【ストーリー】EPISODE 6-49 望外アプローチ!

| EPISODE ◆ 6-49 望外アプローチ! 冥府の番人 |
登場人物
ヴィル、イデア、オルト、オペレーター
テキスト全文
── S.T.Y.X.研究所‐会議室 ──
ヴィル:「ルークとエペルが、嘆きの島まで追いかけて来た!?」
イデア:「しかもユウ氏まで巻き込んでね。」
ヴィル:「ユウまで!? 冗談でしょう!?」
イデア:「冗談だったらどんだけよかったか。」
イデア:「おそらくルーク氏たちの襲来は『S.T.Y.X.』始まって以来の珍事として後世に語り継がれますぞ。」
ヴィル:「あの子たち、なんだってそんな無茶を……。」
ヴィル:「まさか、アタシを助け出すために?」
イデア:「オルト、ルーク氏から預かったもの出して。」
オルト:「了解。」
オルト:「はい。ヴィル・シェーンハイトさん愛用のスキンケア用品一式!」
ヴィル:「…………は?」
イデア:「だよね? やっぱその反応になるよね?」
イデア:「嘆きの島まで箒1本で乗り込んできて……」
イデア:「「ヴィルにこれを!」って化粧品を渡された時には、」
イデア:「『S.T.Y.X.』一同完全にフリーズしましたわ。」
オルト:「「我が盟友ヴィルの危急存亡のとき!」」
オルト:「ってね。」
ヴィル:「…………ふっ、あははははは!!!」
ヴィル:「あの子たちを抱きしめてキスしたあと、ビンタしてやりたい気持ちよ。」
ヴィル:「ルークの突飛な行動には慣れたつもりでいたけど、今回はさすがに驚いた。」
ヴィル:「しかも、エペルやユウまで来てるなんて!」
ヴィル:「待機しろって言ったはずなのに。まったく、全然言うことを聞きゃしない。」
ヴィル:「自分たちがどれだけ馬鹿な真似をしたのか、学園に戻ったらみっちり説教してやらないと。」
ヴィル:「でも、せっかく持ってきてくれたんだものね。ありがたく受け取るわ。」
ヴィル:「……あら? この美容液……。」
オルト:「どうかした?」
ヴィル:「いえ、大したことじゃないわ。」
ヴィル:「普段使いのものじゃなく、“特別なおまじない”が込められたスペシャルケア用を持ってきたみたい。」
ヴィル:「カローンたちに乱暴に連れ去られたのを見て……」
ヴィル:「とんでもなく劣悪な状況に置かれてると考えたのかもしれないわ。」
オルト:「カローンたちと戦っても勝ち目がないって分かってたはずなのに、それでも追いかけてくるなんて……」
オルト:「ルークさんたちは本当に友だち想いなんだね。」
イデア:「いや、友だち想いで済むレベルか?普通に怖いんですが……。」
ヴィル:「ふっ。確かにクセは強いけど、慣れれば裏表がなくて付き合いやすい男よ、ルークは。」
ヴィル:「裏表がなさすぎてデリカシーがないのが玉に瑕だけど。」
ヴィル:「……おかげで来週に控えた雑誌のカヴァー撮影には、最高のコンディションで挑めそう。」
ヴィル:「外部から被検体への差し入れを許可するなんて、きっと顔見知り特権よね?」
ヴィル:「感謝するわ、ボス。」
イデア:「別に。吠えまくる猛獣をなだめるためのジャーキーを与えただけにすぎないんで。」
ヴィル:「本当にいちいち腹が立つ言い方してくるわね、アンタ。」
ヴィル:「話が終わりなら、アタシは部屋に戻らせてもらうわ。」
イデア:「ハイ。乙でーす……。」
イデア:「あい、こちらイデア・シュラウド。」
オペレーター:「所長代理。ケースナンバーLOD−627へ適応される『レテの河』についてのご報告です。」
オペレーター:「現在88%チャージ完了。本日フタゼロマルマル、本部に収容されている被検体A~E、」
オペレーター:「そして賢者の島全域、その他関係者への使用が可能となる予定です。」
オペレーター:「インターネット上へ流失した情報については、現在情報対策班・ムネーモシュネーが対応しています。」
イデア:「はい、おつかれさん。じゃあ『洪水』を起こすのは0時にしよう。」
オペレーター:「了解。賢者の島へはヘキサ班が出動予定です。」
イデア:「了解。あー、そうだ。」
イデア:「ナイトレイブンカレッジには、茨の谷の次期当主マレウス・ドラコニアが滞在してる。」
イデア:「妖精は『レテ』の効き方に人間と差があるはずだから、注意して調整して。」
イデア:「あのへんのご長寿な種族が知ってて当然の情報まで押し流したらまずい。」
オペレーター:「了解。」
オルト:「………『レテの河』を使ったら、みんな『S.T.Y.X.』のことを忘れちゃうんだよね。」
イデア:「そう。いくら『S.T.Y.X.』の技術をもってしても、時間を巻き戻すことはできない。」
イデア:「だから、『レテの河』を使って強制的に、齟齬の出ない範疇で記憶を書き換えるんだ。」
イデア:「被検体AからEの5名の記憶は、『英雄の国』の大学病院に特別要請をうけ、」
イデア:「ブロットに関する調査に協力したことに変わる。」
イデア:「「嘆きの島へ連れ去られて、戻ってきた魔法士はいない」……なんて言われてるけど……」
イデア:「行ったこと自体を忘れちゃうんだから、“戻ってくる”わけがないんですわ。」
オルト:「……………………。」
オルト:「みんなで一緒にゲームしたことも、忘れちゃうの?」
イデア:「当然だろ。拙者に対しての認識も、『S.T.Y.X.』所長代理じゃなく、」
イデア:「ただの引きこもりの根暗オタクに戻る。」
イデア:「あ、それはここでのことを覚えてても変わらんか。フヒッ!」
オルト:「……………………………………。」
イデア:「…………オルト?」
オルト:「……えっ?」
イデア:「さっきから少し様子がおかしいけど、どこか調子悪い?」
イデア:「魔導回路か、リアクターに不調があったりするのかな……念の為にメンテしようか?」
オルト:「ううん! ボディのどこにも不調はないよ。兄さんのメンテはいつもどおり完璧。」
オルト:「普段あまりしないことを経験したから、メモリの処理に時間がかかってるのかも。」
イデア:「そう? ならいいけど……。」
オルト:「僕、研修施設のルークさんたちの様子を見てくるね。」
オルト:「ちゃんとヴィルさんに化粧品を渡したよってことも伝えてくるよ。」
イデア:「ああ、うん。いってら。」
イデア:「オルト……?」
── S.T.Y.X.研究所‐廊下 ──
オルト:「ゼロをゼロのままにしないために、僕ができることってなんだろう……。」
──教えてあげようか──
オルト:「!! 誰!?」
……おいで
こっちへおいで
オルト:「……この声……『タルタロス』のほうから……?」
オルト:「まさか、ファントム……!?」
知りたいんでしょう?
君になにができるか……
オルト:「………知りたい。」
オルト:「どうしても変えたいんだ……未来を。」
なら もっとこっちへ……
おりておいで
もっと もっと……
深いところまで……
もっと暗くて 寒い 地の底まで……
オルト:「ここは…………。」
オルト:「……そこに、いるの?」
うん
君が生まれる前からずっと……
でも 寂しくなかったよ
ここにはたくさん
友だちがいるから
オルト:「友……だち?」
僕は 君に…… ううん
世界中のみんなに
僕たちの友だちになってほしいんだ
そうすれば──
この檻(ケージ)はいらなくなる
兄ちゃんは 自由になれる!
オルト:「“兄ちゃん”って……君はまさか……っ!」
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