三賢者ダインのプロフィール

ダインは破神の圧政時代、突如歴史上に登場した謎

の人物である。

高度な魔術を用いて、破神の眷属と戦っていたこと

が分かっており、その実績から魔術師と位置付ける

声も大きいが、戦術、医術、そして生活の知恵など

広く知識に富んでいたという証言も残っているため

賢者という表現がよりふさわしいかもしれない。

記録上、数百年にも渡って、この賢者の名前は断続

的ではあるが存在し続けていた。

通常の人間ではあり得ない寿命ということになるが

そもそも当時の人々と行動を共にしたという記録が

乏しく、彼が本当に人間なのか疑問の声も上がって

いる。

ダインは人里に近付かない代わりに、よく古代の遺

跡に入って行くところを目撃されたという。

その時に彼と行動を共にしていたという他のふたり

の姿も確認されており、当時の人々は3人を総称し

て、「三賢者」としていた。

ダインはこのふたり以外の存在と極力関わりを持た

ず、興味を示すこともなかったという。

よって、彼らが遺跡で何をしていたのか、詳しいこ

とは誰も知る由もないが、魔術の研鑽を積んでいる

という噂もあったらしい。

噂に確固たる証拠は無いが、三賢者が破神の眷属と

戦闘を交える度に魔力が増大していたという証言が

あったことも、あながち無視はできないだろう。

当時の記録をかき集めてみると、彼らの魔術は既に

眷属を圧倒するほどの力をもっていたともいわれて

いたようだが、それ以上魔力を向上させて何をする

つもりであったのか。

その真相については、いまだに学者の間で意見が割

れている。

ダインを含む三賢者は、一般の民衆と別行動をとっ

ていたことは当時の記録からわかっている。

だが全く接点を持たなかったわけでもなく、結果的

に人々を救ったという話も残っている。

ある日3人が、ある村の近くに滞在したという。

明確な目的は誰にも理解できなかったそうだが、何

かを調査している様子であったと、当時の証言が残

されている。

そんな中、破神の眷属が人類と魔獣を同時に襲う。

突如の急襲により魔獣も人間も慌てるばかりであっ

たが、三賢者が声掛けをしたことで徐々に冷静さを

取り戻し、眷属への反撃体制を整えたという。

にわかに作った、戦士でもない存在の反撃体制など

恐れるに足らないと考えた眷属は、そのまま人間た

ちへの攻撃を継続する。

だが、魔獣と人間はダインたちの指示により、戦い

における陣形を見事に形成し、眷属たちを撃退した

と伝わる。

その時の戦いの様子について当事者は「眷属を倒す

という強い意志より、まるで自分たちの戦い方がど

れだけ通用するのか試しているような振る舞いだっ

た」と三賢者の様子を語っていたらしい。

ひょっとしたら、遺跡で行っていたとされる魔術の

研究の一環として、眷属との戦いも彼らにとっては

実験のようなものだったのかもしれない。

ひとつの仮説として、彼らは眷属の先に存在する、

破神にも通用する魔力の会得を目指していたのでは

ないか、という意見がある。

言い伝えによれば、魔術の真髄を究めた者のみが手

に入れることのできる「真の魔導」なるものがこの

世界には存在するらしく、

彼らはその存在を信じて、遺跡にて飽くなき魔術の

実験を繰り返していたという説もある。

破神の眷属を相手に圧倒的な力を発揮する三賢者。

彼らは、ひとりひとりが一騎当千の魔力を備えてい

たとされ、それを象徴するダインの戦いの記録が

残っている。

ある時ダインは、ふたりの賢者とは別に単独行動を

取っていた。

その際に彼は眷属の大群に襲われ、自ら急ごしらえ

の砦を用意して立てこもり、応戦したという。

彼はいたずらにその場を凌いでいたわけではなく、

的確に眷属の猛攻をかわしながら相手の疲弊を待っ

ていた。

やがて、眷属は攻撃を諦め、砦に背を向け撤退を開

始する。

多勢に無勢。普通であれば敵の撃退を果たしただけ

で安心し、その後は自身の安全を確かなものにすれ

ば御の字のところ、

彼はまだ余力を残しており、魔術を駆使して眷属を

追撃。多大な被害を出したと伝わる。

この一戦は、状況に応じた戦い方の選択、無尽蔵な

魔力の供給、そして眷属に対する、強固な攻撃意思

が読み取れる内容となっている。

これは彼の眷属への敵意が増幅していたわけではな

く、

彼の魔力が以前の実験的な眷属討伐の時と比べて成

長し、そのことを証明するためにとった行動ではな

いかという説が有力である。

あくまで推測の域を出ないが彼はこの戦いを通じて

自身の魔術の向上を確信し、破神に挑む準備を着々

と進めていたのではないだろうか。

だが今現在をもって破神を封じた大戦の当事者とし

て、彼が封印に直接関与したという記録はなく、そ

の大戦が始まる前に、数百年に渡り残っていた彼の

名は歴史上から姿を消す。

破神を倒すために魔術を研究していたという説が誤

りとも思われたが⋯。

賢者ダインの名は長い歴史の中で幾度も登場し、そ

の存在は初めて現れてから数百年にも渡り生き続け

ていたことになる。

ただし、その長い年月の中で彼の名が出てこない時

期も多々あり、十数年を経て皆がその存在を忘れか

けた頃に再び姿を現すということもあった。

彼が歴史の表舞台に再登場する経緯は様々だが、記

録から名前が長期間消える直前の行動には共通点が

あるという。

それは、決まって古代の遺跡に籠るという動きであ

り、その目撃情報も当時あったとされる。

このことから人々が想像するのは、この賢者が時を

超えて存在し続けることのできる秘密が、その遺跡

に隠されているということである。

その推測に基づいて、ダインが消息を絶った後、密

かに遺跡の調査をする者もいたらしい。

遺跡には、当時の学者ですら解読できない文字を刻

んだ壁があり、ダインや他の賢者の姿は確認できず

調査した者は帰還したという。

この壁の文字こそ、彼らの歴史を紐解く重要な鍵で

はないだろうか。

また、ある民衆の証言の中で「失踪後、再び我々の

前に姿を現したダインは、背格好が以前の彼と違っ

ていた」というものがある。

姿形の変化した賢者に、壁面の暗号。彼は遺跡で、

自身の肉体に人類の理解を超えた魔術を施すことで

その命を永らえさせてきたのではないだろうか。

そしてその魔術が何らかの弊害で使用できなくなり

ダインの存在は本当に消滅してしまったのかもしれ

ない。

彼は本懐を遂げられたのか。今となっては誰にも分

からない。