【ストーリー】EPISODE 6-42 難解ロジック!

| EPISODE ◆ 6-42 難解ロジック! 冥府の番人 |
登場人物
デア、グリム、オルト、S.T.Y.X.所員オペレーターA
テキスト全文
── S.T.Y.X.研究所‐管制室 ──
イデア:「正確なブロット蓄積値を計測しようとすると、そのたびに数値が著しく狂うんだ。」
イデア:「ファントム化した被検体と同等か、」
イデア:「それ以上のブロットが溜まってるレッドゾーンな数値が出たかと思えば……」
イデア:「次の瞬間には限りなくゼロ、みたいな数値が出る。」
イデア:「ヒーリングルームでブロットケアを試みても、全く効果がなくって。」
イデア:「見てよコレ。」
── S.T.Y.X.研究所‐個室 ──
グリム:「むにゃ……ユウ、デザートひとくちよこすんだゾ……ぐぅ……。」
オルト:「すごく気持ちよさそうに寝てるね。各数値もすごく安定してる。」
イデア:「謎の組織に攫われて、よくヘソ天で爆睡できますな……。」
イデア:「その謎の組織のボス(仮)が言えたセリフじゃないですが。」
イデア:「バトルシミュレーターの他にもいろいろと検査をしてみてわかったけど……」
イデア:「グリム氏には、なんらかの強烈な魔術がかけられた痕跡がある。」
オルト:「彼の耳から出ている青い炎……魔獣だから種族特有のものかと思っていたけど、」
オルト:「もしかすると兄さんと同じで、呪いが具現化してるの?」
イデア:「そのセンで術の解析を試みたけど、かなり複雑な魔法が重ねがけされてて、全体像が掴めない。」
イデア:「『S.T.Y.X.』の保有するスーパーコンピューターの処理能力をもってしても、」
イデア:「解析し終わるまでに100年かかりそうだよ。」
イデア:「重ねてある魔法の浅めの階層を覗いてみてわかったのは、かなり古い魔術だってこと。」
オルト:「古いって、どれくらい?」
イデア:「1000年前の原始魔法クラス。」
イデア:「誰がなんのためにグリム氏にこんな複雑な魔術を施したのかわからないけど……」
イデア:「現状、グリム氏に施されてるブロット耐性が“呪い”なのか“祝福”なのかもわからない。」
オルト:「というか……そのふたつは呼び名が違うだけで、」
オルト:「「相手になんらかの魔術を付与する」という点で同種の魔術だもんね。」
オルト:「違うのは、術者の感情がプラスなのかマイナスなのかだけだ。」
イデア:「そう。僕たちの一族が代々受け継ぐ、溜まったそばからブロットを焼却する呪いだって……」
イデア:「人によっては一生暴走しなくて済むありがたい“祝福”だけど……」
イデア:「きっと僕らのご先祖さまからすれば、二度と謀反をおこさないよう施された“呪い”だ。」
オルト:「………………………………。」
オルト:「シュラウド家が代々『嘆きの島の番人』をするよう命じられた原因は……。」
オルト:「初代当主が『原初のファントム』と呼ばれるタイタンズを引き連れて、」
オルト:「ジュピター家に謀反を起こしたから……だったよね?」
イデア:「そう。で、結局ジュピターにコテンパンに負けて……」
イデア:「罰としてファントムを封じ込めるための牢獄『タルタロス』と、」
イデア:「ファントムの墓場『冥府』の管理を押し付けられた。」
イデア:「まったく……ジュピターを倒して一族のトップになろうだなんて、信じられない。」
イデア:「勝率低いのは分かってただろうに。本当に拙者の祖先か?」
イデア:「おかげで子孫一同全員が大迷惑。夢も希望もないとはこのことだよ。」
イデア:「歴代当主はこの世からファントムがいなくなれば、」
イデア:「この辛気臭い場所からも番人の役目からも解放されると考えて」
イデア:「せっせとブロットの研究に勤しんできたわけですが……」
イデア:「ま、ご覧のようにどうにもならずに、イマココ……ですわ。」
イデア:「僕も昔は「全人類に僕らと同じ呪いをかければ、全て解決だ!」とか考えて、」
イデア:「自分にかかった呪いの解析とかしてみたけど……」
イデア:「解析しはじめて3分で気づいた。」
イデア:「体内のブロットを焼却し続ける呪いが、ブロットがないときになにを燃やすのか。」
オルト:「ブロットの素である魔力……だね。」
イデア:「そう!」
イデア:「僕らはブロット(負のエネルギー)を生産し続けないと、生きてるだけでMPが消費されるデバフがかかってる。」
イデア:「溜まったブロットがすぐに焼却されるだけなら、」
イデア:「シュラウド一族は全員陽気でハッピー&マジカルパワー炸裂のヒーロー集団なはず。」
イデア:「でも婆さんも父さんも、魔法は魔導デバイスで補助してた。しかも超絶マイナス思考なダウナータイプ。」
イデア:「その段階で“呪い”が最悪なものだって普通はわかる。……子どもの頃の拙者、察し悪すぎか?」
オルト:「…………………………。」
イデア:「ブロットを燃やし続ける僕らの身体は、この嘆きの島の地中深く……」
イデア:「負のエネルギー渦巻くファントムどもの墓地『冥府』を管理するためだけに適合してるわけ。」
イデア:「最高によくできた呪いだよ!」
イデア:「さすがは『神々の時代』と呼ばれた古代にかけられた呪いですわ。」
イデア:「拙者ごときがどうにかできるわけがない。」
オルト:「……兄さんは天才だよ。」
オルト:「だから、本気を出せばこの状況を変えられるかも!」
イデア:「そりゃ、拙者はけっこう優秀ですよ?でも……」
イデア:「先祖代々どうにもならなかったことを、なんとかできるほどじゃない。本気出すだけ無駄。」
イデア:「………それに、オルトだって忘れたわけじゃないだろ。」
イデア:「この場所から出ようとして、“オルト”がどうなったか…………。」
オルト:「それは…………。」
イデア:「僕の運命は生まれたときから決まってる。」
イデア:「この暗くて辛気臭い場所で、亡霊たちと一生を共にするしかない。」
イデア:「万が一にも僕らが役目を放棄し」
イデア:「『タルタロス』に封じられたファントムたちが地上に溢れ出すことがあれば……」
イデア:「世界はまた混沌(ふりだし)にもどる。」
イデア:「そしたら気になってる漫画の続きや『がけも』のライブも見れなくなるし……」
イデア:「ゲームだってやってる場合じゃなくなる。」
イデア:「ただでさえリアルには夢も希望もないってのに、“推しごと”までできなくなったら最悪オブ最悪。」
イデア:「それに……」
イデア:「先祖代々コツコツレベリングしてきたセーブデータのリセットボタンを押す勇気は、流石にないよ。」
イデア:「はぁ……地上の奴らは僕らの苦労なんかミリ知らで、能天気に暮らしてて羨ましい限り。」
オルト:「…………。」
オルト:「死者の国の王は迷える死者の魂を導き、誰もが恐れる任務を勤勉に全うしたっていうけど……」
オルト:「本当は兄さんみたいに、押し付けられた仕事を仕方なくこなしてただけかもしれないね。」
イデア:「死者の国の王が〜? それはないでしょ。まあでも……」
イデア:「もしも本当にオルトの言うとおりだったら、元々推しなのにさらに激推しになってしまいますなぁ!」
S.T.Y.X.所員オペレーターA:「所長代理。被検体AからEまでの全検査行程が終了しました。」
S.T.Y.X.所員オペレーターA:「『レテの河』の準備が完了するまで各個室で待機を言い渡したのですが、少々問題が……。」
イデア:「あーはいはい、今行く。」
イデア:「あの問題児たち、次はなんだっていうんだ。」
オルト:「…………………………。」
オルト:「──兄さんならできるよ、きっと。」
イデア:「……え? 今、なんか言った?」
オルト:「ううん。なんでもないよ、兄さん。」
オルト:「行こう。」
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