【ストーリー】EPISODE 7-48 通信アチーブ!

| EPISODE ◆ 7-48 通信アチーブ! 深淵の支配者 |
登場人物
オルト、主任、所長、S.T.Y.X.所員B、S.T.Y.X.所員C、S.T.Y.X.所員A
テキスト全文
── S.T.Y.X.研究所‐管制室 ──
オルト:「こち……オ…。『S.T.Y.X.』……応答……う……」
主任:「イエース! やった!」
主任:「うちのお兄ちゃんなら絶対に「どんな状況でもネットがないと生きていけない」とかいって、」
主任:「通信衛星を無断でハックして使ってると思ったの!」
所長:「イデアはまた勝手に『S.T.Y.X.』の設備を……はぁ……。」
主任:「デジタルフィルターとノイズリダクションかけて! ゲートウェイのアンテナの照準を調整!」
オルト:「――メーデー、メーデー。」
オルト:「こちらオルト。 『S.T.Y.X.』本部、応答願います。」
所長:「こちら『S.T.Y.X.』本部。聞こえるか、オルト?」
主任:「オルくーん! ママだよ!」
オルト:「父さん! 母さん! ああよかった、やっと繋がった!」
主任:「オルくん、怪我はない!? お兄ちゃんは無事!?」
主任:「あのエネルギーフィールドは何? 怖かったね……!」
所長:「ゴホン! 少し落ち着きなさい、主任。オルト、状況の説明を頼めるか?」
オルト:「了解。映像データは重いから、音声で記録を再生するよ。」
所長:「……成程。つまり賢者の島を覆う強大なエネルギーフィールドは、」
所長:「茨の谷の次期当主マレウス・ドラコニアの魔法によるものだということだな。」
オルト:「うん。マレウスさんが展開した魔法によって、島は外界とは隔絶してるみたいで……」
オルト:「時間経過すら彼の支配下におかれてる。」
オルト:「現在領域内に存在する生命体はすべて、睡眠状態にあるよ。」
所長:「……先程感じた、島を覆う黒い茨の既視感……」
所長:「あれは、古い文献の図版に残る茨の魔女の伝説に酷似していたからか。」
所長:「術者が妖精……しかも、あのドラコニア家の末裔ならば納得がいく。」
主任:「あのエネルギーフィールド内の空間は、魔法により彼に完全に掌握されている……」
主任:「『領域支配』……領域内の世界を意のままに改変できる、古代魔法の一種ね。」
所長:「神話の時代より、妖精は気候変動や地殻変動を司ってきた。」
所長:「今も世界と繋がる魔法を使うとは聞いていたが……とんでもないな。」
所長:「これほどの規模の魔法……術者のオーバーブロットは免れなかったはずだが。」
オルト:「僕の内蔵カメラでは、マレウスさんが魔法を発動した瞬間までしか記録できていない。」
オルト:「でも、僕が機能停止直前に観測したブロット濃度を考えれば……」
オルト:「今彼はオーバーブロット状態にある可能性が高いね。」
所長:「だとすれば、魔法領域の拡張をできる限り抑制しつつ彼が魔力を燃やし尽くすのを待てば……。」
主任:「待って。妖精は自らが持つ魔力の他にも、自然から魔法エネルギーを取り込める者もいるわ。」
主任:「火や水などの元素を司る妖精なんかが、その代表例だけど……」
主任:「もしマレウスも、その性質を持っていたら?」
所長:「魔力切れによる術の解除は見込めず、このまま魔法領域は拡大し続けるということか。」
所長:「そうなれば黎明の国はおろか、全世界に領域支配が及ぶ可能性も……」
オルト:「まさか……」
オルト:「マレウスさんはそのつもりで少しずつ領域を広げ続けている……とか?」
………………………………。
主任:「情報が少なすぎる。……茨の谷に連絡をとり、」
主任:「マレウス・ドラコニアに関する情報提供を求めましょう。」
所長:「先代当主アイドネ・シュラウドも、かの谷との交流には苦労したと聞く。だが……」
所長:「やってみよう。」
所長:「同時に、我々も独自に島民救助の策を講じなくては。ただ返事を待ってはいられない。」
主任:「エネルギーフィールド内の状況を把握、それから強制解呪方法の解明が最優先ね。」
所長:「しかし、魔法領域内はすべてがマレウスの支配下なんだろう?」
所長:「現状の装備では、カローンを内部に送り込むことすら不可能だ。」
主任:「だったら急いであのエネルギーフィールドを突破できる装備を作るっきゃないでしょう!」
所長:「しかし、装備が整ったとしても……領域内では何が起きるかわからない。」
所長:「現行のパワードアーマーに搭載されているAIでは、臨機応変な状況判断は難しい。」
所長:「有用な解析データを持ち帰れるかどうか……。」
主任:「かといって、有人操縦で領域内に突入するのは危険すぎる。」
主任:「AIエンジニアに改良を頼んではみるけど……」
主任:「ああ、こんなときにお兄ちゃんがいてくれればな〜!」
オルト:「その調査、僕に行かせて。」
所長・主任:「えっ!?」
オルト:「僕は現時点で世界最高の自律型AI。的確に状況を判断し、領域内部から情報を持ち帰ることができる。」
オルト:「マレウスさんは、災害級の魔法を使えるすごい妖精だ。でも……」
オルト:「僕は妖精が干渉できる“自然”の摂理から外れた存在。」
オルト:「天才(兄さん)が、ヒトが生み出した、科学の申し子。」
オルト:「だからギアの心臓部である魔導リアクターさえ停止しなければ、」
オルト:「僕の意識(プログラム)はマレウス・ドラコニアさんの魔法にだって書き換えられやしない。」
オルト:「その証拠に、こうして僕は領域内からの脱出に成功してる。」
オルト:「そうでしょう?」
オルト:「でも今あるギアじゃ、あのエネルギーフィールド内では活動できない。」
オルト:「だから、母さん。僕に新しいギアをちょうだい。」
オルト:「マレウスさんの支配する領域内でも活動できるギアを!」
主任:「そんなの危険すぎる! まだエネルギーフィールドを構成する要素の解析すらできていないのに。」
主任:「たとえ突入できたとしても、無事に戻ってこられるかわからない。」
主任:「もしデータを転送する間もなくコアを破壊されたら、オルくんだって……!」
オルト:「んっ、あれぇー? なんだか電波の調子が……あ〜、衛星が惑星の影に入っちゃう!」
主任:「あっ!? こら、オルくん!? 話はまだ終わってないよ!」
オルト:「これから僕の構成データを一度バラバラに分解して、『S.T.Y.X.』に送る。」
オルト:「しばらく通信できなくなるけど……」
オルト:「そっちに帰ったときなにも準備してくれてなかったら……」
オルト:「『ケルベロス』と一緒に嘆きの島全体のスプリンクラーを止まらなくしてやるから。」
オルト:「じゃあ、またね!」
所長:「待ちなさい、オルト!」
主任:「オルくん! んもう! 戻ってきたら覚えてなさい!」
S.T.Y.X.所員B:「音声通信遮断。通信衛星よりORTHO(オルト)の構成データのダウンロードを開始しました。」
S.T.Y.X.所員B:「ダウンロード完了予定時刻は……48時間後です。」
所長:「48時間……か。」
所長:「どうする技術部主任……」
所長:「あれ、主任は?」
S.T.Y.X.所員C:「主任なら、すでに退室されました。」
S.T.Y.X.所員A:「技術開発部所属の全スタッフに、第4ミーティングルームへの招集命令がかかっています。」
所長:「…………はぁ。これだから天才ってやつは。」
所長:「では……凡人にもやれることから着手するとしよう。」
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