないぞ?

…………

だいたい、あんな大勢を相手にするなんてムリだよ。

……私じゃ、足手まといになるし。

大丈夫だ。まずは深呼吸しろ。

――すぅ、――はぁ。

落ち着いたか?

……うん、すこしだけ。

自信を持てヨナ。お前なら大丈夫だ。

そんなことわかってる。……兄さんこそミスしないでよね。

ふっ、その意気だ。背中は任せるぞ、ヨナ。

……うん!


任せる。その言葉は、とても嬉しかった。

乱戦の基本は流れを止めないこと。ー人の敵に時間をかけない。兄さんが、教えてくれた。


……

…………


ハァッ!

(流れを、止めるなー!)

おお!やるじゃん!

……あなたもね。

ま、雑魚相手ならねー。とりあえず、全部片付いた感じ?

待って。

<ヨナは屈み、地面に耳につけた>

魔物の足音。こっちに向かってくる。

へぇ、そんなのわかるんだ?

地面のほうが、音の伝達速度が速い。戦場なら、常識だから。

なになに、あんたも騎士かなにか?

私は……傭兵だよ。

ふーん。じゃ、あんたも金目当て?

違う。私は人を探してるの。名前はレイガ。――知らない?

え、レイガ……?……なんで、探してんの?

私の兄なの。このゲームに参加してて、探してるんだけど……

ふ、ふーん。そうなんだ……

(兄貴かよ!……それってもし合流されたらあたしがピンチじゃね?)

なに?兄さんのこと、知ってるの?

いや、知らない知らない。……あー!あそこにいるのって!!

え!?なに?

ちょっと、いきなり押すなんて――って!!

シャルロット!いったいどういうつもり!?

ホントごめん!けど、リタイアするわけにはいかねーんだよ!!

はあ!?意味分かんないんだけど!!

って待って!待ちなさい!

あの女(アマ)ァ~!!ふざけんなー!!



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はぁはぁはぁ。強そうだったし大丈夫だとは思うけど。

ちょっと悪いことしたかな。金と人間性、どっちが大事なんだって話だよ。

……金だよ。今回に限っては!

あたしは優勝してスローライフを送らなきゃいけねーんだ。

お肉はビーフ、チキンはNG。デザートは毎食後。仕事は週休五日!

そのために、がんばるって……決めただろーが!

こうなったら絶対優勝してやる。うん、それしかない。

うぉおおお!!こんなところにシャルちゃん!渡りに船だぜ!昼寝してなかったんだね!

おー、おっさん。こんな所まで出てたの?で、どだった、収穫は?

ああ、変な武器を手に入れてよ、オレもいっぱしの冒険家っぽくなってきたところ――

じゃねえ!大変なんだ助けてくれ!

このままじゃ、ブドーの奴が殺されちまう!

あん?ブドーって誰?話が見えねーっての。まずは落ち着けって。

落ち着いていられるかあああ!!!

うわぁ!危ねえ!!

危ないのはお前だ!このイカレ女!

人を魔物の群れに突き飛ばしておいて、どういうつもり!?

やっぱ、大丈夫だったか!

あんたなら大丈夫だと思ってたよ。

うるさい。黙れ!

地面とキスがしたいなら、私がさせてやる!剣を抜け、卑怯者!!

誰!?めっちゃ怒ってるじゃん!

あー、ちょっと、まあ、色々あってさー。

どうせ怒らせることしたんだろ?想像つくよ。

でもでもでも!今はそれどころじゃないぜ!

頼む落ち着いてくれ、お嬢ちゃん。オレの名前はエディ。今ヤバいんだよマジで。ホントにピンチなんだ。

……私はヨナ。あなたの状況なんか知らない。用があるのはこの女。

お肉はビーフ?チキンはNG?なに眠たいこと言ってんの?

ビーフでもチキンでもポークでも、ありがたく感謝して食べな!

贅沢ばっか言ってるとウシになるんじゃない。ーウシ女。

ああ!?黙って聞いてりゃー誰がウシ女だコラァ!アッタマ来た!

いくら温厚なあたしでも、それ以上言うと許さねえぞ!!

温厚!?どの口で言ってんだ!?

この口に決まってんだろ!黙ってろおっさん!

ハイ!

上等じゃない!こっちの台詞よウシ女!

またウシって言った!この……青モヤシ!

はあ!?誰がモヤシ!?どこにそんな要素があんの!?ふざけんな!

待って!!マジで待って!修羅場に巻き込まないで!!

とゆーかオレの話聞いてよ!!今、ライネルって野郎がブドーをヤっちまおうとしてんだよ!

頼むよ!助けてシスターたち!

……え?ライネル?

オレとブドーが戦ってたらよ、急に割り込んできて、めちゃくちゃにしやがって……

ダックハントみてーに遊んでやがる。残酷だよ、人問じゃねえ!

ライネルってたしか、荒野の民を抜けた……

バトルアイランドの主催者。血を見たくて、自分もゲームに参加してるの。

案内して。ライネルのいるところ!

え!?なんでヨナちゃんが!?助けてくれんのかい!?

いいから!!はやく!!

あ、はい!!こっちです!!

ふんだ!勝手にしろ!あたしは行かねーからな!

…………

「……抜けたとはいえ、荒野の民だ。」

……ちっ。

ああもう!!少しくらい、休ませろ!!




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ふざけてんじゃねえぞヨナ!ああ!?

オメーの仕事は斥候だろうが!誰が盗賊に襲われてる村を助けろつった!?ああ!?

ごめんなさい。……私は、ただ――

俺たちは傭兵なんだよ!金で要望通りに戦うのさ!それが分かんねえのかよ、オイ!!

……っ。

なんとか言ったらどうだ!?おい!?

……すみませんでした。

役立たずのクソガキが。

…………


ヨナ。

……私はいけないことをしたの?助けを求める人がいたら、助けちゃ、いけないの?

――傭兵としては、失格だな。

…………

だが人として、お前は正しい。お前は何も、問違えてなんかいないよ。

……兄さん。

自信を持て、ヨナ。もし次に同じことがあっても、同じことをしろ。

……うん!ーわかった。

……傷を見せてみろ。

もう、わざと殴られるのはやめろ。お前ならかわせるだろう。ライネルのことは気にするな。

お前が殴られる姿を、見たくないんだ。


…………

……


bわ、悪かったけ。もう許してけろ。もう殴らんでくれ……

許すも許さねえもねえよ!これはバドルロイヤルだ!くたばるまで戦うしかねえだろ!

b剣闘のルーン、とっくに光が消えてるだよ……オラはもう、戦えねえよお……

いつまで殴られなきゃなんねえんだよう……

そんなの俺様が飽きるまでに決まってるだろうが!ガハハハ!!!

bそ、そんな……

ほらほら逃げろ逃げろ!はやくしねーと、殺しちまうぞおー?

bひい、ひいいいい!!

ライネル!!そこまでにして!!

あん?……お前、なんでこんなところにいるんだよ、ヨナ。

……私も参加したの。このゲームに。

ふざけてんじゃねえぞ!!ヨナァ!!

……っ。

参加すんなつったろーがよお!なんで言うこと聞けねえんだ!ああ!?

レ、レイガが、あなたを――

なんだぁ?聞こえねえぞ?おい!!つーか俺に口答えすんじゃねえぞ?オレはてめーの父親なんだよ!

……ごめん、なさい。

はぁはぁ、追いついた!で、こりゃどういう状況だあ?

ふーん。やっぱりクズだな、ライネルだっけ?

次から次へと、ゴミがぞろぞろと……

めんどくせえ。ヨナ、こいつら狩るぞ!

……え?

ライネル傭兵団、団長のライネル様の命令だ!まさか、逆らわねえよな?

…………

返事しろやあ!!

……っ!

え?ヨナちゃん?嘘でしょ!?え!?

私、は……

だっさ。

そいつとの関係なんか知らないけどさ。マジで命令聞くの?

ダサすぎじゃね?そーゆー奴じゃねえとか、勝手に考えてたわ。

bう、うう……

別に正義の味方気取るつもりなんかないけどさ。

――あたしはさあ、弱い者いじめは大嫌いなんだよ、胸くそ悪い!

来るなら来い!ふたりまとめて相手してやらあ!!

がははは!!上等だ小娘が!行くぞぉヨナ!!

……っ!!

……はぁああ!?使えねえにも程があるだろクソガキが!!チッ――興ざめだ。

待てよ、どこ行くんだ。あたしはテメエを許してねえぞ。

どこでもいいだろ。やる気なくしたんだ。それよりオレに構ってていいのか?

手当てしねえと、そいつヤバイだろ。

シャルちゃん!確かに、手当てしてやんねーと!

――さっさと失せろ。あとでぶちのめす。

てめーのツラ、覚えたぜ。覚悟しとけよ。

…………

……シャルちゃん?

bう、うう……

今、手当てしてやっから踏ん張れよ。おいおっさん、手伝って。

あ、ああ。わかったよ。


 ***


クソ!クソッ!!どうして、私はっ――!!

クソッ!!!



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また貴様か――

おう、奇遇だな。さっきは他の野郎どもの相手でうやむやになっちまったからなあ。

おいおい、いきなりかよ!

言葉が必要か?剣で語ればいいだろう!

w怪物だな。このゲームは、……あんな奴らが参戦してるのか。

wへっ!ビビってんのか?

wあのスピード、お前は追えるか?

w……二回、いや三回だ!真横からの斬り込み、そうだろ?

wいや違う。背後と正面を三合ずつ、つまり九回も打ち合ってる。

w九回、だと……!?

wここから先は貴様程度では、無理だ!ふん!

w――いった!!ぐはあああ!!

wここから先は、本当の強者だけが生き残る戦いだ。

このミヤモトタケシや、奴らのような、本当の強者だけが!

――なぜ追ってこれる?俺の剣を?貴様の強さ、その根源はなんだ?

……確かに、テメーは強え。だがな、足りねえんだよ。

足りない?俺の何が足りない!?答えろ!!

気づかねえのか!?オラア!

くっ!!!

どうして踏み込める?間合いを逸すれば、それで終わるというのに。

ちげえよ、間合いじゃねえ。ビビったら、だ。

戦いってのは、精神の削り合いだ。負けるのは力尽きた奴じゃあねえ。心の折れた奴だ!!

心だと?そんな曖昧なもので強さが測れるか?戦いとは強い者が勝つ!

臆そうが、心が折れようが、勝ったのは最後に立っていた者!それだけだ!!

なんだ、ビビってんのか?

臆する?この俺が……?

わかるぜ、テメーの考えてること。

強くなりてえよな、この世界でー番。誰よりも強え。その称号だけが、自分の存在を認めてくれんじゃねえのかってよお!!

だがな!!それだけのオメーには何があっても勝ちを譲るわけにはいかねーな。

……口先だけではどうとでも言える。俺は強い奴を求めて、戦ってきた。だがどいつもこいつも、口が達者なだけの詐欺師だった。

貴様が強さを語るな。本当に強いなら、俺を屈服させてみろ!

安心しろ、そのつもりだ!生意気な野郎は嫌いじゃねえ。<強い>ってことを、テメーの体に叩き込んでやる!

wお前達!!待て!!見事な戦いぶりだな!

だがな、自分達だけで楽しむなら!このミヤモトタケシを、倒してからにしろ!

邪魔をするな、貴様に用はない

怪我しねえうちに帰れ。

wなんだと!!貴様たち、タダじゃすまさ――

――黙ってろ!!



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ここなら休めるだろ。

bう、うう。すまねえ……

しっかし、ひでえ野郎だったよな。あのライネルってやつ。

bこの大会の主催者だよ。

もともとは傭兵だったらしいが、ここで興行を始める前は激しい戦場ばっかを好んで暴れてたらしい……

強い奴がこのゲームに集まるのも、ライネルが率いる傭兵団の評判があってこそだからな。

特にライネル傭兵団の<黒獅子>と<氷闇の牙>の評判はやばい……

このゲーム、オラには早かったみてえだ……

……ライネルつつーのは更生したわけじゃねーみたいだな。

…………

シャルちゃん。オレは感動したよ。やっぱりあんたは、光焔の御子だよ!

うっさい、ちょっと黙ってろし。

このあたしが働きっぱなしなわけ。休憩させてくんない?

…………

どうしたんだよ、シャルちゃん。元気ない?もしかしてさっきの、ヨナちゃんのことか?

ヘー、あいつヨナって言うんだ。知らなかった。

……むかつく。

へ?

考えればわかることじゃん。あんな奴の言うことにビビるか?聞こうとするか?

自分の頭使えっての。命令はいはい聞くしかできない奴見ると、イライラすんだよ。

で、でもよお。世の中ってそういうワケにはいかねーもんじゃない?

御者やってるときは、上司に逆らうとか死ぬようなもんだったよ。

オレはなんとなくだけど、ヨナちゃんが逃げちゃった理由、わかっちゃうぜ。だから同情しちゃう。

あたしは知らないし。むかついたらぶっ飛ばせばいいじゃん。

そんなあ。みんながシャルちゃんみたいにはできねーよ。

できねーじゃなくて、やらねーだけだろ。

御子はこうあるべきだーなんて縛られてた自分つーの?あたしだって、んな時期あったし。

とにかく、次あいつに会ったら、ガツンと言ってやるわ。

やっぱりシャルちゃん、あんたは御子だよ。オレ、嬉しいよ。

なんであんたが嬉しいんだよ!もうこの話おしまい!ちょっと休憩するから見張りよろしく!

……休憩ってわけにもいかないみたいだぜ?ペナルティの発生する時間みたいだ。

ああもう、なんだよ!よってたかって、あたしをイライラさせやかって!

決めた!次あう奴はぶっ潰す!!

と、とりあえず先に進もう!たしかこの建物の地下から、洞窟を進んでいけるはずだ!

あんたは、どうする?

bあ、ここでリタイアします。

おっけー、ご苦労さん!おっと!シャルちゃん、待ってくれって!





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