琴弾きの松
概要
レア度 | 画像 | マス |
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効果
1515
入手方法
梅山の七怪
物語
訓と正は書院の同窓生だった。同じ他所から学問を求めに来た若い書生として、知り合った時から親しくなり、この異郷の地で互いに助け合いながら、勉学に励んで来た。訓は北の出身で、詩が得意で、詩には北方の広大で雄壮な雰囲気があった。そして正は南の出身で、琴の曲が得意で、南方の柔らかく綺麗な雰囲気があった。暇さえあれば、二人はいつも書院の裏山の一本松の下で、琴を撫で、歌をうたった。凌霄花が青い松に絡みつくように、古琴の音と詩歌は織り交ざった。琴の音色は、山間の木の葉の音に合わせて玉盤に珠を落としたようであり、詩歌は、行雲流水の如く、朝靄と共に流れていた。科挙の後、二人は共に官位につき、朝廷に仕え、互いを同輩と呼び合った。朝廷に入った訓は、官運に恵まれた。一方、正は仕事がうまくいかなくなり、地方へ行って、小さな県の県令になった。山と海を隔て、二人はいくら連絡したくとも、どうしようもできなかった。同窓の情は、時とともに忘れ去られた。そして時が過ぎ去り、白髪の訓は官職をやめ、故郷に戻る時が来た。帰省の途中、かつて勉学に励んでいた場所を通りかかると、訓は手を振って馬車を止め、当時の書院に再び足を踏み入れた。息子に手を引かれ、訓は書院の裏山に登った。山の中腹で立ち止まり休んでみると、目に映るすべてが、あの時のままだった。青き松も、古琴も、変わらずに残っていた。老人は心の中で旧友への思いが蘇り、遠くの白い雲を見つめ、涙ぐみながら口元を震わせた。「樽前に、我が友あれば、思ひ出す。今この場所で、想ひ悲しむ。」老人は山を下り、しかし十歩ばかりで振り返り、名残り惜しそうに松を見た。老人が去ってしばらくすると、山の中に琴の音が響いた。その音は泣き声のようにかすかに響き、林の中の鳥たちを一斉にさえずらせた。