アクサナ・コルテ
アクサナ・コルテ CV:財満健太 |
2014/12/29 |
バックストーリー
アクサナはその温和な顔立ちとは裏腹に非常に気の短い男だった。
そんな気性が彼を無頼の傭兵たちを束ねる隊長にまでさせたのであるが、本人はそんな自分の性格に悩んでいた。
第一、彼は望んで軍人になったわけではない。
本来はもっと知的で落ち着いた仕事に就きたかったのだが、一度火がついたら止まらなくなってしまう性格が災いし、どの職も長く続かず、仕方なく軍人になったのだ。
そして彼は今、天界の統治者である聖王イアデルの前に座していた。
王宮の侍従として誘いがあったからだ。
「私にそのような資格があるかどうか……」
「君にならできるはずだ」
「……といいますと?」
「いや、君にしかこの役目はできんのだ」
その言葉にアクサナはきょとんとしてしまう。
「私は君の武闘派としての腕を見込んでいるのだ」
イアデルは、将来の世継ぎ候補である、幼い双子の弟、イザークのやんちゃぶりに手を焼いていた。
何人もの熟練の侍従たちを世話役に立て、息子の性格を矯正しようと試みた。しかしいかなる手を尽くそうにも、それは成し遂げられずじまいであった。
というのも、どの侍従もイザークの我が儘に耐え切れず、逃げるように去って行ってしまったからだ。
そして双子の子供たちに会う最初の日がやってきた。
「はじめまして。これからあなたたちのお世話をすることになりますアクサナ・コルテと申します。どうぞよろしく」
「ミカエラです。よろしくお願いします」
「……」
一方のイザークは、新米の侍従を舐めきってそっぽを向いている。
「アクサナです。よろしく」
「それよりさ、お前って強いの?」
イザークの生意気な態度にカッとしたもののアクサナはグッとこらえた。
「傭兵だったって聞いたけど、こんなとこに来るくらいだから、たいしたことないんだろ?」
「そんなことはありません」
「じゃあ見せてみろよ」
「それでは後ほど」
「やだ。いま見せてくれないとやだ!」
そう言って駄々をこねたイザークは、突然アクサナの眼鏡を奪い、窓の外へ投げ捨ててしまった。
「もーつまんないよー」
最初こそ大人の対応をみせていたアクサナだったが、数々の無礼な態度に、ついに堪忍袋の緒が切れてしまう。
「コォラァ! さっきから大人しくしてりゃ、このガキャー!」
豹変したアクサナは、幼いイザークをコテンパンにしてしまったのだ。
「工~ン、怖いよ~」
さすがのイザークもたまらず逃げだしてしまう。
やってしまった。また傭兵部隊へと逆戻りか……そう覚悟を決め、その場を後にしようとしたアクサナをイアデルが呼び止めた。
「気に入った! イザークに本気で手を上げてくれたのはお前が初めてじゃ!」
様子を空から見守っていたイアデルは、アクサナの対応に感心したようだ。
そしてアクサナの肩を叩き、手をギュツと握りしめた。
「これからよろしく頼むぞ!」
アクサナ・コルテはこうして天界の侍従となった。
侍従として、ミカエラ、イザークの成長を見守りながら、彼はやがて侍従長となる。
そしてイアデルが崩御した後も若き聖王ミカエラを支え、その生涯を天界の王家に捧げた。