清夏の木患子(2023夏)
概要
レア度 | 画像 | マス |
---|---|---|
効果
7510
入手方法
厳さま2023夏限定建築
物語
激しい雨の後、蘇の家の前にある木患子の花はたくさん落ちてしまった。夕方になると、地面の水分はとっくに暑さで蒸発し、雨の跡も見えなくなった。蘇はいつものように急須と竹の椅子を木患子の木の下に運び、お茶を飲みながら涼もうとした。見渡すと、村の半数の家からはもう炊事の煙が立ち昇り、夕風の中にかすかに料理の匂いが漂っていた。書院から帰ってくる子供たちが、わいわいと木患子の木の前を駆け抜けていく。地面に落ちた花が、たくさんの小さな足に踏まれ、泥の中に埋まっていった。それを見た蘇は蒲扇を扇ぎ、ため息をついた。「蘇おじいさん、なんか元気ないね、どうしたの?」気配り屋な二戌は足を止めて小さな頭をあげた。「そんなことないよ、ただ、木患子の花がもったいないなってね。」「……木患子の花ってそんなに大事?ここには木患子の木がたくさんあるし、蘇おじいさんもこんなに立派な木を持ってて、まだいっぱい花がついてるのに!」二戌は頭上で咲き乱れる木患子の木を指差した。蘇は足もとを飛ぶ蚊を蒲扇で払い、笑いながら冷たい茶を二戌に注いであげた。「馬鹿にしてはいかん、木患子の花は薬や染料に使えるんだぞ!わしが目の病気になった時はこれで治したんだ。」二戌は驚き、木患子の木と蘇とを見比べたかと思うと、突然こう言った。「蘇おじいさんって物知りだね!さすが元お役人!」「役人だったなんて誰に聞いたんだ?」「お父さんが言ってたよ、蘇おじいさんは今まで会った中で一番いいお役人なんだって。でもどうしてお役人をやめて、ここで畑を作ってるの?」「はは、役人より畑づくりのほうが面白いよ。君も大人になればわかるだろう。」二戌は納得した様子で、飲み終わった湯呑みを蘇に返し、木患子の花を一輪もらって手に取り、夕方の蝉の声と共に帰っていった。